昨今のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の普及により、インターネット上の秩序が著しく乱れてきています。
誰もが気軽に自らの意見や主張を投稿できるようになった裏で、匿名性を逆手にとった誹謗中傷が問題視されています。
中には、行き過ぎた誹謗中傷により、企業のブランドイメージが崩れてしまったケースもめずらしくはありません。
では、もし自身の企業が誹謗中傷の的にされてしまった場合、どのように対処すればよいのでしょうか?
今回の記事では、悪質なネット記事や口コミをインターネット上に投稿されてしまった場合の、削除請求の方法について詳しくご紹介していきます。
「弁護士に相談なんて大げさな・・・」という時代は終わりました!
経営者・個人事業主の方へ
企業のインターネットトラブルは増加傾向にある
今なぜ企業のインターネットトラブルが増加傾向にあるのでしょうか?
その理由の1つは、SNSによる「拡散」です。
SNSの普及
従来までは、テレビや雑誌といったメディアを通して情報を入手するのが当たり前でした。
しかし、現在は誰もが当たり前にスマートフォンを持ち、簡単にインターネット上にアクセスできるようになり、情報を得る方法そのものが変わってきています。
そのため、企業にとってマイナスイメージとなる情報がインターネット上に流れた途端、あっという間に情報は共有され、拡散されていくようになったのです。
最も多いインターネットトラブルは「誹謗中傷」
ポジティブな情報よりも、ネガティブな情報のほうが拡散される傾向が強く、企業における最も多いインターネットトラブルは、「誹謗中傷」となっています。
たとえば、飲食店でスタッフの対応が悪い、盛付けが汚いといった情報がインターネット上に出回るとあっという間に拡散されます。
そして、次第に「賞味期限切れを出している」、「店長はさっさと消えろ」といったように、誹謗中傷へと変化していきます。
一度ついたネガティブなイメージは簡単には払拭できないため、企業としては広く拡散されるまえに、インターネット上の違法・有害情報を削除する必要があるのです。
また、事態によっては法的対応も視野に入れていかねばなりません。
早期に弁護士に相談するなど、事態収拾に向けた対応は迅速に行いましょう。
インターネット上の違法・有害情報の削除請求方法
以下では、インターネット上の違法・有害情報を削除請求する5つの方法をご紹介します。
- WEBフォームからの削除請求
- 弁護士によるWEBフォームからの削除請求
- 情報通信関連の手引・ガイドラインに則った削除請求
- 法的手段による削除請求
- 技術的な対応による有害情報の遮断
WEBフォームからの削除請求
誹謗中傷をされた場合、該当サイトが提供しているWEBフォームを通じて直接削除を請求することができます。
多くのウェブサイトやソーシャルメディアのプラットフォームでは、ユーザーが不適切や不正なコンテンツを報告できる専用のフォームを設けています。
削除請求のやり方
削除請求をする際は、該当するコンテンツのURL、なぜ削除が必要なのかを説明する理由、必要に応じて個人の身元情報を提供する必要があります。
WEBフォームからの削除請求は無料で行えますが、サイトによっては対応に数日から数週間かかる場合がある他、個人からの請求の場合、返事をもらえない(対応してもらえない)ケースもあります。
メリットとデメリット
メリット
- ほとんどの場合費用がかからない
- 簡単で実行しやすい
- 法的手続きに比べ迅速に解決する場合がある
デメリット
- 削除が保証されるわけではなく、ウェブサイト運営者の裁量に依存する
- 違法または有害と認識されない情報に対しては効果が限定的
- 対応に時間がかかることもあり、迅速な解決が求められる場合に不向き
弁護士によるWEBフォームからの削除請求
削除請求が複雑である場合やサイト管理者と連絡が取れないなど、自社での対応が難しいと感じる場合は、専門家である弁護士に依頼する方法があります。
依頼方法
弁護士へ依頼する際は、問題となっているコンテンツの詳細と、どのように企業の権利を侵害しているのかを説明する必要があります。
弁護士への依頼費用は弁護士事務所によって異なりますが、相談段階で相談料、依頼する場合は着手金や成功報酬金を支払う必要があります。
手続きの期間もケースによって異なりますが、数週間から数ヶ月を見込むのが妥当です。
メリットとデメリット
メリット
- 専門的な知識により削除が期待できる
- 法的な観点からの削除請求が可能
- 複雑なケースや大規模な問題にも対応可能
デメリット
- 弁護士費用がかかる
- 長期にわたる場合や複雑なケースは費用が高額になることがある
- 手続きに時間がかかる場合がある
- 必ず成功する保証はない
情報通信関連の手引き・ガイドラインに則った削除請求
情報通信技術関連の企業が多く所属している「一般社団法人テレコムサービス協会」では、記事の削除についてのガイドラインを作成しています。
削除請求手順
削除請求をするには、誹謗中傷とされる内容について、サイトの管理者やプロバイダに依頼書を郵送します。
その後、サイト管理者やプロバイダは依頼が本人からのものであるかを確認、発信者に削除の可否を問います。
発信者が7日以内に反論しなければ、内容は削除されます。
反論があった場合は、「権利が不当に侵害されていると信じるに足りる相当の理由」の有無を管理者が判断し、削除について決定されます。
メリットとデメリット
メリット
- ガイドラインに則って必要事項を埋めるだけで申請が可能
- 削除請求者が自ら手続きを進めることができる
デメリット
- 依頼書には侵害された権利と理由を詳細に記入する必要がある
- 依頼内容が適切に書かれていない場合、請求を行えないことがある
法的手段による削除請求
削除請求の中で最も強力な手段が、法的手続きになります。
法的手続きは、迅速さを求める仮処分と、より確実な削除を求める訴訟の2つがあります。
1,仮処分
仮処分は、訴訟と比較すると早期解決が見込める法的手段です。
記事の削除や発信者情報の開示を求める場合、サイトやプロバイダには任意で応じてもらうしかありません。
しかし、仮処分であれば強制的に実現することも可能です。
必要書類は、侵害された権利を説明する詳細な資料、仮処分申立書になります。
また、仮処分を通じて、コンテンツプロバイダや経由プロバイダに発信者情報を開示させることも可能です。
弁護士に依頼する場合、費用は一般的に数十万円を見込む必要がありますが、仮処分自体は比較的早く、通常は数カ月程度で決定が下されます。
2,訴訟
訴訟は、損害賠償請求を行う前提で発信者情報を特定するなど、複雑なケースである場合に利用が検討されます。
訴訟を提起するには、管轄となる裁判所に証拠資料と訴状を提出しなければなりません。
弁護士に依頼する場合の費用は、通常数十万~数百万円と高額になるケースも多く、手続きの期間は数ヶ月から数年を要する場合が多いです。
メリットとデメリット
メリット
- 裁判所の決定によりプロバイダ側も従うことが多い
- 弁護士に依頼すれば主張が認められる可能性が高まる
- 仮処分は比較的早期に解決が見込める
- 訴訟では損害賠償金を請求できる
デメリット
- 弁護士に依頼すると費用がかかる
- 訴訟の場合、長期間にわたる可能性がある
- 法的手続きだからといって必ず期待通りに進むとは限らない
技術的な対応による有害情報の遮断
インターネット検索を行うと、サジェストといって入力した単語に関連するワードが検索候補に出てきます。
この中にネガティブなワードが出てくると、企業のイメージを損なう危険があるため、技術的に表示させなくする方法による対策が可能です。
1,サジェスト表示させないようにする方法
SEO対策などに特化した専門業者に依頼すれば、ネガティブなワードをサジェスト表示させないようにすることが可能です。
早ければ数週間で対応が完了するケースもあります。
費用としては、月額制を取っている業者が多く、1~5万円程度が一般的です。
2,サイトを表示されにくくする方法
特定のワードで検索された際に、サイトを表示されにくくする方法もあります。
検索エンジンを最適化する方法をSEOと呼ぶのに対して、サイトを表示されにくくする方法は逆SEOとも呼ばれています。
こちらも上記と同様、月額制を取っている業者が多く、1~5万円程度が一般的です。
メリットとデメリット
メリット
- 法的手段を取らずとも不適切な内容を目立たなくさせられる
- 継続的なSEO対策により企業イメージの向上が期待できる
デメリット
- 一度表示されなくなっても持続するとは限らない
- SEO対策は効果が出るまで持続的な努力が必要
- 削除されるわけではないため根本的な解決にならない
インターネット上の書き込み等の削除請求を行う上での注意点
インターネット上の書き込みなどを削除請求する際は、以下の点に注意しましょう。
削除代行業者に注意する
削除代行業者への依頼は注意しなければなりません。
なぜなら、過去には削除代行業者との契約が無効とされた判例があるからです。
この判例によると、依頼者は削除代行業者に10件の記事の削除を依頼し、その対価として約50万円を支払いました。
しかし、裁判所は、削除代行業者の行為が非弁行為に該当すると判断し、削除代行業者との契約を無効としています。
こうした判例も出ているため、削除代行業者への依頼には注意が必要です。
書き込み等を削除すること自体が炎上につながってしまう危険性を考慮する
インターネット上の書き込み等は、内容がネガティブだからといって、すべてを削除することが企業イメージの回復につながるわけではありません。
なぜなら、書き込み等を削除すること自体が炎上につながってしまう危険があるのです。
書き込み等が削除されれば、それに気付いた者が削除されたことを話題に取り上げます。
そうすると、「火消しをしている」、「都合の悪いことは削除している」といったように、さらなる火種を投下する自体にもなりかねません。
こうした自体へと発展しないよう、削除請求する際は慎重な判断が求められます。
最適解を選択するためにも、専門の弁護士に相談しながら削除するか否か、判断することを推奨します。
まとめ
インターネット上に存在する悪質な記事や口コミ、誹謗中傷は、企業のブランドイメージに悪影響を及ぼす危険があります。
本記事では、削除請求の具体的な方法についてご紹介しました。
各方法にはメリットとデメリットがあるため、状況に応じて最適な選択をしなければなりません。
また、インターネットの誹謗中傷問題は複雑であり、法的手続きを伴う場合は弁護士からのサポートが必要です。
インターネット問題に精通した弁護士に相談・依頼し、適切な方針を立てて行動しましょう。
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