コンプライアンスとは?意味や違反のリスク・事例【徹底解説】

コンプライアンスとは、法令や社会的倫理を遵守することを意味します。

コンプライアンス違反は、損害賠償責任の追及や社会的な信用力低下につながるリスクをもたらします。

本記事では、コンプライアンス違反の事例や対策を詳しく解説します。

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目次

コンプライアンスとは?

はじめに、コンプライアンスの意味やコーポレート・ガバナンスとの違いを解説します。

コンプライアンスの意味

中小企業庁の定義によると、コンプライアンス(compliance)とは「法令を遵守すること」です。

企業活動に関係する法令や条例を守ることだけでなく、社会的な規範や良識、倫理を守ることも含めて、コンプライアンスと呼ばれることもあります。

コーポレート・ガバナンスとの違い

コンプライアンスと意味を混同しやすい概念に「コーポレート・ガバナンス」があります。

東京証券取引所では、コーポレート・ガバナンスを「企業が株主や顧客等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速な意思決定を行うための仕組み」と定義しています。

「governance(統治・支配・管理)」という言葉から分かる通り、透明性の高い組織運営や株主の公平な立場などを守るために、会社を統治・管理する活動を指します。

以上より、コンプライアンスとコーポレート・ガバナンスの違いは「法律や規則等に対する考え方」にあると言えます。具体的な違いは以下のとおりです。

  • コンプライアンス:法律の遵守を「徹底する」、「呼びかける」
  • コーポレート・ガバナンス:法律の遵守を果たすために「会社を統治する」、「管理体制やルールを構築する」

コンプライアンス違反の事例

コンプライアンス違反は、企業規模や業界に関係なく日々問題となっています。

この章では、コンプライアンスの具体的な内容と実例を紹介します。

偽装

法律上表示すべき商品・サービスの内容について、本来とは異なる内容を表示し、消費者に知らせる行為です。

具体的には、原材料の産地偽装や建築基準に関する検査数値の偽装などが挙げられます。

外国産アサリを熊本産に偽装した事件

発生時期:2020年4月ごろ~2022年1月ごろ

2023年2月6日に、外国から輸入したアサリを熊本県産と偽装し販売した水産会社社長が、食品表示法違反(原産地虚偽表示)の疑いで逮捕されました。

輸入された外国産アサリは山口県下関市の税関を通り、輸入会社を経由し福岡市の業者に卸売りされ、熊本県の水産会社に卸売りされていました。この福岡市の業者と熊本県の水産会社が共謀し、外国産アサリ約101トンを「熊本産活アサリ」と偽装し山口県宇部市の水産会社に販売した疑いで、容疑者は容疑を認めているとのことです。

納品書などの産地の書き換え自体は福岡市の業者が行っていましたが、熊本県の水産会社社長から多額の金額を偽装手数料として受け取っていたようです。

この事例は、産地偽装のコンプライアンス違反に該当します。 参考記事:西日本新聞

労務問題

従業員の労働環境・条件等に関して、法律や社会的規範に反する行動を行うことです。

具体的には、過労死ライン越えの長時間残業や残業代の未払い、パワハラ、賃金未払いなどが該当します。

大手広告代理店会社での違法残業

発生時期:2010年ごろ~19年12月ごろ

大手の広告代理店で社員の違法残業などの労働基準法違反と労働安全衛生法違反があったとして、労働基準監督署が2019年9月に是正勧告した事件。

2010年以降から各地の労働基準監督署が是正勧告しており、2015年12月には当時の新入社員が自殺した件では2016年9月に長時間労働が原因として労災認定がされました。

この広告代理店は2019年7月に労働環境改革基本計画を発表していましたが、9月に是正勧告を受けていることから適正な労務管理を行っていなかったとして、重大なコンプライアンス違反だとして問題になりました。

参考記事:東京新聞

不正会計

経営状況を取引先や顧客に良く見せるために、不正な会計を行うことです。

具体的には、売上の架空計上や費用の過少計上、負債の不計上などが該当します。

大手総合電機メーカーによる利益操作

発生時期:2015年2月発覚

証券取引等監視委員会による開示検査で初めて問題が発覚し、その後第三者委員会による調査にて主力事業を含めて全社的に不正会計が行われていたことが発覚しました。

この不適切な会計により、21億円の課徴金と新規契約業務の3か月間停止の行政処分がなされ、監査法人の交代や上場廃止の危機にさらされる事態となりました。 参考記事:日本経済新聞

情報漏えい、データ持ち出し

故意かどうかに関係なく、顧客や取引先の情報を外部に漏えいすることもコンプライアンス違反に該当します。

具体的には、住所やクレジットカードの情報などの漏えいが当てはまります。漏えいの原因は様々であり、外部の第三者によるハッキングや競合企業への営業秘密の持ち出しなどが考えられます。

大手不動産会社での個人情報流出

発生時期: 2022年5月

不動産会社従業員が会員向けのEメールを発信したところ、本来BCCに入力すべきメールアドレスを誤って宛先に入力し送信してしまい、他の会員のメールアドレスが表示されている状態となった事件。

メールを受信した会員からの指摘で発覚し、「メールアドレス以外の個人情報の流出はない」として、お詫びのメールの配信・監督官庁へ報告したとのことでした。 参考記事:電子メール誤送信による個人情報の流出に関するお詫び

知的財産権の侵害

著作権や特許権などの知的財産権を侵害することです。

たとえば、無断で著作物であるイラストを自社サービスで使用することは著作権法違反となり得ます。

漫画の海賊版サイト運営者による著作権法違反

発生時期: 2016年1月~2021年6月ごろ

電子漫画サイトの海賊版サイトの運営者が著作権法違反(公衆送信権の侵害など)・組織犯罪処罰法違反(犯罪収益等隠匿)の罪に問われた事件。

人気漫画を違法コピーしたデータを、誰でも無料で閲覧可能にし、広告収入を得るという運営がされていました。

20161月に開設された海賊版サイトは2018年4月に閉鎖されましたが、最盛期には月間利用者数が1億人にも登ったとして、大手漫画出版社は多大な被害を受けていました。

参考記事:朝日新聞 日本電子出版協会

コンプライアンス違反がもたらすリスク

昨今、あらゆる業界でコンプライアンスの違反が問題となっています。

では、コンプライアンス違反は企業にどのような損失をもたらすのでしょうか?

この章では、コンプライアンス違反がもたらす3つのリスクを紹介します。

信用力の低下

産地偽装や不正会計などのコンプライアンス違反をおこすと、「従業員や顧客、法律を守ることよりも、自分たちの利益を優先する企業」というイメージが広がってしまいます。

具体的には、顧客が自社製品を購入してくれなくなったり、取引先が契約を打ち切ったりする事態になり得ます。

こうした事態に陥ると、売上の減少や資金繰りの悪化といった実害が生じてしまいます。

また、一度低下した社会的な信用力は中々戻らず、信用を取り戻すまでには膨大な時間や労力が必要となります。そのため、信用が回復する前に業績が悪化し、倒産する事態となるリスクもあります。

損害賠償責任

コンプライアンスによって顧客や従業員などに損失を与えた場合、相手側から損害賠償責任を問われる可能性があります。

損害賠償責任が裁判所によって認められた場合、金銭を相手に支払う必要があります。

損害賠償の金額が莫大なものとなる場合、支払いによって資金繰りが悪化し、会社が倒産するおそれがあります。また、会社内の資金だけでは損害賠償を支払いきれず、経営陣の個人資産を支払いに充当する必要が出てくる場合もあるでしょう。

従業員の離職

コンプライアンス違反によって社会的信用力が低下したり、損害賠償の支払いで資金繰りが悪化したりしている企業は、従業員にとって働き続けるメリットがないも同然です。

むしろ他人からの印象が悪かったり、自らの給与が減らされたりするリスクもあるため、積極的に他社への転職や独立を検討する可能性が高いでしょう。

一度に大量の従業員が離職すると、営業や生産などの活動を円滑に行えなくなります。そのため、事業の続行が不可能となる可能性が高まります。

また、一部の優秀な人材が抜けてしまう場合も同様に、生産性や収益性の低下に直結するでしょう。

コンプライアンス違反の対策

コンプライアンスに違反しないためには、事前の対策が不可欠です。この章では、コンプライアンスに遵守する上で効果的な6つの対策方法を解説します。

規定・方針の策定、社内での周知徹底

経営陣や法務部門がしつこくコンプライアンス遵守を呼びかけても、従業員は気に留めない可能性があります。

したがって、具体的に従業員が守るべきルールを明確化することが重要です。

一般的には、以下の流れでコンプライアンスに関する規定・方針を策定します。

  • 社内のリスクを洗い出す
  • リスクが顕在化した場合の対策や罰則などの明確化
  • 上記を踏まえ、従業員が守るべきルールの文書化

ルールを明確化することで、従業員に対して「このような状況下ならば、どのように行動すべきか」ということを認識させることができます。

また、規定を策定した後に、内容を従業員に対してわかりやすい方法で周知徹底する必要があります。

社内研修の実施

従業員に対してコンプライアンスに関する研修を実施すると、より一層対策の効果が高まります。

具体的には、コンプライアンス遵守に必要な基本的な法律知識や過去の事例などを伝えます。

社内研修を実施することで、従業員に対して当事者意識を植え付ける効果を期待できます。

また、実際の業務に当てはめて考えさせることで、「なぜコンプライアンス違反がダメなのか」を納得させる効果も期待できるでしょう。

また、一度きりの研修で終わらないことも重要と言えます。定期的に社内研修を実施し、従業員のコンプライアンス遵守の意識が薄れないようにしたり、最新の情報にアップデートさせたりすることがポイントです。

内部告発・相談窓口の設置

ルールの周知や社内研修を徹底的に行っても、出来心やプレッシャーが原因でコンプライアンスに違反してしまうケースは少なくありません。

また、本人が違反に気づいていない場合もあります。

そのため、コンプライアンス違反を見つけた際に、社内で問題行為を告発・相談できる窓口を設置することも効果的です。

窓口を設置する際には、被害者や告発者が気軽に相談できるような仕組み・雰囲気を作ることが重要です。

また、違反した本人が報復活動を行わないように、相談した事実が他の第三者に漏えいしないことも大切です。

消費者庁が行った調査によると、民間事業者の不正が発見された経緯として、もっとも回答割合が多かったのが「内部通報」であり、2番目に多かった内部監査の1.5倍に上るとのことです。※

消費者庁のデータからも分かる通り、内部告発・相談を行える窓口の設置は、コンプライアンス違反を早期に発見し、対策を講じる上で非常に効果的な施策と言えるでしょう。

内部通報制度の実効性向上の必要性 – 消費者庁

まとめ

お伝えしたように、コンプライアンス違反は事業の続行に支障をきたすようなリスクをもたらします。

したがって、規定の策定や内部告発窓口の設置などの対策により、未然に違反を防ぐことが重要です。

事業を円滑に継続・成長させるためにも、積極的に対策を実施することをオススメします。

また、あらかじめ弁護士保険などで、今後の様々なリスクに備えておくことをおすすめします。

弁護士
東拓治弁護士

東 拓治 弁護士
 
福岡県弁護士会所属
あずま綜合法律事務所
福岡県福岡市中央区赤坂1丁目16番13号上ノ橋ビル3階
電話 092-711-1822

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