JASRAC使用料はいくら?BGM・ライブ・YouTubeの料金と免除条件を徹底解説

「店舗でBGMを流したいけど、著作権の手続きが必要なの?」
「契約している個人向けの音楽配信サービスの楽曲を、店舗で流しても問題ないよね?」
「JASRACから連絡が来たけど、本当に使用料を払わないといけないの?」

このように、店舗運営や音楽利用でJASRAC使用料について悩まれている方は少なくありません。

特に飲食店や美容室などの事業者にとって、BGMは顧客満足を高めるために必要なものである一方、使用方法によっては思わぬ法的トラブルに巻き込まれるリスクもあります。

結論から言うと、店舗でのBGM利用は「公衆への伝達」に該当するため、原則としてJASRACへの使用料支払いが必要です。

ただし、ラジオ・テレビ放送の受信や福祉施設での利用など、一定の条件下では使用料が免除される場合もあります。

また、個人向け音楽配信サービスの店舗利用は各サービスの利用規約で禁止されていることもあるため、適切な業務用BGMサービスを選択する必要があります。

本記事では、JASRAC使用料の仕組みから具体的な料金体系、免除条件やよくある誤解まで、音楽を適法に利用するための方法について、弁護士監修のもと、詳しく解説していきます。

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目次

JASRACの使用料とは?

JASRAC(ジャスラック、一般社団法人日本音楽著作権協会)とは、作詞家・作曲家などの著作権者より著作権を信託された団体のことを指し、音楽ユーザーが楽曲を利用する際に必要な利用許諾手続きの窓口となります。

このJASRACの使用料は、音楽の著作権者から管理委託を受けたJASRACに対して支払う「楽曲利用の対価」のことです。

弁護士

店舗BGMからライブ演奏まで、営利目的で音楽を使用する際に発生する費用で、著作権者へ適正に対価を還元される仕組みとなっています。

JASRACが管理している権利の範囲

JASRACが管理するのは、楽曲のメロディー構造や歌詞といった「音楽著作権」です。

これは録音された音源そのものではなく、音楽の設計図とも呼べる部分を指します。

作詞家・作曲家から委託を受けた楽曲について、演奏権・複製権・公衆送信権など様々な利用形態での権利管理を行っています。

ただし、録音物自体の権利である原盤権は別の権利者が保有しており、JASRACの管理対象外となります。

使用料が発生するケース・しないケースの違い

使用料が発生するのは「公衆への伝達」に該当する場合です。

たとえば、飲食店でのBGM再生、ライブハウスでの演奏、動画サイトでの楽曲使用などが該当します。

一方、個人が自宅で音楽を楽しむ場合や、学校法人での教育利用においては、使用料が発生しません。

営利目的と非営利目的の境界線

営利目的の判断基準は、直接的な収益獲得の有無だけではありません。

顧客の満足度向上や集客効果を狙った音楽利用も、営利目的とみなされます。

例えば入場無料のイベントでも、企業のプロモーション目的であれば使用料が発生する場合があります。

包括契約と個別契約の選択肢

JASRACへの支払い方法は、年間包括契約個別楽曲契約の2種類に分かれます。

継続的に多数の楽曲を使用する場合は包括契約が有利で、特定楽曲のみの限定利用なら個別契約が適しています。

包括契約では使用楽曲数に関係なく定額料金となり、利用者にとっては予算管理しやすい支払い体系と言えるでしょう。

他の権利との関係性

JASRAC使用料を支払っても、すべての音楽を自由に利用できるわけではありません。

レコード会社が保有する原盤権、実演家の権利、CDの複製に関する権利などについては、別途手続きが必要です。

また、個人向け音楽配信サービスを店舗で利用することは、各サービスの利用規約で禁止されていることが一般的です。

この点は、JASRACの使用料とは別の問題として注意が必要です。

利用シーン別・JASRAC使用料の目安

各利用シーンの比較

実際にJASRAC使用料を支払う場合、利用形態によって料金体系が大きく異なります。

店舗面積や入場者数、配信回数など具体的な基準に基づいて算出されるため、事前に料金を確認する必要があります。

【比較表】利用シーンごとの金額相場・免除条件一覧(2025年現在)
利用シーン料金算出方式年額目安主な免除条件
店舗BGM床面積×係数6,000円〜ラジオ・TV受信のみ
ライブ・コンサート入場料収入の5%変動営利目的でない演奏
動画配信包括契約済み0円YouTube等対象サービス
個人利用楽曲数×係数3,000円〜非営利・非公開
企業CM配信1,000回単位10,000円〜なし

なお、個人向け音楽配信サービス(Spotify、Apple Music等)の店舗利用は、各サービスの利用規約で明確に禁止されています。

CDをコピーして店舗で再生する行為も、複製権侵害にあたる可能性があります。

適法な店舗利用には、著作権処理済みの業務用BGMサービス利用が推奨されます。

店舗BGMの場合

店舗でのBGM利用は、床面積を基準とした年額料金制度が採用されています。

JASRACの規定では、演奏場所を単位として利用期間・回数・店舗面積等によって使用料が決定されます。

【床面積別の年額料金例(一般店舗等の場合)】(2025年現在)
床面積年額使用料
500㎡まで6,000円
〜1,000㎡10,000円
〜3,000㎡20,000円
〜6,000㎡30,000円

【ラジオやテレビを流す場合の免除条件】

ラジオやテレビの放送をそのまま受信して店内で流す場合は、著作権法38条により使用料が免除されます。

ただし、録画・録音した内容の再生やBGM専門チャンネルを利用する場合は、使用料が発生するため注意が必要です。

ライブ・コンサート・イベントの場合

ライブやコンサートでの楽曲使用は、入場料の有無や会場規模により料金体系が分かれます。

営利目的の演奏では、主催者がJASRACへの使用料支払い義務を負います。

入場料収入の5%方式

有料ライブでは、入場料総収入の5%を使用料として支払う方式が基本です。

例えば入場料3,000円×200人の場合、60万円の5%にあたる3万円が使用料となります。

ただし、会場費や出演料を差し引いた純利益ベースでの計算も可能です。

入場無料イベント時の「定員×係数」方式

入場無料のイベントでは、会場定員数に一定の係数を乗じて使用料を算出します。

屋内イベントの場合、定員1人あたり10円程度が目安となり、500人定員の会場では5,000円程度の使用料が発生します。

「1曲1回」方式

演奏楽曲数が少ない場合に適用される方式で、1曲1回の演奏につき定額料金を支払います。

たとえば、クラシック中心のコンサートで数曲のみ著作権保護楽曲を演奏する場合などに利用されます。

1曲あたり500円〜1,000円程度が相場です。

YouTube・動画配信サービスの場合

動画配信での楽曲使用は、プラットフォームによって取り扱いが大きく異なります。

多くの主要サービスではJASRACとの包括契約が締結されており、個別の使用料支払いは不要です。

非営利目的の個人投稿は支払い不要

YouTubeやニコニコ動画では、JASRACとの包括契約により、管理楽曲の利用が可能です。

ただし、この契約は非営利目的の個人投稿を前提としており、企業の商用利用や広告収入を得る場合は別途手続きが必要になる場合があります。

広告目的の動画や外国作品を利用するケース

企業のプロモーション動画や広告目的の動画では、包括契約の対象外となるケースがあります。

また、海外楽曲についてはJASRAC管理外の作品も多く、別途権利者への許諾が必要です。

商用利用する際には、必ず権利関係の確認を行いましょう。

原盤・歌詞・編曲権など別手続きが必要なケース

JASRACの管理は作詞・作曲に関する権利に限定されます。

既存楽曲のカバー演奏を動画で公開する場合でも、原盤権やアーティストの実演家権については別途手続きが必要です。

また、楽曲をアレンジする場合は編曲者の許諾も求められます。

個人利用・非商用の場合

非営利目的の個人利用であっても、公衆に向けた演奏や配信では使用料が発生する場合があります。

営利目的でない場合の料金体系は、一般的な商用利用よりも低額に設定されています。

【使用料早見表(ダウンロード形式・個人・非商用配信)】
楽曲数年額月額
1曲1,200円150円
5曲まで6,000円750円
10曲まで10,000円1,000円
以後10曲まで毎に加算する額10,000円1,000円

なお、学校法人や公益法人などでは、福祉・教育目的での利用において使用料免除や大幅減額が適用されます。

医療施設や従業員向けBGM、露店での短時間利用なども「当分の間免除」の対象となっています。

広告・CM・企業利用の場合

企業による楽曲利用は、最も高額な料金体系が適用されやすい分野です。

広告効果や収益性を考慮した料金設定となっており、利用形態によって大きな差が生じます。

たとえば、Web広告で楽曲を使用する場合に採用されるのは、配信回数に基づく従量課金制です。

相場は1,000回配信あたり10,000円〜30,000円で、楽曲の知名度や使用時間によって料金が変動します。

テレビCMと比較すると低額ですが、拡散性の高いコンテンツでは、総額が高額になる可能性もあります。

なお、企業のプロモーション動画では、楽曲使用料に加えて映像制作や配信に関する権利処理も必要です。

また、SNSでの二次拡散を想定した場合、配信プラットフォームごとの利用条件を確認しておくことが重要です。

あらかじめ権利関係を整理しておくことで、後々のトラブルを避けられます。

使用料が免除されるケース

JASRAC使用料の支払いが不要となるケースは、法律上の規定とJASRAC独自の規程により定められています。

弁護士

免除条件を正しく理解することで、不要な費用負担を避けられます。

法定免除(放送の受信をそのまま流す場合など)

著作権法38条1項に基づく法定免除は、営利を目的としない上演等について適用される制度です。

具体的には、入場料を徴収せず、出演者への報酬支払いもない公演が対象となります。

具体的には、学校の文化祭や地域のボランティア演奏会などが該当し、この場合は著作権者の許諾なしに楽曲利用が可能です。

また、ラジオやテレビの放送を受信装置でそのまま店内に流す行為も、放送事業者が既にJASRACに使用料を支払っているため、追加の使用料は発生しません。

ただし、放送内容を録画・録音して後日再生する場合は免除対象外となるため注意が必要です。

JASRAC規程による「当分の間免除」

JASRACの独自規程では、社会公益性を考慮し、次のような一定の条件下において「当分の間免除」となるケースがあります。

  • 福祉施設や医療法に基づく医療提供施設でのBGM利用
  • 会社や工場での従業員専用BGM利用
  • 露店などでの短時間かつ軽微な利用

これらの免除は法的義務ではなく、JASRACの自主的な社会的配慮に基づいた措置です。

教育機関については、学校法人格を持つ施設では包括的に免除されますが、営利目的の音楽教室は対象外となります。

従業員向けBGMの場合は、顧客が立ち入らない職場での利用に限定されます。

店舗内のBGMとして流す場合は、免除されません。

他団体やサービスによる包括契約

USEN等の有線放送サービスや店舗向けBGMサービス事業者が、利用者に代わってJASRACと包括契約を締結している場合があります。

これらのサービスでは、月額料金にJASRACへの使用料が含まれているため、店舗側が個別にJASRACとの手続きを行う必要はありません。

また、モンスター・チャンネルなどの店舗向けBGMサービスも、同様の仕組みを採用しており、著作権処理済みの楽曲を月額料金で利用できます。

ただし、サービス契約終了後に独自でBGMを流す場合は、改めてJASRACとの契約が必要になるため注意が必要です。

非営利団体・宗教法人での特別扱い

宗教法人や公益社団法人などの非営利団体では、その活動目的に応じて免除や減額措置が適用される場合があります。

宗教的儀式での聖歌利用や、慈善活動でのBGM使用については、営利目的でない限り使用料が発生しないか、大幅に減額されます。

ただし、結婚式場運営などの収益事業を行う宗教法人では、通常の商用利用として取り扱われるため、免除対象外です。

個人の趣味・練習での利用

自宅や個人スタジオにおいて個人が楽器練習や歌唱練習する場合は、公衆に向けた伝達行為ではないため、JASRACの使用料は発生しません。

音楽教室の生徒が個人的に練習する行為についても同様で、JASRACが個人宅まで請求するようなことはありません。

ただし、練習風景をSNSに投稿したり、ライブ配信を行ったりする場合は、インターネットを通じて不特定多数に発信する「公衆送信」に該当する可能性があります。

この場合は、著作権上の問題が生じることがあるため、十分な注意が必要です。

著作権保護期間満了楽曲の利用

作詞者・作曲者の死後70年が経過した楽曲は、著作権保護期間が満了となり、自由に利用できます。

多くのクラシック音楽や古い童謡・民謡などが該当し、これらの楽曲のみでBGMを構成すれば使用料は発生しません。

ただし、現代のアレンジが加えられた楽曲については、編曲者の権利が存続している場合があるため、個別の確認が必要です。

JASRAC使用料を払わないとどうなる?

JASRAC使用料の未払いは、民事上の損害賠償請求や刑事罰の対象となる可能性があります。

弁護士

2015年以降、JASRACは全国規模での法的措置を強化しており、実際に多数の店舗が訴訟や調停の対象となっています。

差止・損害賠償の実例(店舗BGM裁判)

JASRACは、2015年から著作権使用料を支払わずに店内BGMを流している事業者に対し、全国一斉の法的措置を開始しました。

まず民事調停を申し立て、調停が不成立の場合に訴訟へ移行するという手続きが取られています。

2019年の福岡地裁では、市内のバーなど10店舗の飲食店経営者に対し、無許諾で楽曲を使用していたとして、使用の差し止めと約41万円の損害賠償支払いが命じられました。

この事例では、長期間にわたって無断で使用していた点が重視され、高額な賠償金が認定されており、早期の対応がいかに重要かを示しています。

損害賠償額は、本来支払うべきだった使用料に加え、交渉費用や弁護士費用も含まれるため、結果的に当初の使用料を大幅に上回る場合があります。

著作権法の罰則

著作権法違反には民事責任だけでなく、刑事罰も規定されています。

個人の場合は10年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金、法人の場合は3億円以下の罰金が科される可能性があります。

特に営利目的での著作権侵害については、親告罪から非親告罪に変更されており、権利者の告発がなくても検察が起訴できる仕組みです。

ただし、店舗BGMでの使用料未払いが直ちに刑事事件化するケースは稀で、多くは民事手続きで解決することが一般的です。

それでも、悪質な事案や再犯の場合は刑事告発される可能性があり、事業継続に深刻な影響を与えるリスクがあります。

調停・和解に至るケースが多い

実際の法的措置では、多くのケースが調停や和解で解決されています。

JASRACとしても訴訟による全面対決よりも、適正な使用料支払いによる解決を優先する傾向があります。

調停では、過去の無許諾使用期間に対する使用料の支払いと、今後の適法な利用契約の締結が主な合意内容です。

和解金額は、本来の使用料の1.5倍から3倍程度になることが多く、早期に応じるほど負担を軽減しやすい傾向にあります。

また、調停成立後は正式なJASRAC利用者として登録され、今後の楽曲利用が適法に行えるようになります。

法的措置を受けやすい業種・規模

JASRACの法的措置は、顧客との接点においてBGMを活用する、以下のような業種に集中する傾向があります。

  • 飲食店
  • 美容室
  • 小売店 など

対象となる店舗規模は、個人経営の小規模店舗から大手チェーン店までさまざまです。

特に、過去にJASRACから連絡を受けたにもかかわらず対応しなかった事業者や、同業他社で問題が発生している地域の店舗については、重点的な調査対象となる可能性が高くなります。

法的措置回避のための事前対策

法的リスクを回避するには、事業開始時点での適切な権利処理が重要です。

店舗でBGMを流す予定がある場合は、開店前にJASRACへの利用申請を行うか、著作権処理が済んでいるBGMサービスと契約しましょう。

既に無断で音楽を使用している場合は、JASRACからの連絡を待つのではなく、自主的に相談窓口へ連絡しておきます。

そうすることで、より柔軟かつ円満に解決しやすくなります。

また、使用する楽曲リストの作成や利用実績を記録しておくことで、万一トラブルが起きた際にも、交渉を有利に進められるはずです。

損害額算定の基準と計算方法

損害賠償額の算定は、本来支払うべき使用料を基準として計算されます。

無許諾使用期間中の年額使用料に加え、権利行使のために要した費用(調査費、弁護士費用等)が上乗せされるのが一般的です。

悪質性が認められる場合は、通常使用料の数倍にあたる懲罰的な賠償額が認定されることもあります。

店舗面積や使用期間、使用楽曲数などの要素により、最終的な賠償額は大きく変動するため、早期の適切な対応が経済的負担の軽減につながります。

よくある誤解と注意点

店舗BGMや音楽利用に関する著作権の理解には、多くの誤解が存在します。

弁護士

適法だと思っていた利用方法が実は権利侵害にあたっていたケースも多く、正確な知識に基づく判断が重要です。

「サブスク契約していれば店舗BGMに使える」は誤解

個人向け音楽配信サービス(Spotify、Apple Music、YouTube Music等)に月額料金を支払っていたとしても、店舗でのBGM使用は各サービスの利用規約において明確に禁止されています。

これらのサービスは個人の私的使用を前提とした契約であり、営利目的の店舗での再生は契約違反となるためです。

JASRACに使用料を支払ったとしても、サブスクサービス側の利用規約違反は別問題として残るため、アカウント停止や損害賠償請求のリスクがあります。

適法に店舗BGMを利用したい場合は、USEN等の業務用BGMサービスや、著作権処理済みの店舗向け音楽配信サービスを利用しましょう。

音楽配信の技術的な利便性と、法的な利用許諾は全く別の問題です。

「CDをコピーして流せばOK」は誤解

購入したCDをコピーして店舗で再生する行為は、複製権侵害にあたる可能性が高いでしょう。

CDの購入は物理的な媒体の所有権を取得するもので、楽曲の著作権使用許諾は含んでいません。

さらに、録音されたCDには実演家やレコード製作者の隣接権も付随しており、これらの権利についても別途処理が必要です。

JASRACが管理するのは作詞・作曲に関する著作権のみであり、CDに録音された音源の利用には原盤権者との契約も必要になります。

店舗でのBGM利用においては、複製行為を伴わない適法な音源調達方法を選択することが、複数の権利侵害リスクを回避する最善の方法です。

「YouTubeならすべて許される」は誤解

YouTubeでは、JASRACとの包括契約により多くの楽曲が利用可能となっていますが、すべての利用が自動的に許諾されるわけではありません。

企業の広告目的動画や商用プロモーション動画では、包括契約の対象外となる場合があります。

また、海外楽曲についてはJASRAC管理外の作品も多く、別途権利処理が必要です。

YouTubeの包括契約は主に個人投稿者の非営利利用を想定しており、収益化を前提とした商用利用では追加の権利処理が求められることがあります。

動画に使用する楽曲の権利関係はしっかりと事前に確認しておき、必要に応じて個別の許諾を得ることが重要です。

プラットフォームとの契約と個別楽曲の権利処理は、別次元の問題として捉える必要があります。

「著作権フリー音源なら何でも使える」は半分間違い

「著作権フリー」の音源であっても、利用条件を詳細に確認する必要があります。

完全に権利が放棄された音源は少なく、多くの場合は「一定条件下での利用許諾」を意味します。

商用利用の可否、クレジット表記の要否、改変の可否など、ライセンス条件は音源ごとに異なります。

また、楽曲の著作権は消滅していても、演奏や録音に関する隣接権は別途存続している場合もあるため注意が必要です。

「フリー」という表現に惑わされず、利用規約やライセンス条件を必ず確認しましょう。

真に自由利用できる音源は、パブリックドメインとして明確に宣言された作品に限られます。

「クラシック音楽なら著作権がない」は部分的に正しいが注意が必要

古典的なクラシック音楽の多くは、作曲者の死後70年が経過しているため、著作権が消滅しています。

しかし、現代の演奏家による録音には実演家権が、レコード会社による録音には原盤権が存在します。

また、現代の編曲者によるアレンジが加えられた楽曲については、編曲者の著作権が新たに発生しています。

さらに、20世紀以降のクラシック作品には依然として著作権が存続するものも多く、作曲年代の確認が必要です。

「クラシック=自由利用可能」という単純な理解は危険であり、個別の作品ごとに権利関係を精査すべきでしょう。

「音量を小さくすれば大丈夫」は法的根拠がない誤解

店舗BGMの音量を小さくしても、著作権法上の「公衆への伝達」に該当することに変わりはありません。

音量の大小は著作権侵害の成否に影響せず、不特定多数の顧客が聞ける状態での音楽再生は使用料の対象となります。

「BGMレベルの音量」「環境音程度」といった表現で法的責任を回避できると考えるのは誤りです。

著作権法では、公衆が楽曲を知覚できる状態での再生行為そのものを規制対象としており、音量は考慮要素に含まれていません。

適法性は利用許諾の有無により判断され、技術的な調整では解決できない問題なのです。

JASRACへの申請手続きについて

JASRAC使用料を適正に支払うには、事前に料金体系を確認したうえで、正確な申請手続きが必要です。

弁護士

まずは公式サイトで必要な情報を収集し、その後段階的に手続きを進めることで、スムーズに権利処理を行えます。

利用料金の確認

JASRACの公式サイトでは、利用形態別の詳細な使用料規程が公開されています。

また、店舗・施設での音楽利用については、専用ページで床面積や利用期間に基づく具体的な料金算出方法が確認可能です。

使用料早見表では、一般的な利用パターンでの年額料金が一覧形式で表示されており、事前の予算計画に活用できます。

料金検索機能を使用すれば、店舗面積や利用形態を入力することで概算料金の自動計算も可能です。

ただし、複雑な利用形態や特殊な条件では、早見表から判断できないこともあります。

その場合は、詳細な使用料規程の確認が必要です。

また、最新の料金体系や改定情報も随時更新されているため、申請前には必ず最新情報を確認することが重要です。

実際の申請方法と必要書類

JASRAC使用料の申請は、オンライン申請と郵送申請の両方に対応しています。

オンライン申請では、24時間いつでも申請手続きが可能です。

主な必要書類は、以下のとおりです。

  • 利用許諾申請書
  • 店舗・施設の概要書
  • わかる範囲での使用予定楽曲リスト
  • 店舗の見取り図
  • 面積が分かる資料

法人申請の場合は、商業登記簿謄本や印鑑証明書の提出も求められることがあります。

申請から許諾までの期間は通常2〜3週間程度ですが、特殊な利用形態や大規模施設の場合はさらにかかる場合もあるため、早めに申請しましょう。

申請受理後は、JASRACから利用許諾契約書と納入通知書が送付され、その後使用料の支払いが完了すれば利用開始できます。

困ったときの相談窓口

JASRACでは、利用者向けの相談窓口を全国各地に設置しています。

東京本部のほか、大阪、名古屋、福岡、札幌、仙台などの主要都市に支部があり、地域に密着した相談対応を行っています。

相談方法は、電話相談とメール相談の2種類です。

また、定期的に開催される説明会では、著作権の基礎知識から実際の申請方法まで、体系的な情報提供を受けられます。

緊急性の高い案件については、優先的な対応を求めることも可能で、イベント直前の申請でも可能な限りサポートしてもらえるでしょう。

申請前にやるべき事前準備

スムーズに申請を済ませるためには、店舗の正確な床面積測定、使用予定楽曲の整理、営業時間や客席数の把握など、あらかじめ基本情報を整理しておきましょう。

特に、複数店舗を運営する場合は、各店舗の利用形態や規模を一覧化することで、効率的に申請できます。

また、既存の音楽利用状況(有線放送、BGMサービス等の契約状況)も事前に確認し、重複する権利処理を避けておきましょう。

不明な点は申請前に相談窓口で確認することで、申請後の修正や追加資料提出を避けられます。

季節営業や期間限定営業の場合は、営業スケジュールも含めて相談することが重要です。

継続利用の手続き

JASRAC利用契約は通常1年間の契約期間となっており、継続利用する場合は、基本的に更新手続きをしなければなりません。

契約満了日の約2ヶ月前に更新通知が送付され、利用状況に変更がない場合は簡易な手続きで更新できます。

店舗面積の変更、営業時間の変更、利用形態の変更がある場合は、詳細な変更申請が必要です。

料金改定がある場合は、新料金での契約更新となるため、事前に予算を確認しておきましょう。

なお、複数年契約や自動更新も選択できます。

継続利用する人にとっては、手続きが簡素化できるメリットと言えるでしょう。

契約更新を忘れた場合でも、一定期間内であれば遡及適用が可能ですが、空白期間の利用は権利侵害となる恐れがあるため、注意が必要です。

まとめ

JASRAC使用料は利用形態により複雑に分かれており、店舗BGMから動画配信まで、それぞれ異なる料金体系と免除条件が設定されています。

個人向け音楽配信サービスの店舗利用禁止や、福祉・教育機関での免除制度など、一般的な認識と実際のルールには大きな差があるのが現実です。

2015年以降の法的措置強化により、適切な権利処理の重要性がより高くなっています。

まずはJASRAC公式サイトで料金を確認し、不明な点は相談窓口へ問い合わせましょう。

自身の利用状況に合った契約形態を選べば、無駄なコストを抑えられ、法的リスクも回避できるでしょう。

弁護士

木下慎也 弁護士

大阪弁護士会所属
弁護士法人ONE 代表弁護士
大阪市北区梅田1丁目1-3 大阪駅前第3ビル12階
06-4797-0905

弁護士として依頼者と十分に協議をしたうえで、可能な限り各人の希望、社会的立場、その依頼者らしい生き方などをしっかりと反映した柔軟な解決を図ることを心掛けている。

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