侮辱罪とは?どんな言葉がアウト?成立の要件と実際の事例を解説

「SNSで悪口を書かれた」
「匿名掲示板で誹謗中傷された」
「職場で侮辱的な発言を受けた」

インターネットやSNSが普及した現代では、こうした言葉による攻撃や誹謗中傷のトラブルに巻き込まれることは珍しくありません。

軽い気持ちで書き込んだ一言が、「侮辱罪」となってしまうこともあります。

「匿名だから大丈夫」「鍵付きアカウントだから問題ない」と考えていても、実際には発信者が特定され、刑事処罰や損害賠償請求の対象となるケースが増えています。

本記事では、侮辱罪の成立要件、実際の処罰事例、名誉毀損罪との違い、被害者側の対応方法について、弁護士監修のもと、具体例を交えて詳しく解説していきます。

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目次

侮辱罪とは?

インターネットやSNSの普及により、誰もが気軽に意見を発信できる時代になりました。

弁護士

しかし、ちょっとした悪口や、軽い気持ちの批判が犯罪として処罰される可能性があることをご存知でしょうか。

侮辱罪って、私たちが思っている以上に身近な犯罪なんですね。

「人前での悪口」でも犯罪になる

侮辱罪とは
公然と人を侮辱する行為に対して成立する犯罪

ここでいう「公然と」とは、不特定または多数の人が認識できる状況を指します。

たとえば、所属部署という場所で同僚の前で特定の人を「バカ」と罵ったり、SNSで誰でも見られる投稿として「あいつはクズだ」と書き込んだりする行為は侮辱罪に該当します。

重要なのは、実際に多くの人が見聞きしたかどうかではなく、「見聞きする可能性があったかどうか」で判断される点です。

たとえば、閉め切った個室での1対1の会話は原則として該当しません。

しかし、ドアが開いていて誰かが聞いているかもしれない状況では、侮辱罪が成立することがあります。

法務省の事例集を見ると、駐車場で「バカ」と言った事案で科料9,900円が科されています。

SNSや掲示板での侮辱も含まれる

インターネット上のSNSや掲示板は、不特定多数の人が閲覧可能です。

たとえ匿名で投稿したとしても、誰でも見られる状態であれば公然性が認められます。

法務省の事例集では、インターネット上の投稿が全体の半数以上を占めており、SNSに「はよ行けゴリラ、臭い」などと投稿したケースで罰金10万円、検索サイトの口コミ欄で特定の医師について「ヤブです」「もっと勉強して下さい」と書き込んだケースで科料9,000円が科されました。

たとえ、鍵付きアカウントであっても、フォロワーが複数いれば「多数」の要件を満たす可能性があります。

極めて少数の特定の人しか見ていないネット上の掲示版でも、誰もが見られれば、「公然性がある」という判断になります。

また、投稿を削除したとしても、スクリーンショットで保存されていれば、罪に問われる可能性があります。

削除行為は反省の証として量刑に影響する可能性はありますが、犯罪の成立自体を妨げるものではありません。

侮辱罪が成立する4つの条件

侮辱罪は、具体的にどのような要件を満たせば犯罪となるのでしょうか?

弁護士

以下に具体的な要件をまとめたので、自分の発言が犯罪に該当するかどうかを判断する際の基準にしてください。

事実を摘示しない

侮辱罪の第一の要件は「事実を摘示しない」ことです。

刑法第231条では「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、一年以下の拘禁刑若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する」と定められています。

具体的な事実を示さなくても、単に相手を軽蔑したり見下したりする表現だけで、犯罪は成立し得ます。

たとえば「バカ」「アホ」などの言葉は、客観的な根拠を伴わず、主観的な表現にすぎません。

しかし、使用する状況や文脈によっては、刑事責任を問われる可能性も考えられます。

法務省の事例集では、会議場において被害者に対し「おいゴミ。ゴミ野郎。ゴミなんだよ。ゴミ帰れ」と言った事案で科料9,000円が科されています。

このように、それが本当のことか検証できないものでも、侮辱罪の対象となります。

公然性がある

侮辱罪が成立するには、その言動が「公然と」行われることが必要です。

公然とは、不特定または多数の者が、直接に認識できる状態を指します。

なお、誰もいない場所での会話やメール、手紙や電話などによる場合は、「公然と」とは言えないため、侮辱罪には当たりません。

しかし、特定の少数の人に対して誰かを侮辱した場合、その内容が人から人に伝えられて不特定または多数の人が認識できる可能性があれば、「公然と」に該当します。

「法人」や「団体」も対象

侮辱する相手には、制限がありません。

例えば小さな子どもや感情を持たない法人、法人格のない団体相手のように、自分が侮辱されていると気づいていない相手であっても、侮辱罪は成立します。

一方、「男は」「○○世代は」といった抽象的な対象に対する侮辱の場合、侮辱罪は成立しません。

なお、法務省の事例集では、一部伏せ字やイニシャルの場合でも、個人の特定が可能な場合は侮辱罪が成立しています。

身内にしか分からないあだ名や隠語を使う場合でも同様です。

人物を特定できる人が、情報を付け加えて広める可能性は十分に考えられます。

よって、その情報が広がっていくことも考えられるため、公然性は消えません。

侮辱する行為

侮辱とは「他人の人格を蔑視する価値判断を示すこと」です。

いわゆる誹謗中傷や罵詈雑言の多くは「事実の摘示」ではなく、侮辱罪の対象となる「価値判断」ということになります。

なお、侮辱罪の成立において、言われた相手が実際に侮辱されたと感じるかどうかは、無関係です。

侮辱罪も名誉毀損罪と同じく、社会的な人の評価を害する犯罪とされています。

この犯罪が成立するかどうかは、一般人が見て、その言動が客観的に「人格を蔑視する価値判断」と受け取られるかどうかの問題なのです。

また、実際にその人の社会的な評価が落ちたかどうかも、侮辱罪の成立には関係ありません。

公然性が成立するケース/しないケース

公然性の有無は、侮辱罪が成立するかどうかの重要な分かれ目となります。

公然性が成立するのは、次のようなケースがあります。

  • SNSやインターネット掲示板への投稿
  • 他の同僚がいる前での発言
  • CCに多数の関係者を含めたメールでの侮辱

法務省の事例集では、SNSに「ふいにめっちゃイライラするんやけど本間あの害児ぱんこのせいよ胸ん悪い@◯◯(被害者の名前)」と掲載した事案では、罰金10万円が科されました。

一方、公然性が成立しないケースとしては、完全に締め切られた個室での1対1の会話、CCに誰も入れない1対1のメールなどがあります。

ただし、個室とはいえ、扉が開いていて通りすがりの人に聞かれるなど、第三者に伝わる状況があった場合には、侮辱罪が成立する場合もあるため注意が必要です。

法務省の事例から見る「侮辱罪の実際と刑の重さ」

侮辱罪は、どのような場合に処罰されているのでしょうか?

弁護士

法務省公開の事例集には、2022年の法改正後に有罪判決が確定した173件の実例が収録されており、処罰の実態を知る貴重な資料となっています。

侮辱罪の施行状況に関する検討会

法務省は2025年9月12日に「侮辱罪の施行状況に関する刑事検討会」第1回会議を開催し、その配布資料として「侮辱罪の事例集」を公開しました。

この事例集には、令和4年(2022年)7月7日の刑法改正施行日以降に犯行に及んだ者のうち、侮辱罪のみで処断され、令和7年(2025年)6月30日までにその裁判が確定した173事例が掲載されています。

法改正では、施行から3年後に有識者を交えた検証を行うことが明記されていたため、この時期に公開されたものです。

事例集には、事案の概要、処理区分(略式命令請求または公判請求)、裁判結果(科料・罰金の金額)が詳細に記載されており、侮辱罪の運用実態を検証するための基礎資料となっています。

SNS投稿での処罰事例

事例集では、インターネット上の投稿が全体の半数以上を占めており、SNSや掲示板への書き込みが多数処罰されています。

たとえば、SNSに「○○はバカなので」と掲載した事案で罰金10万円、インターネット上の掲示板に「最低最悪根深い根っからの犯罪者」などと書き込んだ事案で、罰金30万円が科されています。

匿名での投稿が多数で、インターネット上の掲示板に「○○(地名)に出没する○○(被害者経営店舗名)勤務の女尻軽やでなぁ笑笑」などと掲載した事案や、被害者が配信している動画で「BM、ブタ」などと放言した事案などが報告されています。

また、検索サイトの口コミ欄への投稿も処罰対象です。

被害者勤務先の口コミ欄に「対応が最悪の不動産屋。頭の悪い詐欺師みたいな人」と掲載した事案でも、罰金が科されています。

公共の場での暴言・貼り紙などの事例

インターネット上だけでなく、現実の場での侮辱行為も処罰されています。

  • 被害者に対し路上で「くそばばあが。死ね」などと大声で言った事案で科料9,000円
  • 他の買い物客等がいる商業施設において、視覚障害者である被害者に対し「おめえ、周りが見えんのんやったら、うろうろするな」などと大声で言った事案で科料9,000円

また、物理的な掲示物による侮辱も処罰されており、

  • 商業施設の掲示板に「○○(被害者名)コノオトコハ ワルイ オトコ デス」などと記載した紙片を貼付した事案
  • 駅の柱等に「ご注意 ○○(被害者名)悪質リフォーム工事業者です」などと記載した紙片5枚を貼付した事案
  • 集合住宅において計3名に対し被害者について「今、ほら、ちまたで流行りの発達障害。だから人とのコミュニケーションがちょっと出来ない」などと言った事案

などが報告されています。

罰金・科料の幅(9,000円~30万円)

事例集に記載された処罰の内容を見ると、科料(1万円未満)と罰金(1万円以上)に分かれています。

最も軽い処罰は科料9,000円で、罰金については、10万円が最も多く、SNSや掲示板への侮辱的投稿の多くがこの金額です。

より悪質なケースでは罰金20万円や30万円が科されており、インターネット上の掲示板に「○○(被害者の氏名)????『名は体を表さず』最低最悪・腹が異常に出ている悪質邪悪醜悪」などと掲載した事案では、公判請求により罰金30万円が科されています。

繰り返しの投稿や画像と組み合わせた投稿など、悪質性が高いほど罰金額も高くなる傾向があります。

有罪判決を受けた場合は前科がつく

侮辱罪が成立し、有罪判決を受けた場合は前科がつきます。

前科がつくと、就業規則によっては会社を解雇されるだけでなく、職業によっては前科がつくと資格が失効したり取得できなくなったりするケースも少なくありません。

また、海外旅行をする際にも特別な申告が必要になるケースもあります。

侮辱罪の刑罰と厳罰化の背景

侮辱罪は2022年7月7日に大幅な法改正が行われ、刑罰がより重くなりました。

弁護士

このタイミングで厳罰化された背景には、深刻な社会問題がありました。

どのような点が厳罰化につながったのでしょうか?

改正前の刑罰は拘留・科料

改正前の侮辱罪は、刑法で最も軽い「拘留又は科料」という刑罰が法定されていました。

拘留とは
1日以上30日未満の期間、刑事施設において身柄を拘束し自由を奪う刑罰

科料とは
1,000円以上1万円未満の金銭の納付を命じる刑罰

すなわち、ひどい侮辱的な発言で相手を攻撃したとしても、刑事上は最大で30日未満の拘置か、1万円未満の金銭納付しか科されませんでした。

しかし、この軽さがインターネット上での誹謗中傷を助長する一因となっていたと指摘されています。

改正後の刑罰は懲役・禁錮(現在は拘禁刑に一本化)・罰金

改正刑法により、侮辱罪の法定刑は「一年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」へと大幅に引き上げられました。

改正前は最高でも科料1万円未満でしたが、改正後は最高で懲役1年または罰金30万円まで科される可能性が出てきました。

これからは、悪質な侮辱行為に対して、厳正に対処できるようになります。

なお、2025年6月1日からは懲役と禁固が一本化され拘禁刑となりました。

懲役刑まで法定する改正により、侮辱罪の法的評価が大きく変わったと言えます。

公訴時効が1年→3年に延長

刑罰の引き上げに伴い、公訴時効期間も延長されました。

公訴時効とは
犯罪行為が行われてから一定期間が経過すると、たとえ罪を犯したことが明白であっても、起訴できなくなる制度のこと

改正前の侮辱罪は「拘留又は科料に当たる罪」として公訴時効期間が1年でしたが、法定刑の引き上げにより3年に延長されました。

これは刑事訴訟法第250条の規定に基づくもので、法定刑が重くなるほど公訴時効も長くなる仕組みです。

たとえば、侮辱行為を受けた被害者が相手を侮辱罪で罪に問いたい場合や損害賠償請求をしたい場合には、SNS運営企業やプロバイダなどに対して発信者情報開示請求を行い、相手が誰であるのか特定する必要がありますが、この手続きには時間がかかります。

公訴時効が3年に延びたことで、立件の可能性が高まったと評価されています。

厳罰化の背景

侮辱罪が厳罰化された最大の理由は、インターネット上での誹謗中傷が深刻な社会問題となったためです。

2020年に、テレビのリアリティ番組に出演していた女子プロレスラーの女性がSNS等で誹謗中傷され、自分で命を絶つ事件が発生しました。

この事件を契機に、侮辱罪の法定刑の低さへの批判が高まり、法定刑の引き上げに至ったのです。

そして2021年に法務大臣が侮辱罪を厳罰化し懲役刑を導入する刑法改正を法制審議会に諮問。

2022年6月13日に参議院本会議で可決、施行に至りました。

こうして、近年の誹謗中傷の実態への対処として、侮辱罪の法定刑が引き上げられたのです。

これは、侮辱行為に対して厳正に対処すべきとの法的評価を示し、その抑止を図るための措置と言えます。

法務省附帯決議「表現の自由を萎縮させない運用」

国会審議の過程では、厳罰化によって、表現の自由が制約されるのではないかとの懸念がありました。

そのため、施行から3年後に有識者を交えた検証を行うことが明記されました。

法務省は、ホームページに改正の趣旨や処罰範囲、表現の自由との関係などについて「Q&A」を掲載し、「表現の自由を萎縮させない運用」を目指すことを明確にしています。

侮辱罪の成立には「公然と人を侮辱した」という要件があり、単なる批判や意見表明は該当しません。

また、公益を目的とする正当な表現活動は保護される必要があります。

2025年9月に開催された「侮辱罪の施行状況に関する刑事検討会」も、この附帯決議に基づく検証の一環として行われており、適切に運用されているかを継続的に監視する体制が整えられています。

名誉毀損罪・信用毀損罪との違い

侮辱罪と混同されやすいのが、次の2つの犯罪です。

  • 名誉毀損罪
  • 信用毀損罪

それぞれの犯罪の違いを表で整理すると、以下のようになります。

項目侮辱罪名誉毀損罪信用毀損罪
条文刑法231条刑法230条刑法233条前段
事実の摘示不要必要(真実・虚偽問わず)虚偽の風説または偽計
保護法益社会的評価社会的評価経済的信用
刑罰1年以下の拘禁若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
親告罪×
公訴時効3年3年3年
具体例「バカ」「クズ」「ゴミ」「不倫している」「前科がある」虚偽の情報で支払能力を疑わせる
弁護士

ここではそれぞれの罪の違いを明確に整理し、どのような行為がどの罪に該当するのかを解説します。

名誉毀損罪=事実を示して名誉を傷つける

名誉毀損罪は刑法第230条で「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の拘禁又は五十万円以下の罰金に処する」と規定されています。

侮辱罪との最大の違いは「事実を摘示」することが要件となっている点です。

たとえば「○○は不倫している」「お金を盗むのを見た」「前科がある」「麻薬をしているに違いない」といった、具体的な事実に言及する発言があります。

重要なのは、その事実が真実であっても嘘であっても、名誉毀損罪は成立するということです。

事実か嘘かを検証できるものが「事実」であり、個人の感じ方の問題が「価値判断」です。

名誉毀損罪も侮辱罪と同様に「公然と」という要件があるため、第三者に広まる可能性のない発言については成立しません。

信用毀損罪=経済的信用を損なう行為

信用毀損罪は、刑法第233条前段で「虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損」する行為を処罰する犯罪です。

名誉毀損罪や侮辱罪と異なり、保護法益は「人の経済的な側面での信用」です。

信用とは、たとえば、人の支払い能力や、取り扱う商品などが該当します。

虚偽の風説とは客観的な真実ではない噂・情報を指し、「デマ」や「ガセネタ」も該当します。

「流布」とは不特定または多数の人に広める行為で、ネット掲示板への書き込みやSNSへの投稿などもこれに当たります。

「偽計を用いて」とは、他人を欺いたり人の錯誤・不知につけ込んだりする行為のことです。

すなわち、嘘の情報を流して他人を欺き、特定の人物の経済的信用を損なうことによって成立します。

*加入後に発生したトラブルが補償対象など一定の条件があります。

SNSやネット上で侮辱罪が成立しやすいケース

インターネットやSNSは誰もが自由に発信できる便利なツールですが、その匿名性や拡散性から侮辱罪が成立しやすい場となっています。

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法務省の事例集でも、侮辱罪で処罰された事例の半数以上がインターネットへ投稿された書きこみです。

実際には、どのような投稿が侮辱罪になりやすいのか、知りたいです。

公開設定やフォロワー数で「公然性」が認められる

SNSの投稿は、アカウントの公開設定に関わらず「公然性」が認められやすいです。

誰でも見られる公開アカウントでの投稿は当然ながら、鍵付きアカウントでも、フォロワーが複数いれば「多数」の要件を満たします。

不特定または多数の人が閲覧可能な状態であれば、実際に何人が見たかに関わらず公然性が認められるのです。

また、極めて少数の特定の人しか見ていないネット上の掲示版などでも、誰もが見られるものであれば公然性があるとされています。

匿名・伏せ字・イニシャルでも特定可能なら成立

「匿名だから大丈夫」「伏せ字にすれば問題ない」と考えるのは危険です。

侮辱罪の成立には被害者が特定できることが必要ですが、その特定方法に制限はありません。

侮辱するような発言をイニシャルでネット掲示板に書き込んだ場合でも、侮辱罪が成立しているケースはあります。

また、伏せ字で記載し、その部分だけでは誰のことが書かれているか分からないようになっていても、他の書き込みからその人を侮辱する内容であると読み取れる場合は、侮辱罪が成立し得ます。

身内にしか分からないあだ名や隠語であっても、その人物が誰であるかを特定できる人が情報を付け加えて広めることは十分に想定されます。

そのため、結果として不特定または多数の人に認識されうる状態となる場合には、公然性が認められます。

引用リポスト・スレッド投稿での拡散も危険

他人の投稿を引用やリポストする際に、侮辱的なコメントを付ける行為や、スレッド形式で連続して侮辱投稿を行う行為も侮辱罪の対象となります。

自分自身の発信だけでなく、政治家や芸能人が投稿したSNSにコメントすることや、彼らを誹謗中傷した投稿にコメントで誹謗中傷を重ねることなども、侮辱罪になる可能性が高いでしょう。

法務省の事例集によると、3回にわたりSNSに被害者について侮辱的な内容を掲載した事案で罰金10万円、5回にわたりインターネット上の掲示板に侮辱的な書き込みをした事案で罰金10万円が科されました。

繰り返しの投稿は悪質性が高いと判断され、罰金額も高くなる傾向があります。

また、名誉毀損に該当し得るページへリンクを貼る行為や、書き込みを広める行為も、場合によっては名誉毀損や侮辱罪となる可能性があります。

DM・1対1の会話は原則非該当

SNSのDM(ダイレクトメッセージ)機能や、個別メッセージなど、第三者から見えない1対1のやり取りは、原則として「公然性」の要件を満たさないため、侮辱罪は成立しませんが、中には例外もあるため注意が必要です。

メールに関しては、CCなどで第三者が知る可能性がある状況で誹謗中傷すると、「公然」の要件として認められます。

法務省の事例集では、関係のない社員までCCに入れたうえで、上司から「ノルマを達成できないなら、辞職も考えて」と部下にメールした事案が報告されています。

また、1対1の会話であっても、その内容を第三者が聞く可能性がある状況では公然性が認められることもあります。

DMによる侮辱なら安全というわけではなく、状況次第では罪に問われる可能性があることを認識すべきでしょう。

侮辱罪に該当する言葉とグレーゾーン

どのような言葉が侮辱罪に該当するのか、明確な線引きはありません。

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しかし、法務省の事例集や裁判例から、侮辱罪として処罰されやすい表現の傾向が見えてきます。

少しでも傾向を知っておきたいです。

価値判断型の侮辱

侮辱罪で最も典型的なのが、相手の人格を直接貶める価値判断型の言葉です。

「アホ」「マヌケ」「チビ」「ブス」などのたぐいの言葉は、単なる人の主観の問題です。

たとえば、駐車場において被害者に対し「馬鹿」と言った事案で科料9,900円、会議場において被害者に対し「おいゴミ。ゴミ野郎。ゴミなんだよ。ゴミ帰れ」と言った事案で科料9,000円、バス車内において被害者に対し「ばかが」と言った事案で科料9,900円が科されています。

また、外見に関する侮辱も処罰対象となっており、「デブ」「ブタ」といった表現も該当します。

差別的・侮蔑的な表現

障害、職業、年齢などに関連する差別的・侮蔑的な表現も侮辱罪の対象となります。

具体的に、以下のような事例で処罰されています。

  • 商業施設において他の買い物客等がいる前で、視覚障害者である被害者に対し「おめえ、周りが見えんのんやったら、うろうろするな」などと大声で言った事案で科料9,000円
  • 集合住宅において計3名に対し、被害者について「今、ほら、ちまたで流行りの発達障害。だから人とのコミュニケーションがちょっと出来ない」などと言った事案で科料9,000円

また、「きちがい」といった精神障害を揶揄する表現も、処罰されています。

論評・風刺・意見表明は許される場合がある

すべての批判的表現が侮辱罪に該当するとは限りません。

公共の利害に関する事柄について、公益を図る目的で行われる論評や風刺、意見表明は、表現の自由として保護される場合があります。

自身の著作物の一部が無断で採録されたうえ、批判的な内容で書かれた書籍が出版された際、著者のことを「ドロボー」、その書籍を「ドロボー本」と表現した事案では、意見ないし論評にあたるとして名誉毀損の成立は否定されました。

ただし、個人攻撃の目的が明確な場合や、論評の域を逸脱した表現は許されません。

判断基準は「社会的評価を下げる意図があるか」

侮辱罪が成立するかどうかの最終的な判断基準は、客観的にその言動が「人格を蔑視する価値判断といえるか」です。

侮辱罪の成立において、「本人が侮辱されたと感じるかどうか」は、直接関係するわけではなく、客観的な評価が重要です。

侮辱罪や名誉毀損罪は、社会的な人の評価を害する犯罪とされているためです。

また、侮辱罪の成立には、実際に人の評価が害されたかどうかも関係ありません。

侮辱的な行為が行われれば、侮辱罪は成立します。

被害者が受けた屈辱感の程度は、検察官が起訴するかどうかを判断する際の基準となるほか、有罪となった場合に科される刑罰の重さにも影響を与えます。

被害に遭ったときの対応手順

今までの話をまとめると、SNSやインターネット上で侮辱を受けた場合、適切に対応することで加害者の法的責任を追及できる、ということですね。

弁護士

ただし、証拠の保全や法的手続きには、専門的な知識が必要です。

STEP
証拠を確保

侮辱罪で加害者を罪に問うには、侮辱されたことの証拠を残す必要があります。

ネット上で受けた侮辱であれば、まず侮辱された投稿のページを撮影します。

スクリーンショットは投稿内容の全文のほか、相手のアカウント名や投稿日時、該当URLを撮影して残しておきましょう。

SNSで侮辱された場合は、相手のプロフィールページも撮影しておきます。

口頭による侮辱の場合は、録音データや目撃者の証言、ビラなどによる侮辱の場合は撮影や現物の保存が必要です。

STEP
警察・検察への告訴

侮辱罪は親告罪であり、被害者の告訴がなければ検察官が起訴することはできません。

つまり、投稿者に刑罰を科すかどうかの決定権を持っているのは、被害者といえます。

裏を返せば、被害者による告訴がなければ、警察は捜査に着手できません。

告訴できる法的な期限は、被害者が加害者を特定してから6か月以内です。

投稿者が誰であるか判明している場合には、この期間が過ぎないよう、十分に注意する必要があります。

STEP
発信者情報開示請求の流れ

匿名掲示板やSNSの匿名アカウントにおいて侮辱の投稿が行われた場合、発信者情報開示請求を行うことで加害者を特定できることがあります。

具体的には、侮辱の投稿に用いられた端末のIPアドレスや、それに紐づく加害者の個人情報の開示が可能です。

投稿者が誰か分からない場合には、自分でSNSなどの運営者やプロバイダ等に発信者情報開示請求を行って特定する方法があります。

ただし、一般的にログの保存期間は3か月から6か月程度なので、できるだけ早い対応が求められます。

STEP
損害賠償・削除請求・示談対応

侮辱罪が成立するような事案では、投稿者への民事上の責任追及として不法行為に基づく損害賠償請求も考えられます。

侮辱罪の慰謝料の相場は10万円程度といわれていますが、ケースによってはこれより高くなることも低くなることもあります。

また、民法第723条に基づく名誉回復措置として、以下の対応を求めることも可能です。

  • 謝罪広告
  • 一定範囲への謝罪文の郵送
  • 取消訂正記事
  • 看板や垂れ幕の撤去

さらに、現在進行形の侮辱行為を止めるため、人格権に基づく差止請求としてネットに投稿された書き込みの削除を求めることも可能です。

なお、民事上の請求をする場合は、投稿者を特定する必要があります。

弁護士に相談するメリット

裁判での立証に堪え得る形で証拠の収集や加害者の特定を行うには、多くの専門的知識を必要とするうえに、大きな労力がかかるものです。

弁護士に依頼すれば、証拠の収集や加害者の特定を含め、侮辱の加害者に対する刑事告訴や損害賠償請求等のあらゆる手続を代行してもらえます。

弁護士のサポートがあれば、少ない労力で迅速に、侮辱した加害者の法的責任を追及できます。

SNS上の誹謗中傷被害対策に詳しい弁護士に相談することで、警察への相談や発信者情報開示請求の手続、告訴する際の手続き、その後の民事訴訟の提起などの対応が可能です。

侮辱罪が成立しないケース

たとえ相手を批判する発言であっても、侮辱罪の成立要件を満たさない場合には処罰されることはありません。

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また、表現の自由との兼ね合いから、一定の正当な批判は保護される必要があります。

どのような場合だと侮辱罪にならないのでしょうか?

公益を目的とする批判や報道

公共の利害に関する事柄について、公益を図る目的で行われる批判や報道は、表現の自由として保護される場合があります。

報道機関などは、「表現の自由」の一環として事実を報道する権利を持つため、たとえ事実であっても人の名誉を下げるような報道を全て名誉毀損罪にしてしまうと、報道の自由を侵害することにつながります。

公選による公務員候補者、また公務員に関する事実は、公務員としての資質・能力に全く関係がない事実を除き、公共性・公益性が認められており、真実性が証明できれば名誉毀損罪には問われません。

正当な表現活動・意見表明

意見や論評は、証拠等による証明になじまない物事の価値、善悪、優劣についての批評や論議などを指し、一定の範囲で保護されます。

正当な組合活動の範囲内での批判や、消費者としての率直な感想なども、社会通念上許容される範囲内であれば違法性はないとされます。

ただし、人身攻撃に及ぶなど論評としての域を逸脱したものは違法と判断される可能性があるため、注意が必要です。

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「私、弁護士保険に入ってるんですよ」このひと言は非常に強烈なんです。

*1 件数は2025年3月現在  *2  2013年~2024年。単独型弁護士保険として。2023年3月当社調べ。*3 補償額は実費相当額もしくは一部 *4 初期相談‥事案が法律問題かどうかの判断や一般的な法制度上のアドバイス 募集文書番号 M2022営推00409

まとめ

侮辱罪は、公然と人を侮辱する行為に対して成立する犯罪です。

2022年7月の法改正により、従来の「拘留又は科料」から「1年以下の拘禁刑若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」へと大幅に厳罰化されました。

法務省の事例集では、「バカ」「ゴミ」といった一言の悪口でも、科料9,000円から罰金30万円が科された事例が多数報告されており、その半数以上がSNSや掲示板への投稿です。

匿名で投稿しても、発信者情報開示請求により投稿者を特定できるため、投稿を削除しても証拠が残っていれば罪に問われます。

侮辱罪は親告罪のため、被害者による告訴が必要ですが、告訴期限は犯人を知ってから6か月以内です。

軽い気持ちで言った悪口や批判が、前科として一生残る可能性もあります。

SNSやインターネット上での発言では、相手の受け取り方や社会的影響をよく考え、慎重に言葉を選びましょう。

弁護士

足立高志 弁護士

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【経歴】
中央大学法学部卒
2007年弁護士登録

中小企業から個人の方まで幅広く対応しております。過去は変えられませんが、より良い未来となるよう、手助けができればと思っています。

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