公益通報者保護法とは?2025年改正で強化される内部通報制度の全貌

「会社で違法行為を見つけたけど、通報したら自分がクビになるのでは?」
「上司のパワハラを告発したいけど、報復が怖い」
「フリーランスとして働いているけど、取引先の不正を通報しても大丈夫?」

通報したことで解雇や降格などの報復を受けるのではないかという不安から、声を上げられずにいる方も多いのが現状です。

しかし、公益通報者保護法により、適切な方法で違法行為を通報した従業員は、解雇や不利益な取扱いから法的に保護されます。

2025年の法改正では、フリーランスも保護対象に加わり、通報を理由とした解雇・懲戒には刑事罰が科されるなど、通報者保護が大幅に強化されました。

また企業には内部通報制度の整備が義務付けられており、従業員が安心して通報できる体制づくりが求められています。

本記事では、公益通報者保護法の基本的な仕組みから、2025年改正の重要ポイント、企業が整備すべき内部通報制度について紹介します。

「弁護士に相談なんて大げさな・・・」という時代は終わりました!

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目次

公益通報者保護法とは?

公益通報者保護法とは
企業の違法行為を通報した従業員を、解雇や降格などの報復から守る法律のこと

弁護士

2004年に制定された後、2022年と2025年に大幅改正され、企業のコンプライアンス体制の強化が求められるようになりました。

保護の対象である「従業員」とは、具体的にどこまでが含まれるのでしょうか?

公益通報者保護法の対象者

公益通報者保護法の対象者となるのは、社員だけではありません。

アルバイトやパートはもちろんのこと、派遣社員やフリーランスにも適応されます。

労働者

公益通報者保護法において基本的に保護する対象者は、労働基準法第9条が定める「労働者」です。

正社員だけでなく、契約社員、アルバイト、パート、派遣社員など雇用形態を問わず保護されます。

2022年改正では退職後1年以内の元従業員も対象に追加され、在職中に通報できなかった人への配慮がなされました。

取締役や執行役、監査役などの役員も、通報を理由に解任された場合、損害賠償を請求できる権利が認められています。

また、取引先企業の従業員も、元請企業との請負契約に基づく事業で不正を発見した場合は保護対象となり、サプライチェーン全体でのコンプライアンスが守られるようになっています。

2025年改正でフリーランスも保護対象に

2025年の法改正では、フリーランス(業務委託契約者)も保護の対象となりました。

新たに「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」では、「特定受託業務従事者」が追加されました。

近年では働き方の多様化により、フリーランスも企業の不正に接する機会が増えています。

しかし、立場の弱さから、通報を躊躇するケースが少なくありませんでした。

今回の改正により、フリーランスに加え、業務委託終了後1年以内の元フリーランスも通報時の契約解除などから保護される対象となります。

公務員も対象になる

公益通報者保護法は、以下の公務員にも適用されます。

  • 一般職の国家公務員
  • 裁判所職員臨時措置法の適用を受ける裁判所職員
  • 国会職員法の適用を受ける国会職員
  • 自衛隊法第2条第5項に規定する隊員及び一般職の地方公務員

ただし公務員の場合、免職などの不利益取扱い禁止は本法ではなく、適用されるのは、以下のような各人事関係法令です。

  • 国家公務員法
  • 国会職員法
  • 自衛隊法
  • 地方公務員法

こうした法令を適用する際、公益通報を理由に免職や不利益な取扱いを行わないように配慮する義務があります。

派遣労働者も対象になる

派遣労働者は、派遣元企業と雇用契約を結びながら派遣先企業で就労する特殊な立場にあります。

派遣労働者が派遣先の不正を通報した場合、派遣元からの解雇だけでなく、派遣先企業による労働者派遣契約の解除も無効です。

また、派遣先が通報を理由に派遣元へ「派遣労働者の交代を求める」ことも禁止されています。

これらの規定により、複雑な雇用関係の中でも二重に通報者が確実に保護されるよう、法が整備されているのです。

通報できる「通報対象事実」とは?

通報が可能な「通報対象事実」は、複数の法律によって明記されています。

たくさんの法律が関わってくるのですね!

弁護士

対象となる具体的な事例を踏まえながら、見てみましょう。

500本以上の関連法令が対象

通報の対象となる事実は、別表に掲げられた以下の法律、およびこれらに基づく命令に違反する行為が対象となります。

  • 刑法
  • 食品衛生法
  • 金融商品取引法
  • 日本農林規格等に関する法律
  • 大気汚染防止法
  • 廃棄物の処理及び清掃に関する法律
  • 個人情報の保護に関する法律

さらに詳しく知りたい方は、消費者庁の「公益通報者保護法において通報の対象となる法律について」をご覧ください。

また、公益通報者保護法の別表第8号では、「個人の生命又は身体の保護、消費者の利益の擁護、環境の保全、公正な競争の確保その他の国民の生命、身体、財産その他の利益の保護に関わる法律として政令で定めるもの」も、保護されるとしています。

通報対象となる3つの類型

通報対象事実は以下の3つの類型に分類されます。

第一に、対象法律に規定する「罪の犯罪行為の事実」、つまり刑事罰の対象となる行為です。

第二に、「過料の理由とされている事実」で、これは2022年改正により、刑罰ではないものの、行政上のペナルティを受ける行為も通報対象となりました。

第三に、別表に掲げる法律に基づく処分に違反し、それが前述の「犯罪行為」または「過料の対象」となる場合の「当該処分の理由とされた事実」も含まれます。

実際に犯罪や違反が確定している必要はなく、「生じ、又はまさに生じようとしている」段階での通報も可能です。

また、予防的な通報も保護の対象となります。

通報対象の具体例

ここでは、通報対象となる具体例を紹介します。

労働関係
残業代の未払い、違法な長時間労働、労災隠しが労働基準法違反に該当します。

製品・サービス分野
食品の産地偽装や消費期限改ざん(食品衛生法、JAS法違反)、建築基準法違反の欠陥住宅、品質データの改ざんが典型例です。

経理・税務
会社資金の横領(刑法違反)、架空取引による売上水増し、脱税行為、粉飾決算(金融商品取引法違反の可能性)が対象となります。

環境分野
産業廃棄物の不法投棄や無許可処理(廃棄物処理法違反)が通報される主な事項です。

個人情報保護法違反
顧客情報の無断利用や不適切な管理、必要な許認可を取得せずに事業を行う無許可営業も通報対象となります。

通報対象にならないケース

パワーハラスメントやセクシュアルハラスメントは、原則として通報の対象外です。

ただし暴行罪や強制わいせつ罪など、刑法上の犯罪に該当するレベルであれば通報対象となります。

男女差別など法律違反を伴う場合は別ですが、自分だけの給与が低い、希望部署に配属されないといった個別の労働条件への不満も、それ自体では対象外です。

また、会社の経営方針への反対や、事業戦略に関する意見の相違も通報対象外です。

たとえ倫理的に問題があると個人が感じたとしても、法令違反でなければ公益通報としては保護されません。

単なる噂や憶測も保護される通報とは言えませんが、内部通報段階では「違法だと思う」程度の認識でも保護されることがあります。

通報先の種類と保護される条件

公益通報として法的保護を受けるには、適切な通報先を選び、それぞれに定められた要件を満たす必要があります。

弁護士

通報先は3種類あり、それぞれ保護を受けるための条件が異なります。

状況に応じて、通報先を選ぶことが重要ですね。

通報先は3種類

公益通報の通報先は、3つに分類されています。

第一に「役務提供先若しくは当該役務提供先があらかじめ定めた者」、つまり会社内部の通報窓口や上司への通報(1号通報)です。

第二に「当該通報対象事実について処分若しくは勧告等をする権限を有する行政機関若しくは当該行政機関があらかじめ定めた者」、すなわち監督官庁や消費者庁などの行政機関への通報(2号通報)です。

第三に「その者に対し当該通報対象事実を通報することがその発生若しくはこれによる被害の拡大を防止するために必要であると認められる者」で、報道機関や消費者団体などの外部機関(3号通報)が、公益通報の通報先となります。

1号通報(内部通報)の保護要件

内部通報で保護を受けるための要件は、最も緩やかです。

「通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると思料する場合」と規定されており、「違法だと思う」という主観的な認識での通報でも保護されます。

客観的な証拠や確実な根拠は不要で、合理的な疑いがあれば通報可能です。

これは、企業に自浄作用を働かせる機会を与えるといった目的があります。

書面による通報も必須ではなく、口頭やメールでの通報も保護対象となります。

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企業にとっては、外部へ情報が漏れる前に、社内で問題を発見・是正できる機会と言えるでしょう。

2号通報(行政機関への通報)の保護要件

行政機関へ通報する場合は、より厳格な要件が求められます。

「通報対象事実が生じ、若しくはまさに生じようとしていると信ずるに足りる相当の理由がある場合」と規定されており、単なる思い込みではなく、客観的に見て合理的と言える理由が必要です。

また、「通報対象事実が生じ、若しくはまさに生じようとしていると思料し、かつ、次に掲げる事項を記載した書面を提出する場合」も保護されます。

書面には公益通報者の氏名・住所、通報対象事実の内容、違法だと思料する理由、法令に基づく措置が必要と思料する理由を記載する必要があります。

3号通報(外部通報)の保護要件

報道機関などへの外部通報は、最も厳格な要件が課されています。

2号通報と同じく「信ずるに足りる相当の理由」が必要な上、次のような事情の存在が求められます。

  • 個人の生命・身体への危害や財産への損害が発生する急迫した危険がある場合
  • 行政機関に通報すれば解雇等の不利益を受けると信じる相当の理由がある場合
  • 内部通報すれば証拠が隠滅・偽造・変造される恐れがある場合
  • 役務提供先から内部・行政機関への通報をしないよう正当な理由なく要求された場合
  • 書面で内部通報してから20日経過しても調査の通知がない場合

通報先選択のポイント

法律上、通報先の優先順位は定められていませんが、内部→行政機関→外部の順で検討するのが一般的です。

内部通報で解決できれば企業の信頼やブランドを守れますし、通報者自身も職場での立場を維持しやすくなります。

ただし、このような場合は、直接行政機関や外部への通報も正当化されます。

  • 生命や身体に関わる緊急事態
  • 証拠隠滅の恐れが高い場合
  • 内部通報制度が機能していない場合

通報者は、自身の状況や通報内容の緊急性をふまえ、正しく通報先を選ぶ必要があります。

改正公益通報者保護法(2025年施行)のポイント

2025年6月11日に公布された改正法では、通報者保護をさらに強化し、企業の体制整備義務を徹底する内容となっています。

弁護士

施行は公布から1年6ヶ月以内とされており、2026年12月1日に施行される予定です。

体制整備の徹底と実効性強化

従来、従業員301人以上の事業者には、公益通報対応業務従事者の指定が義務付けられていましたが、違反への担保措置が不十分でした。

改正法では、従事者指定義務に違反し勧告に従わなかった場合、消費者庁が命令を発することができるようになりました。

また、立入検査権限も新設され、命令違反や立入検査を拒否した場合には30万円以下の罰金が科されます。

また、内部通報制度の周知義務が、法律上明示されました。

これまで指針で示されていた従業員への周知が法定化され、より実効性のある制度運用が求められます。

保護対象の拡大

特に注目される改正点は、フリーランスの保護対象化です。

「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」に規定される特定受託業務従事者、および業務委託終了後1年以内の元フリーランスが新たに公益通報者の範囲に加わりました。

働き方の多様化に対応し、業務委託契約で働く人も通報時の契約解除などの不利益から保護されることになります。

そのため、企業は社内規程を見直し、フリーランスを通報対象者に含めるとともに、業務委託契約書に公益通報に関する条項を追加する必要があります。

通報を妨げる行為の禁止

通報を妨害する行為は、明確に禁止されています。

たとえば、次のようなケースは妨害行為に該当し、無効となります。

  • 正当な理由なく公益通報をしない旨の合意を求めること
  • 公益通報をした場合に不利益な取扱いをすると告げること
  • 第三者を利用して圧力をかけること

また、正当な理由なく公益通報者の特定を目的とする行為も禁止されました。

通報者であることを明らかにするよう要求する行為、いわゆる「犯人探し」が法律上違法となります。

ただし通報内容の調査に不可欠な場合など、正当な理由がある場合は例外とされています。

不利益取扱いの防止と救済強化

改正法により、立証責任の転換が導入されました。

公益通報をした日(外部通報の場合は事業者が知った日)から1年以内の解雇・懲戒については、公益通報を理由として行われたものと推定されます。

これまでは、通報者によって解雇・懲戒と公益通報の因果関係を立証する必要がありました。

しかし、今後は企業側が「別の理由による処分」であることを証明しなければなりません。

さらに、公益通報を理由とした解雇・懲戒に対する刑事罰が新設されました。

個人には6ヶ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金、法人には3,000万円以下の罰金が科されます。

施行時期と経過措置

改正法は、2025年6月11日に公布され、2026年12月1日に施行される見込みです。

原則、経過措置として施行前の公益通報にも適用されますが、いくつかの特則があります。

施行前の懲戒処分(解雇を除く)には立証責任転換の規定が適用されません。

ただし施行前の解雇には適用されます。

また、施行前に締結された「公益通報をしない旨の合意」は、無効とする規定の適用対象外です。

企業が今すぐ準備すべきこと

改正法が施行されるまでに企業が対応すべき事項は、多岐にわたります。

  1. フリーランスを含めた内部規程の改訂
  2. 従事者指定と教育体制の再確認
  3. 通報制度の全従業員への周知徹底
  4. 通報妨害・通報者探索の禁止を就業規則等に明記
  5. 懲戒処分時の記録作成体制の整備(立証責任転換への対応)

特に従業員301人以上の企業で従事者指定が未了の場合、罰則付きの命令対象となる可能性があるため、早急な対応が求められます。

法定指針や指針の解説も、今後改訂される見込みです。

企業が取るべき対応とは

改正法の施行に向け、企業は内部通報体制の総点検と強化が必要です。

特に従業員301人以上の事業者は、違反した場合に罰則が課される可能性もあるため、早急な対応が求められます。

具体的にはどのような対応が必要ですか?

弁護士

まずは内部通報制度の見直しや整備、実際に通報を受けた際の業務フローを整えることが大事です。

内部通報制度の見直し

従業員301人以上の事業者には公益通報対応業務従事者の指定と、内部通報への適切な対応体制の整備が義務付けられています。

まず通報窓口を明確にし、社内イントラネットのトップページへの掲載、携帯用カードの配布、ポスター掲示などで全従業員に周知します。

2025年改正で周知義務が法定化されたため、形式的な設置だけでは不十分です。

窓口は社内だけでなく、顧問弁護士や外部委託した専門業者もおすすめです。

外部窓口があることで従業員の心理的ハードルが下がり、通報しやすくなります。

受付方法も電話、メール、専用フォーム、郵送、FAX、対面など複数の手段を用意すべきでしょう。

公益通報対応業務従事者の選任と教育

公益通報対応業務従事者の指定は、書面による指定書の交付が好ましいです。

従事者には罰則付きの守秘義務が課されており、違反すれば30万円以下の罰金が科されることがあります。

そのため、従事者には指定時に丁寧な説明を行い、守秘義務の重要性を理解してもらう必要があります。

一般的に、従事者は以下のような方が対象となります。

  • 通報受付担当者
  • 調査担当者
  • 是正措置実施者

配置転換もあるため、企業は定期的に研修を実施し、従事者に通報対応フローや留意点を習得してもらうことが重要です。

また、利益相反を防ぐ観点から、通報内容に関係する従事者は、対応業務から外す必要があります。

通報対応フローの整備

通報を受け付けたら、速やかに受付通知を発出しましょう。

その後、調査の要否を判断し、必要な場合は調査計画を策定します。

調査では客観的証拠を優先的に収集し、その上で関係者へのヒアリングを実施します。

その際、通報を理由とした調査であることは隠すべきです。

たとえば、「定期監査」「抜き打ち検査」などの名目で調査を行い、通報者の特定を防ぎます。

調査の結果、違法行為が確認されれば速やかに是正措置を講じ、再発防止策を策定します。

是正後もモニタリングを継続し、不正が再発していないかを確認する体制も整えましょう。

フリーランスを含めた通報体制の整備

2025年の改正により、フリーランスが保護対象に追加されました。

企業は社内規程を改訂し、「公益通報者の範囲」にフリーランス(特定受託業務従事者)を明記する必要があります。

業務委託契約書には、公益通報に関する条項を追加し、通報を理由とする契約解除やその他の不利益な取扱いを禁止する旨を明示すべきです。

また、フリーランスにも内部通報窓口の連絡先を周知し、通報時の保護について説明します。

業務委託終了後1年以内の元フリーランスも保護対象となるため、契約終了時にも窓口情報を提供することが望ましいでしょう。

社内教育と心理的安全性の確保

通報を妨げる行為や、通報者を特定する行為は禁止されています。

特に管理職には「通報は組織への裏切りではなく、組織を守る行為」という認識を徹底してもらうことが重要です。

また「犯人探し」が法律違反であること、違反した場合は厳正な処分があることを周知しましょう。

経営トップからのメッセージも、心理的な安全性を確保するうえで効果的です。

「通報者を守る」「報復は許さない」という姿勢を示し、匿名通報制度の導入も検討すべきです。

記録の作成と保管

2025年の改正により、立証責任が転換されました。

通報後1年以内の解雇・懲戒は「通報を理由とするもの」と推定されるため、企業側が「別の理由」を立証する必要があります。

このため懲戒処分を検討する際は、処分理由を詳細に記録し、客観的な証拠を保存しておくことが重要です。

解雇・懲戒と通報が無関係であることを後に証明できるよう、日頃から勤務態度や業務上の問題点を記録化しておきましょう。

また、通報対応の記録も適切に作成・保管し、調査の経過や是正措置の内容を明確にしておきます。

公益通報者保護法の違反と罰則

改正法では、複数の罰則規定が設けられていますね。

弁護士

企業と個人双方が処罰対象となるケースもあり、厳格な法令遵守が求められている、ということです。

従事者の守秘義務違反|30万円以下の罰金

公益通報対応業務従事者または従事者であった者は、「正当な理由がなく、その公益通報対応業務に関して知り得た事項であって公益通報者を特定させるものを漏らしてはならない」とされています。

違反した場合、30万円以下の罰金が科されます。

この守秘義務は在職中だけでなく退職後も継続します。

「公益通報者を特定させるもの」には、氏名や社員番号だけでなく、所属部署や入社時期など間接的に特定できる情報も含まれます。

ただし、裁判所の命令など、本人の同意がある場合や法令上の根拠がある場合は「正当な理由」であるため、例外となります。

従事者指定義務違反への罰則

従業員301人以上の事業者が従事者指定義務に違反した場合、消費者庁から報告徴収、助言、指導、勧告を受けることがあります。

勧告に従わない場合、命令が発出され、これに違反すれば、30万円以下の罰金が科されます。

また「立入検査権限」が新設され、立入検査を拒否・妨害した場合や虚偽の報告をした場合も、30万円以下の罰金の対象です。

報告義務違反への過料

消費者庁からの報告要求に対し、報告をしない、または虚偽の報告をした場合、20万円以下の過料に処せられることがあります。

過料は刑事罰ではなく、行政上の秩序罰ですが、法令違反に対するペナルティであることに変わりありません。

報告要求は体制整備の実施状況などを確認するために行われるため、正確で誠実な対応が求められます。

【2025年新設】通報を理由とした解雇・懲戒への刑事罰

2025年改正の目玉が、「刑事罰の新設」です。

公益通報を理由として解雇または懲戒をした個人は、6ヶ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金に処せられます。

さらに法人に対しては3,000万円以下の罰金が科される両罰規定となっています。

対象となる不利益取扱いは「解雇」と「懲戒」に限定されており、降格や減給は刑事罰の対象外です(ただし民事上は違法で無効)。

この罰則により、報復人事に対する抑止力が大幅に強化されました。

企業は通報を理由とした処分を行わないよう、管理職教育を徹底する必要があります。

不利益取扱いの民事上の効果

刑事罰とは別に、民事上の効果も規定されています。

公益通報を理由とした解雇は無効です。

派遣労働者の場合、労働者派遣契約の解除も無効とされます。

また、降格や減給、退職金不支給などの不利益取扱いも禁止されており、これらの処分も無効となる可能性があります。

なお、役員が通報を理由に解任された場合、損害賠償請求が認められています。

さらに企業は公益通報によって損害を受けても、通報者に対して賠償請求できません。

通報が保護要件を満たす限り、企業は一切の報復措置が取れない仕組みとなっています。

よくある質問

公益通報者保護法に関する「よくある質問」について、弁護士の視点からお答えしていきます。

匿名で通報しても保護される?

匿名による通報も、公益通報として保護されます

消費者庁の指針の解説でも、匿名通報を受け付けることが推奨されています。

匿名性は通報者にとって心理的ハードルを下げ、消費者庁の調査でも匿名通報の受付が信頼性・安心感を高めるという結果が出ています。

ただし匿名の場合、調査結果のフィードバックや追加のヒアリングが困難になりがちです。

このため企業としては、できる限り連絡手段の確保を依頼することが望ましいですが、通報者の意思を尊重する必要があります。

匿名通報でも調査は可能な範囲で実施し、全体への周知などでフィードバックします。

不正の疑いがあっても通報していい?

内部通報の場合、「疑い」だけでもOK

内部通報(1号通報)の場合、「通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると思料する場合」で保護されます。

「思料する」とは主観的に「そう思う」という意味で、確実な証拠がなくても保護対象となります。

合理的な疑いがあれば、通報して構いません。

行政機関や外部への通報では「信ずるに足りる相当の理由」よりも高い要件が求められますが、内部通報段階では証拠が不十分でも問題ありません。

むしろ早期の通報により、企業は不正の芽を摘むことができます。

ただし不正の目的(個人的な恨みや金銭目的)での通報は保護対象外となるため、公益のための通報であることが前提です。

内部通報と報道機関への通報、どちらが優先?

内部→行政機関→外部の順番が望ましい

法律上、通報先の優先順位は定められていませんが、内部→行政機関→外部(報道機関等)の順で検討するのが一般的です。

第3条を見ると、1号通報(内部)の保護要件が最も緩く、3号通報(外部)は最も厳格です。

これは企業に自浄作用の機会を与える趣旨があることがわかります。

ただし、書面で内部通報してから20日経過しても調査の通知がない場合や、正当な理由なく調査を行わない場合、外部通報も保護されます。

また個人の生命・身体への危害や、財産への損害が発生する急迫した危険がある場合も、直ちに外部通報できます。

このように、状況に応じた適切な通報先を判断することが大切です。

退職後でも通報できる?

退職後1年以内であれば、公益通報者として保護される

労働者の場合は第1号、派遣労働者の場合は第2号、フリーランスの場合は第3号により、それぞれ「通報の日前一年以内」に役務を提供していた者も対象です。

在職中の通報による報復を恐れて、退職後に通報するケースに配慮した規定です。

退職後の通報でも、通報内容が在職中に知り得た情報であれば保護されます。

ただし退職後は連絡が取りにくくなるため、企業からのフィードバックを受けたい場合は、連絡先を伝えておくことが望ましいです。

会社が調査してくれない場合はどうしたらいい?

20日経過後に外部通報を検討する

書面で内部通報してから、20日を経過しても役務提供先から調査を行う旨の通知がない場合、または正当な理由なく調査を行わない場合は、外部(報道機関等)への通報も保護されます。

この規定は、企業に対して内部通報があった場合、速やかに対応するよう促す趣旨を含むものです。

なお、20日以内に対応しなければ、通報者は外部通報に踏み切る正当な理由を得たことになります。

そのため、企業としては、通報を受けたら速やかに受付通知を発出し、調査を実施する旨を通報者に伝えなければなりません。

まとめ

公益通報者保護法は、2025年の改正により、フリーランスへの保護拡大、通報妨害・探索行為の禁止、刑事罰の新設など、通報者保護が大幅に強化されました。

企業にとって公益通報は「裏切り」ではなく、「不正を早期に発見し組織を守る貴重な機会」と捉えましょう。

改正法の施行までに企業が取り組むべき準備としては、まず内部通報制度の整備と全従業員への周知が挙げられます。

次に、フリーランスを含む業務委託先も対象とした社内規程の見直しも必要です。

もちろん、通報者の保護を徹底し、それを実行する社内教育も欠かせません。

こうした取り組みを通じて、通報者を守る企業文化を育むことが、企業の価値向上につながります。

弁護士

足立高志 弁護士

大本総合法律事務所
〒100-0004
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大手町パークビルディング8階
tel 03-5224-4555
fax 03-5224-4556
mail adachi@omoto.top

【経歴】
中央大学法学部卒
2007年弁護士登録

中小企業から個人の方まで幅広く対応しております。過去は変えられませんが、より良い未来となるよう、手助けができればと思っています。

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