レピュテーションリスクとは?原因やリスク回避方法を具体例をもとに徹底解説

レピュテーションとは「評判」を意味し、評判低下により企業が損失を被るリスクをレピュテーションリスクと言います。

インターネット・SNSの普及などを背景に、レピュテーションリスクへの注目が高まっています。

この記事では、レピュテーションリスクの意味や種類、原因、対策、損失回避方法などについて、わかりやすくかみ砕いて、徹底的に解説します。

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目次

レピュテーションリスクとは

まずはレピュテーションリスクの基本的な意味を確認し、レピュテーションリスクが注目されるようになった背景を考えてみましょう。

レピュテーションリスクの意味

レピュテーションリスクは、英語のレピュテーション(reputation)リスク(risk)を合わせた言葉です。

日本語に訳すと以下のようになります。

 対応する日本語
レピュテーション   reputation評判、世評
リスク   risk①何かよくないこと(損失を与えるようなこと)が起こる可能性、危険、恐れ
②よくない結果(損失)を生む可能性のある行為や出来事
レピュテーションリスク
reputation risk
①評判低下により損失が発生する可能性、危険、恐れ
②評判を落とし、損失を生む可能性のある行為や出来事

例えば、企業が法令違反を犯したり従業員が不祥事を起こしたりした場合、それが内部告発や報道によって世間に広まり、企業の評判に傷がついて、業績悪化につながることがあります。

したがって、法令違反や不祥事には「評判低下・損失を生む可能性=レピュテーションリスク(①の意味)」があります。

また、法令違反や不祥事は「評判低下・損失を生む可能性のある行為=レピュテーションリスク(②の意味)」です。

日本語(とくに日常語)では、主に①の意味で「リスク」という言葉を使います。

例えば、「従業員によるSNSへの不用意な投稿はレピュテーションリスクが高い」といった使い方をします。

レピュテーションリスクはレピュテーショナルリスク(reputational risk)とも呼ばれます。

「レピュテーショナル」は「評判・世評に関する」という意味です。

一見似た言葉に、オペレーショナルリスク(operational risk)があります。

これは「企業の運営(オペレーション)に関するリスク」を意味し、人為的なミスやシステム障害、サイバー攻撃、内部の不正行為、法的トラブル、人材流出、災害など、非常に幅広いリスクを含みます。

レピュテーションリスクもオペレーショナルリスクのひとつとされることがあります。

レピュテーションリスクが注目される背景

レピュテーションリスクが注目されるようになった最大の要因は、情報化の進展です。

テレビなどのマスメディアに加えてインターネットやSNSが発達し、企業の評判やイメージがビジネスを大きく左右するようになりました。

企業は各種のメディアを通して評判・イメージを高め、ブランドを確立してビジネスを有利に展開することができるようになりましたが、その反面、不祥事が外部に漏れて悪評が一気に拡散したり、事実と異なる情報で評判低下(風評被害)を被ったりするリスクにさらさられるようになりました。

そうしたことから、レピュテーションリスクの重要性が高まり、レピュテーションを大きく低下させる事件の報道などを通して多くの企業がレピュテーションリスクに注目するようになったのです。

レピュテーションリスクの種類

レピュテーションリスクは、レピュテーションの種類とリスクの種類により分類できます。

レピュテーションの種類

企業のレピュテーションを高める要因には以下のようなものがあります。

以下と逆の要因が存在する場合はレピュテーションが低くなりがちです。

分野レピュテーションを高める要因
製品・サービス価格に見合った品質、性能やホスピタリティの高さ、トレンド性、認知度の高さ
顧客対応アフターサービス・保証の質の高さ、問題・クレームへの対応の誠実さ
職場・作業環境待遇の公平さ、従業員の能力やモチベーションの高さ、安全面や衛生面の管理の十分さ
ガバナンス・社会的責任法令遵守、取引の公正さ、環境や地域社会に対する責任感の高さ
リーダーシップ・戦略卓越したリーダーの存在、経営ビジョンや戦略の明確さ・革新性
業績・財務業績・収益力・将来性の高さ、投資する立場から見た信用力の高さ(投資リスクの低さ)

レピュテーション低下につながるリスクの種類

レピュテーションに関わるリスクは以下の3種類に分けられます。

  1. 不祥事などによってレピュテーション低下・損失が生じるリスク
  2. 不祥事などへの対応のまずさからレピュテーション低下・損失が生じるリスク
  3. 風評や理不尽なクレームによりレピュテーション低下・損失が生じるリスク

①は不適切な行為やミスによって直接的に生じる評判低下のリスクです。

例えば、製品への異物混入や、役員・管理職によるセクハラ・パワハラが明るみに出て評判が低下する場合です。

②はそうした不祥事が明るみに出たときに、企業がそれを隠蔽しようとしたり、事態を軽視したりすることによって、さらなる評判低下が起こるリスクです。

対応のまずさが火に油を注ぎ「炎上」にいたる例は少なくありません。

③は基本的には企業側に責任のないリスクです。

ただし、風評やクレームへの対応を誤ると②のレピュテーションリスクが現実化して損失につながる場合があります。

また、過去の事件などで企業のレピュテーションが低下していると、根拠のない悪評であっても拡散しやすくなります

レピュテーションリスクから生じる損失の種類

リスクが現実化してレピュテーション低下が起こった場合、企業に以下のような損失が生じます。

  • 収益低下
  • 対応コストによる損失
  • 離職・採用難による損失

収益低下

レピュテーションが低下すると、商品・サービスの売れ行きが悪くなったり、これまで継続的に利用してくれていた消費者が離れてしまったりすることがあります。

これにより黒字から大幅な赤字に転じたり、事業縮小(店舗閉鎖など)を余儀なくされたり、最終的に倒産にいたったりする例もあります。

対応コストによる損失

レピュテーションが低下するような事態が起こった場合、放置するとさらなるレピュテーション低下を生み、いっそう事態が悪くなります。

そのため、企業は事態収拾に向けて以下のような対応をとる必要があり、そのコストが損失となります。

  • 事実確認と原因究明
  • 事実関係と謝罪の公表
  • 商品回収
  • 生産ラインや業務フローの改善
  • 不祥事を起こした役員・従業員に対する処分・法的措置
  • 専門家によるコンプライアンス(法令遵守状況)のチェック
  • 風評や中傷の発信者に対する法的措置、ネット上の書き込みに関する情報開示・削除請求
  • レピュテーション回復に向けた広報活動
  • 再発防止策の設定と公表

離職・採用難による損失

レピュテーション低下そのものや、それによって業績や将来性が下がったことが原因で、従業員が離職してしまったり、新しい人材を採用しにくくなったりすることがあります。

レピュテーション低下の原因となる出来事

レピュテーション(評判)のあるところにはレピュテーションリスク(評判を失うリスク)もあります。

先ほど挙げたレピュテーションの分類に沿ってレピュテーション低下の原因・事例を整理すると、以下のようになります。

分野レピュテーション低下の原因・事例
製品・サービス製品の欠陥や異物混入 広告の内容から乖離した品質 店員の横暴な対応、強引な契約誘導 SNSなどで発信される個人的な低評価レビュー
顧客対応正当なクレームに対する不誠実な対応 アフターサービスの保証を受けさせまいとするような対応 顧客対応スタッフによる暴言
職場・作業環境仕事の内容に見合わない待遇 男女差別や個人差別 許容範囲を超えた不衛生な作業環境 従業員による軽率なSNS投稿(アルバイト店員の悪ふざけなど)
ガバナンス・社会的責任不正会計 個人情報流出 パワハラ・過労死、海外の拠点・協力工場での労働搾取 セクハラ 役員がプライベートで起こした事件 産地・成分・賞味期限の偽造 無許可営業 環境汚染 詐欺的な営業 悪評のある組織との取引
リーダーシップ・戦略経営者や役員による差別発言 事業承継をめぐるお家騒動 時代遅れのビジョン・戦略の公表
業績・財務業績や資金繰りの明白な悪化 高成長企業の成長減速

レピュテーションリスクの事例紹介

リスクと黒背景

事例1 アルバイト店員が不適切行為の写真をネットにUP

2013年8月にピザ宅配事業のフランチャイズ1店舗内でアルバイト店員が不適切な写真を撮影・ネットにUPしたことにより発生した騒動。

上の表でいうと職場・作業環境の「従業員による軽率なSNS投稿(アルバイト店員の悪ふざけなど)」にあたります。

この炎上事件に対し、運営するフランチャイザーが謝罪文を発表しましたが、レピュテーションが回復せず2015年10月ごろに事業停止、2016年8月に破産となりました。

参考記事

事例2 高級料亭の賞味期限・産地偽造

2007年に、賞味期限が切れたお菓子や産地偽装した肉などを調理・販売したことが発覚し、全店舗で営業を休止しました。

このことについて当初は「パート社員の独断で行われた」としていましたが、パートの女性たちが記者会見を開き「店長の指示だった」と語っています。

この件でレピュテーションは低下、さらに2008年には客の食べ残しの再提供が新たに発覚し、のちに開いた記者会見でもレピュテーションを回復することができず、2008年5月28日に廃業、そして破産となりました。

事例3 名菓の賞味期限の不正表示

迅速かつ誠実な対応によってレピュテーションが回復した例をご紹介します。

2007年8月に北海道名菓の賞味期限が改ざんされていることが発覚しました。

製造会社はすぐさま記者会見を行い経緯の説明・社長の退任を発表、また外部からのコンプライアンス委員会を発足するなど迅速な対応を行いました。

この結果、約3か月間の製造停止期間があったものの誠実な対応が評価され販売再開時には各店舗ともに即日完売となりました。

参考記事

レピュテーションリスクを下げる対策方法

レピュテーションリスクによる損失を回避・軽減するためには、自社にどんなリスクがあるのかを明確化した上で、リスク(危険性)を下げる対策をとるか、レピュテーション低下による損失を補填する手段を講じます。

リスクを下げる対策① 社内規定・業務ルールの整備

コンプライアンス研修やネットリテラシー教育などの従業員教育や労働環境の改善を図ることで、レピュテーションリスクを減らすことができます。

またデジタル・アナログに関わらず情報の取り扱い方法についての業務ルールを整備する等、経営陣の意識や組織風土、労働環境、社内教育体制、情報システムなどを変革することでよりリスクを下げることができます。

リスクを下げる対策② 評判が下がりにくい状態を作る

以下のような対策が有効です。

  • 日頃からレピュテーションの維持・向上に努め、消費者や従業員、取引先の信頼を厚くする
  • レピュテーションリスクが現実化したときのための対応マニュアルを定めておく
  • 不祥事が起きた場合には明確な再発防止策を定めて公表する

日頃からレピュテーションを高めることが大事だといっても、実態とかけ離れたレピュテーション(過大広告やステルスマーケティングで作られた高すぎるレピュテーション)はかえってレピュテーションリスクを高めます。

実態と評判がかけ離れているほど実態が露見しやすく、評判による期待が大きいだけに、露見したときの落差(損失)も大きくなります。

リスクを下げる対策③ サービスに関する情報をエゴサーチする

エゴサーチとは、自分自身や自分にかかわりのある会社・商品などについて世間からどのように思われているのかをネット検索することを指します。

自社製品や会社自体についてエゴサーチすることで、事実とは異なる情報や風評被害が書き込まれていないかを早い段階で知ることができ対策を講じることができます。

リスクを下げる対策④ 不祥事に対する処分内容を周知する

従業員に対し、抑止力として「不祥事を起こした場合にはこのような処分をします」というようなメッセージを周知することで、不祥事等の予防につなげることができます。

また、社外に向けて同様のメッセージを発信することで「不祥事を起こすことを許さない」という姿勢を見せることができ、レピュテーションを高めることができます。

損失を補填する手段

損害保険のなかには、レピュテーションを低下させる出来事が発生したときの対応コストなどを補償するものがあります。

また、法的措置が必要になる場合を想定して事業型の弁護士保険に加入しておくことも手段のひとつです。

まとめ

現代のビジネスはよくも悪くも評判(レピュテーション)に左右される部分が大きく、レピュテーションリスクはどんな企業においても軽視できません。

「レピュテーションリスクは問題のある従業員がたまたま引き起こすもの」などと軽く捉えずに、会社全体で対策を検討することが重要です。

あらかじめ弁護士保険へご加入いただき、様々なリスクに備えていただくことも良いかもしれません。

弁護士

木下慎也 弁護士

大阪弁護士会所属
弁護士法人ONE 代表弁護士
大阪市北区梅田1丁目1-3 大阪駅前第3ビル12階
06-4797-0905

弁護士として依頼者と十分に協議をしたうえで、可能な限り各人の希望、社会的立場、その依頼者らしい生き方などをしっかりと反映した柔軟な解決を図ることを心掛けている。

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