従業員から訴えられた!取るべき3つの対応策を解説

会社を経営する上では、さまざまなトラブルに遭遇することを避けることは、難しいものです。

なかでも、従業員とのトラブルは、他の社員に与える影響が大きく、会社のイメージを大きく損なう可能性があるトラブルといえます。

そのため、会社は、可能な限り早期に解決できるように、適切な対応策を講じる必要があります。

今回は、会社が従業員から訴えられたときに取るべき3つの対応策について、解説していきます。

目次

従業員から訴えられた!よくある4つのトラブル

不当解雇などの解雇トラブル

従業員側に勤務態度の悪さなどがあったとしても、会社が「解雇」を言い渡した場合には、トラブルに発展する可能性があります。

なぜなら、解雇によって従業員は、いきなり一方的に生活の糧を奪われるので、大きな不満をもつことになるためです。

日本では、解雇は厳しく制限されており、解雇が有効と判断されるためには厳格な要件を満たす必要があります。

しかし、企業の経営者であっても、解雇がどのような場合に認められるのかを正確に理解しないまま解雇を言い渡しているケースが少なくないため、従業員から訴えられるリスクがあります。

ハラスメントなどの人間関係のトラブル

会社は様々な人が働く場所である以上、ハラスメントなどを理由とした人間関係のトラブルが発生する可能性があります。

ハラスメントのトラブルにおいては、直接的な加害者だけでなく、会社にも使用者責任や債務不履行責任といった法的責任が問われる可能性もあります。

そのため、会社がハラスメントに対して適切な措置を講じていない場合には、従業員から訴えられるリスクがあります。

残業代請求などの賃金トラブル

勤怠管理が適切に行われていない会社では、従業員から未払いになっている残業代を請求され、トラブルになることがあります。

また、固定給に一定時間の残業代が含まれる「固定残業代」制度を採用している会社では、一定時間の残業を超えているのに適切に割増賃金が支払われていないケースも少なくないため、賃金トラブルが発生するリスクがあります。

ケガやうつ病などの労災事故トラブル

従業員が労働災害に遭った場合には、会社は、労災保険給付とは別に、労災補償責任や損害賠償責任を負わなければならないことがあります。

特に重度の後遺症がのこった場合やメンタルヘルスの悪化による死亡などの場合には、会社の負う責任が重くなり、会社のイメージも大きく損なわれる可能性があります。

従業員から訴えられたときの3つの対応策

従業員から訴えられたときには、主に次の3つの対応策をとるとよいでしょう。

従業員の請求内容を正確に把握する

会社は、従業員から直接訴えがあったり、内容証明郵便が届いたりすることによって、トラブルが発生していることを知ることになるでしょう。

従業員からの訴えがあったときには、不当な要求だと決めつけず、まずはどのような請求であっても、相手の請求内容を正確に把握する必要があります。

なぜなら、請求内容が分からなければ、解決するためにどのような方向で交渉すべきかが分からないためです。

たとえば従業員が不当解雇を訴えているのであれば、復職を求めているのか、それとも金銭的な解決を求めているのかを把握する必要があります。

事実関係の調査を行う

従業員の請求内容を把握した後には、従業員の上司や同僚などに話を聞いたり、勤怠管理を調査したりして、事実関係を確認する必要があります。

事実関係の調査にあたっては、客観的な証拠になりそうなものは収集しておき、後に争いになったときでも立証できるようにしておくことが望ましいといえます。

あっせん、労働審判、訴訟などにそなえて準備をする

労働者は、労働局にある総合労働相談コーナーなどに相談して、紛争調整委員会によるあっせんによる解決を図る可能性があります。

なお、あっせんは、労働問題の専門家が間に入って、当事者の話し合いによる自主的な解決を図るものです。

また、あっせんに限らず、労働者が裁判所に労働審判や不当解雇などを理由とする損害賠償請求の裁判を申し立てる可能性もあります。

会社側は、このようなあっせん、労働審判、訴訟になる可能性も視野に入れながら、譲歩できる部分を明確にして、書面作成や証拠の確保などの適切な準備を進めておくとよいでしょう。

従業員から訴えられたときにしてはいけない行動とは

反対に、会社が従業員から訴えられたときにしてはいけない行動があります。

それは、主に次のような行動です。

請求を無視する

従業員から訴えられた場合には、請求内容が荒唐無稽なものであったり、忙しくて対応に時間を割きたくなかったりしたときでも、請求を無視することは避けるべきです。

なぜなら請求を無視すれば、従業員の会社への不信感がつのり、交渉が難しくなる可能性があるためです。

あっせんや労働審判に出席しない

従業員があっせんや労働審判で解決を図ろうとしている場合には、会社側はできるだけ出席して最小限のダメージで済む解決策を模索する必要があります。

あっせんや労働審判に出席しなければ、従業員は裁判による最終的な解決を図る可能性があり、会社の対外的な信用やイメージが大きく傷つきかねません。

したがって、トラブルについて会社側に大きな非がある場合でも、あっせんや労働審判の機会を避けることなく、できるだけダメージを最小限に抑える形で早期解決を図ることが大切になります。

感情的になる

従業員からの訴えに対して会社側が感情的に対応することは、解決への道のりを困難なものにするだけです。

中小企業などでは社長と従業員の関係が近く、トラブルになれば、お互いに感情的になることも考えられます。

しかし事態を悪化させないためにも、冷静に対応し、弁護士などの専門家も同席して話し合うなど感情的な対応を避ける方法で進めるとよいでしょう。

当事者だけで強引に解決しようとする

従業員から訴えを受けた場合に、強引に当事者だけで解決を図ろうとすれば、より深刻なトラブルに発展しダメージを受けるリスクがあります。

たとえばパワハラを訴える社員に対して会社側が強引に解決しようとすれば、その話し合いの様子などを録音され、会社の対応が問題視されることも考えられます。

このような二次的なトラブルを生じさせないためにも、従業員から訴えられたときには、早い段階から弁護士に相談するなどの対応が必要になります。

従業員に訴えられないための予防策

最後に、会社が従業員に訴えられないための予防策について、みていきましょう。

社内の安全衛生管理を徹底する

従業員に労災事故の賠償責任を訴えられないための予防策としては、万全の安全衛生管理体制をとることがあげられます。

会社は、労働安全衛生法にもとづいた管理責任者の選任や委員会の組織化を適切に行い、安全衛生管理を徹底することによって、労災事故自体が起きにくい仕組みを作ることができます。

また安全衛生管理を徹底していれば、労災事故が発生してしまったときでも、安全配慮義務を果たしていると判断され、会社側の責任を軽減できる可能性があります。

相談窓口などの必要な体制を整える

近年、セクハラ・パワハラなどのハラスメントについて、相談窓口の設置などの必要な措置を講じることが会社の法律上の義務となりました。

会社は、ハラスメント対策に必要な措置を講じることによって、従業員が働きやすい環境作りにつなげることが従業員から訴えられないための予防策の一つになるといえるでしょう。

従業員への教育・周知徹底を行う

ハラスメントの防止は、会社だけでできるものではありません。

会社で働く従業員一人一人が正しい知識を持ち、実践することが防止につながります。

そのため会社としては、従業員にハラスメントについての教育を行い、ハラスメントに対しては厳しい姿勢で対応することなどを周知徹底する必要があります。

このような従業員への教育・周知徹底も、トラブルの予防策になります。

就業規則で細かい部分まで定める

たとえば懲戒処分については、就業規則のなかで処分の対象になる行為と処分の種類が具体的に定められていることが必要になります。

曖昧な規定や抽象的な規定については、従業員とのトラブルの種になることも考えられることから、就業規則で細かい部分についても明確に定めることが予防策になりえます。

労働時間の管理を徹底する

賃金トラブルを未然に防ぐためには、会社が労働時間を適切に管理することが大切なポイントになります。

サービス残業が常態化していたり、担当者に労働時間の知識が十分でなかったりすれば、従業員から未払い残業代の請求を受ける可能性は高くなります。

顧問弁護士などへの相談

従業員から訴えられないための予防策として効果的といえるのが、早期に弁護士などの専門家に相談することといえます。

専門家に相談すれば、会社の就業規則の見直しや安全衛生管理体制についてのアドバイス、労働時間の考え方などの法的知識を得られる可能性があるため、トラブルを予防できることにつながることでしょう。

まとめ

本記事では、会社が従業員から訴えられたときに取るべき3つの対応策について、解説していきました。

従業員から訴えられたときには、相手の請求内容を正確に把握した上で事実確認し、あっせんや審判になっても対応できるよう準備をしておくことが初動の対応策になります。

また早期に弁護士に相談することも、トラブルを深刻化させずに早期解決につなげる重要なポイントになります。

弁護士

木下慎也 弁護士

大阪弁護士会所属
弁護士法人ONE 代表弁護士
大阪市北区梅田1丁目1-3 大阪駅前第3ビル12階
06-4797-0905

弁護士として依頼者と十分に協議をしたうえで、可能な限り各人の希望、社会的立場、その依頼者らしい生き方などをしっかりと反映した柔軟な解決を図ることを心掛けている。

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