ネット炎上への正しい対応とは?企業ができるリスク回避方法

ネットが生活の一部として欠かせない現代においては、人気YouTuberや有名人などの炎上のニュースを聞かない日はないといっても過言ではありません。

炎上は、個人だけでなく、企業が対象になることもあります。

企業のネット炎上は、企業イメージの大幅な低下、取引先・顧客の信頼の失墜につながり、企業の存続さえも揺るがす事態に至る可能性もあります。

そのため、企業は、あらかじめ炎上のリスク回避のための対策を講じておき、万が一炎上したときでも被害を最小限に抑えるための正しい対応を知っておくことが大切になります。

本記事では、ネット炎上に対する企業の防衛策や対応策について、解説していきます。

目次

炎上はなぜ起こる?

炎上とは、インターネット上で批判や誹謗中傷のコメントが集中する事態をいいます。

企業の炎上は、さまざまなきっかけから生じる可能性がありますが、主なきっかけとしては次のようなものが挙げられます。

従業員のSNS

企業には、さまざまな従業員がおり、一人一人のSNSの利用について徹底して把握し監督することは難しいものです。

しかし、たとえば、飲食店の従業員が、来店した有名人の具体的な名前や様子などを個人アカウントで晒すなどということがあれば、炎上のきっかけになりえます。

商品やサービスが期待と異なる

企業の商品やサービスが消費者の期待と異なるような場合には、炎上のきっかけになる可能性があります。

実例として、「2万円のおせちが1万円に値下げ」と広告されていたため、お得に思い購入したところ、実際に届いたおせちは、2万円相当とは思えない品質・量であったことから炎上したケースがありました。

暴言や放言

企業の経営陣や従業員の暴言や放言も、炎上のきっかけになります。

企業のアカウントに、差別的な主張や偏った意見などを掲載すれば、当然、企業としての立場を問われるでしょう。

また、従業員の顧客に対して発した暴言などが投稿・拡散されたり、従業員が接客した有名人の容姿などを誹謗中傷する言葉をツイートしたりすれば、企業の炎上につながる可能性があります。

モラルの軽視など不祥事

権利侵害とまではいかなくてもモラルを軽視した結果、企業が炎上することがあります。

たとえば、著作権者不明の長年親しまれているキャラクターと酷似したキャラクターを使用した結果、炎上した企業もあります。

また、企業や従業員、役員に不祥事などがあれば、炎上のきっかけになります。

従業員などの悪ふざけ

一従業員が行った悪ふざけが、企業全体のイメージを大きく損なわせることもあります。

たとえば、飲食店のアルバイト店員が、食べ物を不衛生に扱うなど悪ふざけをした動画を投稿したことがきっかけとなり炎上するケースなどが発生しています。

SNS・ネット炎上の事例

事例1

大手飲料メーカーの投稿イラストが「女性蔑視」と炎上

炎上発生時期:2018年5月ごろ

概要: 大手飲料メーカーの公式アカウントが、自社商品を持った女性のイラスト複数枚をSNSに投稿したところ、「女性蔑視ではないか」と批判を集め炎上。
イラストの内容は「周りにいそうな○○(商品名)女子」と称した女性がしゃべりそうなセリフや特徴を書いたもので、人によっては女性を揶揄するような内容とも受け取れるものでした。
大手飲料メーカーはこのイラストの投稿から数日後、問題の投稿を削除・謝罪文を改めて投稿しています。

事例2

大手WEBサービス企業の医療・健康情報サイトが誤情報記事を掲載し炎上

炎上発生時期:2016年11月ごろ

概要: WEB系サービスを運営する有名企業が新たに作成した、ヘルスケア情報を発信するWEBサイト内で、掲載記事に誤情報が含まれていることが発覚し炎上しました。
大手WEBサービス企業はこの批判を受け、WEBサイトに掲載されている全記事をすべて非公開にし、専門家への記事確認・通報フォームの設置に関する発表を行いました。

事例3

ITコンサルティングの人事担当者によるSNS投稿コメントが物議を醸し炎上

炎上発生時期:2022年1月ごろ

概要: ITコンサルティングなどの事業を展開する企業の人事担当者が「会社の顔である人事だからこそ、給与や待遇などにこだわりがある人とは一緒に働きたくない」といった内容の投稿をし、物議を醸した末に炎上へ発展したケース。
この投稿内容について擁護するコメントもある一方で、「ブラック企業のような考えだ」など批判する声が多数を占める結果となり、騒動後に同人事担当者は「個人の意見であり、それぞれの価値観が正解である」という内容の釈明をしています。

事例4

大手お菓子メーカーのSNSキャンペーンの抽選方法に不正があったとして炎上

炎上発生時期:2020年11月ごろ

概要: 大手お菓子メーカーが展開する人気アイスのキャンペーンについて、当初は「抽選でプレゼント」と告知していましたが抽選結果から実際の選定方法が異なっていることが判明し炎上。
ユーザーからの指摘で発覚したこともあり多くの批判が寄せられましたが、大手メーカーの公式アカウントにて謝罪・過去キャンペーンも含め再抽選が行われ、騒動から約40日後に収束しました。

炎上に誤った対応をしたケース

炎上した場合には、「企業がどのような対応をしたのか」によって、明暗が大きく分かれます。

もし炎上に対して誤った対応をすれば鎮火できず、さらなる炎上を招きかねないので、注意が必要です。

参考までに、炎上に対して誤った対応をした2つのケースをみていきましょう。

批判を放置しつづけたケース

ある新聞社における日本の社会や風俗の一旦を面白おかしく紹介する英文サイトが、あまりに低俗な内容を掲載していることが問題視され、ネットが炎上するといった事件がありました。

しかし新聞社は、批判の声が届いているにも関わらず、無視しつづけ根本的な対策を取りませんできた。

そのため、批判は長期化し、サイトの広告主にも向けられ広告がストップする事態になりました。

企業側の説明が上から目線であったケース

音楽映像関連の事業を行う企業が、あるネット掲示板で長年親しまれていた著作権者不明のキャラクターに一部改変を加えたキャラクターをCDの特典映像に収録したことによって、炎上した事件がありました。

企業側は、ネット掲示板利用者の抗議に対して、二次的著作物であることを認めましたが、同時に「著作物のもとになったキャラクターの使用を制限するつもりはない」と説明しました。

まるで企業側に制限の権限があるかのような説明に対し、上から目線であるとして反発が起こり、さらに炎上を招く結果となりました。

SNS・ネット炎上が発生したときに取るべき企業の対応策とは

では、炎上に対して企業は、どのような対応策をとれば良いのでしょうか。

事実関係を確認する

炎上を把握した場合、まずは、炎上の原因についての事実関係を確認して、整理する必要があります。

炎上への対応では、初動対応の早さが重要なポイントになりますが、その前提として事実関係をできるだけ正確に把握しておかなければならないためです。

早期に会社の見解を公表する

事実関係の確認がある程度できたら、事実をもとにした会社の見解を情報発信していきます。

十分な事実確認ができていなかったとしても、現時点で把握できている事実を公表することによって、情報不足による憶測が減り、さらなる炎上を防げる可能性があります。

謝罪すべきケースでは早期に謝罪する

事実関係が明らかで企業に非があることが分かっている場合には、早期に謝罪し情報発信していく必要があります。

情報発信の方法としては、自社のホームページの見やすい部分にお詫びを載せたり、プレスリリースを使用したりすることによって謝意を伝えることができます。

再発防止策などを明らかにする

謝罪すべきケースでは、謝意を伝えるとともに、今後どのようにして再発を防止していくかについても検討する必要があります。

そして、社員教育を徹底する、衛生管理を徹底する、など再発防止に向けた企業の考え方を世間に示す必要があります。

炎上した事実に誠実に向き合う姿勢を示す

事実関係が明らかでなく、自社に非があるかどうかが分からない場合でも、世間を騒がせてしまったことに対する道義的・社会的な謝罪を検討するとよいでしょう。

道義的・社会的な意味の謝罪をしたからといって、法的な責任を認めたということにはなりません。

炎上した事実に対して、企業として誠実に向き合う姿勢があることを示すことは大切です。

誹謗中傷であれば法的な措置も検討する

炎上の原因が全くの事実無根な書き込みであったような場合には、企業は毅然とした態度をとり、発信者情報開示請求手続きなどの法的な対応策も検討する必要があるでしょう。

炎上対応における注意点

企業の炎上が個人アカウントによるものであれば、アカウントを早急に削除した方がよいケースが少なくありません。

しかし企業の公式アカウントが炎上の原因を作った場合には、アカウントの削除は、逆効果になりかねません。

その場合には、事実確認できた情報を発信していくなど誠実に向き合う姿勢を示す場として、公式アカウントを活用していくことを検討するとよいでしょう。

また、炎上対応においては、自社だけでなく外部の弁護士に相談するなど、客観的な第三者の視点からのアドバイスを取り入れることも大切です。

企業がとるべき炎上に対する予防策とは

炎上のきっかけは至るところにあり、どの企業にとっても他人事ではありません。

企業は、炎上に対してどのような防衛策をとることができるのでしょうか。

従業員教育を徹底する

炎上の原因は、従業員の書き込みによるものであることも少なくありません。

そういった事態を引き起こすことのないように、企業として炎上の恐ろしさや影響力などについて、日頃から研修などで従業員に教育しておくことは大切です。

過去の炎上事件などを取り上げて、どのような書き込みや行為が炎上につながるのか、そして炎上によって企業・従業員がどうなるのかを考える機会を設けることも、従業員が自分自身の問題として捉えることにつながるので、炎上に対する効果的な防衛策になることでしょう。

顧客対応マニュアルを整備する

従業員の顧客に対する対応が炎上の原因になるケースもあります。

従業員の顧客への対応が不十分であったり、不快な気持ちにさせるものであったりすれば、炎上のリスクを高めることになります。

そのため、顧客対応マニュアルを整備して、それぞれの従業員が実践できるようにしておくことが炎上への防衛策となります。

就業規則やソーシャルメディアガイドラインの整備

個々の従業員のSNS利用に関して、企業として就業規則に特別な規定を設けることは必須ではありません。

しかし、「従業員のSNSで一定の不適切な発信があった場合には、懲戒処分を行う」旨の規定を設けることも一つの選択肢になります。

なお、就業規則で規定を設けるためには、従業員側の過半数代表の意見聴取や労働基準監督署への届出、従業員への周知徹底などの手続きが必要です。

就業規則に準じるものを作成する場合には、ソーシャルメディアガイドラインを作成しておくことがおすすめです。

ガイドラインには、リスク予防と炎上した場合の対応を定めておくとよいでしょう。

まとめ

本記事では、ネット炎上に対する企業の防衛策や対応策について、解説していきました。

炎上は、企業に深刻なダメージを与えます。

しかし、その後の対応次第では、被害を最小限に抑えるだけでなく企業のイメージを好転させられる可能性もあります。

炎上の事実に誠実に向き合う姿勢を示し、非があるときには早期に謝罪して再発防止策を検討すべきです。

炎上を無視し続けたり、他者に責任転嫁したりすれば、さらなる深刻なダメージを受けるリスクがあります。

炎上を未然に防ぐためには、外部の弁護士などにも相談しながら、ガイドラインを作成するなどの対策を検討するとよいでしょう。

弁 護 士
佐々木将司弁護士

佐々木将司 弁護士

大阪弁護士会所属


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