内容証明郵便は受取拒否できるの?無視した場合に不利になるの?

家にいると玄関のチャイムがなり、郵便局の配達員さんから「内容証明郵便」と書いてある封書を渡された。

見慣れない「内容証明郵便」を受け取るあなたは、驚きとともに不安に感じたのではないでしょうか。

急に届けられた身の覚えのない内容証明郵便なんか受け取りたくない、無視しておこうと考える方もいるのではないでしょうか。

そこで本記事は、内容証明郵便を無視していいケース・ダメなケースを解説します。【弁護士監修記事】

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目次

内容証明郵便はどんな目的で送られるのか

内容証明郵便とは「いつ(日時)、誰が(差出人)、誰に(宛先)、どんな文書を送ったか(内容)」を郵便局が証明する郵便物のことです。

内容証明郵便は受け取った日時等の履歴を確認でき、かつその中身がどんなものであったかも証明されるため裁判上の証拠能力があります。

通常の郵便と違い受け取った人が「そんな郵便は届いていない」「そんな内容は書いていなかった」等の言い逃れができなくなります。

そのため、差出人が「自分の意思を相手に伝えた」という事実を証明したい場合に用いられます。

送った日付や受取人が受け取った日付が重要になるケースとして、クーリングオフや契約の解除通知、金銭の請求、債権譲渡や時効の中断等がそれにあたります。

また、通常の郵便と違ってポスト投函ではなく配達員が直接手渡しを行い、受領の際に押印(サイン)が求められます。

文書の最後に「この郵便物は令和○○年○月○日、第×××××号 書留内容証明郵便物として差し出したことを証明します。 郵便事業株式会社」

と押印されており、通常の郵便よりはるかに格式張ったものになっているため、受け取った側に「重大な事態になっているのではないか」という心理的プレッシャーを与える目的でも利用されます。

内容証明郵便に法的効力や強制力はあるのか

内容証明郵便はあくまで「どんな内容の文書が送られたか」を証明するものであり、その内容の正確性・正当性を証明するものではありません。

例えば、「○月○日までに○○○円を支払って欲しい」という旨の内容が記載されてあったとして、それを無視したからといって直ちに差し押さえといった事態にはなりません。

※ただし、多くの場合内容証明郵便で送られる書類は事前に吟味され、虚偽の記載がないように注意を払って作成されるため、内容証明郵便で送られた文書の内容が事実と全く異なるデタラメというケースは多くはありません。

内容証明郵便の法的効力は「裁判上の証拠能力がある」という点です。

「いつ、誰が、誰に、どのような内容の意思表示を行なったか」ということが、送った日時、受取人が受け取ったまたは受け取りを拒否した日時とあわせて全て証明できます。

内容証明郵便が送られてきたということは、差出人が後々裁判で争う際の証拠を残したいという意思の表れであり、何かしらの法的措置を準備しているということです。

身に覚えがない内容証明郵便は受取拒否できる?

内容証明郵便は、配達員が直接受取人本人に受領印か署名をもらった上で手渡す決まりになっているため、受取人が「自分宛ではない」「サインはしない」と言って受取を拒否することが可能です。

この場合、配達員は郵便物を持ち帰り差出人へと返送します。

その際に「○月○日受取を拒否」という旨の記録が残されます。

また、受取人が居留守を使っても配達員が勝手にポストに内容証明郵便を投函することはできないため、不在通知がポストに投函されることになります。

その後7日間郵便局に保管され、受取人からの再配達の依頼がなければ差出人に返送されます。

しかし、身に覚えがないからといって受け取りを拒否すると思わぬ事態に発展する可能性があります。

内容証明郵便は受取拒否したらどうなる?

先述の通り、受取拒否をした場合は差出人へ返送され、受取拒否の記録が残ります。

しかし、受取拒否に関しての記録はただその事実が記録として残るだけで「受取人が身に覚えのない差出人と申し出たため」といった受取拒否の理由は記録されません。

例えば、借金をしていてその督促で送られてきた場合、差出人(債権者)は回収代行業者や弁護士に書類作成を依頼することもあります。 
差出人が会社名や弁護士名になっていると、債権者の名前ではない=身に覚えのない差出人だと誤った判断してしまう可能性も。

差出人側(債権者)には督促行為を行なっていたという記録が残り、督促があったにもかかわらず受取人(債務者)が無視し続けたとなると、強制執行等の手続きが取られてしまう可能性があります。

内容証明郵便は受け取らないとどういった内容の文書が入っているかはわからないので、自分が知らない間に事態が悪い方向に進むリスクを無くす意味でも内容証明郵便は受け取った方がよいでしょう。

先程の借金の例でいえば、返済が苦しくても連絡が正常に取れる状態と債権者に認識されていれば、交渉によっては返済期日が延長される可能性もあります。

無視し続けた場合は債権者の心証が悪くなる上に訴訟提起などの行動に出られる可能性が高くなり、期限の延長といった対応などに応じてくれない可能性が高まります。

内容がデタラメの場合は無視してもいいの?

近年は架空請求詐欺のような悪質な詐欺にも内容証明郵便が利用されるケースもあり、内容が明らかに事実と異なるとわかる場合は無視しても法律上不利益を被る可能性は高くありません。

しかし、自分が把握していないだけで、内容証明郵便に記載されている内容が事実である可能性もあります。

その場合、無視したという事実だけが残り、後々不利になる可能性が高くなります。

内容証明郵便の内容が不当なものであれば、仮に訴訟を起こされたとしても裁判所が認める可能性は低いため、詐欺のような明らかに不当な内容であれば無視しても構いません。

(※ただし、後々差出人が訴訟を起こした場合、裁判所からの通知は絶対に無視してはいけません)

逆に言うと、明らかに不当といえない内容であれば不利益を被る可能性があるため、弁護士に相談し、どういった手続きをとるべきかを相談しましょう。

また、返事をするにしても、自分で返事をするというのが一番リスクの高い選択肢になります。

例えば、契約書なしで100万円を借金していて、「500万円の返済を請求する」という文書が届いた場合に、「500万円も借金していない。自分が借りたのは100万円だ」という返事をすれば、
結果的に、100万円の借金を本人が認めているという証拠になってしまいます。

内容が不当か否かは非常に判断が難しく、受取人側が不当だと思っても差出人側からしてみれば正当であることは少なくありません。

不当な内容に対しては逆に「内容が不当」あるいは「内容が理解できない」という旨の内容証明郵便を返信することで、その時点での認識を証拠として残すこともできます。

いずれにしても、弁護士に相談の上で内容が不当であるか、差出人に対して返信をするべきかといった行動を起こしておいた方が後々大きなトラブルに巻き込まれるリスクは減るでしょう。

内容が事実である場合の必要な対応

通常の郵便ではなく内容証明郵便で送ってきたということは、差出人はこの書面を証拠とする意思があると考えられます。

つまり、後々の法的手段のための一手を打ってきた状態であり、受け取った側もなるべく早く手を打つ必要があります。

弁護士名等で送られてきた場合は、差出人が弁護士に依頼し法律に基づいて行動しているので、迂闊な対応を取ると差出人が望む通りに話が進むことになります。

借金の督促等、金銭が絡む問題の場合であれば、借り手側に連絡がつく状態とそうでない状態では印象が全く異なり、債権者の対応もそれに伴って変わってきます。

しかし、先述の通り、下手に回答してしまうとその回答を証拠として取られることになり、不利益が大きくなる可能性があります、電話で急ぎの確認をしたとしても、相手方が録音している可能性が高いため、弁護士に相談する前にすぐに相手と連絡を取るのは得策ではありません。

訴訟を起こされ、それを放置してしまうと相手方の主張をすべて認めたとみなされるため、差出人の言い分が全て通る形で判決がなされます。

差出人の言い分が100%全てではないにしろ、一部でも事実があれば早めに弁護士に相談し、訴訟に持っていかれる前の解決を目指しましょう。

必ず返信しないといけないケース、不利になるケース

何かしらの返答を求められている場合は、無視すると不利益を被る可能性が高い内容証明郵便で送られてくるものの多くは、受取人に対して何かしらを請求することがほとんどですが、中には返答を求めてくるものがあります。

これに関して、返答しないということが意思表示とみなされるケースがあるため、

文中に返答を求めるあるいは「返答がなければ〇〇」といった文がある場合は必ず返答しましょう。

例)契約を解除するか否か

受取人が何らかの理由で契約を解除できる状態にあるにもかかわらず解除しないままの時に、契約の相手方から契約を解除するか否かの判断を求める内容証明郵便が届くケース。

「○○年○月○日までに契約を解除するか否かの連絡を求める」といった旨の内容が届き、これに返答しないままであれば、その日付以降、受取人はその契約を解除することができなくなってしまいます。

(民法547条 催告による解除権の消滅)

例)商取引の通知

受取人が商人であり、受取人が通常取り扱っている商品について「○○について、○○円での購入を申し込みます」等の取引の申し込みが内容証明郵便で送られてきたケース。

受取人がこれに対して特に返答がなければ、その申し込みを承認したとみなされ、その取引(差出人の条件)が成立します。

(商法509条 契約の申込みを受けた者の諾否通知義務)

例)相続を受けるか否かの通知

内容証明郵便の受取人が、遺言により相続財産の受取人となっている場合に、関係者からその遺言を受けるか放棄するかの返答を求められるケース。

「〇〇年○月○日までに遺言を承諾するか放棄するかの返答を求める」という旨の内容が通知され、

これに対して返答がない場合は相続を承諾したとみなされます。

(民法987条 受遺者に対する遺贈の承認又は放棄の催告)

まずは弁護士に相談しよう

「内容証明郵便を無視するという選択は可能だが、リスクが大きい」ということがここまでの解説でお分かりいただけたと思います。

自分にとって不当と思える内容でも、相手方にとっては正当であり、それが法律的に見ても妥当という可能性は大いにあります。

繰り返しますが、内容証明郵便を出すという時点で、差出人は法律的手段に出る意向があり、その書面を証拠とする意図があります。

弁護士に相談の上で作成された可能性は高く、場合によっては依頼済みで弁護士を代理人としています。

法律のプロに対抗できる手段は、こちら法律のプロに頼るということです。

特に、金銭問題の場合は迂闊な対応によって窮地に立たされることもあります。

まずは相談してみて、どこまで弁護士の力が必要か、どうすればより良い結果に着地できるかを慎重に検討しましょう。

内容証明郵便を送ったが受取拒否、無視された場合の正しい対応方法

内容証明郵便を送った側の人はどういった対応をとるべきでしょうか。

この項では内容証明を送ったが受取拒否・無視されたという人に向けて解説します。

内容証明を受取拒否・無視されたからといって特別に何か不都合があるわけではありません。

受取拒否・無視されたのであれば、その事実は送った側の証拠として残ります。

あとは粛々と手続きをしていくだけでも問題ありません。

ただし、トラブルが想定されるような相手の場合は、一度再送して相手方が理性的に対応できるよう努めた方が良いでしょう。

弁護士名義で再送

差出人を個人名で送っていたのであれば、弁護士に依頼し、改めて弁護士名で内容証明郵便を送ります。

受取人に対してより強く重要性を示すことができ、法的手段が視野に入っていると伝わりますので、それだけで受取人の態度が変わり、返答の連絡もより可能性が高くなります。

債権回収に関わる場合

支払督促

相手方の住所の管轄の簡易裁判所に申立をすることで裁判所から債務者に督促をしてもらうことができます。

債務者が支払督促を受け取ってから2週間以内に異議申し立てがなければ、債権者は裁判所に対して強制執行の申立をすることができます。

債務者から異議が出ると通常の訴訟に移行することになります。

少額訴訟

60万円以下の金銭の支払いを求める場合に限り利用できる、原則として1回の審理で判決をする訴訟手続です。

簡易的な手続きとはいえ訴訟であることには変わりないので十分な証拠を用意しておく必要があります。

ただし、少額訴訟は債務者(訴訟をおこされた側)が審理を拒否することができるため、異議申し立てが行われた場合は通常の訴訟に移行することになります。

支払督促も少額訴訟も相手方に弁護士がついていないまたは異議が出る見込みがない時に利用したほうがよいでしょう。

民事訴訟

通常の訴訟(裁判)です。

相手方に弁護士がついている場合は最初から民事訴訟の方向で話が進むでしょう。

とはいっても実際は裁判に行く前に和解に応じるケースが多く、早期に解決できる可能性が十分にあります。

最後まで争い判決が確定したあとは判決に基づいて強制執行が可能です。

強制執行

上記の支払督促や少額訴訟、民事訴訟が終わった後に強制執行が可能になります。

強制執行により差し押さえられるだけの財産を債務者が持っていなかったり、差し押さえられる前に資産を移動・処分されたりしないように、仮差押さえの手続きをするのが通常です。

和解

訴訟に発展する前または訴訟中に債務者との和解もひとつの選択肢です。

和解の条件は双方で話し合い、公正証書にして残しておきましょう。

公正証書には裁判の確定判決と同じ効果があるため、和解条件を債務者が破った場合等、万が一のときに強制執行が可能です。

内容証明郵便を利用することで、債務者に対して事態の重要性をよりわかりやすく認識させることができるため、それ以降債務者が支払いに応じる可能性は高くなります。

また、弁護士に依頼することで債務者へのインパクトはより大きくなるので、債権回収には効果的といえるでしょう。

円滑な債権回収のために弁護士に相談してみましょう。

今後の様々なリスクに備え、弁護士保険にご加入いただくこともオススメします。

弁護士

畝岡 遼太郎 弁護士

大阪弁護士会所属

 

西村隆志法律事務所

大阪市北区西天満2丁目6番8号 堂島ビルヂング501号
TEL:06-6367-5454

ひとりひとりに真摯に向き合い、事件解決に向け取り組んでます。気軽にご相談が聞けて、迅速に対応できる弁護士であり続けたいと考えております。 

※事前予約いただければ平日夜間や土日にも対応可能です。

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