
売掛金の回収で内容証明郵便を送ったのに、返事がまったくない…

賃料の支払いを催促したが、音沙汰がない…

契約違反を指摘したが、相手がだんまりを決め込んでいる…
内容証明郵便は確実に相手に通知を届けられる有効な手段ですが、いざ送ってみても「返事がこない」「無視されている」という状況に陥ったとき、『次にどうすればよいのか?』『このまま泣き寝入りするしかないのか?』と途方に暮れてしまう方も多いでしょう。
内容証明郵便に返事がない場合でも、再送付や直接交渉、法的手続きなど複数の対処法があります。
相手が無視する理由を分析し、適切な次の手を打つことで、問題解決への道筋を見つけることができます。
本記事では、内容証明郵便に返事がない場合の具体的な対処法や相手の心理、効果的なアプローチ方法について、詳しく解説していきます。
記事に入る前に・・・
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内容証明郵便とは

内容証明郵便とは、「誰がどういった内容の郵便を誰にいつ送ったのか」を日本郵便株式会社が証明してくれる特殊な郵便です。
普通郵便では「受け取っていない」と言われればそれまでですし、書留郵便でも配達の記録は残るものの内容までは記録されません。内容証明郵便であれば、この2つのリスクをどちらも避けられます。
ただし、内容証明郵便そのものに、相手方に返事をさせる法的な強制力はありません。返事がないこと自体は、想定しておくべき事態の一つです。
なぜ返事が来ないのか|相手が動かない4つの理由

内容証明郵便は、相手方に心理的なプレッシャーを与えることが期待できる手段ですが、相手からアクションがないことも珍しいことではありません。
内容証明郵便を無視する相手方の心理としては、どのようなものが考えられるのでしょうか。
内容に覚えがない
内容証明郵便に相手方から何のアクションもない場合、相手方は、記載されている内容に覚えがないため、そのまま放置しておいてよいと思っているのかもしれません。
何度も借金を繰り返しているような場合に、借りたこと自体を忘れたり、返したと思い込んでいたりするような借主もいます。
このような場合には、内容証明郵便に記載されている内容に覚えがなく、言いがかりだと捉えて無視している可能性があります。
この場合は、請求の根拠となる契約書や取引履歴を示したうえで、2通目を送ることが有効です。
内容を軽くみている
相手方が、内容証明郵便に記載された内容を単なる脅し文句であると思っていることも考えられます。
実際に記載された内容は事実ではあるものの、「それほど大きな問題にはならないことを、差出人が一方的に大きく騒いでいるだけだ」などと内容を軽くみており、対応の必要性をそれほど感じていないということも考えられます。
この場合は、次に取る手続きの名称を明示した2通目を送ることで、相手方の受け止め方が変わることがあります。
内容に不都合がある
記載された内容が、相手方にとって不都合があり回答期限までに実現できないようなケースでも、内容証明郵便が無視される可能性があります。
たとえば、「期限までに○○円を返済してほしい」と請求する内容に対して、お金を準備することができないため、返事もせずにそのままにしてしまうといったことが考えられます。
この場合は、分割払いなど相手方が応じられる条件を提示したほうが、回収できる可能性は高くなります。
単純に届いたことを忘れている
内容証明郵便は、心理的なプレッシャーを与えるため、受け取った相手方は、不安や焦りに駆られ、何らかのアクションを起こすことが少なくありません。
しかし、さまざまな所からお金を借りていて内容証明郵便が数か所から送付されてきていたり、内容証明郵便を受け取る機会が多かったりするような相手方であれば、内容証明郵便が届いていること自体を忘れてしまっている可能性も考えられます。
この場合は、まず郵便追跡で本当に受け取られているかを確認してください。
内容証明を送った後の流れ|いつ、何をするか
内容証明郵便を送った後は、やみくもに連絡を取り続けるよりも、決まった順序で確認と対応を進めたほうが結果的に早く解決します。ここでは、差し出してから法的手続きを検討するまでの流れを、時系列で整理します。
まず「相手に届いたか」を確認する
返事がないときにまず確認すべきなのは、相手の意思ではなく、そもそも郵便が届いているかどうかです。
内容証明郵便は一般書留として差し出すことになっているため、郵便追跡サービスで配達状況を確認できます。あわせて配達証明を付けていれば、相手方がいつ受け取ったのかを証明する「配達証明書」が差出人に届きます。
- 出典:日本郵便「内容証明」
- 出典:日本郵便「配達証明」
確認するポイントは次の3点です。
- 追跡上のステータスが「お届け済み」になっているか
- 「保管」のまま止まっていないか
- 「差出人に返送」になっていないか
相手方が不在だった場合、郵便物は配達郵便局で7日間保管され、7日以内に配達できなかったときは差出人に返送されます。
出典:日本郵便「郵便物の受取人が不在だった場合、配達郵便局では何日間保管されますか?」
つまり、差し出してから10日ほど経っても「保管」のままであれば、相手方は不在通知を放置している可能性が高く、まもなく手元に返送されてくることになります。この場合、相手が内容を読んだうえで無視しているのか、そもそも読んでいないのかで、次に取るべき対応が変わります。
返送されてきた場合や、受け取りを拒否された場合の扱いについては、次の記事をご確認ください。


回答期限を過ぎたら、どれくらい待つべきか
相手方に届いていることが確認できたら、内容証明郵便に記載した回答期限までは動かずに待ちます。期限前に催促を重ねても、相手に「感情的になっている」と受け取られるだけで、有利にはたらくことはほとんどありません。
期限を過ぎてからは、1〜2週間ほど様子を見たうえで次の行動に移るのが一般的です。ただし、次の2つのケースでは、待たずに動く必要があります。
- 相手方が財産を処分したり、住所を移したりする動きが見られる場合
- 請求している債権の消滅時効が近づいている場合
とくに注意が必要なのが時効です。内容証明郵便による請求は法律上の「催告」にあたり、催告があったときは、その時から6か月を経過するまでの間は時効が完成しないとされています(民法150条1項)。
言い換えると、内容証明郵便で止められる時間は6か月しかありません。この6か月の間に裁判上の請求などの手続きに進まなければ、時効の完成を止める効果は失われます。
2通目を送るときに必ず書く3つのこと
回答期限を過ぎても反応がない場合、2通目を送ることが選択肢になります。1通目を軽く見ていた相手方が、2通目で態度を変えることは珍しくありません。
2通目には、次の3点を必ず記載してください。
- 1通目を送付した日付と、記載した期限までに回答がなかったという事実
- 再度の回答期限(「本書面到達後2週間以内」など、具体的に特定できる書き方)
- 期限までに回答がない場合に取る手続きの名称(「支払督促の申立てを行います」など)
3点目が重要です。「法的手段を検討します」といった抽象的な書き方では、1通目と同じ扱いをされてしまいます。どの手続きに進むのかを明示することで、相手方は具体的な負担を想像することになります。
ただし、2通目を出しても時効の完成を止められる期間は延びません。催告によって時効の完成が猶予されている間に再度の催告をしても、重ねて猶予の効力が生じることはないと定められているためです(民法150条2項)。時効が近い場合は、2通目ではなく裁判所を使う手続きに進んでください。
内容証明郵便の書式や差出方法については、次の記事をご確認ください。

電話やメールで連絡が取れる場合の進め方
書面には反応しないものの、電話には出る、メールには返信する、という相手方は少なくありません。連絡が取れるのであれば、書面の往復にこだわる必要はありません。
ただし、口頭でのやりとりだけで終わらせないでください。「すぐ払う」「来月まで待ってほしい」と言われても、記録が残っていなければ、後になって「そんなことは言っていない」と主張される可能性があります。
電話で話した内容は、その日のうちにメールで送り返しておきます。「本日お電話でお話しした、○月○日までに○円をお支払いいただく件について、確認のためご連絡します」という程度の文面で構いません。相手方が否定してこなければ、やりとりの記録として残ります。
記録を残すことには、もう一つ意味があります。相手方が支払義務を認める発言をしたり、一部だけでも支払ったりした場合、それは債務の「承認」にあたり、時効が更新される可能性があるためです(民法152条1項)。
直接会って交渉する場合の注意点
相手方と会って話せる関係であれば、直接交渉も選択肢になります。金額や支払方法の調整は、書面よりも対面のほうが早く決まることがあります。
もっとも、内容証明郵便を送る相手は基本的にトラブルの相手方です。当事者だけで話し合うことが、さらなるトラブルを生じさせるリスクもあります。
会う場合は、次の点に注意してください。
- 自宅や相手方の自宅ではなく、第三者の目がある場所を選ぶ
- 一人では行かない
- その場で合意ができたら、金額・期限・支払方法を書面にして双方が署名する
その場の口約束だけで別れてしまうと、内容証明郵便を送った意味がなくなります。合意内容を書面に残すところまでを一つの流れとして考えてください。
それでも動かない場合|法的手続きの選び方

2通目を送っても、電話をかけても相手方が動かない場合は、裁判所を使う手続きに進むことになります。
手続きは一つではなく、請求金額や相手方の態度によって適したものが変わります。選び方を誤ると、時間だけかかって回収できないという結果になりかねません。
どの手続きを選ぶかは、請求金額と、相手方が支払義務そのものを争ってくるかどうかで決まります。まず全体像を確認してください。
| 請求できる金額 | 相手が争ったとき | 期間・回数の目安 | |
| 支払督促 | 上限なし(金銭の支払いなどの請求に限る) | 支払督促を受け取ってから2週間以内に督促異議が申し立てられると、通常訴訟に移行する | 異議がなければ、支払督促の送達日の翌日から起算して2週間目の翌日以降30日以内に仮執行宣言を申し立てる |
| 少額訴訟 | 60万円以下の金銭の支払い | 被告が異議を述べた場合や、1回で終わらないと見込まれる場合は、通常の手続きで審理される | 原則として1回の審理。同じ簡易裁判所で年10回まで |
| 民事調停 | 制限なし | 話し合いがまとまらなければ調停不成立となる | 通常2〜3回の期日、おおむね3か月以内に終了 |
| 通常訴訟 | 上限なし | 争点について双方が主張・立証を重ねる | 1回では終わらず、複数回の期日を重ねる |
- 出典:裁判所「支払督促」
- 出典:裁判所「簡易裁判所の民事事件Q&A」
支払督促|相手が支払義務を争っていない場合
支払督促は、簡易裁判所の裁判所書記官が、債権者の申立ての内容だけを審査して発付する手続きです。相手方の言い分を聴くことなく手続きが進むため、書面のやりとりだけで完結します。
向いているのは、相手方が「払わなければならないこと自体は分かっているが、払っていない」というケースです。逆に、相手方が金額や請求の根拠を争っている場合は、督促異議が出されて通常訴訟に移行するため、時間を余計に使うことになります。

少額訴訟|請求額が60万円以下の場合
少額訴訟は、60万円以下の金銭の支払いを求める場合に使える手続きで、原則として1回の審理で判決まで進みます。判決では、一定の条件のもとで分割払いや支払猶予を命じることもできます。
注意点は2つあります。同じ簡易裁判所で利用できるのは年10回までであること、そして判決に不服があっても地方裁判所に控訴することはできず、同じ簡易裁判所に異議を申し立てる方法しかないことです。

民事調停|今後も関係が続く相手の場合
民事調停は、裁判官と民間から選ばれた調停委員が間に入り、話し合いによる解決を図る手続きです。手続きは非公開で行われ、通常は2〜3回の期日を経て、おおむね3か月以内に終了します。
裁判所に納める手数料も訴訟より低く抑えられています。たとえば10万円の貸金の返済を求める場合、訴訟では1,000円、調停では500円です。
出典:裁判所「民事調停」
取引先や親族など、解決後も関係が続く相手に向いています。ただし、話し合いがまとまらなければ不成立となり、あらためて訴訟を検討することになります。

通常訴訟|金額が大きい、または相手が全面的に争っている場合
通常訴訟は、貸金の返還や損害賠償の請求など、財産に関するトラブル全般を対象とする手続きです。請求できる金額に上限はなく、最終的には裁判官の判決によって結論が下されます。
1回の期日では終わらず、双方が主張と証拠を出し合いながら複数回の期日を重ねることになります。判決までいかず、途中で和解が成立して終わることも少なくありません。


自分で進めるか、弁護士に依頼するか
ここまでの手続きは、いずれも本人が申し立てることができます。実際、少額訴訟や支払督促は本人で進める人が多い手続きです。
一方で、次のいずれかに当てはまる場合は、弁護士に依頼したほうが結果的に早く、回収できる金額も大きくなる可能性があります。
- 相手方にすでに弁護士が就いている
- 請求額が大きく、相手方が支払義務そのものを争っている
- 相手方の財産の所在を調べたうえで、差押えまで進める必要がある
- 消滅時効が近く、6か月以内に手続きを起こす必要がある
弁護士に依頼した場合、代理人名義で内容証明郵便を送るところからやり直すこともあります。差出人が弁護士に変わるだけで、それまで反応がなかった相手方が対応を始めるケースは少なくありません。

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まとめ
内容証明郵便に返事がないとき、やるべきことは次の順序で決まります。
- まず郵便追跡と配達証明で、相手方に届いているかを確認する
- 記載した回答期限までは動かず、期限後1〜2週間は様子を見る
- 2通目には「1通目に回答がなかった事実」「再度の期限」「次に取る手続きの名称」を書く
- それでも動かない場合は、請求額と相手方の態度に応じて手続きを選ぶ
注意しておきたいのは、内容証明郵便で止められる時間が6か月しかないことです。この間に裁判所を使う手続きに進まなければ、時効の完成を止める効果は失われます。返事がないまま数か月が過ぎている場合は、早めに弁護士に相談してください。
また、あらかじめ弁護士保険などで、今後の様々なリスクに備えておくことをおすすめします。

医療過誤、一般民事(離婚や労働問題)、企業法務を注力分野としています。
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