「店舗でのクレームがエスカレートして警察沙汰になった」
「SNSでふざけて投稿したら逮捕された」
「電話での苦情が執拗すぎたと言われた」
このように、日常生活の中で感情的になり、軽い気持ちで行った行為が、威力業務妨害罪という犯罪に問われてしまうケースが近年急増しています。
特にネット社会の現代では、軽率な行動が重大な法的問題に発展することも珍しくありません。
威力業務妨害罪とは、「人の自由意思を制圧するに足りる勢力(威力)」を用いて他人の業務を妨害した場合に成立する犯罪行為で、3年以下の拘禁または50万円以下の罰金が科されます。
実際に業務が完全に停止しなくても、妨害のおそれがあるだけで犯罪が成立することもあるため、私たちが想像している以上に成立要件のハードルは低いのが実情です。
本記事では、威力業務妨害罪の具体的な構成要件、実際の判例や逮捕事例、被害者・加害者双方の立場からの対応方法について、弁護士監修のもと、詳しく解説していきます。
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威力業務妨害とは?

威力業務妨害罪は、現代社会で頻発している犯罪の一つです。
弁護士店舗でのトラブルやSNSでの投稿、クレーム電話など、日常的な行為が犯罪に該当する可能性があるため、正しく理解する必要があります。
威力業務妨害の法的定義
威力業務妨害罪は刑法第234条に規定されており、「威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による」と定められています。
この「前条」とは刑法233条の偽計業務妨害罪を指し、同じ刑罰が科せられます。
威力業務妨害罪が成立するための要素は明確で、次の2つの構成要件を満たす必要があります。
- 威力の行使
- 業務の妨害
重要なのは、この犯罪が「非親告罪」である点です。
つまり、被害者からの告訴がなくても、検察官の判断で起訴することが可能となっています。
警察や検察が事件の存在を認知すれば、被害者の意思に関係なく捜査が開始されます。
特にインターネット上での爆破予告や公共交通機関への妨害行為など、社会的影響が大きい事案では、被害者の意向に関係なく積極的な捜査が行われることが一般的です。
威力業務妨害の「威力」とは
威力業務妨害罪における「威力」の概念は、単純な物理的暴力に留まりません。
判例では「人の自由意思を制圧するに足りる勢力」と定義されており、この解釈は非常に幅広いものです。
たとえば、以下のような事例があります。
- 直接的な暴行や脅迫
- 大声での威嚇
- 集団での押しかけ
- 業務に必要な物品の隠匿
さらに現代では、インターネット上での爆破予告や殺害予告なども、威力として認定されるケースが増加しています。
重要なのは、「威力」とは相手の意志を実際に抑えつけることを意味するわけではない点です。
客観的に見て、相手の行動を制圧できるだけの力があると認められる言動であれば、要件を満たすとされています。
実害がなくても成立する
威力業務妨害罪は、実際に業務が妨害されていなくても成立します。
これは「抽象的危険犯」と呼ばれる犯罪類型で、業務を妨害するおそれのある行為が行われた時点で犯罪が成立する特徴を持ちます。
例えば、爆破予告を行った場合、実際に爆発物が存在しなくても、その予告により業務に支障が生じる危険性があれば威力業務妨害に該当するというわけです。
店舗が一時的に営業を停止したり、警備を強化したりする必要が生じれば、それだけで十分な妨害行為となりえます。
抽象的危険犯としての性質は、犯罪の成立要件を比較的低く設定しており、軽微な行為でも処罰対象となる可能性があります。
業務の範囲と対象
威力業務妨害罪で保護される「業務」の概念は、一般的な仕事の範囲に限りません。
職業やその他社会生活上の地位に基づいて継続して行う事務・事業が対象となり、営利・非営利を問わないのです。
具体的には、企業活動だけでなく、次のような業務も対象となります。
- NPO法人の活動
- ボランティア活動
- PTA活動や学校行事
なども業務に含まれます。
さらに、サークル活動やイベント開催なども、継続性があれば業務として保護対象となる可能性があります。
ただし、純粋に私的な活動や家庭内の活動は対象外とされており、社会性と継続性が判断の分かれ目となります。
なお、公務については特別な考慮が必要です。
たとえば、警察官の逮捕執行のような強制力を行使する権力的公務は業務妨害罪の対象外とされ、公務執行妨害罪が適用されます。
一方、地方議会の議事進行、税務調査、選挙事務などの非権力的公務については、公務執行妨害罪と業務妨害罪の両方が成立し得るとされています。
威力業務妨害罪が適用された現代的な事例
現代社会では、インターネットやSNSの普及により、従来想定されていなかった形での威力業務妨害罪が増加しています。
具体的には、次のような事例が報告されています。
- 病院への230回にも及ぶクレーム電話
- 飛行機内でのマスク着用拒否による緊急着陸
- 店舗商品への異物混入
- ドラッグストアでの「俺コロナ」発言
日常的な不満や、軽い気持ちでの行為が、重大な犯罪に発展する可能性があります。
また、回転寿司店での醤油差しを舐める行為や、コンビニのおでんに触れる行為なども威力業務妨害罪で逮捕されるケースがあり、SNSでの拡散と相まって社会問題となっています。
故意が必要で目的は不要
威力業務妨害罪の成立には故意が必要ですが、特定の目的は問われません。
これは威力業務妨害罪が「目的犯」ではないことを意味します。
ここで言う故意とは、自分の行為が威力によって他人の業務を妨げることを理解している状態のことです。
行為者が自らの行為が業務妨害に該当することを理解していれば、故意の要件を満たします。
動機や目的は問われないため、例えば、個人的な恨みによる嫌がらせや政治的主張のための抗議活動、単なるいたずら心など、どのような動機であっても関係ありません。
また、業務妨害以外の目的(例:金銭の要求、謝罪の強要など)があったとしても、威力業務妨害罪の成立には影響しません。
ただし、そうした目的がある場合は、恐喝罪や強要罪などの別の犯罪が同時に成立する可能性があります。
どこからが威力業務妨害になるのか

弁護士威力業務妨害罪がどのような行為に適用されるかは、一般の方には分かりにくいものです。

普段の生活の中で何気なく行った言動が、思いがけず犯罪に該当してしまう可能性もありますよね。
日常生活の中で、どのような行為が違法となるのかを具体的に理解することが重要です。
仕事を邪魔しただけで罪にあたるのか
単に「仕事の邪魔をした」だけでは威力業務妨害罪は成立しません。
威力業務妨害罪が成立するためには、「威力」を用いることが前提となります。
例えば、店舗で商品の場所を尋ねる際に店員の対応が気に入らなかったとしても、それを冷静に指摘するだけでは犯罪になりません。
しかし、他の客や店員に聞こえるような大声で数十分にわたってクレームを言い続けた場合、威力を用いた業務妨害として処罰される可能性があります。
重要なのは、行為の態様と程度です。
正当な権利行使の範囲を超えて、相手の自由意思を制圧するような勢力を示した場合に初めて「威力」とみなされます。
すなわち、単なる苦情や要求であれば問題ありません。
しかし、威圧的・執拗・異常な態様で行われた場合は犯罪となる可能性があります。
クレームや迷惑電話は威力業務妨害になる?
クレームや電話による苦情自体は、正当な権利行使ですが、その方法や程度によっては威力業務妨害罪に該当する可能性があります。
判断の分かれ目は、行為の執拗性と威圧性にあります。
実際の事例では、薬の処方をめぐって病院に約3時間半で230回もの抗議電話をかけた69歳男性が逮捕されました。
この事例では、回数の異常性と時間的集中性が、威力として認定されています。
一方で、正当な理由に基づく合理的な範囲での問い合わせや苦情であれば、たとえ複数回に及んだとしても犯罪にはなりません。
問題となるのは、業務妨害の意図が明確で、相手方の業務遂行に実質的な支障をきたすような行為です。
SNS・ネット上の投稿で成立する場合
現代において急増しているのが、SNSやインターネット上の投稿による威力業務妨害罪です。
ネット上の発言であっても、それが現実の業務に影響を与える内容であれば処罰対象となります。
たとえば「○○線の地下鉄に爆弾を仕掛けた」といった爆破予告をSNSに投稿した場合で見てみましょう。
この投稿によって警察や消防、鉄道職員が出動し、数時間にわたって運行が停止された場合、実際に爆弾が実在しなくても、明確な威力業務妨害罪が成立します。
また、新型コロナウイルスの流行初期には、店舗で「俺、コロナ」などと発言し、店舗の消毒作業を余儀なくさせた人物が逮捕された事例もあります。
このような発言も、相手に不安や混乱を与え、業務に支障を生じさせたことで処罰の対象となりました。
すなわち、投稿者が軽い気持ちやふざけ半分で行った行為であっても、結果的に業務に支障が生じれば処罰の対象となります。
具体的な境界線の判断基準
威力業務妨害罪の成否を判断する際の具体的な基準は、行為の客観的態様と業務への影響度です。
威力の認定においては、行為者の威勢、人数、周囲の状況などが総合的に考慮されます。
一人での行為でも、異常な執拗性や威圧的態度があれば威力と認定される可能性があります。
例えば、店舗で大声を出したり、集団で押しかけたり、汚物をまき散らすなど、著しく迷惑な行為を行なった場合などが該当します。
軽犯罪法との境界線
威力業務妨害罪と類似する規定として、軽犯罪法1条31号があります。
これは「他人の業務に対して悪戯などでこれを妨害した者」を処罰する規定です。
両者の区別は明確ではありませんが、一般的には悪質性の程度で判断されます。
単なる「悪戯」程度であれば軽犯罪法の適用となりますが、より悪質で威圧的な行為は威力業務妨害罪が適用されます。
コンビニのおでんを指で触る行為や回転寿司店の醤油差しを舐める行為などは、捜査機関では威力業務妨害罪で逮捕されることがありますが、実際の裁判では威力の認定について議論が分かれる可能性があります。
これらの行為は器物損壊罪のほうが適用しやすいとする見解もあります。
偽計業務妨害との違い

弁護士威力業務妨害罪と偽計業務妨害罪は、ともに刑法233条・234条に規定される業務妨害犯罪です。

その妨害が「威力」か「偽計」かの違いですね。
ただし、使用する手段が根本的に異なります。
威力=威圧や圧迫、偽計=錯誤や虚偽情報
威力業務妨害と偽計業務妨害の最大の相違点は、業務妨害に用いる手段の性質です。
基本的な違いを見てみましょう。
| 項目 | 威力業務妨害罪 | 偽計業務妨害罪 |
| 手段 | 威力(威圧・圧迫) | 偽計(欺罔・虚偽) |
| 性質 | 公然・誇示的・可視的 | 非公然・隠密的・不可視的 |
| 対象への作用 | 自由意思を制圧する勢力 | 錯誤や無知を利用 |
| 典型的手法 | 暴力的威嚇、大声、集団行動 | 嘘、騙し、混乱誘発 |
威力とは、「相手方に対する威圧や圧迫を通じて、自由意思を制圧する勢力」のことです。
これは相手に直接的な圧力をかける行為として現れ、周囲からも認識可能な公然性を持ちます。
一方、偽計とは人の錯誤や無知を利用する行為全般のことです。
相手が事実を誤認するよう仕向けることで業務を妨害する点に本質があり、多くの場合、被害者が騙されていることに気づかない隠密性があります。
威力業務妨害罪と偽計業務妨害罪の典型例
威力業務妨害と、偽計業務妨害の違いについて、典型的な事例で整理しましょう。
偽計業務妨害の典型例
大量の宅配ピザを他人の名前で虚偽注文し、配達員を騙して無駄足を踏ませる行為が代表例です。
またYouTuberの自宅に注文していない大量の商品を送りつける行為も、配送業者を騙すという点で偽計業務妨害に該当します。
また、「あの店は国産と偽って外国産の食材を使っている」といった虚偽のデマ拡散や、存在しない火災を消防署に通報して出動させる行為も典型的な偽計業務妨害です。
これらは全て、虚偽情報により相手を欺くことで業務を妨害しています。
威力業務妨害の典型例
威力業務妨害では店舗内での直接的な威嚇行為が典型です。
たとえば、飲食店で「接客が気に食わない」と大声で暴れる行為や、競合店への嫌がらせとして客がいる店舗で汚物をまき散らす行為などが該当します。
また、訓練中の自衛隊ヘリにレーザーポインタを照射して訓練を中止させる行為も、直接的な威力行使として威力業務妨害に分類されます。
境界線がグレーな事例と判断のポイント
実際の事件では、威力と偽計の境界が不明確なケースが存在します。
判例では、以下の判断基準が示されています。
| 判断基準 | 威力業務妨害 | 偽計業務妨害 |
| 行為態様 | 公然・誇示的 | 隠密・秘匿的 |
| 認識可能性 | 第三者にも明白 | 被害者も気づきにくい |
| 心理的作用 | 威圧・恐怖感 | 錯誤・混乱 |
判例において、競馬場に釘をまいた行為は「威力」と判断された一方で、漁場の海底に障害物を沈めた行為は「偽計」と判断されています。
この違いは、前者が誰の目にも明らかな公然とした方法だったのに対し、後者は外からは見えないように行われた点にあります。
つまり、周囲に対する威圧や力の行使が明示されていれば「威力」となり、相手をだまして業務を妨げるような方法であれば「偽計」に分類されるという違いです。
また、水道メーターを改ざんして料金を不正に減額する行為は、多くの場合偽計業務妨害として処理されます。
メーターの表示を偽ることで水道事業者を欺罔し、正当な料金徴収業務を妨害するからです。
ただし、詐欺罪での立件が困難な場合の代替手段として選択される実務的側面もあります。
罰則と時効の共通点
威力業務妨害罪と偽計業務妨害罪は手段こそ異なりますが、以下の点で共通しています。
| 共通要素 | 内容 |
| 法定刑 | 3年以下の拘禁又は50万円以下の罰金 |
| 公訴時効 | 3年間 |
| 告訴 | 非親告罪(告訴不要) |
| 犯罪類型 | 抽象的危険犯 |
両罪ともに非親告罪であるため、被害者の告訴がなくても起訴可能です。
また、抽象的危険犯として、実際の損害発生は不要で、業務妨害のおそれが生じれば犯罪が成立します。
実際の判例と典型事例

威力業務妨害罪において、実際に裁判で争われた事例や逮捕に至った具体的なケースについて紹介します。
弁護士どのような行為が威力として認定され、処罰対象となるのかを具体的な事例で確認していきましょう。
無言電話を繰り返したケース
無言電話による業務妨害は、威力業務妨害の典型例です。
電話をかけること自体は正当な行為ですが、場合によっては犯罪行為となりえます。
無言電話が威力業務妨害罪に該当する理由は、電話をかける行為が「用事がある」という前提で行われるにもかかわらず、実際には何も話さないという欺罔的要素と威圧的要素の両方を含むからです。
受け手側は用件があると期待して電話に応対するため、無言で終わることは一種の嘘をつく行為として評価されます。
さらに、反復継続して行われる場合、受け手側は常に電話対応に追われることになり、本来の業務に支障をきたす恐れがあります。
電話の回数が極端に多い、短時間に集中してかけられるといったケースでは、相手の自由意思を制圧する威力と判断されやすくなります。
ただし、実際には、単発の無言電話で犯罪が成立することは難しいとされており、実際に刑事責任が問われるのは、執拗性や計画性が認められる場合に限られます。
店舗での大声・恫喝により業務停止したケース
店舗内での大声による威嚇や恫喝行為も、威力業務妨害罪の典型例として多くの判例で認定されています。
実際の事例では、店舗内で複数人が「警察に3時間も拘束される覚えはない」などと大声で執拗に発言し、店舗側に対応を余儀なくさせたケースです。
これは、初犯にもかかわらず懲役1年執行猶予3年の判決が下されています。
この事例では、大声での威嚇行為が他の客や従業員に恐怖感を与え、通常の店舗運営を困難にした点が重視されました。
また、デパートの食堂で数人が「詐欺行為をしている」と大声で怒鳴り、食堂内を混乱に陥れた判例も存在します。
これらの事例に共通するのは、単なる苦情ではなく、威圧的・威嚇的な態様で行われた点であり、正当な権利行使の範囲を明らかに逸脱していることです。
ネット上の書込みやデマ拡散のケース
インターネットやSNSの普及により、オンライン上での威力業務妨害事例が急増しています。
従来の物理的威力とは異なる、新しい形態の犯罪類型です。
特に、爆破予告系の投稿は特に悪質性が高く評価されます。
「○○線の地下鉄に爆弾を仕掛けた」といった虚偽の投稿により、警察・消防・鉄道職員が出動し、数時間にわたって運行停止に追い込まれたケースでは、実際に爆発物が存在しなくても威力業務妨害罪が成立しました。
「俺コロナ」発言も、現代的な事例の一つです。
ドラッグストア内で店員に対して「俺コロナだけど、お前ら全員うつったからな」と発言し、店舗に消毒作業を強いた男性が逮捕されています。
この事例では、虚偽の感染情報を威嚇手段として使用し、店舗の通常営業を妨害した点が問題視されました。
食堂や飲食店での妨害行為
飲食業界では、客による異常な妨害行為が古くから問題となっています。
客が満員のデパート食堂の配膳部に数十匹の蛇をまき散らした事例では、威力業務妨害罪の典型例として扱われています。
これは、食堂利用者に恐怖感を与え、食堂の営業を完全に停止させました。
生き物を使用した威嚇行為は、人の自由意思を制圧する威力の一つです。
また、キャバレーの客席で牛の内臓を焼き、店内に悪臭を充満させた事例も判例として残されています。
この行為は、悪臭により他の客の退店を促し、店舗の営業継続を困難にした点で、業務妨害と認定されました。
これらの事例に共通するのは、通常の営業環境を意図的に崩し、営業継続を不可能にする点です。
交通機関に対する妨害行為
公共交通機関に対する威力業務妨害は、多数の利用者に影響を与えることから、その社会的影響の大きさに鑑みて、厳しく処罰される傾向にあります。
こうした行為は、悪質性が高いと評価されやすいためです。
たとえば、聖火リレーの進行中に道路上に飛び出し、リレーを一時停止させた外国籍男性のケースでは、初犯にもかかわらず罰金50万円の処罰を受けました。
この事例では、国際的な注目を集める行事の妨害という点も、量刑に影響したと考えられます。
また、飛行機内でのマスク着用拒否により緊急着陸を余儀なくさせた事例では、威力業務妨害罪で懲役2年執行猶予4年の判決が下されました(2022年当時)。
航空機の安全運航に対する妨害行為は、多数の乗客の安全に直結するため、特に重く処罰される傾向があります。
競技大会・式典での妨害行為
公的な競技大会や式典における妨害行為も、威力業務妨害罪の対象となることが判例で示されています。
これらの行為は社会的注目度が高く、影響が広範囲に及ぶため、より重く評価される傾向があります。
たとえば、参議院本会議において内閣総理大臣の答弁中に演壇に向かって運動靴を投げつけた事件がありました。
これは、国会の議事進行を妨害する威力業務妨害として認定されています。
民主的手続きの妨害という観点から、社会的影響の大きさが量刑に反映されたと考えられます。
また、卒業式の開式直前に大声で保護者らに呼びかけ、制止した教員に叫ぶなどして式の円滑な進行を妨害した行為についても、最高裁判例で威力業務妨害罪の成立が認められています。
教育現場における重要な行事の妨害として、厳しい判断が下された例です。
威力業務妨害の刑罰・時効


もしも逮捕された場合、どのくらいの刑事罰となるのでしょうか?
弁護士威力業務妨害罪で有罪となった場合の刑罰や、事件の時効期間について紹介します。
法定刑は「3年以下の拘禁または50万円以下の罰金」
威力業務妨害罪の法定刑は「3年以下の拘禁又は50万円以下の罰金」と定められています。
これは刑法233条の偽計業務妨害罪と同一の刑罰です。
ただし、実際の量刑については、事案の悪質性や社会的影響の程度によって大きく異なります。
初犯の場合、多くは不起訴処分や罰金刑で終了することが一般的です。
しかし、計画性があり犯行態様が悪質で被害が甚大な場合には、初犯であっても実刑判決を受ける可能性もあります。
公訴時効は3年
威力業務妨害罪の公訴時効期間は、犯罪行為が終了した時から3年間とされています。
これは刑事訴訟法第250条第2項第6号に基づく規定で、法定刑が3年以下の拘禁にあたる犯罪に適用される時効期間です。
時効期間の起算点は「犯罪行為が終わった時」とされており、継続的な業務妨害行為が行われた場合は、最後の妨害行為が行われた時点から3年間が時効期間となります。
例えば、数か月にわたって継続的に嫌がらせ電話をかけていた場合、最後の電話をかけた日から3年間が時効期間です。
また、時効期間中に被疑者が国外に逃亡した場合は、その期間中は時効が停止します。
また、起訴された場合は時効が完成せず、判決確定まで手続きが継続されます。
もっとも、実務上、威力業務妨害事件は比較的早期に発覚することが多いため、時効完成により処罰を免れるケースは限定的です。
観念的競合による刑罰の加重
威力業務妨害罪は、しばしば他の犯罪と同時に成立するため、観念的競合として処理されることがあります。
複数の犯罪が成立した場合、最も重い刑で処断されます。
典型例として、暴行により店舗経営者を負傷させて営業を妨害した場合、傷害罪(15年以下の拘禁又は50万円以下の罰金)と威力業務妨害罪が競合し、より重い傷害罪の法定刑で処断されます。
たとえば、爆破予告による脅迫では、脅迫罪と威力業務妨害罪が競合しますが、法定刑が同じため威力業務妨害罪の刑で処断されます。
このような競合関係により、威力業務妨害罪単体よりも重い刑罰が科される可能性があるため、行為態様には十分な注意が必要です。
執行猶予の適用条件
威力業務妨害罪で有罪となった場合でも、一定の条件を満たせば執行猶予が付されることがあります。
刑法上、執行猶予は、3年以下の拘禁に対して適用される制度であり、この範囲内に含まれています。
特に、初犯で犯情が比較的軽微な場合、執行猶予が適用されるケースが多いです。
実際の事例でも、店舗での威嚇行為で懲役1年執行猶予3年、飛行機内での妨害行為で懲役2年執行猶予4年の判決が下されています。
このように、初犯であれば執行猶予の可能性は高いと言えるでしょう。
ただし、計画性が高く社会的影響が甚大な場合や、同種前科がある場合には、初犯であっても実刑判決を受ける可能性があります。
執行猶予期間中に再び罪を犯した場合、猶予されていた刑も含めて実刑となるケースも十分考えられます。
罰金は上限50万円
威力業務妨害罪では、事案の内容によって罰金刑となることも少なくありません。
100万円以下の罰金が見込まれる事案では、略式起訴により簡易裁判所で略式命令が発せられる場合があります。
罰金額は事案の悪質性、被害の程度、社会的影響などを総合的に考慮して決定されます。
軽微な事案では数万円程度の罰金で済む場合もありますが、重大な事案では上限の50万円に近い金額が科される可能性があります。
罰金を期限内に納付できない場合は、労役場留置により1日5,000円の割合で労役に服することになります。
たとえば、50万円の罰金の場合、最大100日間の労役場留置となる計算です。
土日祝日も1日としてカウントされるため、実質的には刑務所での拘禁と同様の不利益を受けることになります。
被害者側の対応方法

弁護士威力業務妨害の被害を受けた場合、適切な対応を取ることが、犯人の検挙や損害の早期回復につながります。
初動対応の良し悪しが事件解決に大きく影響するため、落ち着いて状況を整理し、まずは必要な証拠を確保することが重要です。
証拠を残す
威力業務妨害事件の初動対応において、証拠保全は最も重要です。
犯人の特定や犯行の立証に直結するため、可能な限り多くの証拠を確保する必要があります。
たとえば、電話による威力業務妨害の場合、通話内容の録音が決定的な証拠となります。
現在では多くの電話機に録音機能が搭載されているため、継続的な嫌がらせを受けている場合は、常時録音設定にしておくことが効果的です。
また、発信者番号の記録、通話時刻の記録も重要な証拠となります。
病院に230回の抗議電話をかけた事例でも、通話記録が重要な立証資料として活用されました。
店舗での威力業務妨害においては、防犯カメラの映像が強力な証拠となります。
犯人の顔や行動、周囲の状況が客観的に記録されるため、法廷での立証において極めて有効です。
ドラッグストアでの「俺コロナ」発言事件でも、防犯カメラ映像により犯人が特定されています。
カメラがない場合でも、スマートフォンでの撮影や音声録音により証拠を残せます。
警察へ相談し被害届を提出する
警察への相談は、速やかに行いましょう。
警察が威力業務妨害罪として事件を認知すれば、積極的な捜査が期待できます。
被害届は、事件の概要を警察に報告する書面で、犯罪の発生を公的に記録する役割を果たします。
提出にあたっては、発生日時や場所、被害内容、犯人に関する情報などを詳細に記載しましょう。
これにより現場検証や聞き込み調査などの初動捜査が開始され、犯人検挙に向けた具体的な活動が始まります。
継続的に被害を受けている場合は、被害の全体像を時系列で整理して報告することが重要です。
単発の事件として処理されると捜査の優先度が下がる可能性があるため、組織的・計画的な犯行であることを適切に伝える必要があります。
また、業務への具体的影響(売上減少、従業員の精神的負担、顧客離れなど)を数値化して報告することで、事件の重大性を客観的に示せます。
弁護士に依頼する
威力業務妨害事件に遭遇した場合、弁護士へ依頼することがおすすめです。
専門的知識と経験に基づく適切な対応が期待でき、被害回復と再発防止を図れるでしょう。
告訴状の作成においては、弁護士の専門性が欠かせません。
告訴状は単なる被害申告ではなく「犯人の処罰を求める意思表示」を含む法的文書です。
そのため、法的構成と事実関係の整理が正確でなければなりません。
弁護士が作成した告訴状は、法的説得力が高く、犯人に厳しい刑罰が科される可能性が高くなります。
損害賠償請求においても弁護士の役割は重要です。
威力業務妨害により営業上の損害(売上減少、対応人件費の増加)、修理・買替費用、治療費、精神的損害に対する慰謝料など、幅広い損害が賠償対象となります。
こうした損害を正しく算定し、相当因果関係を立証するには法的専門知識が不可欠です。
被害状況を詳細に記録する
威力業務妨害の法的な対応において、被害状況の詳細な記録化が重要です。
感情的な記述ではなく、客観的事実に基づく正確な記録が求められます。
被害記録には、以下の内容を時系列で整理します。
- 発生日時
- 場所
- 関係者
- 具体的な被害内容
- 目撃者の有無
- 業務への影響度など
特に業務への影響については、可能な限り数値化して記録することが重要です。
売上の減少額、対応に要した人員と時間、顧客からの苦情件数、従業員の欠勤日数なども重要な損害要素となります。
また、被害の継続性や悪質性を示すため、過去の類似事例があれば併せて記録しておきましょう。
同一犯人による反復的な嫌がらせの場合、個々の事件は軽微でも全体として見れば重大な業務妨害となる可能性があります。
示談交渉は慎重に
犯人が特定された後の示談交渉においても、戦略的な対応が求められます。
安易に示談を成立させてしまうと、将来的に被害の拡大や再発する可能性があるため、慎重な判断が必要です。
示談交渉では、金銭的賠償だけでなく、再発防止に向けた具体的な取り決めを盛り込むことが重要です。
たとえば、被害者への接触禁止、店舗への立ち入り禁止、SNSでの言及禁止などの条項を盛り込むことで、将来のトラブルを未然に防ぐ効果が期待できます。
また、これらに違反した場合の法的措置についても、あらかじめ明確にしておきましょう。
なお、威力業務妨害罪は非親告罪であるため、示談が成立してもそれだけで刑事責任が免除されるわけではありません。
示談は情状面で有利に考慮される要素に過ぎないことを理解した上で、最適な条件設定を行う必要があります。
場合によっては、示談よりも厳罰による抑止効果を重視する判断も考えられるでしょう。
加害側になり得るケースと注意点

日常生活において、知らず知らずのうちに威力業務妨害罪の加害者となってしまうリスクは誰にでも存在します。
弁護士特に感情的になりやすい場面では、正当な権利行使のつもりが犯罪行為に発展する可能性があるため、十分な注意が必要です。

行動に起こす前に、一度立ち止まってみるべきですね…。
強いクレームやしつこい電話はリスク大
正当なクレームや苦情であっても、その方法や程度によっては威力業務妨害罪に該当する危険性があります。
特に電話による苦情は、エスカレートしやすい傾向があります。
たとえば、薬の処方をめぐる病院への抗議電話で、3時間半に230回もかけ続けた事例は、正当な要求が犯罪に発展した典型例です。
加害者は処方量不足への不満から電話を繰り返しましたが、回数と時間の異常性が威力として評価されました。
このケースから、合理的な範囲を超えた反復的な要求は避けるべきだと言えるでしょう。
悪意がなくても「威力」と評価される場合
威力業務妨害罪は、業務妨害の意図がなくても客観的に威力と評価される行為は処罰対象となります。
軽い気持ちやふざけ半分の行為でも重大な結果を招く可能性があり、注意が必要です。
現代では、個人の発言や行動がSNSで拡散され、想定以上の影響を与える可能性があります。
回転寿司店の醤油差しを舐める行為なども、動画拡散により企業に深刻な風評被害をもたらし、威力業務妨害として処罰される事例が増加しています。
相談・示談の流れを知っておく
威力業務妨害の疑いをかけられた場合、初動対応が重要です。
早期に弁護士へ相談し、被害者との示談交渉を開始することで、不起訴や軽微な処罰となる可能性が高くなります。
弁護士への相談では、まず事実関係を整理したうえで、行為が本当に威力業務妨害罪に該当するかどうかの法的判断を受けることになります。
また、他の法的構成の可能性や予想される処分などについての専門的助言も受けられるでしょう。
逮捕前であれば自首も選択肢の一つとなり、これによって、報道などによる社会的影響を抑えられる場合もあります。
示談交渉においては、被害者への謝罪と被害弁償が中心です。
威力業務妨害の示談金相場は実際の損害額程度とされることが多く、損失が大きい場合は高額になる可能性があります。
ただし、威力業務妨害罪は非親告罪のため、示談成立だけで刑事処罰を完全に回避できるわけではない点に注意が必要です。
職場や学校での影響
威力業務妨害罪で逮捕された場合、社会的影響は刑事処罰以上に大きくなるケースもあります。
長期間の身柄拘束によって、特に会社員や学生は重大な不利益を受けるリスクがあるからです。
逮捕から起訴までは最長23日間の身柄拘束があり、起訴後も保釈されなければさらに拘束が継続されます。
この期間中の無断欠勤により、懲戒解雇や退学処分を受ける可能性もあります。
また、実名報道された場合、インターネット上に情報が残存し、将来の就職活動や人間関係に長期的な悪影響を与えるおそれも考えられます。
前科が付いた場合の影響も深刻です。
就職時の賞罰欄への記載義務、特定の資格取得制限、海外渡航時の影響など、様々な場面で不利益を受けるでしょう。
これらのリスクを十分に理解した上で、日常の行動に注意を払うことが重要です。
SNS・インターネット利用時の注意点
現代社会においてSNSやインターネットは重要なコミュニケーションツールですが、威力業務妨害罪の温床ともなっています。
デジタル環境特有のリスクを理解し、正しく利用しましょう。
投稿内容が軽い冗談のつもりでも、受け手や社会全体に与える影響は予想以上に大きくなる可能性があります。
特に爆破予告、殺害予告、虚偽の災害情報などは、たとえ事実でなくても重大な業務妨害を引き起こし、厳しく処罰される傾向があります。
また、匿名での投稿であっても、現在の技術では投稿者の特定は比較的容易です。
IPアドレスの解析、アカウント情報の照会、デジタルフォレンジック技術により、投稿者は高い確率で特定されます。
匿名性を過信した軽率な投稿は、避けるべきです。
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まとめ
威力業務妨害罪は、現代社会において身近な犯罪の一つです。
人の自由意思を制圧する威力を用いて他人の業務を妨害した場合に成立し、3年以下の拘禁または50万円以下の罰金が科されます。
日常的なクレームやSNS投稿でも、度を越せば犯罪行為となる可能性があるため注意が必要です。
被害を受けた場合は、証拠保全と速やかな警察への相談が重要です。
また、加害者となるリスクを避けるためには感情的な行動を控えるべきでしょう。
意見を投稿する際には、適切な方法で表明することが求められます。
法的知識を正しく理解し、トラブルの予防と適切な対応を心がけましょう。

東 拓治 弁護士
福岡県弁護士会所属
あずま綜合法律事務所
福岡県福岡市中央区赤坂1丁目16番13号上ノ橋ビル3階
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