日照権はどこまで守られる?日当たり悪化で認められる条件と取れる対策をわかりやすく解説

「隣にマンションが建って、自宅に日が当たらなくなった」
「新築した家が近隣の日照を遮ってしまい、苦情を言われている」
「日当たりが悪くなって、洗濯物が乾かず生活に支障が出ている」

このように、日照権をめぐるトラブルに悩まされている方は少なくありません。

建物の建築によって日当たりが悪くなると、生活の質が大きく低下し、最悪の場合、法的な紛争に発展することもあります。

日照権は明確に法律で定められた権利ではありませんが、建築基準法の違反や「受忍限度」を超える日照阻害があれば、損害賠償や建築差止めを請求できる可能性があります。

ただし、建築基準法を守っていても訴えられるケースがあり、判断基準は複雑です。

本記事では、日照権の法的根拠や実際に起こりやすいトラブル事例、認められた判例と認められなかった判例の違いについて紹介します。

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目次

日照権とは?

日照権とは、住宅やマンションなどの建物が十分な日当たりを得られる権利のことを指します。

弁護士

建築基準法や民法の解釈から導かれる権利であり、トラブル時には「受忍限度」というあいまいな基準で判断されます。

「これ」と決まった法律があるわけではないのですね。

日照権に「明確な法律」は存在しない

日照権という言葉は一般的に使われていますが、実は「日照権」と明記された法律の条文は存在しません。

その根拠となるのは、憲法13条の幸福追求権や25条の生存権といった抽象的な権利です。

実際には、民法709条・710条の不法行為責任として争われるケースが大半を占めます。

法律で明確に定義されていないからこそ、訴訟では個別の事情を総合的に判断する必要があり、予測が難しい側面もあるのです。

建築基準法と日影規制・斜線制限

建築基準法第56条においては、建物の高さや形状を制限する「斜線制限」が定められています。

これには道路斜線、隣地斜線、北側斜線の3種類があり、それぞれ周辺への採光や通風を確保する目的で設けられています。

また、同法56条の2では「日影規制」として、冬至の午前8時から午後4時までの時間帯に一定以上の日影を生じさせないルールが規定されています。

これらの規制は日照権を間接的に保護するものですが、基準を満たしていても日照権侵害が認められる場合もあるため注意が必要です。

判断基準になる”受忍限度”とは

日照権侵害の有無を判断する際、最も重要な概念が「受忍限度」です。

受忍限度とは「社会生活上、我慢すべき範囲内かどうか」を示す基準のことで、以下のような要素を総合的に踏まえて判断されます。

  • 建築基準法の違反有無
  • 日照阻害の程度や時間
  • 地域の性質
  • 建物を建てた順序
  • 事前説明の有無

たとえば、商業地域では高層ビルが多いため受忍限度が高く設定される一方、住宅地では厳しく判断される傾向にあります。

明確な数値基準がないため、個別事情によって結論が大きく変わるのが実情です。

日照権のよくある誤解

「先に住んでいれば日照権は絶対に守られる」というのは大きな誤解です。

確かに居住の先後関係は判断要素の一つですが、それだけで勝敗が決まるわけではありません。

建築基準法に適合していれば、後から建てられた建物でも違法とは認められないケースが多数存在します。

また「建築基準法を守っていれば問題ない」も誤解で、法令遵守していても受忍限度を超えると判断されれば、賠償責任を負うことも少なくありません。

さらに「日照権は南側だけの問題」という認識も正確ではなく、東側や西側の建物でも日照阻害が認められた判例が存在します。

日照権のトラブルが起きる原因

弁護士

日照権をめぐる紛争が後を絶たない背景には、法律の構造的な問題があります。

例えばどのような問題があるのでしょうか?

明確な定義がないまま「権利」として認識されているため、建築主と周辺住民の間で認識のズレが生じやすく、さらには地域特性や他の生活環境問題と絡み合って複雑化する傾向があります。

法律上の定義が曖昧なため住民間の認識がズレるから

日照権は、憲法の幸福追求権や生存権から派生する権利として裁判所が認めてきました。

そのため「どこまで保護されるか」の線引きがあいまいです。

建築主は、建築基準法を守れば問題ないと考える一方、周辺住民は日当たりが悪化すれば権利侵害だと主張します。

この認識の食い違いが、トラブルの根本原因となっています。

建築基準法は「最低限の基準」でしかないから

建築基準法の斜線制限や日影規制は、建築物が満たすべき最低ラインを示したものです。

しかし、これらの基準を満たしたとしても、周辺住民の日照権侵害が認められるケースは存在します。

裁判所は単に法令を遵守しているかどうかだけでなく、日照阻害の程度や地域環境、建築に至る経緯など、さまざまな事情を総合的に考慮して判断します。

そのため、法的基準を満たしていても、予想外の結論になることもありうるのです。

都市部・郊外で「許容される影」の基準が変わるから

受忍限度の判断において、建物が建つ地域の性質は重要な要素です。

たとえば、都心の商業地域では高層ビルが多く、ある程度の日照制限は認められやすいでしょう。

一方で、閑静な住宅街や郊外の低層住宅地では、同じ程度の日影でも受忍限度を超えたと評価されやすくなります。

この地域による基準の違いは明文化されていないため、当事者にとっては判断基準が理解しにくいという側面があります。

騒音・景観・プライバシーと複合化しやすいから

日照権のトラブルは、それだけで発生するケースは少なく、工事中の騒音や景観の悪化、プライバシーの侵害など、他の問題と複合的に絡み合って争いになる傾向があります。

たとえば、京都地方裁判所の判例では、5階建てマンションの建設をめぐって複数の権利侵害が主張されましたが、裁判所は騒音のみを認め、日照権の侵害については否定しました。

このように、複数の問題が絡むことで住民の不満が大きくなり、感情的な対立に発展しやすくなります。

日照権の具体的なトラブル

弁護士

日照権トラブルは、単に日当たりが悪くなるだけでなく、生活の質や経済的損失につながる大きな問題を引き起こします。

確かに、住居の快適性が下がることから太陽光発電の収益減少、植物の育成障害まで、被害の内容は多岐にわたりますね。

住宅に日光が入らなくなる

近隣に高層建物が建設されると、これまで日中明るかった居室でも、終日薄暗い状態になることがあります。

特に南側に建物が建つと、洗濯物が乾きにくくなり、室内干しを余儀なくされることもあるでしょう。

また、冬場は日光が入らないと室温が下がり、暖房費の増加にもつながります。

より深刻な問題となるのは、自然光を浴びられないことによる生活リズムの乱れや健康への影響です。

日中でも照明が必要になれば電気代もかさみ、経済的な負担も生じます。

太陽光発電の発電量が大幅に低下する

太陽光パネルを設置している住宅では、隣接地に建物が建つことで発電量が大きく減少する被害が発生します。

当初見込んでいた売電収益が得られなくなり、投資回収の計画が狂うことになります。

特に自家発電がないと生活できない家庭や、売電を主な目的としている場合、経済的な損失は甚大です。

ただし、太陽光発電の収益減少を理由とした損害賠償請求は法的に認められにくく、弁護士などへの相談が必要となります。

植物・作物が成長不良になる

ベランダや庭、屋上などで家庭菜園を営んでいる場合、日照不足は作物の成長に大きな影響を及ぼします。

日光を必要とする野菜や果物は、十分な日照がなければ育ちません。

朝夕のみ日が当たる程度であれば肥料で対処できる可能性もありますが、終日影になる状況では栽培自体が困難となります。

趣味の範囲を超えて、食費の節約や健康的な食生活を目的としていた場合、生活への影響は無視できないでしょう。

樹木・フェンスによる日照阻害が起きる

建物だけでなく、隣家の庭木が成長して日照を遮るトラブルも存在します。

樹木による日照問題は、枝の越境や落ち葉の侵入と合わせて相談されることが多く、建物と比べて部分的な伐採が可能なため、話し合いで解決できるケースも少なくありません。

2023年4月からは民法改正により、一定条件下で越境した枝を切除できるようになりました。

また、目隠しフェンスの設置によって日照が阻害されるケースでは、プライバシー保護と日照確保のバランスが争点となります。

商業施設・マンション建設で長期間の影ができる

大型商業施設や高層マンションの建設が行われると、周辺住宅は長時間にわたって日影になる可能性があります。

しかし、建設の計画段階で近隣住民へ配慮が足りていないケースも少なくありません。

特に低層住宅地で高層建築が計画されると、住民の予想を超える日照悪化が生じることも。

物件選びの際は、周辺に大型施設があることを確認し、地域の不動産業者や住民に日当たりの実情を事前に聞いておくことが重要です。

日照権が認められる・認められないの境界線とは

弁護士

日照権侵害の裁判では、建築基準法の適合性に加え、日影の程度や建築主の対応、地域特性など様々な要素が総合的に判断されます。

過去の判例を分析すれば、認められるケースと否定されるケースの傾向や、訴訟の勝敗について予測できる重要な手がかりとなりますね!

認められたケースの共通点

2019年の札幌地方裁判所の判例では、隣接地に建てられた木造2階建て建物について、原告が12年早く土地を購入していたこと、被告の建物が建築基準法の制限ぎりぎりだったことを考慮し、受忍限度を超える侵害と判断されました。

この事例では2階東部分の切除と300万円の賠償が命じられています。

また、2010年2月の神戸地裁尼崎支部の判例では、日影規制のない立地でも冬至期の日影時間が4時間を超える住戸があることを理由に、14階建てマンションの10階以上の建築が差し止められました。

これらの日照権侵害が認められた判例に共通するのは、日照阻害の時間が長く、周辺住民への説明が不十分で、受忍限度を明らかに超えていた点です。

認められなかったケースの共通点

2007年の京都地方裁判所の判例では、5階建てマンション建設により日影時間が1日のうち2時間程度に限定され、1階部分の日当たりが悪化しても2階部分には日照があったことから、受忍限度内と判断されました。

また、2014年2月の東京地裁の判例では、冬至を基準にすると受忍限度を逸脱する可能性があったものの、春分には影響が少なく、原告が住宅を敷地境界線に接した配置をしていたこと、訴えられた建物が幼稚園として利用される公共性の高い施設だったことが考慮され、訴えが退けられました。

2020年11月の札幌地裁の判例では、日照が遮られる部屋を原告が日中使用していなかったことが、日照権侵害が認められなかった判断材料とされています。

「勝てる/勝てない」の判断指標

判例を総合すると、日照権侵害が認められやすいのは、冬至期で4時間以上の日影が生じる場合や、建築基準法の制限に抵触している場合、事前説明が不十分な場合です。

一方、以下のようなケースでは、認められにくい傾向があります。

  • 日影時間が2時間程度で生活への実質的影響が限定的な場合
  • 建物に公共的な用途がある場合
  • 被害を訴える側にも配置上の問題がある場合

2020年7月の名古屋高裁岡崎支部の判例では、冬至だけでなく年間平均で5時間、春分・秋分で7時間の日照阻害があれば受忍限度を超えると判断されています。

すなわち、季節の日照時間を踏まえ、一年を通して総合的に評価されるというわけです。

訴訟を検討する際はこうした要素をふまえた、説得力のある主張が鍵となります。

日照権トラブルを未然に防ぐために

弁護士

日照権をめぐる紛争は、一度発生すると解決に多大な時間と費用がかかります。

トラブルを未然に防ぐためには、影響の程度を客観的に把握し、早い段階から適切な対応を取ることが重要ということですね。

ここでは、具体的な予防策について解説します。

影の時間・範囲を数値で把握する

日照権侵害の判断では、感覚的な「暗くなった」という主張ではなく、客観的なデータが必要です。

前述のとおり、冬至を基準に、午前8時から午後4時までの間で何時間日影になるのかを正確に測定しましょう。

判例では、4時間を超える日影で受忍限度を超えると判断されるケースが多く、2時間程度では認められにくい傾向があります。

また、年間を通じた平均日照時間も考慮されるため、春分や秋分での状況も把握しておくとよいでしょう。

なお、専門業者に依頼すれば、建築計画図面から影の範囲をシミュレーションできます。

近隣住民と話し合う

行政や専門家に相談する前に、まず近隣の住民同士で話し合うことが重要です。

いきなり公的機関に相談すると、相手を不快にさせて関係が悪化するおそれがあります。

話し合いの際は感情的にならず、測定した日照データを示しながら、生活への具体的な影響を冷静に伝えましょう。

たとえば、「洗濯物が乾かない」「日中でも照明が必要になる」など、客観的な事実を中心に説明すると、相手にも伝わりやすくなるものです。

一度の指摘で相手が応じてくれれば、大きなトラブルに発展せず、解決できる可能性もあります。

また、こうした誠実な対応の積み重ねは、万が一裁判に発展した際にも判断材料となることがあります。

行政窓口に相談する

話し合いで解決が難しい場合は、自治体の建築指導課等に相談しましょう。

行政は法や条例に基づいて中立的なアドバイスを提供してくれます。

ただし、建築計画が法令に適合している場合、行政の対応には限界があることを理解しておきましょう。

相談する際は、測定した日照データや建築計画の内容を持参すると、より具体的な助言が得られます。

行政で解決が困難な場合は、地域の紛争解決機関を紹介してもらえるケースもあります。

説明会・建築計画に参加する

近隣に大型建築物が計画されている場合、建築主が近隣住民向けの説明会を開催することがあります。

この機会に建物の高さや配置、日影の予測図などを確認し、自宅への影響を把握しましょう。

特に南側に建設される場合は、注意が必要です。

説明会では質問する権利がありますので、不明点は遠慮せず確認してください。

また、建築計画図面から、斜線制限や日影規制に適合しているかをチェックすることも重要です。

専門知識が必要な場合は、建築士や弁護士に同行を依頼する方法もあります。

不安点がある時は事前に対策する

建築計画に不安がある場合は、工事が着工する前の段階で、対策を講じることが重要です。

もしも日照被害が予測される建物が建築中であれば、裁判所に建築工事差止めの仮処分を申し立てることもできます。

ただし、これは緊急性が高い対応であるため、事前に弁護士などの専門家に相談し、助言を受けることが必須となります。

一方、自分が建物を新築する立場にある場合は、設計段階で中庭や天窓、高窓を取り入れるなど、周囲の建物に影響されにくい工夫を検討しましょう。

将来的なトラブルを防ぐためにも、近隣への配慮をふまえた設計を重視できる、経験豊富な建築会社を選ぶことが大切です。

日照権が侵害されている可能性が高いケース

日照権の侵害が疑われる場合には、法令違反の有無や生活への影響度、建築主の対応など複数の視点をふまえ、総合的に評価する必要があります。

一つのみの抵触だけだと根拠が弱いということですね。

弁護士

以下のような状況に該当する場合は、法的措置を視野に入れて検討する価値があるといえるでしょう。

建築基準法の斜線制限・日影規制に抵触している

建築基準法第56条に定められた斜線制限や、第56条の2の日影規制に違反している建物は、日照権の侵害が認められる可能性が高くなります。

これらの規制は周辺住民の日照を保護する目的で設けられているからです。

特に、行政から是正命令や工事施行停止命令が出ているにもかかわらず、建築が強行されているような場合、悪質性が高いと評価されやすくなります。

なお、こうした法令に違反しているかどうかを判断するには、専門的な判断が必要です。

建築士や弁護士に建築計画図面を確認してもらい、違法性をチェックすることをおすすめします。

日照時間が極端に短縮して生活に支障がある

冬至期に午前8時から午後4時までの間で4時間以上の日影が生じる場合、受忍限度を超えると判断される可能性が高くなります。

また、年間を通じた平均日照時間が1日あたり5時間未満、あるいは春分・秋分で7時間以上の日照阻害がある場合も同様の判断が下される傾向にあります。

判例では、単に日照時間の数値だけでなく、実際の生活への影響度も重視されるため、日常生活でどのような不便が生じているかを記録しておくことが重要です。

影響が特定の部屋・用途に集中している

日照権の侵害が争われる際には、被害を受ける建物の用途も重要な考慮要素です。

たとえば、幼稚園や病院といった保育・医療施設は、一般の住宅よりも日照の必要性が高いと評価されるため、侵害が認められやすい傾向があります。

また、一般住宅でも、子供部屋や高齢者の介護部屋など、健康維持に日照が特に重要とされる部屋に影響が及ぶ場合は、受忍限度を超えると判断されやすくなります。

一方、日中ほとんど使用しない部屋への影響では、日照権の侵害が認められにくくなる傾向にあります。

このように、部屋の使用状況や家族構成も含めて、総合的に評価されるのです。

建築側の説明が不十分・変更が多い

建築主が近隣住民に対する事前の説明を怠っていたり、説明内容が不十分だったりする場合は、日照権の侵害が認められやすくなります。

これは、裁判において建築に至るまでの経緯や誠実な対応の有無が判断材料とされるためです。

特に、当初の計画から大幅な変更が繰り返され、その都度適切な説明がない場合は、悪質性が高いと評価される可能性があります。

また、住民からの要望や質問に対して誠実に回答せず、一方的に工事を進める姿勢も問題視される要因となります。

こうした対応の記録は証拠として重要になるため、やり取りの経緯を文書で残しておきましょう。

日照権トラブルが起きたときの対応手順

実際に日照権侵害が発生した場合、感情的に対応するのではなく、段階的かつ冷静に手続きを進めることが重要です。

毎日の生活のことなので、感情的にならずに話し合いができるでしょうか…。

弁護士

各ステップで適切な対応をすることで、有利な解決につながりやすくなります。

影響を証拠に残す

日照権侵害を主張する際、最も重要なのは客観的な証拠です。

まず、建物が建つ前と後で室内の明るさがどう変化したかを、同じ時刻・同じ場所から撮影した写真で記録しましょう。

具体的には、冬至を中心に、午前8時から午後4時までの各時間帯で影がどの程度かかるかを測定し、記録します。

また、日照不足によって生じた具体的な支障(洗濯物が乾かない、日中でも照明が必要、室温低下など)を日記形式で記録することも有効です。

被害を受けている部屋の用途(リビング、子供部屋、介護部屋など)も明確にしておきましょう。

こうした証拠は、交渉や訴訟において重要な資料となります。

行政へ相談する

証拠を整理したら、市区町村の建築指導課や環境部門に相談しましょう。

行政は地域条例や各法律に基づいて、建築計画が適法かどうかを判断してくれます。

法令違反が認められれば、行政指導や是正命令を出してもらえる可能性があります。

ただし、建築計画が法令に適合している場合は、行政の対応には限界があることを理解しておかなければなりません。

そのような場合でも、地域の紛争解決機関やあっせん制度を紹介してもらえる可能性もあります。

相談時には、これまでに収集した証拠資料や建築計画図面のコピーを持参すると、状況に応じた具体的なアドバイスが得られます。

影響が深刻なら、工事差止め仮処分を申請する

日照被害が予測される建物が現在建築中で、完成すると取り返しのつかない被害が生じるおそれがある場合、裁判所に対して建築工事差止めの仮処分を申し立てることが可能です。

これは、工事が完了する前に、緊急的に問題を解決するための法的手段であり、被害の拡大を防ぐために用いられます。

ただし、仮処分を申立てるには高額の保証金を預託(裁判所に預ける)する必要があるほか、日照権の侵害の程度が著しく、受忍限度を明らかに超えていることを具体的な証拠に基づいて疎明する必要があります。

手続きには専門的な知識が求められるため、弁護士に相談して慎重に判断すべきです。

仮処分には時間との勝負になることが多いため、できるだけ早い段階での相談が必須となります。

損害賠償を請求する

日照権の侵害が受忍限度を超えると認められた場合、民法709条の不法行為に基づいて、損害賠償を請求できます。

賠償の対象となるのは、生活上の不便による精神的苦痛(慰謝料)や、日照不足によって生じた具体的な経済的損失(暖房費の増加、太陽光発電の減収など)です。

ただし、太陽光発電の収益減少については、個人で請求することは困難なケースが多いため、法律の専門家による助言が必要です。

損害賠償請求は、まず当事者間の交渉や調停で合意を目指し、それが難しい場合に訴訟を提起する流れが一般的です。

訴訟になると、年単位の時間と数十万円の費用が発生することが予想されるため、費用対効果を十分に検討しましょう。

専門家(弁護士・建築士)に相談する

日照権問題は法律と建築の専門知識が必要となるため、早い段階から専門家に相談することをおすすめします。

特に、以下のようなケースは、弁護士に相談しましょう。

  • 建築基準法違反が疑われる場合
  • 受忍限度を超える被害がある場合
  • 損害賠償や差止請求を検討している場合

各弁護士会の法律相談は、1時間1万円程度で利用できます。

また、初回無料の事務所や法テラスの活用も可能です。

相談時には所属弁護士のプロフィールを確認し、日照権問題に詳しい弁護士を選ぶとよいでしょう。

また、建築計画の適法性を判断するには、建築士の助言も有効です。

できるだけ早く専門家に相談することによって、適切な証拠収集や今後の交渉に向けた戦略の立案が可能になります。

建築する側が知るべき「日照権トラブルを回避するポイント」

新築や増改築を計画する際、建築基準法を守るだけでは不十分です。

弁護士

たとえ法的に適合していても、周辺住民への配慮を怠ると、日照権の侵害を理由に訴えられるリスクを招く恐れがあります。

では、どのように気を付けるべきなのでしょうか…。

こうしたトラブルを未然に防ぐには、設計段階から日照や景観への影響に配慮した工夫を取り入れたり、近隣住民との丁寧なコミュニケーションを重ねたりすることが不可欠です。

住民説明の”質”でトラブル発生率は大きく変わる

建築に至るまでの説明が不十分だと、たとえ法令に適合していても、日照権の侵害が認められやすくなります。

裁判では、建築主による誠実な対応の有無も判断材料とされるため、近隣住民への丁寧な説明は法的リスクを減らすうえで有効です。

説明会では建物の高さ、配置、日影予測図を具体的に示し、住民からの質問には真摯に答えましょう。

特に南側に接する住戸については、冬至を基準とした日照シミュレーションを示し、住民の不安や疑問に答えることが重要です。

建物配置・高さ・窓位置でできる工夫

建築基準法の斜線制限や日影規制は、あくまで最低限の基準にすぎません。

これを満たしていたとしても、周辺への影響をできる限り抑える設計が求められます。

たとえば、敷地内で建物を北寄りに配置することで、南側隣地への影響を軽減できます。

また、高さを抑えて横に広げる設計や、道路側へ後退させる「セットバック」を活用する方法も有効です。

窓の配置では、隣家の主要な居室と向かい合わせにならないよう注意し、プライバシーの保護にも十分注意を払いましょう。

天窓・中庭・高窓などの採光設計

周辺の建物に影響されることなく、十分な採光を確保するには、天窓や中庭、高窓の活用が効果的です。

天窓は屋根に設置するため、真上から光を取り込めるようになり、安定した明るさが確保できます。

中庭は、建物をコの字やL字型に配置して中央に開放空間を設けた設計となっているため、光を建物中心部まで届けることが可能です。

高窓は天井近くに設置することで、周囲に建物があっても光を遮られにくくなります。

こうした工夫は、自分の建物の採光を確保するだけでなく、近隣への配慮としても評価されるポイントとなります。

設計段階で必ず見るべきチェックリスト

建物の設計が完了する前に、以下の内容を確認しましょう。

  1. 建築基準法の斜線制限と日影規制に適合しているか
  2. 冬至の午前8時から午後4時までの日影シミュレーションで隣地に4時間以上の影を生じさせていないか
  3. 南側隣地への配慮がなされているか
  4. 近隣住民への説明資料が準備できているか

それでも不安がある場合は、建築士や弁護士にセカンドオピニオンを求めることも有効です。

専門家による異なる視点からのアドバイスを受けることで、見落としていたリスクや改善点に気づける可能性があります。

また、経験豊富で近隣配慮を重視する建築会社を選ぶことも重要です。

よくある質問(FAQ)

日照権に関しては、多くの方が同じような疑問を抱えています。

ここではよく寄せられる質問について、判例や法的根拠を踏まえて解説します。

トラブルを抱えている方も、これから建築を予定している方も、参考にしてください。

北側・東側の影でも問題になる?

北側・東側・西側の建物でも認められる可能性がある

建築基準法には北側斜線制限があり、北側隣地の採光確保が重視されていますが、実際の日照条件の悪化が軽微と判断されることが多い傾向にあります。
朝の日照が長時間遮られる、年間を通じて影響が大きいなどの事情があれば、東側・西側でも侵害が認められる余地はあります。

太陽光発電の損失も請求できる?

請求自体は可能だが認められるハードルは高い

太陽光発電の発電量が減少した場合、経済的損失が生じますが、実際にはこの損失を個人で請求することは法的に困難なケースが多いです。

太陽光発電による利益は「期待される将来の収益」であり、日照権として法的に保護される範囲に含まれるかどうかが、裁判の争点となります。

住居の快適な生活環境を守る権利とは性質が異なるため、裁判で認められるハードルは高いと考えられます。

ただし、事案によっては認められる可能性もゼロではありません。

太陽光発電への影響で損害賠償を検討している場合は、必ず弁護士などの専門家に相談して、法的な見通しを確認しましょう。

行政窓口と弁護士、どちらに相談すべき?

まずは市区町村の建築指導課や環境部門に相談することをおすすめ

行政は建築基準法や条例に基づいて中立的なアドバイスを提供し、法令違反があれば是正指導を行ってくれます。

ただし、建築計画が法令に適合している場合、行政の対応には限界があります。
もしも弁護士を選ぶ場合は、事前にプロフィールやこれまでの取扱案件を確認し、日照権の分野に詳しい弁護士を選びましょう。

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まとめ

日照権は現行の法律で明文化されていないため、トラブルが発生した場合は「受忍限度」というあいまいな基準で判断されるのが実情です。

建築基準法の遵守は最低限の条件に過ぎず、実際には日影の時間や生活への影響、建築主の対応など複数の要素が総合的に評価されるということを覚えておきましょう。

弁護士
東拓治弁護士

東 拓治 弁護士
 
福岡県弁護士会所属
あずま綜合法律事務所
福岡県福岡市中央区赤坂1丁目16番13号上ノ橋ビル3階
電話 092-711-1822

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