事業を経営するうえで「顧問弁護士は必要なのか」と考えることがあるかと思います。
顧問弁護士を置くことは、費用がかかるといったデメリットもありますが、多くのメリットをもたらします。
この記事では、顧問弁護士を置くことで得られるメリットについての解説と、弁護士がいない場合の問題点について解説します。
顧問弁護士を検討している方はもちろん、顧問弁護士はいらないのではないか?と思っている方も、ぜひ参考にしてください。
「弁護士に相談なんて大げさな・・・」という時代は終わりました!
経営者・個人事業主の方へ
顧問弁護士とは
顧問弁護士とは、企業や個人事業主が事業上で法律問題や不安ごとが起こった際に、継続的に相談できる弁護士(法律事務所)のことを指しています。
通常の弁護士とは違うんですね。
企業に直接雇用されている弁護士(組織内弁護士)やスポット的に相談・依頼をする弁護士とは区別されています。
顧問弁護士の顧問費用(相場)
弁護士や法律事務所と顧問契約をした場合、基本的には毎月定額の顧問料を支払うことになります。
顧問料は弁護士や法律事務所によってそれぞれ決められています(自由報酬制)が、2009年に日本弁護士連合会が行ったアンケートによると、おおよそ7~8割の弁護士が3~5万円/月額としています。
ただし、コンプライアンスの意識が高まる昨今では顧問弁護士費用の平均値が上がっている可能性も十分考えられますので、参考程度にとどめておくと良いかと思います。
また、会社の規模や事業内容・顧問弁護士が提供しているサービス内容によっても顧問料は変わるため、実際に顧問契約を結ぶ際にはこういった点も含めて確認しましょう。
顧問弁護士費用は、会社経費として処理することができます。
顧問弁護士の3つの役割
顧問弁護士の役割は、大きく分けると以下の3つです。
トラブル対応など損失の回避
法的トラブルが起こった時に、顧問弁護士にトラブルの対応を任せることができます。
トラブルに対応しなければならなかった従業員・時間・金銭的コストを最小限に抑えることが期待できるでしょう。
さらには、トラブルになる前段階から顧問弁護士に相談することで、トラブル自体を未然に防ぐことも可能になります。
体制の整備と権利の保護
顧問弁護士を雇うことで、コーポレートガバナンスや社内法務など会社の体制を整え、さらにリスク調査を行うことにより、安定した会社にすることが可能です。
また、権利義務の保全など、事業者としての権利を守るためのサポートを行うことができ、法的に強い会社にすることが可能です。
社内外に対して「安心感のある会社」をアピールすることもできます。
チャンスの創出
法律に関わることを顧問弁護士に任せることができると、経営者はその分の時間や労力を事業経営へ回せます。
その結果、営業機会を逃すことなく積極的に事業に取り組むことが可能になります。
また、法律で会社の守りを固めることにより、同時に攻めの経営を行うことも期待できるでしょう。
依頼できる相談例
顧問弁護士との契約内容にもよりますが、基本的に事業や会社にかかわることであれば社内・社外問わず相談が可能です。
- 契約書作成・チェック
取引先との契約書や従業員との契約書を作成、また契約書が法的に問題ないかどうかのチェック - 取引先とのトラブル
債権回収や、訴訟問題に発展した際の訴訟代理・和解交渉等の対応 - リスク管理
社内のコンプライアンス体制の構築やリスク分析、トラブルの予防 - 労務トラブル
従業員からの不当解雇の訴えや残業代請求等、労務に関するトラブルへの対応 - 経営に関する法律相談
M&A、事業継承、資金調達等、経営に関する法律問題についての相談・サポート
ほかにも、従業員の身に起こった法的トラブルについても相談することができる顧問弁護士もいます。
顧問弁護士がいるメリット
顧問弁護士がいると得られる具体的なメリットについて知りたいです。
顧問弁護士と契約すると、以下のようなメリットが得られます。
1,弁護士を探す手間を省ける
顧問弁護士を雇っていれば、トラブルが発生した際にすぐに相談に移ることができます。
顧問弁護士がいないと弁護士探しから始めなければなりませんし、場合によっては2~3人の弁護士と相談し依頼するかどうか検討する、ということも少なくありません。
2,相談のための予約が必要ない(すぐに相談できる)
通常、弁護士へ相談・依頼する際には毎回事前に予約をしてから法律事務所へ訪問する必要があります。
この点、顧問弁護士がいれば、予約をせずともメールや電話で気軽に相談を行うことができます。
3,トラブルの早期解決が見込める
顧問弁護士は、顧問先の企業の案件を優先的に受け付けてもらえることが多くあります。
トラブルが深刻化する前に相談・依頼が可能となり、会社の損失を最小限に抑えることができます。
4,会社のリスク管理ができる
コーポレートガバナンス(企業統治)はもちろん、パワハラ・セクハラ等の従業員同士で起こり得るトラブルについても顧問弁護士へアドバイスを求めることができます。
また顧問弁護士がいることにより、社内問題自体を予防する効果も期待できます。
5,法律に関する情報を得ることができる
例えば自社の事業にかかわることで法改正があった場合、何がどのように変わったかを自分で調べて勉強し、必要に応じて契約書や社内規則を変更しなければなりません。
こういった時に顧問弁護士がいれば、分かりやすく説明をしてもらえたり、契約書や規則の変更についてもアドバイスを受けられたりすることができます。
6,法的なことを任せられることにより経営に集中できる
「餅は餅屋」という言葉があるように、法律に関することを法律の専門家である弁護士に任せることで、法律について調べる時間や対応する手間をそのまま事業へ費やすことができます。
7,企業の信頼性を高めることができる
自社のHPや会社概要などで顧問弁護士がいることを記載することができます。
取引先や自社商品ユーザーなど社外の人間に対して、法律を遵守している会社であるとアピールすることができます。
8,従業員への安心感
「いざという時には顧問弁護士がいる」という安心感を従業員にも与えることができます。
営業職や販売員など、直接ユーザーと対面する従業員は、仕事をする中で少なからず不安を感じることもあるかと思います。
そんな時に「顧問弁護士」という存在を身近に感じることができれば、安心感を持って仕事に集中できるでしょう。
顧問弁護士がいるデメリット
顧問弁護士のメリットはたくさんありますね。
ただし、場合によっては、以下のようなデメリットを感じることもあるかと思います。
顧問料がかかる
上述のとおり、トラブルの有無にかかわらず、毎月顧問弁護士料がかかります。
また、顧問弁護士を雇ったにもかかわらず、法的トラブルや相談事が少ない場合には費用倒れになってしまう可能性もあります。
顧問弁護士が対応できない案件もある
基本的には、自社の事業内容や企業法務に精通している弁護士を顧問とするかと思います。
しかし、専門的な知識が必要となるトラブルが発生した場合には、顧問弁護士だけでは対応できないことも稀にあります。
このような場合には、顧問料を支払っているにも関わらず、対応できる別の弁護士を探し、相談・依頼をする必要があります。
従業員の法的トラブルも相談可能な場合、会社と従業員間のトラブルを相談しづらい
顧問弁護士との契約で「従業員の身に起きたトラブルも相談可能」としている場合、利益相反の問題でどちらか一方の案件しか相談することができない場合があります。
例えば従業員が「会社に不当解雇された」という相談を顧問弁護士にした時、弁護士がこの依頼を受けた場合には企業はこの問題について同じ弁護士へ依頼することはできません。
顧問弁護士がいない場合に起こり得る問題とは
事業を行う上で顧問弁護士がいない場合、どのような問題が起こり得るでしょうか。
主に以下3つの問題が起こり得ると考えられます。
相手方と大きなトラブルに発展するまで相談できない
心配事やちょっとした疑問を気軽に相談できる相手がいない場合、まずは自分で解決しようと考えるかと思います。
しかし、法律に詳しくないと、相手方と話がこじれてしまったりトラブルがますます大きくなってしまったり、自分だけで対応できなくなってしまうことも少なくありません。
トラブルが大きくなってから弁護士に相談する…というような状態になってしまうと、企業にとって良い結果が得られる可能性は低くなってしまいます。
問題視していない部分について相談できない
社内でトラブルと認識していない部分については相談することができません。
顧問弁護士がいる場合には、顧問弁護士が会社全体を総合的に見ているため、何か問題があるときには指摘することができます。
しかし、顧問弁護士がいない場合には、社内の人間が気づくまで問題が放置されてしまう危険性があります。
リスク管理がおろそかになる可能性がある
事業活動に専念するあまり、法的リスクまで手が回らずリスク管理がおろそかになってしまう可能性があります。
目の前の仕事を一番に考えることは大切ですが、知らず知らずのうちに法的トラブルが発生し、大事になってからようやく気付く(手を付ける)ことになると、解決までに多大な労力・時間・コストがかかってしまいます。
顧問契約ではなく「弁護士保険」で備えるという方法も
個人事業なので、顧問弁護士を雇うのは大げさな気がして、今一歩踏み出せません…。
顧問弁護士がいないリスクについて理解していても、躊躇してしまいますよね。
しかしながら、万が一のため、法的トラブルに備えておきたいという場合には、「弁護士保険で備える」というもの一つの手です。
弁護士保険とは、日常生活や事業活動で発生する法的トラブルに対し、弁護士へ依頼した際にかかった弁護士費用について補償することができる保険です。
主な補償内容は、法律相談料・着手金・報酬金などで、加入する保険商品やプランによって、保険金として支払われる金額の割合(縮小てん補割合)が異なります。
弁護士保険に加入する際には十分に比較・検討しましょう。
また、弁護士保険の中には、日常生活上のトラブルに特化したものもあります。
これは、プライベート上のトラブルについて補償することができる保険のため、事業性を伴うトラブルについては基本的に補償の対象外となります。
事業上でのトラブルを補償対象としている弁護士保険に加入することで、経済的な負担を軽減しつつ、いざという時に弁護士に頼れるという安心感を得ることができます。
まとめ
いかがでしょうか。
顧問弁護士と契約することにより、すでに起こってしまっているトラブルはもちろん、トラブルの予防やちょっとした心配事も早期に相談することができます。
一方で、顧問料がかかったり、専門分野以外の相談については対応してもらえなかったりなどのデメリットもあることにも留意しましょう。
顧問弁護士を選定する際には、
- 自社との相性
- 顧問契約したことで、できることとできないこと
- 顧問費用について
を確認し、顧問弁護士を最大限に活用できるようにしましょう。
あらかじめ弁護士保険などで、今後の様々なリスクに備えておくことをおすすめします。
弁護士 黒田悦男
大阪弁護士会所属
弁護士法人 茨木太陽 代表
住所:大阪府茨木市双葉町10-1
電話:0120-932-981
事務所として、大阪府茨木市の他、京都市、堺市にて、交通事故被害者側に特化。後遺障害認定分野については、注力分野とし、医学的研鑽も重ねています。
また法人の顧問をはじめ事業上のトラブルにも対応をしています。
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