「訴えるぞ」と言ったら脅迫罪?|警察が動く基準と過去の裁判例

「訴えるぞと言われた」
「法的手段を取ると脅された」
「SNSで晒すぞと言われて怖い」

このように、脅迫的な言葉を投げかけられたとき、「これって脅迫罪になるの?」「警察に相談すべき?」「どこからが犯罪なの?」と疑問に思う方も多いでしょう。

結論から言うと「訴えるぞ」という発言は、
基本的には正当な権利を行使するための予告として使われますが、

実際に訴える意思がなく相手を威圧する目的で発言した場合は脅迫罪が成立する可能性があります。

過去の判例でも、このような発言が脅迫罪として処罰されたケースが存在します。

本記事では、脅迫罪の成立要件や「訴えるぞ」発言の法的評価、被害者・加害者それぞれが取るべき対応について、弁護士監修のもと、具体的な判例を交えて詳しく解説していきます。

記事に入る前に・・・

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目次

脅迫罪とは

脅迫罪を正しく理解するためには、まず法的な定義と成立要件を把握する必要があります。

刑法222条に規定された脅迫罪は、単純に相手を怖がらせるだけでは成立せず、特定の条件を満たした場合にのみ犯罪として処罰されます。

脅迫罪が成立する要件

脅迫罪は刑法222条に「生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する」と規定されています。

第2項では親族に対する害悪の告知も同様に処罰すると定められています。

脅迫罪が成立するためには、客観的要件として「害悪の告知」があること、主観的要件として「脅迫の故意」があることが必要です。

また、害悪の告知は被害者本人またはその親族に向けられたものでなければなりません。

すなわち、実際に被害者が恐怖を感じたかどうかではなく、一般人が恐怖を感じる程度の告知であったかという客観的基準で判断されます。

「害悪の告知」とは

害悪の告知とは、相手の生命、身体、自由、名誉、財産という5つ権利(法益)に対を侵害する旨を伝えることです。

刑法においては、この5つの法益のみが脅迫罪の大正とされており、それ以外の利益への侵害予告は原則として脅迫罪に該当しません。

このように、対象となる法益が明確に限定されていることを「限定列挙」といいます。

それぞれ、具体的な害悪の告知については以下のとおりです。

  • 財産に対する害悪:「家を燃やす」「車を壊す」など財物の損壊を示唆する発言
  • 生命に対する害悪:「殺すぞ」といった直接的な殺人予告が含まれる言葉
  • 身体に対する害悪:「痛い目見させる」「ぶっとばす」など暴力を示唆する発言
  • 自由に対する害悪:「ここから出さない」「拉致する」など行動の自由を奪う内容
  • 名誉に対する害悪:「前科をバラす」「秘密を暴露する」など社会的評価を低下させる脅し

判断基準とは

脅迫罪が成立するかどうかは、発言時の状況や関係性によって判断されます。

たとえば、上下関係がある場合や、過去にトラブルがあった相手に対する発言は、より慎重に評価される傾向があります。

また、発言の頻度や執拗さも考慮要素の一つです。

一度だけ発言した場合と継続的な威圧行為では、法的な評価が大きく異なります。

相手が実際に恐怖を感じたかどうかではなく、一般人が同じ状況でどう感じるかという客観的基準で判断されるのが特徴です。

また、発言者の年齢や体格、社会的地位なども総合的に考慮されます。

脅迫罪の立証は難しい

実際の刑事事件において、「訴える」と発言した時点での真意を立証することは、極めて困難です。

発言者が本当に訴訟を起こす意思があったのか、単に相手を脅すためだったのかを証明するには、発言前後の状況や関連する証拠を総合的に検討する必要があります。

このように、脅迫罪の立証は困難なため、実際は「訴えるぞ」といった発言のみで成立するケースは多くありません。

ただし、他の脅迫的な言動と組み合わされた場合や、明らかに虚偽の主張に基づく発言の場合は、起訴される可能性が高くなります。

脅迫罪の保護対象になる範囲

脅迫罪の保護対象は、被害者本人とその親族に限定されています。

親族の範囲は配偶者、6親等以内の血族、3親等以内の姻族と法律で明確に定められており、友人や恋人、同僚などは含まれません。

ただし、ペット動物に対する害悪の告知は、法的には「物」として扱われるため、被害者の財産に対する脅迫として成立します。

「お前の犬を殺す」といった発言は財産に対する害悪の告知に該当するのです。

また、法人自体は脅迫罪の対象にはなりませんが、法人に所属する特定の個人やその親族に向けられた脅迫であれば、脅迫罪が成立する可能性もあります。

脅迫罪の成立には客観的判断が用いられる

脅迫罪の成立においては、被害者が実際に恐怖を感じたかどうかは直接的な要件ではありません。

重要なのは、一般的な社会通念に照らし、通常の人であれば恐怖を感じるであろう内容の告知があったかという客観的な判断です。

この判断には、発言者と被害者の関係性、年齢差、体格差、社会的地位の差などが総合的に考慮されます。

同じ言葉でも、小さな子どもが言った場合と成人男性が言った場合では、脅迫罪の成否に違いが生じる可能性もあります。

また、対等な関係での冗談めいた発言と、上下関係がある中での発言では、法的評価が大きく異なることもあります。

脅迫罪に「未遂罪」は存在しない

脅迫罪には未遂罪の規定が存在せず、害悪の告知をした時点で犯罪が完成します。

これは強要罪や恐喝罪とは大きく異なる特徴です。

相手が実際に恐怖を感じたかどうか、何らかの行動を起こしたかどうかは問題ではなく、一般人が恐怖を感じる程度の害悪の告知があれば脅迫罪は成立します。

この点で脅迫罪は、結果の発生を要しない「危険犯的な性格」を持つ犯罪と位置づけられています。

したがって、脅迫の意図をもって害悪を告知した瞬間に犯罪は完成し、その後の相手の反応や実際の被害の有無は刑事責任の成立に影響しません。

よくある言葉ごとの判断

日常的に使われる言葉でも、状況次第では脅迫罪に該当する可能性があります。

ここでは具体的な発言例を挙げながら、それぞれの法的リスクについて詳しく解説します。

「訴えるぞ」「弁護士に言うぞ」

「訴えるぞ」という発言は、基本的には正当な権利行使の予告として保護されます。

契約違反や不法行為に対して民事訴訟を起こす旨を伝えることは、法的に認められた権利の行使予告です。

同様に「弁護士に相談する」「法的措置を検討する」といった発言も、適切な解決手段を模索する意思表示として理解されます。

ただし、実際に訴える意思がないにもかかわらず、相手を威圧する目的で発言した場合は脅迫罪が成立する可能性があります。

特に、法的根拠が薄い事案で何度も「訴える」と発言を繰り返す行為は、単なる脅しと判断されるリスクが高まります。

発言の真意と実際の行動が一致していることが、適法性の重要な判断基準となります。

「会社に言うぞ」「上司に言うぞ」

職場や取引先との関係で「会社に言いつける」「上司に報告する」という発言は、多くの場合において適切な報告・相談行為として位置づけられます。

業務上の問題や不適切な行為について、適切な報告ルートを通じて上位者に相談することは、むしろ推奨される行為だからです。

しかし、些細な問題を大げさに騒ぎ立てる意図や、相手の社会的地位を脅かす目的で発言した場合は、名誉に対する害悪の告知として脅迫罪に該当する可能性があります。

特に事実に基づかない内容や、明らかに誇張された報告をすると予告した場合は、法的リスクが高くなります。

この場合、判断ポイントとなるのは、以下の2点です。

  • 報告する内容が事実であるかどうか
  • その報告に正当な必要性があるかどうか

「晒すぞ」「ネットに書くぞ」

インターネット上での情報公開を予告する「晒す」「ネットに書く」という発言は、名誉に対する害悪の告知として脅迫罪に該当する可能性が高い表現です。

SNSや掲示板で個人情報や恥ずかしい内容を公開すると予告することは、相手の社会的評価を著しく低下させる脅迫行為と判断されるためです。

ネット上での脅迫行為は証拠が残りやすく、第三者からの通報リスクも高い特徴があります。

実際に令和3年9月には、動画配信者に対して「明日ナイフで何度もさしまくる」「明日、家にトラックで突っ込む」といった書き込みをした男性が逮捕される事件が発生しました。

デジタル証拠は削除しても復元される可能性があるため、投稿する際は特に慎重になる必要があります。

「覚悟しとけよ」「覚えとけよ」

「覚悟しておけ」「覚えておけ」といった曖昧な表現は、具体的な害悪の内容が明示されていないため、単体では脅迫罪の成立要件を満たさない場合が多いです。

しかし、発言の前後の文脈や状況によっては、暗黙的な害悪の告知として解釈される可能性があります。

これらの発言が脅迫罪に該当するかどうかは、発言者と相手の関係性、過去のトラブルの有無、発言時の状況などを総合的に判断する必要があります。

特に上下関係がある場合や、過去に暴力行為があった関係では、曖昧な表現でも具体的な害悪を示唆していると解釈されやすくなるでしょう。

よって、一般人が同じ状況で恐怖を感じるかという、客観的基準で判断されることになります。

「訴えると言って訴えない」は脅迫罪?

「訴える」と宣言したものの実際には訴訟を起こさない場合、その法的な評価は一概に決められず、慎重な判断が求められます。

発言時の真意と実際の行動との食い違いは、脅迫罪が成立するかどうかを判断するうえでの重要なポイントとなります。

実際に訴える意思がある場合は脅迫罪にはならない

発言時に真摯に訴訟を検討しており、実際に法的手続きを進める意思があった場合は、結果として訴訟に至らなくても脅迫罪は成立しません。

訴訟の検討過程で和解が成立したり、証拠不足で断念したり、費用対効果を考慮して取り下げたりすることは、十分にありうるからです。

重要なのは発言時点での主観的意思であり、その後の状況変化によって訴訟を取りやめたとしても法的に問題ありません。

正当な権利行使の意思があったことが客観的に認められれば、「権利行使の範囲内」として適法性が認められます。

たとえば、弁護士への相談記録や関連資料の収集など、実際に訴訟準備を行った形跡があれば、真摯な意思があったことの証左となります。

訴える気がなく脅す目的で言った場合には脅迫罪の可能性あり

初めから訴訟を起こす意思がないにもかかわらず、相手を威圧する目的で「訴える」と発言した場合は、脅迫罪が成立する可能性があります。

ただし、実際は発言者の真意を立証することが、極めて困難です。

「訴える」と発言した時点で、本当に訴訟を起こす意思があったのか、単に相手を脅すためだったのかを客観的に証明するには、発言前後の状況や関連証拠を総合的に検討する必要があります。

このような立証の困難さから、現実には「訴えるぞ」発言のみで脅迫罪が成立するケースは稀です。

明らかに法的根拠がない事案での執拗な発言や、他の脅迫的言動と組み合わされた場合に、起訴される可能性が高くなります。

判例に学ぶ「脅迫」の境界線

脅迫罪の境界線を理解するためには、過去の判例を詳しく分析することが大切です。

裁判所がどのような基準で脅迫行為を判断してきたかを知り、「脅迫罪」が認定されるラインを理解しましょう。

大正3年の大審院判例

この判例は、「訴えるぞ」発言の法的評価を示した、重要な先例です。

事案の詳細を見ると、被告人がAらから詐欺罪で告訴されたものの不起訴処分となった後、告訴した相手方に対して虚偽告訴罪での告訴を予告する書面を送付したというものでした。

原審では告訴権者による通告は犯罪に該当しないとして無罪判決が出されましたが、大審院は異なる判断を示しました。

裁判所は「実際に告訴する意思がないにもかかわらず、相手を畏怖させる目的で告訴する旨の通告をした場合は、権利実行の範囲を超脱した行為であり脅迫罪を構成する」と判示しています。

ただし、この具体的事案では被告人が虚偽告訴を受けたと確信していたため、故意がなく権利の実行として適法と判断されました。

この判例により、告訴予告の適法性は発言者の主観的意思と客観的状況の両面から判断すべきであるという考え方が示されました。

ビラ配布やハガキによる脅迫事例

昭和32年の最高裁判例では、ビラによる脅迫行為が問題となりました。

佐賀県本部警察部隊長の官舎近くのごみ箱に「三月貴様は勤労者、農民を仮装敵として演習を行ったが勝つ自信があるか、独立を欲する国民の敵となり身を滅ぼすより民族と己のために即時現職を退陣せよ」と記載したビラを貼り付けた行為について、脅迫罪の成立が認められました。

また、昭和35年の最高裁判例では、対立する派閥の中心人物の自宅に「出火御見舞申上げます、火の元に御用心」という内容のハガキを送付した行為が、脅迫罪に該当するとされました。

弁護側は一般人がこのような内容で畏怖の念を抱くことはないと主張しましたが、裁判所は派閥抗争が激化している時期に現実の出火もないのに見舞いハガキが送られれば、放火の危険を感じるのが通常であると判断しています。

これらの判例は、表現の自由も公共の福祉に反する限度で制約を受けること、また害悪の告知に明白で現在の危険が必要ないことを示しています。

SNSでの「晒すぞ」発言が問題となった事例

令和3年9月には、インターネット上での脅迫事件が発生しました。

動画配信を行っていた少女に対して、前年の8月や9月に「明日ナイフで何度も刺す」「明日、家にトラックで突っ込む」といった書き込みをした20代男性が脅迫容疑で逮捕されました。

この事件は、現代におけるSNS脅迫の典型例です。

インターネット上で行われる脅迫行為の特徴は、証拠が残りやすく、第三者の目に触れやすいことです。

また、匿名性があるために軽い気持ちで行われがちですが、捜査技術の向上により特定される可能性が高くなっています。

「晒す」という行為は相手の名誉を傷つける害悪の告知として脅迫罪に該当する可能性が高く、実際にネット上で個人情報を公開すると予告することは、現代社会における深刻な脅迫行為と言えるでしょう。

警察を介した間接的な脅迫事例

昭和26年の最高裁判例では、警察を介した間接的な脅迫行為が問題となりました。

青年団の映画上映をやめさせるため、警察署に対して「若い者30名程つれて小学校にフイルムを没収に行く」旨を通知した行為について、脅迫罪の成立が認められています。

裁判所は、被告人が警察から青年団にその内容が伝達されることを十分認識していたこと、脅迫罪における害悪の告知は被害者に対して直接行う必要がなく、第三者を介して被害者が害悪を受ける可能性があることを知れば足りることを理由として、脅迫罪の成立が認められました。

この判例は、現代のSNSやメールでの脅迫においても重要な意味を持ちます。

直接相手に送信しなくても、相手が知ることになると予想される方法で害悪を告知すれば、脅迫罪が成立する可能性があるのです。

表現の自由との境界線

判例を通じてわかることは、表現の自由と脅迫罪の境界線が文脈と状況によって大きく左右されることです。

同じ表現でも、発言者と相手の関係、社会情勢、発言の背景などによって法的評価が変わります。

特に政治的表現や批判的言論の場合、表現の自由として保護される範囲と脅迫罪に該当する範囲の境界は微妙です。

ビラ配布事例では表現の自由よりも脅迫罪の成立が優先されましたが、これは具体的な害悪の告知が含まれていたためです。

抽象的な批判や意見表明と、具体的な害悪の告知とを区別することが、判断するうえでの重要な基準となっています。

脅迫被害を受けたら

脅迫被害を受けた場合、まずは証拠を確保することが重要です。

法的手続きを理解し、適切に対応することが、加害者の適正な処罰や再発防止につながります。

被害届・告訴の流れ

被害届は警察に犯罪被害を報告する手続きのことで、提出は比較的簡単です。

被害届が受理されると、警察は事件として認知し、必要に応じて捜査を開始します。

ただし、被害届を提出しただけでは、警察に捜査の義務が発生するわけではないため、事件化されない可能性もあります。

一方、告訴は検察官に対して犯罪の事実を申告し、加害者の処罰を求める意思表示です。

告訴が受理されると、警察には捜査義務が発生するため、被害届よりも高い確率で操作が行われることになります。

脅迫罪は非親告罪のため、被害者の告訴がなくても起訴されることはあります。

しかし、実際には被害者が告訴していることで事件の重要性が認識されやすくなり、捜査や起訴に繋がりやすいのが現状です。

なお、告訴状の作成には法的知識が求められるため、弁護士に相談することをおすすめします。

脅迫罪に関する告訴は、犯罪行為を知った日から6ヶ月以内に行う必要があるため、早めの対応が重要です。

証拠を残す方法

脅迫事件において、証拠の保全は極めて重要です。

具体的には、以下の資料が脅迫罪の証拠として、有効とされています。

  • 対面で脅迫した際の会話や電話の内容を録音した音声
  • 脅迫文書やメール、LINEなどのメッセージ履歴
  • SNSやブログ、ネット掲示板などの投稿、またはその投稿画面のスクリーンショット
  • 脅迫している様子を撮影した動画、防犯カメラの映像
  • 第三者の目撃証言

音声録音は相手に知られないよう行うことが重要で、スマートフォンの録音アプリを使用すれば簡単です。

デジタル証拠の場合は、改ざんされていないことを証明するため、作成日時が明確に記録されているものを保存しましょう。

SNSの投稿はスクリーンショットだけでなく、URLや投稿日時も記録しておくことが重要です。

また、証拠は複数の方法で保存し、バックアップを作成しておけば、万が一のデータ消失に備えられます。

警察は積極的に動かない

脅迫事件において警察が積極的な捜査に乗り出さない理由に、証拠不足や事件の軽さが挙げられます。

口頭での脅迫は証拠が残りにくく、被害者の証言だけでは立件が困難と判断されやすいためです。

また、民事的な争いと判断され、当事者間での解決を促される場合もあります。

そのため、警察に対応してもらうには、客観的証拠の提出が最も効果的です。

録音データやメッセージの履歴、目撃者の証言など、第三者が確認できる証拠があれば警察も動きやすくなります。

被害の継続性や悪質性を示すことも重要で、一回限りの発言ではなく、継続的な嫌がらせや脅迫があることを具体的に証明する必要があります。

また、脅迫によって実際に受けた精神的苦痛や日常生活への影響を医師の診断書などで客観化することも有効です。

精神的被害への対処法

脅迫被害は身体的な被害がなくても、被害者に深刻な精神的ダメージを与えます。

恐怖感や不安感が継続することで、日常生活に支障をきたす場合も少なくありません。

このような精神的被害に対しては、医療機関での治療を受けることが重要です。

心療内科や精神科での診断書は、法的手続きにおいても被害の客観的証拠となります。

また、PTSD(心的外傷後ストレス障害)などの診断があれば、より深刻な被害として認識され、加害者への処罰や損害賠償請求において有利に働く可能性があります。

被害から立ち直るためには、カウンセリングや薬による治療を受けることも大切です。

加害者側が注意すべきこと

正当な権利を主張する場合でも、表現方法や状況によっては脅迫罪に問われてしまうリスクがあります。

主張に法的根拠があっても、伝え方次第では犯罪行為と誤解される可能性があることを理解しておきましょう。

正当な主張でも「脅迫」と誤解されるリスク

契約違反や不法行為に対して法的措置を検討することは正当な権利ですが、その伝え方によっては脅迫と受け取られる危険性があります。

特に感情的になった状態で「絶対に訴えてやる」「徹底的に戦う」といった強い表現を用いると、相手は威圧されたと感じる可能性があります。

また、相手との力関係や社会的地位の差も重要な要素です。

上司が部下に対して、取引先が下請け業者に対して法的措置を示唆する場合は、同等の立場での発言よりも脅迫的な印象を与えやすくなります。

さらに、夜間や密室での発言、大声での威圧的な態度なども、正当な内容であっても脅迫として解釈される要因となりえるので、言い方には注意が必要です。

同じ言葉でも発言者の年齢、体格、関係性によって脅迫の成否が変わることがあります。

「権利行使」と「脅迫」の線引きを理解する

大正3年の大審院判例では、権利行使の範囲を超えた行為として脅迫罪の成立が認められています。

この境界線を理解するためには、発言時点での真意と客観的状況の両面を考慮する必要があります。

真の権利行使として認められるためには、まず法的根拠の存在が前提となります。

契約書の存在、法令違反の事実、損害の発生など、客観的に確認できる根拠があることが重要です。

次に、実際に法的手続きを進める「意思」も必要です。

単に相手を威圧する目的ではなく、問題解決のための手段として法的措置を検討していることを示す必要があります。

さらに、表現方法も適切でなければなりません。

冷静で事実に基づいた説明を行い、感情的な表現や威圧的な態度は避けるべきです。

脅迫罪と混同されやすい犯罪

脅迫罪は他の類似する犯罪と混同されやすいものです。

特に実務上では、恐喝罪や名誉毀損罪との区別がつきにくく、それぞれの違いを正しく理解することが重要です。

恐喝罪との違い

恐喝罪と脅迫罪の最大の違いは、財物の取得や財産上の利益を目的とするかどうかにあります。

恐喝罪は「相手の反抗を抑圧しない程度の脅迫や暴行を用いて恐喝し、財物を交付させ、あるいは財産上不法の利益を得、または他人にこれを得させた場合に成立する」とされています。

刑罰の重さも大きく異なり、脅迫罪は「2年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金」であるのに対し、恐喝罪は「10年以下の拘禁刑」です。

恐喝罪には罰金刑の規定がないため、有罪になれば執行猶予がつかない限り刑務所に収監されることになります。

また、未遂罪の有無も重要な違いです。

前述のとおり、脅迫罪には未遂罪がなく、害悪の告知をした時点で犯罪が完成します。

一方、恐喝罪には未遂罪があり、脅迫したものの相手が財産を差し出さなかった場合でも恐喝未遂罪として処罰される可能性が高いです。

たとえば、「金を払わなければ○○をバラす」といった発言は、脅迫の手段と財産取得の目的が組み合わされているため、恐喝罪に該当する可能性が高くなります。

名誉毀損罪・侮辱罪との違い

脅迫罪と名誉毀損罪・侮辱罪は、いずれも相手の人格や社会的評価に関わる犯罪ですが、その構造は根本的に異なります。

脅迫罪は将来の害悪を告知する犯罪であるのに対し、名誉毀損罪や侮辱罪は現在の行為によって相手の社会的評価を低下させる犯罪です。

名誉毀損罪は、公然と事実を摘示して人の名誉を毀損することで成立します。

「お前の不倫をバラしてやる」という発言は、まだ公表していない段階では脅迫罪に該当しますが、実際にその事実を公然と摘示すれば名誉毀損罪となります。

一方、侮辱罪は事実の摘示を伴わずに、公然と人を侮辱することで成立します。

重要なのは、同じ発言でも時点や方法によって適用される犯罪が変わることです。

「秘密をバラす」と予告する段階では脅迫罪、実際に秘密を暴露すれば名誉毀損罪や侮辱罪に該当する可能性があるため、注意が必要です。

また、これらの犯罪は併存することもあり、一連の行為の中で複数の犯罪が成立する場合もあります。

刑罰については、名誉毀損罪は「3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金」、侮辱罪は「拘留若しくは科料又は30万円以下の罰金」とされており、脅迫罪とは異なる法定刑が設定されています。

強要罪との違い

強要罪は脅迫罪と密接な関係がある犯罪ですが、その目的と構造において重要な違いがあります。

強要罪は「本人または親族の生命、身体、自由、名誉、財産に害を加える旨の告知をして脅迫し、または暴行を用い、人に義務のないことをさせるか、権利の行使を妨害すると成立する犯罪」とされています。

脅迫罪が単純に害悪を告知することで成立するのに対し、強要罪は脅迫を手段として用いて相手に特定の行為をさせることが目的です。

「謝罪しないと○○をバラす」「辞職しなければ○○する」といった発言は、相手に義務のない行為を強要する目的があるため、強要罪に該当する可能性があります。

刑罰において、強要罪は「3年以下の拘禁刑」とされており、脅迫罪よりも重い処罰です。

また、強要罪にも未遂罪があるため、脅迫したものの相手が義務のないことをしなければ強要未遂罪となります。

このように、脅迫が手段として用いられた場合は、その目的によって適用される罪名が変わります。

脅迫罪と類似犯罪の比較表

犯罪名成立要件法定刑未遂罪主な違い
脅迫罪害悪の告知2年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金なし単純に脅すだけで成立
恐喝罪脅迫+財物取得・財産上の利益10年以下の拘禁刑あり金銭等の要求が目的
強要罪脅迫+義務なき行為の強制3年以下の拘禁刑あり特定の行為を強制する目的
名誉毀損罪公然と事実摘示+名誉毀損3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金なし現在の行為で社会的評価を低下

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まとめ

「訴えるぞ」という発言は、正当な権利行使として保護される場合と脅迫罪に該当する場合の境界線があいまいです。

実際に訴える意思がなく相手を威圧する目的での発言は、権利行使の範囲を超えた脅迫行為として処罰される可能性があります。

重要なのは発言時の真意と客観的状況です。

法的根拠があり実際に手続きを進める意思がある場合は適法ですが、単に相手を怖がらせる目的では脅迫罪のリスクがあります。

脅迫罪、恐喝罪、強要罪、名誉毀損罪はそれぞれ異なる成立要件と刑罰を持つものです。

疑問がある場合は弁護士への相談を検討し、適切な法的判断を仰ぐことをおすすめします。

弁護士
水島昂弁護士

水島昂 弁護士

東京弁護士会所属
弁護士法人小林綜合法律事務所
東京都千代田区有楽町1-9-4 蚕糸会館2階
電話 03-6212-5201

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