SNSが社会に浸透し、企業が自らネット上で発信することも一般的になった現代において、ソーシャルメディアの取り扱い、すべきことすべきでないことの理解は不可欠です。
この記事では、ソーシャルメディアを取り扱う前に、前提となる指針やルールを作成することの目的、作成方法について解説していきます。
「弁護士に相談なんて大げさな・・・」という時代は終わりました!
経営者・個人事業主の方へ
ソーシャルメディアポリシーとは?
企業がソーシャルメディアを使用するにあたってどのように行動すべきか、企業のスタンスや態度、心構えを簡潔に説明した文書のことをソーシャルメディアポリシーといいます。
ソーシャルメディアポリシーを作成・公表することで、企業の利益や信用、評判、ブランドイメージを守ることはもちろん、
不適切な投稿によって、企業が法的な問題に直面したり炎上したりといったトラブルからの回避を期待できます。
コミュニティガイドラインとは?
コミュニティガイドラインとは、ソーシャルメディアの規約(免責事項・禁止事項・推奨事項・削除方針等)を指します。
例えばインスタグラムで企業としてアカウントを作成し投稿を行う場合、インスタグラムが定めたコミュニティガイドライン(利用規約)に反する投稿はしてはいけません。
同様にFacebookやTwitter等、それぞれのソーシャルメディアサービスが定めたガイドラインに従って運用する必要があります。
社内マニュアル(ガイドライン)とは?
社内ガイドラインとは、従業員を対象に取り決めた、ソーシャルメディア利用における指針とルールです。
従業員が個人のアカウントで自分自身や所属する企業を表現する際に確認する等とマニュアルしての役割も担います。
ソーシャルメディアポリシーを事前に作成する目的
炎上の未然防止と信頼の維持
SNSが社会に浸透した現代、社員や関係者が一人もSNSを利用していないという企業はないでしょう。
SNSでは瞬く間に情報が拡散され、中にはその真偽の検討がなされずに誤った形で世界に広まるものも珍しくありません。
ソーシャルメディアとの関わりがある以上、発信した情報が意図しない形で炎上する可能性があるため、そのようなトラブルのリスクを最小限にするために、事前にソーシャルメディアの取り扱い方を決めておく必要があります。
あらかじめソーシャルメディアポリシーを作成・発信しておくことでリスクを回避し、問題が発生してしまった場合は速やかな対処を取ることで消費者からの企業の信頼を維持することができます。
属人化した運用の防止
属人化とは、特定の業務の手順や状況の情報が作業担当者しか把握できておらず、周囲に情報が共有されていない状態を指します。
ごく少数でしか把握していなければ不足の事態の際に対応しきれない可能性があります。
また、トラブルが起きた際に、担当者が個人的な判断で対応してしまうことで、事態が悪化する可能性もあります。
このようなリスクを避けるために、担当のみでなく、担当部署全体としてソーシャルメディアをどう運用するのかルールと方針を明らかにしておく必要があります。
投稿のクオリティ維持
言葉遣いやトーンが日によって揺らげば企業自体も不安定な印象を持たれかねません。
また、何も決まりがない状態での発信では担当者の裁量によって情報の価値もブレるため、 一般消費者(情報の受け手)からの不信を招く可能性もあります。
何を発信するか(してはいけないか)、発信の手順と目的、テーマを明確にし、運用上のルールを定め明文化しておくと 運用担当者が変わっても共通の基準で情報を発信できます。
投稿・発信にあたっての推奨事項、注意事項、禁止事項をそれぞれ定めておくと良いでしょう。
ソーシャルメディアポリシーで制定すべきこと4選
①役割と責任について
ソーシャルメディアでの発信において、自社の役割と責任を表明します。
・基本方針や原則
企業としてどのような姿勢でソーシャルメディアを取り扱い、向き合うのかに関する基本的な考え方を基本方針や原則として定める。
・インターネットの特性に関する理解
発信された情報は世界に公開され、投稿の削除や取り消しを行っても拡散された情報全てを消去することはできない等、
インターネットの特性を理解した上で、真摯な姿勢でソーシャルメディアを使用することを明示する。
②情報の保護について
情報発信を行うにあたって、保護すべき情報や、漏洩の防止といった情報管理を表明しておく必要があります。
・顧客や取引先情報、機密情報の保護
経営に関する情報や、従業員・顧客の個人情報、非公開情報等をソーシャルメディアで発信しないことを明示する。
(直接的でなくとも顧客や取引先が特定されかねない情報を含む)
③法令遵守について
・第三者の権利の保護
著作権や肖像権、商標権等の第三者の権利を尊重し、二次利用においては関係法令を遵守することを明示する。
・誹謗中傷・名誉棄損の禁止
特定の個人や団体、性別、思想信条、宗教、政治に対する誹謗中傷や差別的な表現・発信を行わないことを明示する。
・真偽が確定できない情報発信の禁止
真偽が定かでない情報をソーシャルメディアで発信・拡散させないことを明示する。
④投稿のルールについて
・自社に関連する情報発信のルール
自社に関する発信を行う際は、発信方法や日時等について、管理部署や担当者の指示に従うことを明示する。
・従業員個人の責任の明確化
従業員が個人的に使用するソーシャルメディアの投稿は全て本人に責任があり、所属企業は一切関係ないことを明示する。
企業のソーシャルメディアポリシーの見本・事例
実際にどのようなガイドライン・ポリシーが運用されているか、作成において非常に参考になる事例を紹介します。
株式会社資生堂の事例
SNS戦略に注力する資生堂は、ソーシャルメディア参加の目的4つ、ソーシャルメディア参加に当たっての心構え7つを原則として掲げています。
消費者に積極的に発信していき、直接コミュニケーションをとる機会も少なくないため、ソーシャルメディアポリシーでは「お客様とどう向き合うか」という姿勢を徹底しています。
また、シンプルかつわかりやすい原則を掲げることで、従業員へ意識が浸透しやすいといえます。
株式会社サンリオの事例
Twitterアカウントは40以上、その他多くのメディアでアカウントを持つサンリオは、そのキャラクターの個性を表現しつつ、ユーザーが持つイメージを大事にするよう徹底されています。
” お互いに仲良く、助け合って、生きて行く ”ソーシャルコミュニケーションを基本方針としているサンリオは、企業からの一方的な発信ではなく、消費者同士を含めた相互コミュニケーションの実現をイメージしています。
そのため、コンテンツの免責事項、削除事由を、ユーザーに対して”投稿しないことを期待”するという表現で呼びかけています。
シックス・アパートの事例
従業員が守るべきガイドラインの作成にあたって、個々の従業員が積極的に営業活動を行うBtoBで企業ならシックス・アパートのガイドラインが参考になります。
同社では社員のみならず、契約社員、業務委託者といった関係者による発信を推奨しており、その活用のためのガイドラインを定め、公開しています。
個人のアカウントに同社の関係者であることを明記するかどうかは、各人の判断に委ねるとしていますが、明記する場合は” 会社としての正式な見解や回答では無いことを明示する”としています。
技術サポートを提供している同社では、専門的な話題を発信する際には”個人としての投稿であり、会社としての見解やサポートではない旨を分かるように”することで、炎上のリスクヘッジをしているといえます。
また、WEBサポートの企業らしく、ソーシャルメディアポリシーが定期的に更新され、古くならないようにしているのも、非常に意識が高く企業への信頼につながっているといえます。
シャープの事例
シャープはより消費者との距離を縮めるために企業公式のTwitterアカウントを運用しています。
また個人の裁量による発信が多く、企業公式アカウントとは思えないようなくだけた姿勢・発信が話題になりネット上でたびたび話題になっています。
そのためか、一般ユーザーがガイドラインを読むという前提で非常に簡潔にまとめられ、発信時間帯やツイートに対する返信・問い合わせ、ダイレクトメッセージの対応についても公表しています。
※シャープの炎上事例
過去にシャープは企業公式のTwitterアカウントとは別に、シャープ製品という公式アカウントを運用していました。
「シャープさん」「中の人」と多くのユーザーに親しまれていましたが、2017年に他社製品を値踏みするようなツイートを発信し、炎上してしまいました。(炎上後に当該アカウントは運営停止)
ガイドラインを作成していても炎上につながってしまうこともあるため、利用するソーシャルメディアのユーザーの傾向・性質を理解した上で運用する必要があります。
東海大学の事例
東海大学は学生を対象にガイドラインを作成・公表しています。
近年、若年層の不適切な内容の発信による炎上が増えており、個人が特定されることによって停学や退学、就職取り消し等へ発展してしまう事例も少なくありません。
また、個人情報の重要性、インターネットの性質についてわかりやすく簡潔にまとめてあり、PDFファイルをダウンロード・印刷することでA4三つ折りのパンフレットサイズになり、ハンドブック的に利用できるよう工夫されています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
企業として情報発信が当たり前になった現代だからこそ、企業はより深くインターネットの性質をよく理解し利用する責任があります。
また、従業員個人がSNSアカウントを持っているという前提のもと、予期せぬ炎上によって法律的にも大きな問題となる可能性を考えておく必要があります。
事例からわかる通り、ソーシャルメディアポリシーやガイドラインは利用を禁止し抑圧するものではなく、利用にあたっての指針・注意点をまとめたものです。
ソーシャルメディアを積極的に利用できるよう内容を簡潔にまとめて作成しましょう。
また、弁護士保険でトラブルの予防をするのはいかがでしょうか。
ひとりひとりに真摯に向き合い、事件解決に向け取り組んでます。気軽にご相談が聞けて、迅速に対応できる弁護士であり続けたいと考えております。
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