年金分割って?合意分割・3号分割 ~年金分割の手続について知ろう~

最近は、「年金分割」という言葉も、よく聞くようになってきました。

昔は、「年金分割って知ってます?」とお聞きすると、「え?何ですかそれ」という反応の方が多かったのですが、最近は、「知っています!私の場合はどうなりますか」という反応の方が大半になってきました。

ただ、なんとなくは知っていても、「年金分割って、旦那の年金の半分をもらえるんですよね?」など、誤解や細かな知識までは意外に知らない!という方も少なくないように思われます。

「年金分割」は、意外にその中身が複雑だったりするので、今回は少し詳しく、年金分割の内容や手続きについて、お話していきましょう。

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目次

年金分割って「財産分与」と関わりがあるの?

年金分割とは・・・その名のとおり「年金を分割すること」です。

ただ、「なぜ、法的に、年金を分割すべきなのか」というと、意外に知らない方も多いかもしれません。

実は、「年金分割」は、「離婚の際の財産分与」と大きな関わりがあります。

離婚をする際、通常、夫婦の間では、「財産分与」(夫婦の共有財産を原則として半分ずつ分けるというもの)が行われます。

例えば、「夫が結婚後、○○銀行に、1000万円の預貯金を貯めた」となれば、妻は、離婚の際、「半分の500万円を私にください」と言えるのが原則です。

たとえ、夫が年収1000万円の会社員で、妻が専業主婦だったとしても、基本的に関係ありません。

この預貯金1000万円は、夫と妻が、会社や家の家事などで、互いに助け合って働き、築いてきた財産と評価されるのです。

なので、お互いの収入の如何にかかわらず、半分(この場合は500万円)ずつ分けなさい」というのが法的な考え方です。

いわゆる「妻の内助の功」なんて言われますが、夫が働いていられるのは、妻の支えがあってこそ、という考え方ですね。

この考えが、年金の支払いについても反映されたのが「年金分割」ということになります。

年金分割の考え方

いま述べたように、夫や妻が働けるのは、夫婦の一方の支えがあるからこそ、と考えると、離婚したとたん、「夫の厚生年金は夫のもの、妻は夫の分はもらえない」となるのはおかしい、ということになりそうです

というのも、年金は、これまで支払ってきた年金保険料に基づくものです。

そして、夫婦の一方の支えがあって、しっかり働けたからこそ、厚生年金保険料を積んでこられたわけですね。

そうすると、「結婚している間は、夫婦の協力によって年金保険料を支払ってきたわけですから、その寄与度に応じて、離婚しても、年金を分けてあげなきゃ不公平でしょう」ということになるわけです。

そのような考えから、「厚生年金を多く支払ってきた側が、少ない方の配偶者に、婚姻期間中の年金積立分を分割すべき」ということになるわけです。

年金分割の種類や内容は?

では、具体的に、年金分割ってどんな種類、内容となっているのでしょうか。

まず、年金分割には、

  • 合意分割
  • 3号分割

と大きく分けて2つの種類があります。

合意分割とは?

合意分割とは、その名のとおり、夫婦の合意によって、年金を分割する方法です。

ただ、年金全額を分けるわけではありません。

具体的には、

「報酬比例部分」=「国民年金に相当する部分以外の、収入に応じて上乗せされていく部分(厚生年金部分)」
について、婚姻期間中に積んだものにつき、原則2分の1に分配しましょう、というのがその内容です。

言い換えれば、「結婚中に夫または妻が頑張って働いて上乗せで払えた年金部分」ということになるかと思います。

一方、自営業の方はこの上乗せが無いことも多いので、年金分割すべき対象がない、という可能性が高いです。

金額はどうやって分かる?

結婚している間(離婚するまでの間)に、積んできた妻と夫の年金保険料(「対象期間標準報酬総額」といいます。)の金額は、年金事務所から教えてもらえます。

具体的には、「年金分割の情報通知書」というものを、年金事務所から取得することになります。

割合はどうやって決める?

割合は、一応、「夫婦の合意で決める」とされています。

とはいえ、ほぼ大半が、50%ずつとなるかと思います。

たしかに、法的には、夫婦の一方だけが必死に働いたと評価される等、何かしら特別な事情で異なる割合とすべき場合もあるとはされていますが、これはなかなか認められるものではありません。

仮に、「50%で分けるなんて納得いかない」と突っぱねても、家庭裁判所で、「年金分割の調停、審判」と進んでいけば、「2分の1ずつがほぼ当たり前」という印象です。

なので、基本的には、特段の事情がない限り、2分の1で取り決めることが大半といえそうです。

3号分割とは?

3号分割とは、夫婦の一方が、国民年金第3号被保険者(専業主婦等)であった場合に、その期間における保険料納付記録について、当然に2分の1ずつに分割できる制度です。

対象となる期間は、平成20年4月1日以降のものになりますので、これ以降に結婚し、かつ、ずっと3号被保険者、という方は、この3号分割の手続を単独で行えばいいことになります。

このように、3号分割は手続きをすれば当然に分割がされ、あまり問題にならないことから、このコラムでは、主に、合意分割について説明をしていきましょう。

年金分割いくらもらえる?

皆さん、興味があるのは、「じゃあ、私が年金分割をした場合は、いくらもらえるの?」という点だと思います。

よく、「旦那の年金をそのまま半分もらえるなんてラッキー」と誤解されている方もいますが、そうではなく、思っているよりもやや少ないかもしれません。

年金分割をした際にもらえる金額は、少々細かな計算方法によって算出されます。

これは50歳以上の方と、そうではない方で、金額の確認方法に違いがありますので、以下見てみましょう。

年金分割でもらえる金額は?~50歳以上の方~

年金分割をする際、50歳以上の方であれば、金額の確認はとても簡単です。

後で述べますが、年金分割を行う前に、「年金分割の情報通知書」というものを年金事務所からもらうと、以下のような内容が記載されています。

  • 対象期間標準報酬総額(夫と妻がこれまで積んできた年金保険料の総額)
  • 対象期間(年金分割の対象となる期間※結婚している期間)
年金分割の情報通知

【図:日本年金機構HPより引用】

この際、50歳以上の方は、「具体的な年金分割の金額を知りたい(通常は50%で分ける場合)」と事前に申出をしておけば、この情報通知書に、「50%の割合で年金分割をした場合の年金額(1年あたり)」と、「年金分割をしない場合の年金額(1年あたり)」が記載されてきます。

例えば、「分割した場合の年金は1年間で120万円だけど、そのまま分割しない場合の年金は1年間で60万円」というような記載がしっかりと書かれます。

この場合は、年金分割をした場合、年間60万円の増額が見込める、ということになるわけです。

年金分割でもらえる金額は?~50歳未満の方~

50歳未満の方の場合は、上記と異なり、具体的な金額までは教えてもらえません。

というのも、30代、40代の方であれば、その後の年金がどうなるかも未知数で、具体的な金額を早々に計算しても、あまり意味がないでしょうという趣旨のようです。

ただ、「現時点において、一応どのくらいメリットがあるか、シミュレーションはしておきたい」という方も少なくないと思われます。

年金分割のメリットがそこそこ大きいかどうかを確認するだけであれば、情報通知書の「対象期間標準報酬総額(夫と妻がこれまで積んできた年金保険料の総額)」を見れば、だいたいのメリットが見えてきます。

例えば、「夫が8000万円、妻が1000万円」という場合は、金額やその差がそこそこ大きいので、分与される年金もそこそこ多く、メリットが大きいということになります。

逆に、「自分の方が多い」とか、数百万円しか差がない、という場合は、分割をするメリットがあまりないと思われますので、「年金分割はしない」という選択をすることが視野に入ります。

ただ、相手が年金分割を希望してきた場合には、基本的にはほぼ拒めませんので、その場合は、2分の1で早急に合意してしまった方が、紛争が長引かなくてよいかもしれません。

簡単な計算方法

50歳未満の方であれば、本当に参考程度ということになりますので、以下、簡単な計算式(およその平均値をかけ合わせる方法)だけ覚えていただければと思います。

例えば、対象期間標準報酬総額(いままで働いた報酬の総額)が夫が1億円で、妻が2000万円だった場合

<分割をしない場合>

夫:1億×5.481/1000※=54万8100円(年間)

妻:2000万円×5.481/1000=10万9620円(年間)

<分割をする場合>

二人の標準報酬総額を足して按分割合で分配します。

夫、妻:(1億+2000万円)×50%×5.481/1000=32万8860円(年間)

※この計算式で用いている乗率は、「生年月日:昭和21年4月2日以降」「平成15年4月以降の婚姻期間」を前提に、「5.481」を用いています。【参考:報酬比例部分の乗率】日本年金機構HPより引用

このとおり、妻としては、分割をした場合、年間約22万円近くの増額が見込めることになります。

皆さん、「思ったより少ないですね」とおっしゃられることも多く、将来の年金制度がどうなっていくかもまだ未知数なので、あくまで、「参考」というかたちでご了承いただければと思います。

手続の流れは?

それでは、実際に、「年金分割をしよう!」となった場合の手続きを見ていきましょう。
合意による年金分割の主な流れは、

  • 年金分割の情報を年金事務所からゲットする。
    ※「年金分割のための情報通知書」の取得=年金分割のために、事前に情報を得ておく
  • 年金分割の合意をする。
    ※按分割合に関する夫と妻の合意、またはこれに代わる審判など
  • 年金事務所に分割の請求(※先ほどの情報通知書の申請とはまた別です。)を行う

※以上が大きな流れとなります。以下、少し詳しく見ていきましょう。

情報通知書の取得

年金分割を行うには、まず、「年金分割のための情報通知書」を取得することになります。

公正証書や調停で、年金分割を取り決める際には、原則としてこの通知書がなくてはなりません。

そして、今は年金事務所が非常に混みあっているようで、この通知書を取得するにも、相当な時間がかかることを覚悟せねばなりません。
具体的には、年金事務所の予約から始まり、通知書が実際に手元に届くまで、1か月以上かかることもあるようです。

したがって、「離婚を考えたらまずは情報通知書を急いで取得!」という意識でいていただくとよいと思います。

年金事務所に提出する書類は、

  • 年金分割のための情報提供請求書
  • 基礎年金番号またはマイナンバーを証する書類
  • 基礎年金番号通知書または年金手帳等
  • 個人番号カード(マイナンバーカード)等
  • 婚姻期間等を明らかにすることができる書類
  • 戸籍謄本(全部事項証明書)または戸籍抄本(個人事項証明書)(6カ月以内のもの)

以上です。

これらを揃えて、年金事務所に提出し、情報通知書を申請することになります。

請求書は、年金事務所や街角の年金相談センターに備え付けてありますが、以下のリンクからダウンロードすることも可能です。

不明な点は、年金事務所に直接電話連絡などで聞くと良いでしょう。混んでいる事務所を避けて探してみるのもひとつのテクニックです。

合意分割の請求手続き①~合意をする方法~

年金分割を進める中では、その分割の割合(按分割合)を決めねばなりません。

以下、少し詳しく見ていきましょう。

(1)割合はどうする?

先程述べたとおり、合意分割を行う場合、通常は50%の按分割合で分割します。

ただ、稀に、違った割合で分割すべきと考えられる場合もあります。

問題となるのは、例えば、以下のようなケースが挙げられます。

別居期間が相当長期にわたる場合

例えば、「結婚しているのは30年だけど、既に10年間別居している。この10年間の間は妻に何も協力などしてもらっていない。この期間まで年金を分割されるのは納得いかない」と夫が主張するような場合です。

これについては、過去の裁判所の判断が参考になります。

【事例】
36年間の婚姻期間中14年間が別居中。別居期間中はずっと夫が多額の婚姻費用(生活費)を支払っていたとして、別居中の年金支払分に関する年金分割が認められないと夫が主張した事案。

【結論】
第1審の奈良家庭裁判所は、別居期間が相当長期であるとして、夫側の主張を認め、年金分割を却下しました。

ただ、第2審である大阪高等裁判所(平成21年9月4日審判)は、「別居中に多額の婚姻費用を支払っていたことは、年金の平等分割を修正するほどの特段の事情に該当しない」として、原則通り50%での分割を認めています。

たしかに、別居している間まで自分の働いた年金を分割されるのは納得がいかないかもしれませんが、裁判所は基本的に、「結婚している間」を原則として年金分割の対象とする傾向にあります。

夫婦の一方のみが必死に働いていたと評価される場合

【事例】
夫よりも妻の方が働いて、厚生年金を積み立てていたため、離婚した夫が妻に対して年金分割を求めた事案。
夫は、婚姻期間中、浪費して借金を作り、妻が働きに行かざるを得ない状態にしていたところ、年金の分割の主張もしていた。

【結論】
妻の年金に対し、夫の協力(寄与)が少なかったことを理由に、原則である50%の割合を修正して、夫への分割の割合を30%と判断しています。

夫がギャンブルや借金まみれで働かず、妻だけが働いていたような場合に、年金まで50%で分割されるのは納得いかない、というのは十分に理解できます。ただ、この場合も、分割自体認めないのではなく、割合を修正する形で、一定割合の分割を認めたことにはなります。

このように、極めて不公平となるような事案に限って、裁判所も分割割合を修正する傾向にあります。
ただ、思った以上に原則通り50%となることがほとんどですので、通常は、争わず、50%で合意をすることが多いという印象です。

(2)合意の方法と用意する書面

このように、ほとんどの場合で50%の割合で合意をしますが、合意をしただけではだめで、しっかりとその合意を書面にしなければなりません。

後ほど、年金分割の申請の際の必要書類でも触れますが、以下のような手続きで、書面を用意する必要があります。

  • 公正証書を作成する場合   →公正証書の謄本または抄録謄本
  • 公証人の認証を受ける場合  →公証人の認証を受けた私署証書
  • 当事者同士で合意書を作成する場合 →年金分割の合意書
    (注)この場合は、2人そろって年金事務所に行くことが原則となります。
  • 調停で合意したり、裁判で和解をしたりする場合→調停(和解)調書の謄本または抄本
  • 裁判所の審判や判決で決定してもらう場合→審判(判決)書の謄本または抄本と確定証明書

合意分割の請求手続き②~年金事務所の手続~

以上の流れで、年金分割割合を決めた書面の用意ができたら、いよいよ年金事務所への請求です。

最後の手続ですが、この手続では、年金事務所に赴き、「年金分割をお願いします。」と請求を行わなければなりません。

※単独でOKな場合と2人一緒でなければならない場合があることには注意が必要です。

具体的には、以下の書類を持参して、年金事務所に提出します。

提出書類


標準報酬改定請求書

基礎年金番号またはマイナンバーを証する書類
・請求者の基礎年金番号通知書または年金手帳等
・個人番号カード(マイナンバーカード)等

婚姻期間等を明らかにすることができる書類
・戸籍謄本(全部事項証明書)または戸籍抄本(個人事項証明書)(6カ月以内のもの)

請求日前1カ月以内に交付されたお二人の生存を証明できる書類

戸籍謄本(全部事項証明書)、戸籍抄本(個人事項証明書)、住民票のいずれか
請求書に個人番号(マイナンバー)を記入することで省略可。

年金分割の割合を示す書類
・公正証書の謄本または抄録謄本
・公証人の認証を受けた私署証書
・年金分割の合意書

※注意:この場合は、2人そろって年金事務所に行くことが原則(委任状等を揃えれば、代理人も可)。
・審判(判決)の場合…審判(判決)書の謄本または抄本および確定証明書
・調停(和解)の場合…調停(和解)調書の謄本または抄本

 年金分割の手続で必要となる書類(日本年金機構HPより)

当日の予約や持参書類については、年金事務所に電話をして、しっかり確認をしてから赴いて頂くのがよろしいかと思います。

気をつけねばならないこと~請求期限など~

以上述べてきましたが、年金分割は、財産分与や慰謝料などの争いと比べて、「基本的に50%で分ける」ことで解決します。

したがって、比較的争点が少ない手続とはいえるでしょう。

しかしながら、以下のとおり気をつけねばならないこともありますので、しっかり確認しておきましょう。

請求期限などに注意

多少の例外(裁判所の手続を踏んでいる等)がありますが、基本的には、年金分割は、離婚した日の翌日から2年間以内に請求を行わねばなりません。

この期間を過ぎると、せっかくの年金増額分も、もらえなくなってしまいますので注意が必要です。

離婚届だけとりあえず出して、「年金分割はまだ先の話だし、そのうちやればいいや」と思っていると、2年間は意外にあっという間に過ぎてしまいます。

特に、年金分割の手続がメジャーになってきたからか、場所によっては、年金事務所の混雑具合が相当ひどい状態で、予約をとるのに何週間か待つ、ということもあるようです。

また、情報通知書も、調停や公証役場では、事前に用意してくださいと言われますので、離婚を考えたら、可能な限り早急に、年金事務所に連絡をするようにしてください。

手続の選択に注意

先ほど少し触れましたが、弁護士を立てて調停、審判、公正証書作成などの手続をする場合には、基本的に、ご本人同士が直接会って色々な話し合いや手続きをしないで済みます。

また、基本的にその場合、年金事務所への請求手続きも単独で行えることになります。

一方、ご本人同士で年金分割の手続をする場合には、書面の作成や、最終的な年金事務所への請求手続きまで、ご本人となるお二人が揃って、一緒に手続きをしなければなりません。

また、公正証書作成や、調停も、弁護士を立てずに進めることができますが、気をつけないと内容によっては、「単独で手続きができない」ということがあり得ます。

離婚問題でもめているお二人ですと、通常は、「もう会って話したくない」ということが多いと思いますので、どのように進めるべきかだけでも、弁護士のアドバイスを受けていただくことをお勧めします。

年金分割のメリットが本当にあるかどうかにも注意

皆さん、イメージでは、「妻が年金分割を行えば、夫の年金が妻に分与される」というイメージをお持ちの方が多いように思われます。

しかしながら、年金分割は、あくまで、厚生年金の報酬比例部分が分割され、必ずしも、夫が分割する側になるわけではない、ということに気をつけねばなりません。

例えば、

ケース1:夫がずっと会社員(厚生年金)で妻が専業主婦や国民年金のみのケース

通常は夫の年金が妻に分与されるということで間違いないと思います。

ずっと専業主婦ということであれば、平成20年以降のものは3号分割、それより前のものは合意分割ということになります。

ケース2:夫も妻も会社員(厚生年金)で、夫の方の収入がずっと高いケース


こちらも通常は夫の年金が妻に分与されるということで間違いないと思います。

情報通知書を取得して、対象期間標準報酬総額の欄(50歳以上であれば年金額そのもの)をご確認いただければ、どちらが分割される側か、分かると思います。

ケース3:夫が自営業で高収入(国民年金)、妻が会社員等(厚生年金)のケース

夫がずっと国民年金の場合は、どんなに年収(役員報酬)が高くとも、対象となる年金積み立て分(厚生年金分)がない、ということになります。

これも情報通知書を取得すれば判明すると思いますが、年金分割の手続を進めようとした場合、かえって、妻が夫に年金を分割せねばならない可能性が出てきます。

ケース4:夫が会社員(厚生年金)で妻が自営業(国民年金)のケース

こちらも通常は夫の年金が妻に分与されるということで間違いないと思います。

ケース5:夫も自分も厚生年金加入期間があるが、期間や金額が不明なケース

どちらが分割を受けるケースなのか、不明ということになります。

まずは情報通知書を取得して、どちらがどれくらい年金の分割を受けられるのか、確認してみることがとても大切です。

以上のとおり、ケースによっては、低収入の方が、高収入の方に、年金を分割するケースもあり得ます。

「もらえると思っていたが逆に取られる側になってしまった」などということがないように、しっかり事前に確認をしましょう。

いずれにせよ、まずは、情報通知書を単独で申請をして、年金分割に関する情報の確認をしてみるのが良いでしょう。

あなたが泣き寝入りしないために

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最後に

年金分割だけをシンプルに説明すると、以上のような説明となります。

ただ、実際の離婚の場面では、「年金分割を希望しないので、慰謝料を少し増額してほしい」とか、「年金分割をさせてあげるから、不動産はそのまま維持させてほしい」など、交渉の一つの材料として使うことが効果的になる場合もあります。

離婚の際の諸条件については、とても複雑になっていますので、是非、弁護士を一度は頼ってみてくださいね。

離婚のお悩みは、精神的にも大変ですから、法的な助言を得るだけでなく、ご自身の思いなどをお話しいただくことで、気持ちも楽になると思いますよ。

あらかじめ弁護士保険などで、今後の様々なリスクに備えておくことをおすすめします。

参考:パンフレット 「離婚時の年金分割について(手続きのご案内)」(日本年金機構HPより)

この記事を書いた人
篠田弁護士

篠田恵里香 弁護士

東京弁護士会所属

へいわ総合法律事務所 代表弁護士

東京都豊島区東池袋三丁目1番1号 サンシャイン60 45階
Tel.03-5957-7131

2008年弁護士登録。
男女問題、交通事故を中心に、幅広い分野を扱う。
大切な人生の分岐点を、一緒に乗り越えるパートナーとして、親身になって対応させていただきます。

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