誹謗中傷とは?SNSで誹謗中傷されたときの企業の対応策も解説

私たちの生活に、インターネット上の口コミや評価は、店舗や企業などを調べる上で欠かせないものになってきました。

しかし口コミや評価は、企業の商品・サービスの売上、集客に大きな影響を及ぼしますが、逆に悪い評価が書き込まれた場合は、多大な損害を被るというリスクもあります。 

事実であればある程度受け入れられるところがあるかもしれませんが、それがたとえ、事実無根の根拠のないデマや不当な評価だったとしてもです。

そこで本記事では、インターネット上で誹謗中傷されたときに、適切に対応できるよう、誹謗中傷と企業の対応策について、解説していきます。

目次

誹謗中傷とは

誹謗中傷とは、相手の悪口を言ったり、根拠のないことを言って相手の名誉を傷つけたりすることをいいます。

誹謗中傷は、ある物事に対する自分の考えや思いである“意見”や、物事を検討して誤りや欠点などを指摘して正そうとする“批判”とも異なります。

たとえば、飲食店を評価するサイトに「料理に虫が入っていた」「店長の親は犯罪者」といった内容の書き込みがあれば、それは誹謗中傷にあたります。

もっとも、“誹謗中傷”という言葉は、法律用語ではなく明確な基準もないので、どこからどこまでが誹謗中傷になるのかは判断が難しいものです。

結局、ケースに応じた判断が必要になりますが、実際にあった企業の誹謗中傷の事例が参考になります。

何故インターネットで誹謗中傷が起きてしまうのか

SNSの匿名性

SNSの多くは本名を登録しなくても利用することができます。

実名では言えないようなことも、自分とは全く関係ないハンドルネームやアイコンを使用することによって発信することができてしまい、「誹謗中傷している」という自覚が薄いまま過激化してしまうことが考えられます。

また「匿名だからばれないだろう」という心理が働くことも一因となっています。

相手の顔が見えない特性

文字や画像だけのコミュニケーションが主のSNSでは、「画面の向こうに相手がいる」ということを忘れがちです。

相手の顔が見えないと、つい激しい言葉を使ってしまったり相手が実在している生身の人間だということを忘れてしまったり、相手の反応が見えづらいことにより誹謗中傷に発展してしまうこともあります。

インターネットの利用時間増加

総務省は、SNSの利用時間は2012年から2018年までの7年間で約4倍に増えていると発表しています。(参考

インターネットの利用時間自体が増加し、それに伴って誹謗中傷も増加傾向にあると言えるでしょう。

またスマートフォンの普及に伴い、老若男女問わず誰でも気軽にネットができる環境にあります。ネットリテラシーが低い状態でネットを利用することで、意識せずに誹謗中傷の加害者になってしまう可能性も考えられます。

どこからどこまでが誹謗中傷?実際の事例

企業の誹謗中傷が問題となった事例について、いくつか簡単にみていきましょう。

事件の容疑者と関連づけられたネットデマ

暴行目的で女性を襲撃して逮捕された容疑者の苗字とたまたま同じ屋号を使用していた企業が、「容疑者の実家の会社」などとインターネット上に繰り返し書き込まれ、いわれのない誹謗中傷を受けました。

全く根拠のないデマにも関わらず、その書き込みを信じたネットユーザーから会社に嫌がらせの電話が相次ぐなどの被害が生じました。

企業は、名誉回復のために200万円以上かけてチラシを作成するなど、大きな損害を被ることになりました。

人気ラーメン店に「業務用スープを使用している」と投稿

自家製スープが自慢の人気ラーメン店が、SNS上で「業務用スープを使用している」「店主は反社会的勢力だ」などと繰り返し書き込きこまれたことによって損害を被った事例があります。

店側は裁判を提訴した結果、本事例のSNS上の書き込みは名誉毀損にあたるとして、誹謗中傷に対して11万円の損害賠償の支払いを命ずる判決が下されました。

代表取締役の辞任をきっかけに企業に悪質な誹謗中傷

既婚男性との交際、妊娠を理由として代表取締役の女性が辞任した報道に関連し、企業に対しても、まったく根拠のない誹謗中傷が行われました。

企業としては、女性の辞任という形で企業のリスクヘッジをはかったのかもしれません。

しかし、女性の辞任という形では騒動は収まらず、無関係な役員や企業のブランドまでも誹謗中傷の対象となってしまいました。

本事例は、現在も問題は収束しておらず、誹謗中傷者に対して企業が法的措置の検討も視野に入れているなどといった報道がなされています。

誹謗中傷はどのような罪に問える?

誹謗中傷の内容によりますが、主に次のような刑法上の罪に問える可能性があります。

名誉棄損罪

名誉棄損罪は、誹謗中傷があったときに成立しやすい代表的な罪といえます。

名誉は、個人の目には見えない社会的な評価のことをいいますが、この評価を公然と傷つけるような行為があれば、刑法上の名誉毀損罪が成立する可能性があります。

告訴して名誉棄損罪が認められたときには、3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金が科されます。

信用毀損罪・業務妨害罪

信用棄損罪・業務妨害罪は、虚偽の風説を流布された場合に成立しうる犯罪です。

たとえば、お店にいったこともないのに「お店の料理はまずかった」「店員の程度が最悪だった」などとグルメサイトに嘘の書き込みを繰り返し行えば、偽計業務妨害罪が成立する可能性があります。

告訴して信用毀損罪・業務妨害罪が認められたときには、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。

その他

そのほか、投稿の内容が「企業の商品に毒を入れる」「役員を殺す」などといったものであれば、威力業務妨害罪や脅迫罪・強要罪などの罪に問える可能性があります。

脅迫罪は、被害者等の生命、身体、自由、名誉または財産に対して、害を加える旨を告知する誹謗中傷がおこなわれたときに成立しうる罪です。

また、強要罪は、脅迫を含む誹謗中傷によって企業が義務なき行為を行わせられたり、権利の行使が妨害されたりしたときに成立する可能性があります。

誹謗中傷した人に慰謝料請求は可能?

誹謗中傷に対しては、刑事責任だけでなく、損害賠償などの民事責任を追及することも可能です。

誹謗中傷によって権利侵害があれば不法行為が成立するため、被害者は、加害者に対して受けた精神的苦痛に対する損害賠償(慰謝料)を請求することもできます。

企業であれば、さらに営業損失との因果関係を立証して、生じた損失についての損害賠償責任を追及することもできます。

また、誹謗中傷者に対しては、損害賠償と併せて新聞に謝罪広告を掲載するなどの名誉を回復するために適切な処分も請求できます。

誹謗中傷に対する企業の対応策

では、具体的には、企業は、誹謗中傷についてどのような対応策をとればよいのでしょうか。

対応策としては、主に次のようなものが考えられます。

削除請求を行う

誹謗中傷の書き込みをそのままにしておけば、拡散するなどして損害が拡大する可能性があります。

そのため企業としては、誹謗中傷を把握したら、その情報を削除することを検討し、早急に対応策を講じる必要があります。

たとえば、掲示板やグルメサイトなどに誹謗中傷が書き込まれているのであれば、サイト管理者などに書き込みの削除を求めます。

具体的には、ウェブフォームやメールで削除依頼をする方法のほか、プロバイダ責任制限法のガイドラインにそって削除請求する方法、裁判所の仮処分手続きを利用する方法によって書き込みの削除が実現できる可能性があります。

情報の発信者を調べる

誹謗中傷の書き込みが繰り返されたり、悪質な内容であったりするときには、発信者を特定して責任追及することも検討するとよいでしょう。

なお、令和4年10月にはプロバイダ責任制限法の改正法が施行され、これまで2段階の裁判手続きが必要だった発信者情報開示請求が1回の裁判手続きで可能になりました。

この改正によって、発信者情報開示手続きが迅速かつ簡易に進められるようになっています。

発信者などに損害賠償請求を行う

発信者が特定できた場合には、誹謗中傷によって権利を害されたことを根拠にした損害賠償請求を検討するとよいでしょう。

裁判によって名誉毀損による損害賠償請求をするケースでは、およそ数十万円から100万円程度の慰謝料が認められる傾向にあるとされます。

もっとも、企業が被害者になる場合には、営業損失などとの因果関係を立証できれば、より高額な損害賠償が認められる可能性があります。

また発信者情報開示請求によって特定された人物が、社内の従業員であるような場合には懲戒処分を検討することも対応策になります。

刑事告訴や被害届の提出を行う

誹謗中傷の内容が、名誉毀損罪や業務妨害罪にあたるものであれば、刑事告訴や被害届の提出などを行って刑事事件として対処することも一つの選択肢になります。

逆SEO対策をする

法的対応策とは異なりますが、誹謗中傷に対しては、いわゆる「逆SEO対策」も対応策となります。

「SEO対策」とは、検索エンジンの検索結果で上位に表示されるように工夫することを意味します。

しかし、誹謗中傷コメントなどは、上位で表示させないようにするという「逆SEO対策」をとることによって、人の目に触れにくくすることが得策になります。

もっとも、逆SEO対策は、技術的な手段で表面化しにくくするものであるため、誹謗中傷に対する根本的な解決になるというわけではありません。

積極的に情報発信する

誹謗中傷に対しては、企業としてプレスリリースや自社のホームページなどを使って、積極的に情報発信することも対応策になります。

誹謗中傷に対して、早急に事実関係を調査して、根拠を示して虚偽の内容であることを企業として外部に発信しておくことは、被害のさらなる拡大を防ぐことにもつながることでしょう。

弁護士に相談する

誹謗中傷に対して法的な対応策を検討する場合には、やはり弁護士に相談することが最も確実に問題を解決する方法になることでしょう。

弁護士に相談した場合、弁護士は、発信者情報開示請求の手続きや損害賠償請求、刑事告訴などについて、裁判所や警察と連携を図り、知識や経験をもとにスムーズに手続きを進めることができます。

また、早期の段階で「誹謗中傷に対して、どのような法的対応策をとることができるか」を弁護士に相談すれば、企業にとって最善の対応策を見つけることが期待できます。

まとめ

本記事では、誹謗中傷と企業の対応策について、解説していきました。

誹謗中傷の内容によって、企業のとるべき対応策は異なります。

インターネット上の投稿やコメントなどの誹謗中傷に対しては、企業は、まずは弁護士に相談してみることが大切です。

弁護士

畝岡 遼太郎 弁護士

大阪弁護士会所属

 

西村隆志法律事務所

大阪市北区西天満2丁目6番8号 堂島ビルヂング501号
TEL:06-6367-5454

ひとりひとりに真摯に向き合い、事件解決に向け取り組んでます。気軽にご相談が聞けて、迅速に対応できる弁護士であり続けたいと考えております。 

※事前予約いただければ平日夜間や土日にも対応可能です。

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