労働組合から不当労働行為を主張された!?事例から対処法までわかりやすく解説

事業を経営する中で、労働組合から「不当労働行為である」と主張されたことはありますか?

不当労働行為は、労働者の権利を侵害する大きな問題です。

そのため、正確な法的対応が求められます。

この複雑な問題に対処するには、法律の専門家である弁護士の介入が必要です。

弁護士

「不当労働行為」「黄犬契約」など、独特の用語が多いのも特徴です。
実質の方が大事ですので、中身を押さえるようにしましょう。

この記事では、不当労働行為に直面した際に弁護士へ相談すべき理由と、その利点について詳しく解説します。

「弁護士に相談なんて大げさな・・・」という時代は終わりました!

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目次

不当労働行為とは

不当労働行為とは
労働者の労働三権(団結権、団体交渉権、団体行動権)を侵害する行為のこと

労働組合法第7条によって、以下の内容は禁止されています。

  • 労働組合への加入を理由にした解雇や昇進拒否
  • 労働組合活動の妨害や制限

労働者や労働組合は、これらの行為に対し、労働委員会に救済を求めることができます。

具体的な行為

不当労働行為には、大きく分けて以下の4つがあります。

不利益取扱い労働組合活動に参加した労働者に対する不利益な扱い
団体交渉拒否労働組合からの団体交渉の申し出を無視する行為
支配介入組合結成や活動に対する使用者(企業)の不適切な介入
報復的不利益扱い労働者が不当労働行為の救済申立てをしたことを理由に、使用者(企業)が行う不利益な扱い

これらの行為は労働者の権利侵害とされ、法的に禁止されています。

パワーハラスメントとの違いは?

不当労働行為とパワーハラスメントは、一見似ているようで、その内容は大きく異なります。

弁護士

行為の違法性の判断枠組みだけでなく、救済・解決手段の選択肢にも違いがあります。

不当労働行為は、労働組合や集団的労働者の権利が脅かされることを指しているのに対し、パワーハラスメントは、上司など職場において優位に立つ立場の人間が、個々の労働者に対する威圧的または排除的な行為をすることを指しています。

どちらも職場間の人間関係問題ですが、「労働組合」や労働者の権利を含むか否かが、大きな違いです。

不当労働行為の法律上の根拠となるもの

ここでは、不当労働行為の法的根拠について紹介します。

労働組合法

労働組合法とは、労働組合の活動、労働者の権利を定めた法律のことです。

労働組合法第7条においては、不当労働行為について定められており、企業は以下の行為が禁じられています。

  • 不利益取扱い
  • 黄犬契約
  • 団体交渉拒否
  • 支配介入
  • 経費援助
弁護士

条文では、より詳細に定められています。
これは大枠の整理です。
相談すべき注意点のイメージを掴むのにいいでしょう。

企業がこれらの禁止行為を行った場合、労働者は労働委員会に対して救済申立てを行うことができます。

労働委員会
労働組合法に基づき設置された、三人の代表者からなる委員会のこと

公益委員、使用者委員、そして労働者委員で構成され、役割としては労働関連の審査・調停・仲裁などを中立的な立場で行うことです。

弁護士

裁判所は司法、労働委員会は行政という点では異なりますが、どちらも中立的な機関です。

憲法と労働基準法

日本国憲法第28条では、労働者の団結権、団体交渉権および団体行動権の「労働三権」が保障されています。

また、労働基準法は、労働者の安全と健康を守るため、不当な労働条件の禁止や不当解雇の防止など、一定のルールを設けています。

これにより、労働者が安心して労働組合活動に参加できる環境が整うというわけです。

これらの法律は、労働者の権利を守るルールを定め、企業による不当な労働行為を禁止しています。

不当労働行為が禁止される理由と種類

不当労働行為が禁止される理由

不当労働行為が禁止される主な理由は、労働者の権利と労働環境の公正を保護するためです。

労働者が労働組合に加入し、活動する自由を保障する目的があります。

不当労働行為の種類

不利益取扱い

労働組合に加入したり、労働組合活動に参加したりする労働者に対して、不利益な扱いをする行為です。

<事例>

  • 組合活動に積極的だった労働者を、突如昇給から除外する。
  • ストライキに参加した労働者を、その行為を理由に不当に解雇する。

団体交渉拒否

「団体交渉拒否」は、労働組合が団体交渉を、企業側が拒否してしまうことです。

また、企業側による不誠実な対応も、団体交渉拒否としてみなされることがあります。

弁護士

「不誠実な対応」は、具体的状況下でのノウハウに基づく判断になります。
弁護士が同席して席上で助言することもできます。

<事例>

労働組合が提案した賃上げ交渉に対し、会社は必要な情報の提供を繰り返し拒否し、結果的に交渉そのものも行われなかった。

弁護士

「必要な情報」とは、どこまでかが問題となる場面は多いでしょう。
一律で決められるものでもないですので、具体的状況における慎重な判断が求められます。

黄犬契約

黄犬(おうけん)契約とは
労働組合に加入しないことを条件に、労働者を雇用する契約のこと

労働組合に入っている労働者に対して、脱退することを雇用条件とする場合も該当します。

<事例>

新規採用の際に「労働組合に加入しないこと」を明示的な雇用条件として提示し、これを受け入れた者のみ採用を行った。

支配介入

「支配介入」とは、企業側が労働組合の結成や活動、組織運営において不当に介入する行為のことを指します。

弁護士

「支配介入」に該当するかの判断の一つに「介入意思があったかどうか」を問われますが、行為がもたらす客観的作用に注意することが重要です。
「そんなつもりはなかった」ということにならぬよう、行為の影響を十分に考えましょう。

<事例>

懲戒処分を伴う業務命令として早期回答を一方的に強制する形で、従業員に対して労働組合への参加及び組合活動全般及び組合内部の問題についての質問を含むアンケートを実施し圧力をかけた。

弁護士

常にというのではなく、全体のバランスや個別表現・体裁なども総合的に考慮して決せられるでしょう。
ただし、「健全な労使関係の構築」などと目的が表面的に記載されていても、具体的内容次第で不当介入とされる可能性もある点に注意が必要です。

経費援助

「経費援助」とは、企業側が労働組合の活動に、必要な経費を不適切に支援することです。

弁護士

他と毛色が異なりますが、労働組合の自主性・独立性が損なわれることの防止が目的です。
「労働組合の自主性・独立性が損なわれる」ような行為か否かが問題となります。

<事例>

労働組合の事務所で組合活動のためのみに使用する備品代や電話代を、会社が負担していた。

不当労働行為によって発生する罰則は?

罰則について

不当労働行為に対して、刑事罰はありません。

ただし、労働委員会の救済命令に違反した場合、罰則が科されます。

救済命令に違反した場合:50万円以下の過料

裁判所の行政訴訟で確定しているものに関しては、100万円以下の罰金や1年以内の禁固刑が課されることがあります。

救済申立期間について

申立可能な期間(除斥期間)は、不当労働行為が行われてから1年以内です。

不当労働行為が過去に何度もなされている場合には、最後に不当労働行為が行われた時から1年以内に申立が行われる必要があります。

弁護士

制度利用のための期間のようなもので、法律上は「除斥(じょせき)期間」といいます。
時効とは厳密に異なるのですが、とにかく「行為時から1年」です。

不当労働行為の救済手続き

企業側から不当労働行為を受けた場合、労働者や労働組合は、救済申立てを行います。

救済申立てには2種類あり、「行政救済」は労働委員会への救済手続きで、「司法救済」は訴訟などによる救済手続きです。

行政救済

不当労働行為の救済申立ては、労働者または労働組合がある地域の労働委員会に申立てを行います。

救済命令の効力と罰則

再審査の申立てや取消訴訟を行わなかった場合は、救済命令が確定します。

もしも企業側が確定した救済命令に従わなかった場合、50万円以下の過料が課される可能性もあります。

救済命令が交付された日から法的効力が生じます。

取消訴訟の申立て

救済命令に対して不服がある場合、命令の取消を求める訴訟が可能です。

命令書または決定書を受け取った日から、企業側は30日以内に、労働者は6ヶ月以内に取消訴訟の申し立てができます。

損害賠償と慰謝料

不当労働行為をした会社は、労働者や組合から損害賠償や慰謝料の支払いを求められることがあります。

これらが認められた場合の賠償額や慰謝料は高額となるケースが多く、1999年の「サンデン交通事件」では、会社に705万円の損害賠償が命じられた事例もあります。

司法救済

司法救済には、労働審判と民事訴訟の2つの方法があります。

労働審判

労働審判は、簡易裁判所において、労働委員会のあっせんを受けながら解決を目指す手続です。

労働審判で請求できる内容は、以下のようなものです。

  • 不利益取扱いの撤回・差止め
    解雇、降格、減給、不当な配置転換などの撤回・差止めを求めることができます。
  • 団体交渉の実施
    使用者に対し、団体交渉に応じることを求めることができます。
  • 支配介入の禁止
    組合活動への介入や妨害の禁止を求めることができます。
  • 報復措置の撤回・差止め
    組合活動を行ったことを理由とした解雇や不利益取扱いなどの撤回・差止めを求めることができます。
  • 損害賠償
    不当労働行為によって生じた損害の賠償を求めることができます。

民事訴訟

民事訴訟は、裁判所において、判決に基づいて紛争を解決する手続です。

会社側が応じない場合には、判決に基づいて強制執行することもできます。

民事訴訟で請求される内容は、労働審判と基本的に同じです。

救済命令の内容とは

原職復帰命令

労働委員会は、不当解雇と認定した場合、企業に対して、解雇された労働者の原職復帰や解雇された期間の賃金差額(バックペイ)の支払いを命じることがあります。

これにより、不当に解雇された労働者は正当な補償を得られ、職場復帰が可能となります。

団体交渉応諾命令

労働委員会は、団体交渉拒否があったと認めた場合、誠実な団体交渉を行うよう命令します。

企業と労働組合が、公平かつ建設的な対話をするために行われる命令です。

支配介入禁止命令

労働委員会は、企業による組合活動への不当介入があったと認定した場合、支配介入を禁止する命令を出すこともあります。

公表命令(ポスト・ノーティス)

公表命令とは、不当労働行為があったと認定された場合、労働委員会が企業に対して不当行為の事実を認め、再発防止を宣言する文書を事業場内に掲示するようを命じる措置のことです。

この公表命令を受けることで、企業は公にその責任を認め、労働者を公正に扱うことを約束するというわけです。

労働者・労働組合から救済申立てされた場合の対応

救済申立てを受けた企業は、事実関係を調査し、その結果に基づいて答弁書を作成します。

その際、作成した答弁書と関連する証拠資料を共に労働委員会に提出します。

一方、和解の勧めがあった場合、企業は和解を選ぶことも可能です。

裁判手続と比較した際の救済申立の特徴

救済申立てには以下のような特徴があります。

  • 主張責任や立証責任が厳しく課されにくい
  • 救済命令に違反すると刑罰や過料が科されることもある
  • 不当労働行為を認めた場合、謝罪文や反省文の掲示を求められることがある
  • 申立ては都道府県労働委員会に行う
  • 事件の半数以上は和解となっている

不当労働行為救済の申立件数はどれくらい?

都道府県労働委員会への不当労働行為救済の申立は、年間で約220-280件程度です。

そのうち40-80件が中央労働委員会で再審査が求められています。

不当労働行為について訴訟等が起こされた場合の対応

訴訟が起こされた場合、企業は、救済申立てと同様に事実関係を調査し、それに関する答弁書と証拠を裁判所に提出する必要があります。

救済申立てされた場合と同様に、和解の勧めがあった場合には和解する選択肢もあります。

救済命令の申立てと比較した際の裁判手続の特徴

裁判手続は、救済命令の申立てに比べて、判決等に基づいた強制執行が可能です。

労働者側に不当労働行為に当たることについての主張責任や立証責任が課されます。

不当労働行為に関する弁護士相談のメリット

企業が労働者から不当労働行為について訴訟等を起こされた場合、なるべく早い段階で弁護士へ相談することで以下のようなメリットがあります。

メリット①迅速かつ適切な解決を図れる

法律の専門家である弁護士に相談することで、相手方の申立て内容の分析・法的判断・相手方との交渉や和解案の作成・提示などを包括的に依頼することが可能です。

事案の状況を分析した上で、迅速かつ適切な解決に向けた方策を導き出すことができます。

メリット② 精神的な負担を軽減できる

不当労働行為に関する申立ては、労働者側も企業側も、当事者にとって大きな精神的な負担となります。

弁護士が外部の専門家として客観的な視点から問題を分析することにより、負担を軽減しばがら解決に向かうことができます。

メリット③再発防止に向けた対策を講じることができる

不当労働行為は、企業にとっても再発防止策を講じることが重要です。

弁護士相談することにより、過去の事案を分析し、再発防止に向けた具体的な対策を提案することができます。

まとめ

突然労働者や労働組合から「不当労働行為である」と言われた時、企業側も少なからず動揺するかと思います。

まずはどの点が不当労働行為に当たるのかについて冷静に確認し、相手方の主張や要求が正当なのかを分析しましょう。

不当労働行為に関する問題は非常に複雑なため、弁護士に相談することが望ましいです。

なるべく早い段階で弁護士へ依頼することで精神的な負担も軽減できます。

あらかじめ、弁護士保険などで、今後の様々なリスクに備えておくこともおすすめします。

この記事で不当労働行為について学ぶことができ、お役に立てれば幸いです。

監修弁護士

弁護士 吉原崇晃

第一東京弁護士会所属
吉原綜合法律事務所

所在地 東京都港区港南2-16-1品川イーストワンタワー4階
TEL 03-6890-3973

戦略法務として、商標・著作権・景品表示法など表示関係全般や企業法務、男女トラブルや交通事故などの私的問題、社内研修まで幅広く扱う。

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