近年、暴力団対策法や暴力団排除条例、政府による指針などが整備され、反社会的勢力との関わりを持つことは、重大なリスクとして認識されるようになりました。
そのため、反社会的勢力と関わりを持たないように、取引先や顧客と契約する前に、「反社チェック」と呼ばれる対策を講じる企業も増えています。
本コラムでは、反社チェックの具体的な内容とともに、必要性から対処法まで解説していきます。
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反社チェックはなぜ必要?
まず、反社チェックの必要性をみていきましょう。
反社チェック(コンプライアンスチェック)とは
反社チェックとは、取引や契約に入る前に、取引先や顧客などが反社会的勢力に当たらないかどうかをチェックすることをいいます。
暴力団をはじめとする反社会的勢力(以下「反社」とします)は、以前は外観上分かりやすい暴力的行為によって利益を得ていました。
ところが暴力団対策法などによって規制が強化されたため、近年は組織の実態を巧妙に隠しながら一般企業に接触するようになっています。
いわば、企業は、反社と知らずに取引を行ってしまうリスクに常時さらされているといっても過言ではありません。
したがってリスク回避のために、反社チェックをして反社と関わり自体を持たないようにすることが大切になります。
反社チェックは企業を守るために必要
反社チェックは、基本的に上場・未上場など規模に関わらずどんな業種でも行う必要があります。
反社チェックを怠り反社と取引してしまった場合、従業員や株主などにも多大な被害・損失を与えてしまうこともあります。
そのような事態を避けるためにも、企業を防衛するための反社チェックは必要です。
反社への資金源遮断
反社と取引を行えば、暴力団等の資金源となり、勢力の拡大につながります。
暴力団等の勢力が拡大すれば、地域の治安悪化や犯罪行為の助長につながり一般市民が犯罪に巻き込まれる確率が上がってしまいます。
このような負の連鎖を断ち切るためには、反社とのかかわりを断ち、資金源を遮断することが大事です。
反社との付き合いがなくなれば、反社は資金を増やすことができなくなり活動や規模も小さくなっていくでしょう。
企業のコンプライアンス・社会的責任
2011年にすべての都道府県で「暴力団排除条例」が施行されたことにより、企業にはさまざまな努力義務が課せられています。
また、自社と反社が関係を持っている場合、法令違反で行政処分の対象となる可能性もあります。
法令遵守するとともに、積極的に反社を排除することは社会的責任を全うするうえで重要だといえるでしょう。
企業の存続・価値の維持
もしも反社とかかわりを持ち、そのことが露呈してしまったら、顧客や取引先からの信用はもちろん、自社の銀行口座を押さえられてしまう可能性まで考えられます。
また企業としての意識や経営方針等も疑問が生じてしまうでしょう。
反社を排除しコンプライアンスを遵守することで透明性の高い経営をすることができ、また企業イメージの向上や利益につなげることができます。
反社チェックを行うメリット
反社チェックを行うメリットは、コンプライアンスを遵守することで安全に会社運営ができる・社会的責任を果たすことができる・企業の信頼を維持することができる、などさまざまあります。
しかしながら、昨今の反社は反社であることを巧妙に隠し一般企業に接触を図ってきます。
反社チェックの方法自体も多岐にわたりますが、すべての反社を見抜き排除することは簡単ではありません。
一般的には複数の反社チェックを利用することで、より精度を上げることが期待できます。
その際の一次ツールとして「反社チェックツール」というものがあります。
個人・組織に関わらず反社である可能性のリサーチや過去の事件・事故の履歴等の情報を効率的に行うことができ、AI等を使って特定の分野に強い反社チェックを行うこともできます。
自分で調べたり外部に依頼したりするよりも安価で済みますし、手間や時間をかけずにある程度の反社チェックを行えるところがメリットといえるでしょう。
反社会的勢力に該当する相手の範囲
「反社会的勢力」というと、暴力団やいわゆるヤクザなどを想像する人も多いかと思います。
企業暴排指針が定める反社とは以下を指します。
- 暴力団
- 暴力団関係企業
- 総会屋
- 社会運動標ぼうゴロ
- 政治運動標ぼうゴロ
- 特殊知能暴力集団
- 暴力的な要求をするもの
- 法的責任を超えた不当な要求をするもの
また、近年では特殊詐欺集団などの半グレ等も反社だと認識されつつあります。
さらには反社とかかわりがある家族・友人・恋人なども広義では反社に該当します。
反社チェックを行う際には、企業暴排指針が定める反社のほかに、事件・不祥事にかかわりがないか、行政処分や逮捕されてないか等細かく精査することが大事だといえます。
反社チェックは何をすればよい?
では、反社チェックは、具体的にはどうやって行えばよいのでしょうか。
取引規模や会社規模によって、どの程度までチェックすればよいかは異なりますが、主に次のような調べ方があります。
自社で調査する
自社で調査することは、最も手軽な方法です。
自社でできる反社チェックとしては、まず「インターネットで相手の情報を検索すること」が挙げられます。インターネットにおいて、過去の取引や不祥事などに関する記事が出ていないかチェックすることは、時間もかからず無料で容易にできるでしょう。
ただし根拠が明確でない情報は、必ずしも正しいものとは限りません。あくまでの参考として、幅広い正確な情報を得るためのヒントにするとよいでしょう。
Google検索する際は「OR検索」を利用することが便利です。
例: ●山 〇太郎(検索対象)の反社チェックをする場合
「●山 〇太郎 逮捕 OR 暴力団 OR 反社 OR 容疑・・・」
検索エンジンは、検索に入力したもの全てが検索対象となります。ORをいれることにより、その前後のいづれかが含まれるサイトを表示してくれます。
一方「新聞のデータベースで相手の情報を検索する」という方法もあります。この方法は確実な情報を得られやすい反社チェックといえます。
インターネット上で新聞各社のデータベースを使って検索したり、図書館に足を運んで調べたりする方法があります。
また相手が個人でなく企業であれば、「法人登記を確認すること」も一つの方法です。
インターネット上でも登記の内容を確認できるので、登記されている役員や内容に不審な点や気になる点があるかどうかをチェックします。
そのほか、他企業が提供する「反社チェックツール・サービス」を契約して自社に導入し、反社チェックを行う方法もあります。
業界団体の反社データベースを利用する
銀行や証券、不動産などの業界団体では、反社勢力を照会できるデータベースを備えています。
会員企業であれば、このような業界団体の反社データベースのシステムを利用して反社チェックを行うことができます。
自社の業種によりますが、もし利用できる業界のデータベースがある場合には、積極的に活用するとよいでしょう。
外部の調査機関に依頼する
自社でできる反社チェックは、リスト化された情報に基づくものです。
そのため反社会勢力の疑いがあったとしても、実態を知ることができないケースもあります。
そういった場合には、信用調査会社や興信所などの外部の調査機関に依頼して、実態を調査してもらうことも一つの方法です。
ただし、調査機関に依頼する場合には、当然費用もかかります。
そのため、取引等のリスクの大きさに応じて、どの程度の調査を依頼するのかを検討して判断するとよいでしょう。
警察や暴力団追放センターに問い合わせる
警察などの行政機関も、それぞれの自治体が定めている暴力団排除条例に基づいた取り組みを行っています。
警察では、契約相手が暴力団関係者の疑いがある場合などには、事業者の照会に可能な限り情報を提供することとしています。
たとえば東京都であれば、最寄りの警察署か警視庁組織犯罪対策第三課が窓口になっています。
また、都道府県が設置する公益財団法人暴力団追放運動推進センターでも、警察と連携して暴力団排除活動を行っており、相談することができます。
詳しくは、企業の所在地を管轄する警察などに問い合わせて、相談先を確認するとよいでしょう。
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反社チェックの手法の選び方
上記の通り、反社チェックの手法は様々です。
その中からどのような方法で反社チェックを行うかは、会社の規模や業種によって変わります。
もちろんどんな業種でも高精度な反社チェックを行うことが理想ですが、小売店など不特定多数が利用する場合では現実的ではありません。
例えば、一回ごとの取引が高額でリスクが高い場合には、高コストでもできる限り外部の調査機関へ依頼したり業界団体のデータベースを利用したり、高精度の反社チェックを行う必要があります。
上場企業や金融業界・不動産業界などが当てはまりますが、特に上場企業は反社と取引してしまうと行政処分の対象や上場廃止となってしまう可能性が高いため、新規取引先の初期チェックと既存取引先の定期的な反社チェックは必須となります。
対して、飲食店やアパレル販売店・コンビニなど一回の取引が小規模(少額)の場合、そこまで厳密に反社チェックを行う必要はないでしょう。
まとまった支払いをするタイミング等で反社チェックを行えば、手間やコストもかからずにリスクを避けることができます。
反社チェックの注意点
反社チェックを行う際には、次のようなことに注意する必要があります。
できるだけ早いタイミングで行う
反社チェックは、できるだけ早いタイミングで行うことが大切です。
早い段階で気が付けば、契約等をする前にスムーズに関係を断つことができる可能性があります。
各自治体で定めている条例には、事業者に対して、契約の相手方が暴力団関係者でないかを確認するよう努めよう求める規定があります。
これは努力規定ではありますが、企業を守るためにも早期に反社チェックを行いましょう。
なお、条例では、契約書には「暴力団排除に係る特約条項」をできる限り設けるよう求めています。
特約があれば、契約後に反社であることが判明しても、契約を解除しやすくなります。
また特約に加えて、契約の際には「表明確約書」という暴力団員ではないこと等を表明し、違反した場合には無催告で解除に応じる旨を約束する書面を相手方に提出してもらうと、より安心といえます。
継続してチェックする
反社チェックは、一度チェックすればその後はチェックしなくてよいというものではありません。
反社であることを巧妙に隠している相手であれば、たった一度の反社チェックでは実態をつかめない可能性があります。
そのため取引等の相手方に対しては、何度も担当者が相手の事務所に足を運ぶなどして継続してチェックすることが大切になります。
人の目を通して判断する
反社チェックツールなどは、短時間でチェックできる便利なシステムです。
しかしツールなどは、リスト化された情報をもとに機械的に判断するものなので、調査対象が反社であるかどうかを実態に即して判断しているわけではありません。
そのためツール任せにすることなく、必ず担当者などの人の目を通して判断することが反社チェックのポイントになります。
反社と関わってしまった場合の対処法
反社と関わってしまった場合には、担当者や自社だけで問題を抱え込むことなく外部へ相談することが重要になります。
警察や暴力団追放センターに相談する
反社と関わってしまった場合には、対応する社員の身の安全を確保するためにも、早めに警察や暴力団追放センターに相談して解決をはかることが対処法になります。
特に、身の危険を感じたときにはすぐに110番通報をして、自社だけで解決しようとしないことが大切です。
警察や暴力団追放センターに相談すれば、身の安全を確保できるだけでなく、対応の仕方や解決策をアドバイスしてもらえる可能性があります。
また、日頃から連携を密にしておくことによって、何かあった場合でもすぐに対応してもらえるというメリットがあります。
弁護士に相談する
反社への対応については、弁護士に相談することも一つの対処法になります。
弁護士に相談すれば、法的対処法なども視野に入れて対応することが可能になります。
また状況に応じて、警察や暴力団追放センターなどの専門機関にも連携して解決をはかることができるでしょう。
まとめ
本コラムでは、反社チェックの具体的な内容とともに、必要性から対処法までを解説していきました。
反社チェックは、反社と関わらないための水際対策として、非常に重要です。
努力義務ではありますが、コンプライアンスの遵守が求められる近年は、企業の責務ともいえるでしょう。
反社との不適切な関係が明るみになり、顧客等からの信頼を失墜させてしまった企業は、少なくありません。
そういった事態にならないように、反社チェックを徹底し、状況に応じて早期から弁護士などに相談して解決を図ることが大切です。
また、弁護士保険でトラブルの予防をするのはいかがでしょうか。
木下慎也 弁護士
大阪弁護士会所属
弁護士法人ONE 代表弁護士
大阪市北区梅田1丁目1-3 大阪駅前第3ビル12階
06-4797-0905
弁護士として依頼者と十分に協議をしたうえで、可能な限り各人の希望、社会的立場、その依頼者らしい生き方などをしっかりと反映した柔軟な解決を図ることを心掛けている。
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