商標登録の7つのメリットとは?~申請方法から注意点まで弁護士が解説!~

これから新たに事業を立ち上げる方にとっては、「商標登録をどうすべきか」は、一つの判断すべき大切な問題になります。

「商標登録」と聞くと、「手間も費用もかかって面倒」といったイメージがあるかもしれません。

しかし、登録するかどうかを適切に判断するためには、メリット・デメリットや注意点などを正確に知っておき、吟味することが重要です。

今回は、商標登録の7つのメリットに加えて、申請方法や注意点などについても、もれなく解説していきます。

目次

そもそも「商標」とは?

私たちは、日々商品を選ぶ際に、性能や価格などのほかに「どの会社の何というブランドか」で判断することも少なくないものです。

商標とは、簡単にいえば、このブランドマークのことをいいます。

ブランドマークである商標は、商品イメージを作り、すでに作られている商品イメージを守る役割を果たします。

「このブランドマークが付いている製品だから安心」、「このブランドマークの製品なら品質は確かだろう」

このようなイメージを保護するために、商標登録制度があります。

商標登録できるモノとは?

もっとも、必ずしも何でも商標登録ができるわけではありません。

商標登録できるものは、「文字、図形、記号、立体的形状、色彩、音、動き、ホログラム、位置」とされています。

(目で見て認識できる静止しているものに限られず、2015年から、動き商標・ホログラム商標・色彩のみからなる商標・音商標・位置商標が対象に含まれました)

商標登録の7つのメリット

では、早速、商標登録の7つのメリットをみていきましょう。

① 商標を独占できる

商標登録されると、登録者は、「商標権」という権利を有する商標権者として認められます。

商標権者になると、登録した商品やサービスにおいて、その商標を使用したビジネスを独占できるようになります。

たとえ似たような商標とビジネスを展開することを予定していた企業があったとしても、先に商標登録が認められた商標権者が独占できることになります。

商標登録によって商標を独占できるようになることは、大きなメリットです。

また商標には「区分」というカテゴリーがあります。

例えば、「タカシマツモト」という商標を使って洋服を売るビジネスをする場合には「第25類」の「被服・履物」などの商標のうちの「被覆」を取ります。

この「被覆」の商標を取っておけば、洋服を売るとき、他の人は「タカシマツモト」というブランドを使うことはできません。 区分の詳細が気になる方は特許庁のHPをご覧下さい。

また、ビジネスの当初から、「タカシマツモト」の「洋服」だけでなく、「文房具」も売りたいと考えているようであれば、「第16類」の「文房具及び事務用品(家具を除く。)」を見て出願をすることになります。

独占する範囲を広く取っておけば、後になって再度出願する手間が省けます。

ただし、区分が増えれば弁理士に依頼する費用や印紙代などが増えます。

詳しくは後述します。

➁ 使用差止や損害賠償請求も認められる

商標権者には、商標の侵害者に対し、使用差止を求める権利が認められています。

また、商標の侵害行為によって損害が発生したときには、侵害者に対して損害賠償請求をすることも認められます。

このように、商標を取っておけば、商標の侵害者を排除できることも、商標登録のメリットです。

③ 似ているマークやロゴも排除できる

商標登録によって排除できるのは、登録した商標と同じマーク・ロゴだけではありません。

登録した商標と似ているマーク・ロゴについても、排除することができます。

この点も商標登録のメリットです。

④ 更新すれば半永久的に保護できる

商標権の存続する期間は、10年間とされています。(後述しますが、印紙代は5年ごとの分割払いにすることができます)

なお更新手続きを継続して行えば、理論上永久に存続させられます。

これは、特許権などの他の産業財産権にはない商標権だけのメリットになります。

⑤ 商標の譲渡やライセンス使用も認められる

商標権は、所有権と同じように、他人に譲渡することができます。

したがって商標権者は、商標を他の企業に売却して、対価を得ることもできます。

また商標権自体は手放さずに、使用料を得る代わりに、他の企業などに商標を使うことだけを認めるライセンス使用も認められています。

このような財産的価値の活用が可能なことも、商標登録のメリットです。

⑥ ブランド化・ブランドを守ることができる

商標登録すれば、ブランド化につながり、ブランドを守ることができます。

たとえば黒猫の親子のマーク(商標)がある宅配業者のトラックが自宅の近くにとまれば、「“クロネコヤマトの宅急便”だ」と安心して自宅の玄関を開けることでしょう。

これは、商標登録によってマークがブランド化され、ブランドが守られているからだといえるでしょう。

⑦ 社会的信用を得られる

商標登録には、社会的信用を得られるというメリットもあります。

長年信頼できるブランドを継続していることで社会的な信用を得られ、取引がスムーズに進む可能性もあります。

また、商標登録されたマークは、特許庁が審査して認められたものです。その点でも、社会的な信用を得られる場合があります。

商標登録のデメリット

商標登録するメリットがある反面、デメリットもあります。

デメリットには、主に次の3点を挙げることができるでしょう。

① 費用がかかる

商標を登録するためには、出願の際の手数料や登録料、更新料などが必要になります。

そのほか出願などを弁理士に依頼すれば、その報酬も必要になります。

出願時の印紙代は区分によって異なります。

例えば、「タカシマツモト」の商標を「洋服」だけで取るなら1区分ですが、「洋服」と「文房具」で取るなら2区分になってしまいますので、その分印紙代が高くなります。

具体的には、1区分12,000円、2区分20,600円です。

登録時の印紙代は、

  • 5年分(5年ごとの分割払い)の場合は1区分16,400円、2区分32,800円です。
  • 10年分の場合は1区分28,200円、2区分56.400円です。

そして、弁護士に依頼する場合、弁護士費用が最低でも数万円かかります。

➁ 手間がかかる

商標登録を自分で出願する場合には、願書の作成や手数料の納付などのさまざまな手間がかかります。

特に、先ほども述べた通りですが、区分の選び方は専門的な問題ですので、特に時間がかかってしまいます。

起業に向けた準備で忙しい場合などには、手間がかかり時間を取られることもデメリットになることでしょう。

弁護士

このデメリットは弁理士に依頼すると解消されます。
私は、弁護士の立場で顧客を紹介するにあたって弁理士の相談に同席することがありますが、区分の選び方については、やはり弁理士さんにはかなわないと感じています。
費用がかかっても弁理士にお願いすることをすすめます。

③ 使用しないと取消請求されるリスクがある

商標は、使用をはじめる前に出願して登録することもできます。

しかし使用せずにそのままにしていれば、その商標の使用を希望する他の企業などから登録商標の取消審判を請求されるリスクがあります。

取消審判を請求された場合には、実際に商標を使用していることが証明できなければ、登録が取り消される可能性があります。

このような取消請求されるリスクやその対応に追われる可能性があることは、デメリットといえるでしょう。

商標登録の申請方法

では、商標登録の申請に関して、概要をみていきましょう。

1.商標登録の申請方法

商標登録の申請は、登録を受けようとする商標や必要事項を記載した「願書」を特許庁に提出して行います。

出願は、特許庁の担当窓口に持参する方法と郵送で送付する方法があります。

願書の様式は、「知的財産相談・支援ポータルサイト」に掲載されているので、そちらをご覧ください。

なお、商標登録は、紙の願書による出願だけでなく、インターネット出願(オンライン出願)も可能です。

インターネット出願に関する詳しい内容は、「電子出願ソフトサポートサイト」で確認することができます。

紙とオンラインの出願における大きな違いは、オンラインでは電子証明書を取得する必要があることや、紙では電子化手数料が必要になることがあげられます。

2.申請から登録までの手順

出願後は、提出された書類に形式面の不備がないかチェックする「方式審査」が行われます。

出願に不備があった場合には補正する必要がありますが、方式審査が終われば、商標が登録要件を満たしているかを審査する「実体審査」が行われます。

そして、実体審査で登録要件を満たしていると判断された場合には、「登録査定」が出されます。

登録査定が出て出願人が登録料を納付した場合には、商標が商標登録原簿に登録され、出願人は商標権を得ることになります。

商標登録の出願前の注意点

商標登録の出願にあたっては、いくつかの注意点があります。

1.出願前に事前調査が必要

出願しても、すでに登録された類似の商標があれば、商標登録は認められません。そのため商標登録の出願前には、すでに類似した商標が登録されていないかを調査することが必要になります。

調査は、「特許情報プラットフォーム」の商標検索機能を利用するなどの方法で進めることができます。

また出願前には、商標登録を受けることができない商標にも該当しないことを特許庁のホームページなどで事前に確認しておくとよいでしょう。

2.商標を利用する商品やサービスを具体化する

商標登録は、商品やサービスを特定して行わなければなりません。

出願の際にも、特定の商品やサービスを指定して、「商標と商品(またはサービス)」をセットで記載する必要があります。

そのため、出願前に、どのような商品やサービスにおいて商標を使用したいのかを具体化しておく必要があります。

3.早めに出願した方が安心

商標は、特許庁で登録されなければ、権利として保護されません。そのため長年使用していた商標が他社に勝手に使用されたとしても、商標登録していなければ、他社に使用差止を請求できる権利はありません。

また、商標登録しようとしても類似の商標が登録されてしまえば、商標登録できなくなってしまいます。

したがって、出願を決めた場合には、出来るだけ早めに出願した方が安心といえます。

まとめ

今回は、商標登録の7つのメリットに加えて、申請方法や注意点などについても解説しました。

商標登録した場合には、商標を独占し他者を排除し財産権としても活用できるなどといったメリットがあります。

出願の際には、事前に類似商標の有無や登録できない商標でないかを確認した上で、できるだけ早く行うことが大切になります。

商標登録に関しての専門家は弁理士になりますが、商標の侵害などのトラブルや企業に関する法律面での問題などは弁護士に相談するとよいでしょう。(なお、弁護士には弁理士の知り合いもいるので、紹介してもらうのもよいでしょう)

この記事が少しでも参考になれば幸いです。

弁護士
松本隆弁護士

弁護士 松本隆

神奈川県 弁護士会所属
横浜二幸法律事務所
所在地 神奈川県横浜市中区山下町70土居ビル4階
TEL 045-651-5115

労働紛争・離婚問題を中心に、相続・交通事故などの家事事件から少年の事件を含む刑事事件まで幅広く事件を扱う

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