特定商取引法とは?個人のネットショップにも必要な表示を5分で解説

インターネットの普及によって、個人でも簡単にネットショップを開設して、ハンドメイド商品などを販売できるようになりました。

しかし商売をする以上は、個人のネットショップであっても、企業と同様にさまざまな法律によって定められた規制を守らなければなりません。

なかでも「特定商取引法」は、広告に記載すべき事項などを定めており、ネットショップ運営者にとっては知っておくべき法律になります。

本記事では、特定商取引法について、広告に必要な表示の内容も含めて解説していきます。

目次

特定商取引法とは

特定商取引法(正式名称:特定商取引に関する法律)とは、特にトラブルになりやすい消費者と事業者の取引について、取引の際のルールを定めている法律です。

取引の場面では、消費者は、契約等に不慣れであることが多く、事業者に比べると不利益を受けやすい立場にあります。

そのため特定商取引法では、消費者が不利益を受ける可能性が高い取引形態を特定商取引として規制し、消費者保護をはかっています。

特定商取引法が適用される取引

特定商取引法では、トラブルになりやすい以下の取引を規制しています。

訪問販売

セールスマンが突然自宅にやってきて商品の押し売りをするような取引が典型的な例になります。

また、路上で声をかけて営業所などで商品販売をするキャッチセールスも、法律上は訪問販売に含まれます。

通信販売

事業者がテレビや雑誌、チラシ、インターネットなどの媒体に出した広告をみて、消費者が電話やインターネットなどの通信手段を使って購入の申し込みをする取引です。

ネットショップにおける商品の販売も、通信販売にあたります。

電話勧誘販売

事業者が電話で勧誘し、商品やサービスを消費者に販売する取引のことをいいます。

連鎖販売取引

いわゆるマルチ商法のことです。

事業者が勧誘した消費者が販売員となり、その販売員が次の消費者を販売員として勧誘するといった方法で、連鎖的に組織を拡大していく取引形態です。

特定継続的役務提供

語学教室への通学やエステに通う契約など、長期に渡る継続的なサービスを提供する取引をいいます。

業務提供誘因販売取引

「仕事をするために必要である」などと勧誘し、商品を販売する内職商法やモニター商法などの取引です。

訪問購入

事業者が消費者の自宅等を訪問し、貴金属やアクセサリーなどを購入する取引をいいます。

ネットショップにおける特定商取引法の規制内容

ネットショップでの商品の販売は、通信販売にあたります。

通信販売は、特定商取引法によって、主に次のような規制をうけます。

特定商取引法の規制内容

広告の表示

通信販売では、消費者は、広告をみて購入するかどうかを判断しなければなりません。

したがって広告には「特定商取引法に基づく表示」として、一定事項を表示することが義務付けられています。表示する事項については、後ほど詳しく解説していきます。

誇大広告等の禁止

実際の商品やサービスより誇張した広告は、消費者トラブルのもとになります。

そのため特定商取引法では、誇大広告を禁止し、一定の事項について違反すれば行政処分や罰則の対象になるとしています。

承諾のない電子メール広告等の禁止

事業者は、消費者側の請求や承諾がない電子メール広告やファクシミリ広告を送信することは、原則として禁止されています。

前払式通信販売における承諾等の通知

前払式通信販売では、消費者は、相手が契約を承諾したかどうか分からない段階で代金を支払うことになります。

そのため前払式で販売する事業者には、消費者に承諾の通知をすることが義務付けられています。

契約解除にともなう債務不履行の禁止

通信販売にはクーリングオフ制度は適用されませんが、商品到着後8日以内であれば購入者の負担であれば返品できる返品制度が導入されています。

もっとも広告で返品不可と明記されていれば返品はできません。

特定商取引法では、返品などによって契約解除された場合に、代金返還などを拒否・遅延することを禁止しています。

顧客の意に反した契約申込をさせる行為の禁止

インターネットの通信販売では、消費者が商品購入の申し込み画面だと認識せずにクリックしてしまうトラブルが少なくありません。

特定商取引法では、申込ボタンが分かりにくかったり、申込内容を簡単に確認・訂正できるようにしてなかったりなどの行為を禁止しています。

具体的にどのような行為が禁止されるのかについては、通信販売|特定商取引法ガイド (caa.go.jp)(別添7)インターネット通販における「意に反して契約の申込みをさせようとする行為」に係るガイドライン (caa.go.jp)を参考にするとよいでしょう。

「特定商取引法に基づく表記」として記載すべき内容

通信販売においては、「特定商取引法に基づく表記」として、広告に次の事項を記載しなければなりません。

しかし記載事項のうち一部については、広告に「消費者から請求があった場合には文書等で提供する」旨の記載をすれば省略することも認められます。

価格(送料についても記載が必要)

価格は、消費者が取引で実際に支払う実売価格を記載します。消費税が必要になる取引では、消費税込みの価格を記載します。

なお価格に送料が含まれない場合には、送料を別に表記しなければなりません。

購入者等が負担すべき費用の内容と金額

商品の価格や送料以外に、工事費や組立費、代引手数料などの購入者等が負担すべき費用が発生する場合には、その内容と金額を明記しなければなりません。

代金の支払時期と支払い方法

代金の支払時期として、「商品到着後1週間以内に同封した振込用紙で代金をお支払いください」などと記載します。また支払い方法については、「クレジット決済、銀行振り込み、代金引換」などと複数ある場合には全て漏れなく記載します。

商品の引き渡し時期

通信販売では、注文された商品が消費者にどれぐらいの期間で届くかを明確に表示する必要があります。「代金入金確認後〇日以内に発送します」などと記載します。

返品特約に関する事項

商品に欠陥がない場合でも返品に応じる返品特約があるかどうかを明確に記載します。

そして特約がある場合には、返品にかかる費用負担も含めて、その内容を記載します。

事業者の氏名(名称)、住所、電話番号

個人事業主であっても、原則として、氏名(または登記された商号)、住所、電話番号の表示が必要です。

ただし、「消費者から請求があった場合には文書等で提供する」旨を記載することで非表示にすることも可能です。(後述しています)

法人の代表者・責任者の氏名(インターネット広告の場合)

法人がインターネットで広告を行う場合には、代表者か業務の責任者の氏名も表示します。

申し込みの有効期限

購入の申し込みに有効期限がある場合には、その期限を明記します。

契約不適合責任についての定め

商品の種類や品質に関して契約の内容に適合しない場合に負う販売業者の責任について定めがあれば、その内容を記載します。

ソフトウェアの動作環境

ソフトウェアに関する取引では、その商品を利用できる動作環境を広告に表示する必要があります。

複数回契約が必要な旨と販売条件

商品について、2回以上継続して売買契約を締結する必要がある場合には、その旨と販売条件を記載します。

商品についての特別な販売条件

販売数量に制限があるなど、商品に特別な販売条件がある場合には、その内容を記載します。

別途送付するカタログ等の金額

消費者の請求によってカタログなどを別途送付する場合に、費用が発生するのであればその金額を記載します。

事業者の電子メールアドレス

電子メールによって広告を送信する場合には、発信元となる事業者の電子メールアドレスの記載が必要です。

特定商取引法に基づく表記をしなかった場合はどうなる?

特定商取引法に基づく表記には、氏名や住所などの個人情報を記載することが求められます。

ですが、個人でネットショップを運営しているような場合には、自宅の住所や氏名をネット上に公開することに抵抗がある方も少なくないでしょう。

しかしだからといって、特定商取引法に基づく表記をしないという選択は、避けるべきです。

なぜなら特定商取引法の規制に違反すれば、行政から業務改善の指示や業務停止命令、業務禁止命令などを受けたり、罰則が課されたりする可能性があるためです。

そういった場合には、「消費者から請求があった場合には文書等で提供する」旨の記載をして、特定商取引法に基づく表記の一部(氏名・住所等)の公開を省略することも一つの方法にはなります。

またバーチャルオフィスを利用したり、ネットショップを開設したサイトの運営会社の住所等を記載できたりするケースもあります。

基本的には、商取引を行うわけですから個人情報も表示するのが原則ですが、ご自身のケースに応じて表記をどうすべきか判断していく必要があるといえるでしょう。

まとめ

本記事では、特定商取引法について、広告に必要な表示の内容も含めてご説明していきました。

通信販売などの特定商取引を行う場合には、特定商取引法に基づく表示などの法律の規制についても遵守しなければなりません。

またトラブルが発生したときには、すぐに弁護士などの専門家に相談することも大切な選択肢になります。

弁護士
黒田弁護士

弁護士 黒田悦男 

大阪弁護士会所属
弁護士法人 茨木太陽 代表
住所:大阪府茨木市双葉町10-1
電話:0120-932-981

事務所として、大阪府茨木市の他、京都市、堺市にて、交通事故被害者側に特化。後遺障害認定分野については、注力分野とし、医学的研鑽も重ねています。

また法人の顧問をはじめ事業上のトラブルにも対応をしています。

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