親と縁を切るには?親子関係の解消・絶縁でできること・できないこと

「親からの暴力や暴言に長年苦しめられている」
「親の借金の肩代わりを何度も求められて困っている」
「親からの過度な干渉や束縛から逃れたい」
「親と完全に絶縁して二度と関わりたくない」


このような親との深刻な問題を抱え、「親との縁を切りたい」「親子関係を解消したい」と悩んでいる方は少なくありません。

特に成人してからも親からの悪影響が続く場合、「法的に親子関係を断ち切ることはできないのか?」「親と絶縁する方法はないのか?」「弁護士に相談すれば何か解決方法があるのか?」といったように悩む方も多いのではないでしょうか?

残念ながら、実の親子関係を法的に完全に解消することはできません。しかし、現実的に親との関わりを断ち、親からの悪影響を最小限に抑える方法は複数存在します。

引っ越しや連絡先の秘匿、戸籍の分籍、相続放棄、接近禁止の仮処分など、状況に応じた対処法を選択することが可能です。また、すでに受けてしまった被害については、慰謝料を請求できる場合もあります。

本記事では、親子関係の法的な意味と限界、親との関わりを断つための具体的な方法、「絶縁状」や「誓約書」にどこまで効力があるのか、弁護士に依頼した場合の費用まで、弁護士監修のもと詳しく解説していきます。

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目次

親子関係は法的には解消できる?

さまざまな理由により、法的に親子関係を解消したいと考えるケースは少なくありません。

そもそも血の繋がった親子関係を解消できるのか紹介していきます。

法的には親子関係を完全に解消することはできない

実親との親子関係は、法的には基本的に解消はできません。そもそも、血の繋がった親との縁を切ることは難しいのです。

ただし、親子だからといって親と仲良くしなければいけない義務や、会わなければいけない義務などはありません。

特別養子縁組をすると実親との親子関係は消滅する

実親との親子関係を解消することは基本的には困難ですが、特別養子縁組を行うことで生物学上の親(実親)との親子関係は解消できます。

そもそも養子縁組には、普通養子縁組と特別養子縁組の2種類があります。

普通養子縁組は、実親との親子関係を残したまま、養子縁組をした親との親子関係を築く方法に対し、特別養子縁組は、生物学上の親との関係を解消し、養子縁組を交わした親との親子関係だけを構築する方法です。

親子関係を解消したいなら特別養子縁組をすればいいのではないか?と思いますが、特別養子縁組は家庭裁判所で審判されなければ、縁組を行うことはできません。

特別養子縁組は、実親が著しく監護ができない状態であると認められた場合に限り縁を組めます。

養子になれるのは、15歳未満の子どもだけです。15歳以上の子どもは特別養子縁組の関係を構築できません。

戸籍上の親子でも血縁がない場合は「親子関係不存在確認」ができる

戸籍上は親子として記載されていても、実際には血のつながりがない場合があります。このようなケースでは、家庭裁判所の手続きによって親子関係を否定することが可能です。

使うのは「親子関係不存在確認調停」という手続きです。家庭裁判所で当事者双方が親子関係の不存在について合意し、裁判所が必要な事実の調査を行ったうえでその合意が正当と認めれば、合意に従った審判がなされます。

申立先は相手方の住所地の家庭裁判所か、当事者が合意で定めた家庭裁判所です。費用は確認する親子関係ごとに収入印紙1,200円分と、連絡用の郵便切手が必要になります。

ただし、この手続きが使えるのは戸籍上の親子に血縁関係がない場合に限られます。血のつながった実の親子について、この手続きで関係を否定することはできません。

出典:裁判所「親子関係不存在確認調停」

養子縁組をしている場合は「離縁」で解消できる

相手が実の親ではなく、養子縁組によって親子になった養親である場合は、話が変わります。普通養子縁組による親子関係は「離縁」によって解消できるからです。

離縁には、当事者の話し合いで届出をする協議離縁、話し合いがまとまらない場合の調停離縁、調停でも解決しない場合の裁判離縁があります。まずは協議、それが難しければ家庭裁判所の調停という流れになるでしょう。

ただし、養親との離縁が成立しても、実の親との親子関係には何の影響もありません。実親との関係を解消したいという目的では使えない手続きです。

関連記事:婿養子の離婚手続きのすべて! 離婚・離縁の2つを分かりやすく解説

いわゆる「絶縁」「勘当」とはどのような状態?

ドラマや小説でよく耳にする「勘当」「絶縁」は、どういう状態を指すのでしょうか。

勘当とは、親が子に対して「もう親子ではない」「今後一切面倒はみない」と一方的に言い渡すことを指す言葉です。

江戸時代には、親が子を家から廃除する慣行として実際に制度化されていました。明治民法にも、家督を継ぐ者の地位を失わせる「廃嫡」という制度がありましたが、1947年の民法改正で家制度が廃止されたのに伴い、これらの制度もなくなっています。

一方で絶縁は、勘当のような一方的な宣告に限らず、親子が互いに関わりを持たなくなった状態を広く指す言葉です。どちらから言い出したかを問わない点が勘当との違いになります。

整理すると、「勘当」も「絶縁」も現行の法律にはない言葉であり、宣言しても法的な効果は生じません。親が「勘当だ」と言い渡しても、子の相続権はなくなりませんし、扶助に関する義務も残ります。

なお、師弟関係や友人関係であれば、絶縁状を送って以後の関係を断つことは事実上可能です。しかし親子については、そもそも当事者の意思で消滅させられる関係ではないため、同じようにはいきません。

「絶縁届」「親子関係終了届」という届出は存在しない

「絶縁届」「親子関係終了届」「親子絶縁届」といった書類を役所に出せば縁が切れるのではないか、と考える方がいます。しかし、これらの名前の届出は制度として存在しません。役所の窓口でも家庭裁判所でも受け付けてもらえないでしょう。

名前が似ているため混同されやすいのが「姻族関係終了届」です。これは配偶者が亡くなったあとに、義理の父母など配偶者側の親族との関係を終わらせるための届出です。実の親子には使えません。

実の親子について役所でできるのは、後で説明する分籍や住民票の閲覧制限といった手続きです。家庭裁判所でできるのは、相続放棄や親族関係調整調停などになります。「縁を切る」ための単独の届出があるわけではなく、目的ごとに別々の手続きを組み合わせていくことになると考えてください。

関連記事:夫の親族と縁を切りたい!「姻族関係終了届」について知っておきたい5つのことを弁護士が解説!

「親子関係」の法的な意味合いとは

では、法的な親子関係とはどのような関係なのかを理解しておきましょう。

先にお伝えした通りに、親子だからといって、仲良くしなければいけないことはありません。

成人した親子の間における法的な関係は、主に「相続」と「生活扶助」の2点に集約されます。

ただし、子どもが成人していない場合は、「親の養育義務」「監護義務」が発生します。

相続について

相続(民法第882条~第1044条)とは、財産や権利・義務を受け継ぐことです。

親が亡くなった場合は、預貯金や不動産、家具・家財道具、車などの財産を相続することができます。

親子関係では第一に相続権が発生します。親の借金などマイナスの財産がある場合は、相続を放棄することも可能です。

生活扶助義務について

次に生活扶助義務(民法877条1項)が発生します。

親が生活に困窮している等の場合、余力の範囲で親の生活の面倒を見なければいけない義務のことをいい、親子関係だけではなく兄弟・姉妹間でも発生します。

これは、「親の生活が困窮していた場合に、子どもは無条件にお金を渡さなければいけない」という義務ではありません。

生活扶助義務の前に、自身の生活を保持する義務があります。

親子だからといって、必ずしも親の面倒を見なければいけないわけではありません。反対に、子どもが困窮している場合は親が扶助する義務もあります。

このように親族間の扶助義務が発生するため、法的に親子関係を解消するのは難しいといえるでしょう。

子が未成年の場合には親に養育義務と監護義務が発生する

もしもあなたが未成年なら、親には養育義務と監護義務が発生します。親には子どもを健やかに育てる義務があります。

一般的に、未成年の子どもが自ら親子関係を解消したいと考える状況は多くはありません。しかし、親からの虐待などにより、深刻な悩みを抱えるケースも決して少なくないでしょう。

親子関係を解消したい理由とは?

そもそも、親子関係を解消したい理由にはどんな理由があるのかをご紹介します。

悩んでいるのはあなただけではありませんので、安心してください。

親の借金問題

親がお金にだらしなく、ギャンブルなどですぐに借金を作ってきて生活に困窮してしまっているケースなどは、親子関係を解消したいと感じるでしょう。

親が借金返済のために働かずに、子どもに無心する場合はなおさら親子関係を解消したいと感じるはずです。

親からの虐待

親からの虐待がひどい場合でも親子関係を解消したいと感じるでしょう。

もしもあなたが未成年なら、児童相談所などに相談し、対策を講じてもらうことも可能です。

一人で悩まずに、適切な窓口や友人・知人などに相談しましょう。

親からの過干渉

何についても干渉してくる場合も親子関係が煩わしいものになり得ます。

結婚に反対された、または結婚しているにもかかわらず生活について口出ししてくるなど、親の過干渉は心理的な苦痛を伴うでしょう。

成人している子どもに対しての過干渉は、対策を講じることで解決できる可能性が高いので、次の章をご覧ください。

できる限り親子関係を解消させる方法

煩わしい親との親子関係をできる限り解消することはできます。

法的な親子関係を解消することはできなくても、付き合いを絶てば、解決できる可能性はあるでしょう。

1. 引っ越し先、連絡先を伝えない

親との同居を解消し、引っ越しする方法があります。

引っ越し先を教えず、また電話番号等の連絡先を伝えないことで、親子関係を希薄にすることは可能です。

できれば、引っ越し先の住民票に閲覧制限をかけておけば安心できるでしょう。

住民票の閲覧制限は、「住民基本台帳事務における支援措置」という制度で行います。市区町村に被害を申し出て、支援の必要性が確認されると、相手方からの住民基本台帳の一部の写しの閲覧、住民票(除票を含む)の写し等の交付、戸籍の附票(除票を含む)の写しの交付を制限してもらえます。

申出先は住民票のある市区町村、または本籍地の市区町村です。手続きにあたっては、警察や配偶者暴力相談支援センターなどの相談機関の意見を確認したうえで必要性が判断されますので、先に相談機関へ足を運んでおくとスムーズでしょう。

対象は配偶者からの暴力、ストーカー行為等、児童虐待およびこれらに準ずる行為の被害者とされています。成人した子が親からの被害を理由に申し出るケースも、これに準ずる行為として支援措置が講じられることがあります。判断は市区町村ごとに行われますので、まずは窓口に事情を伝えて相談してください。

出典:総務省「配偶者からの暴力(DV)、ストーカー行為等、児童虐待及びこれらに準ずる行為の被害者の方は、申出によって、住民票の写し等の交付等を制限できます。」

関連記事:明日の私へ「今すぐ女性(DV)シェルターへ逃げて!」救いの道を伝授!

親からの束縛が強い・親が付き纏って親子関係を解消したい等と感じている方にとって、引っ越しは有効な手段です。

2. 第三者との養子縁組

第三者との養子縁組も有効です。成人していても普通養子縁組なら年齢制限がありません。

普通養子縁組を組むことで、実親との親子関係を解消できるわけではありませんが、過干渉を防ぐための抑止力には繋がります。

3. 戸籍を分籍する

親と戸籍を分籍することも、有効な手段の一つです。

法的な親子関係が解消するわけではありませんが、戸籍を分けることで、親との縁を切ったという心理的な効果が得られます。戸籍上で親と同じ欄に載りたくないと考える方は、自分の戸籍を確認したうえで検討するとよいでしょう。

分籍ができるのは18歳以上の方に限られます。すでに戸籍の筆頭者になっている方や、その配偶者は分籍できません。

手続きは本籍地または住所地の市区町村役場で行います。必要書類は分籍届、戸籍謄本、本人確認書類で、手数料は無料です。分籍届を出すと自分を筆頭者とする新しい戸籍が作られます。

分籍により新しい戸籍が作られ、筆頭者となりますが、親との法的な親子関係は変わりません。ただし、戸籍上で親と同じ戸籍にいないことで、心理的な区切りをつけることができるでしょう。

一度分籍した場合もとに戻すことはできないため、慎重に検討しましょう。

「除籍」「分籍」「転籍」の違い

戸籍に関する言葉は似たものが多く、混同されがちです。ここで3つの違いを整理しておきましょう。

  • 除籍:婚姻や死亡、分籍などによって、ある戸籍から抜けること。また、その戸籍に記載された全員が抜けた戸籍そのものを指す場合もあります
  • 分籍:今の戸籍から抜けて、自分を筆頭者とする新しい戸籍を作ること
  • 転籍:本籍地を別の場所に移すこと

注意していただきたいのは、「親の戸籍から除籍する」という単独の手続きは存在しないという点です。分籍や婚姻をした結果として、元の戸籍から除籍された状態になる、という順序になります。「除籍したい」という目的であれば、実際に行うのは分籍の手続きということになるでしょう。

分籍ができるのは18歳以上の方に限られます。また、すでに戸籍の筆頭者になっている方や、その配偶者は分籍できません。結婚して自分の戸籍を持っている方は、そもそも親の戸籍から抜けています。

なお、除籍・分籍・転籍のいずれを行っても、法的な親子関係そのものは変わりません。相続権も扶養に関する義務も残ります。

関連記事:離婚後の戸籍問題。戸籍異動の3ステップと注意点

4. 相続放棄・廃除をする

相続が発生した時、相続を放棄すれば親が抱えた多額の借金などを背負う必要はなくなります。

また、相続は親から子どもだけではなく(可能性は低いですが)子どもから親への相続も存在することも覚えておきましょう。

自分が亡くなった後に親に相続させたくなければ、法定相続人の廃除をしておけば安心です。

「生前廃除」もできますし「遺言廃除」も可能ですので、相続だけでも親子関係を解消しておきたい方は、家庭裁判所に申し立てておきましょう。

審判の結果認められれば、あとは、廃除届けを提出するだけで、あなたから親への相続権はなくなります。

相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ申述する必要があります。「親が亡くなった日から3か月」ではない点に注意してください。

費用は収入印紙800円分と連絡用の郵便切手、それに戸籍謄本などの書類が必要です。一度放棄すると撤回できないため、親の財産状況を十分調査してから決断しましょう。

出典:裁判所「相続の放棄の申述」

関連記事:相続放棄は3ヶ月【自分で出来る】相続放棄の手順と注意点 

一方、推定相続人の廃除は生前でも遺言でも可能です。生前廃除の場合は家庭裁判所に調停または審判を申し立て、廃除事由(被相続人に対する虐待、重大な侮辱、著しい非行等)を証明しなければなりません。申立手数料は800円、戸籍謄本等の書類費用がかかりますが、認められれば市区町村役場に廃除届を提出し、相続権を失わせることができます。

遺言廃除の場合は、遺言書で廃除の意思と理由を明記し、遺言執行者が廃除届を提出します。

廃除が認められた場合、その相続人は相続権を失い、あわせて遺留分も失います。ただし、廃除された人に子がいる場合はその子が代襲相続人となるため、その家系すべてが相続から外れるわけではありません。

関連記事:この人には相続させたくない!~相続廃除の2つの方法とは~
関連記事:【最新版】改正された遺留分制度!「遺留分侵害額」請求権とは?

5. 接近禁止仮処分命令の申し立てをする

もしも、親が付き纏って、金銭の無心・過干渉・激しいDVがあるなどの場合は、民事保全法の「接近禁止仮処分命令」を申し立ててみるのも一つの方法です。

DV防止法にもとづく保護命令は、配偶者や元配偶者、生活の本拠を共にする交際相手が対象であり、親子間では利用できません。しかし、民事保全法にもとづく接近禁止の仮処分であれば、親子間でも申し立てることが可能です。申立先は相手方の住所地を管轄する地方裁判所になります。

関連記事:仮処分とは?要件や費用、申立ての流れをわかりやすく解説!

接近禁止仮処分命令とは、親からのつきまとい行為や脅迫的な金銭要求などに対して、法的拘束力を持って接近や連絡を禁止する命令です。DV保護命令とは異なり、親子間でも利用できる重要な法的手段となります。

この命令が認められやすいのは、以下のようなケースが挙げられます。

  • 借金の肩代わりを強要して断ると暴言や脅しを行う場合
  • 勤務先に執拗に電話をかけて業務に支障をきたしている場合
  • 深夜早朝問わず自宅に押しかけて大声で騒ぐ場合
  • SNSやインターネット上で誹謗中傷を繰り返す場合

手続きは相手方の住所地を管轄する地方裁判所に申立書と疎明資料(主張を裏づけるための資料)を提出します。疎明資料としては、以下のような情報が有効です。

  • 被害状況を録音したデータ
  • 写真
  • 動画
  • 精神的苦痛がある場合の診断書
  • 警察への相談記録
  • 第三者の証言書

費用は申立手数料として2,000円(収入印紙)が必要です。加えて、相手方が被る可能性のある損害に備えて担保金を立てるよう求められることがあります。担保金の額や審理にかかる期間は事案の内容によって裁判所が判断しますので、あらかじめ確認しておきましょう。

命令には以下の内容が含まれることが一般的です。

  • 申立人の住居・職場への接近禁止
  • 電話・メール・SNS等による一切の連絡禁止
  • 友人・知人を介しての間接的接触禁止

命令に違反した場合は、間接強制による金銭支払い(通常1万円~10万円程度)を命じることができるほか、精神的苦痛に対する慰謝料や実損害の賠償請求も可能となります。悪質な場合は威力業務妨害罪や脅迫罪等での刑事告発も視野に入りますが、親のつきまといが激しく、身の危険を感じるなどの必要性と緊急性が求められます。

必ずしも接近禁止仮処分命令が審判の結果有効になるとは限りませんが、審判で認められれば、接近した際に間接強制による金銭支払いや損害賠償を請求することが可能です。

手続きは非常に複雑なため、法的知識が必要です。弁護士に依頼することで、認容される可能性を高められるでしょう。

親から受けた被害について慰謝料を請求できる?

ここまでは親と距離を取るための方法を紹介してきました。しかし、すでに受けてしまった被害について責任を問いたい、と考える方もいるでしょう。

親子であっても、相手の行為が不法行為にあたる場合には、損害賠償として慰謝料を請求することができます。民法709条は故意または過失によって他人の権利や法律上保護される利益を侵害した者に損害賠償責任があると定めており、民法710条は財産以外の損害、つまり精神的な苦痛についても賠償の対象になると定めています。親子であることを理由に、この規定の適用が外れるわけではありません。

慰謝料を請求できる可能性があるケース

実際に請求が認められるかどうかは事案によりますが、次のような行為は不法行為として問題になり得ます。

  • 暴力を振るわれ、けがをした
  • 継続的に暴言や人格否定を受け、心身に不調が出た
  • 勤務先や取引先に事実と異なる話を伝えられ、仕事に支障が出た
  • 無断で預金を引き出された、名義を使われて借金をされた
  • 転居先に押しかける、深夜に繰り返し電話をするといった行為が続いている

一方で、「育て方に納得できない」「性格が合わない」といった理由だけでは、不法行為として認められることは難しいでしょう。行為の内容と、それによって生じた損害を具体的に示せるかどうかが分かれ目になります。

請求するために必要な証拠

親子間のトラブルは家庭内で起きるため、第三者の目撃者がいないことがほとんどです。そのため、自分で記録を残しておくことが決定的に重要になります。

  • 暴言や脅しの録音データ、通話履歴
  • けがの写真、医師の診断書
  • 心身の不調について通院した場合のカルテや診断書
  • メール、LINE、手紙などのやり取り
  • 出来事を日時とともに記録したメモや日記
  • 警察や自治体の相談窓口に相談した際の記録

特に診断書と相談記録は、被害が継続していたことを示す資料として重視されます。相談した事実が残っているだけでも意味がありますので、被害を受けている段階で早めに窓口へ足を運んでおきましょう。

時効に注意する

不法行為による損害賠償請求には消滅時効があります。損害と加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年が経過すると請求できなくなります。ただし、生命または身体を害する不法行為については、知った時から5年に延長されています。

長年にわたって被害が続いてきたケースでは、古い出来事についてはすでに時効が完成している可能性があります。どこまで請求できるかの判断は個別の事情によりますので、迷ったら早い段階で弁護士に相談してください。

関連記事:「精神的苦痛」で慰謝料は請求できる?ズバリ!請求のポイントや相場を分かりやすく解説 
関連記事:慰謝料請求しても「お金がない」と言われたら?支払い能力確認から強制執行まで徹底解説

「絶縁状」「誓約書」「公正証書」に効力はある?

親との関係を断つにあたり、書面を交わしておきたいと考える方は多いでしょう。ここでは、よく話題になる3つの書面について、それぞれ何ができて何ができないのかを整理します。

絶縁状に法的な効力はない

絶縁状は、今後関わらないという意思を相手に伝える手紙です。決まった書式はなく、送っても法的な親子関係が変わることはありません。相手に何かを強制する力もありませんので、絶縁状を送ったあとも連絡や訪問が続く可能性は残ります。

それでも作成する意味がないわけではありません。関わりを拒否する意思を明確に示した記録として残るため、その後に警察や裁判所へ相談する際、以前から接触を拒んでいたことを説明する材料になります。

ただし、書き方によっては相手から脅迫だと主張されるおそれもあります。感情的な表現や、金銭を要求するような文言は避けましょう。

誓約書・念書は証拠としての意味がある

「今後一切連絡しない」「自宅や勤務先を訪ねない」といった内容を親に書いてもらう誓約書や念書も、それだけで相手の行動を止められるわけではありません。約束を破られても、すぐに警察が動いてくれるとは限らないのが実際のところです。

ただし、誓約書があれば、相手が自ら約束したという事実が残ります。約束に反する行為が繰り返された場合に、悪質性を示す資料として使えるでしょう。後述する接近禁止の仮処分を申し立てる際の疎明資料としても意味を持ちます。

作成する場合は、禁止する行為の内容をできるだけ具体的に書き、日付と署名押印を入れておきましょう。

公正証書にできる場合とできない場合

公正証書は、公証役場で公証人が作成する公文書です。証拠としての力が強く、金銭の支払いを内容とする一定の公正証書には、裁判の判決を待たずに強制執行ができる効力を持たせることもできます。

ここで誤解が多いのですが、「親子の縁を切る」という内容そのものを公正証書にすることはできません。法的な親子関係を当事者の合意で消滅させることはできないため、そうした内容の証書は作成されないからです。

一方で、貸したお金の返済についての取り決めなど、法律上の効果を持つ約束であれば公正証書にできます。金銭トラブルが絡んでいる場合は、そこだけを切り出して公正証書にしておくという使い方が現実的でしょう。

なお、自分で作成した書面について、本人が署名したものであることを公証人に証明してもらう「私署証書の認証」という制度もあります。書面の内容を公証人が保証するものではない点に注意してください。

内容証明郵便で意思表示を残す

誰が、いつ、どのような内容の文書を誰に送ったかを郵便局が証明してくれるのが内容証明郵便です。関わりを拒否する意思を伝えた事実を確実に残したい場合には、通常の手紙ではなく内容証明郵便を使うとよいでしょう。

内容証明郵便そのものに相手を従わせる力はありませんが、送った事実と内容が公的に記録されるため、後の手続きで証拠として使えます。

関連記事:【弁護士が教える】内容証明郵便の書き方から出し方まで
関連記事:【公正証書の作り方】離婚協議書は、公正証書にすべき3つの理由

場合によっては「親族関係調整調停」を利用する

さまざまな手段を講じても、親子関係が改善しない場合は、「親族関係調整調停」を利用していくこともできます。

我慢できない親のつきまといや、DV、借金問題などで親子関係が拗れてしまった場合は、法的手段でできるだけ解消していきましょう。

親族関係調整調停の概要

親族関係調整調停とは、親族の間で感情的な対立や財産の管理をめぐる紛争などが原因となり、親族関係が円満でなくなった場合に、円満な関係を回復するための話し合いをする手続きです。

家庭裁判所で、調停委員が双方から事情を聴き、必要に応じて資料を提出してもらったうえで、解決案の提示や助言を行います。制度としては関係の回復を目的とした手続きですので、「完全に縁を切りたい」という目的とは方向性が異なります。

ただし、当事者同士では冷静に話ができない状況で、第三者を間に入れて今後の関わり方を取り決めたい場合には選択肢になるでしょう。金銭の貸し借りや親の生活費の負担など、具体的な争点がある場合に向いている手続きです。

出典:裁判所「親族関係調整調停」

手続き方法

親族関係調整調停は、相手方の住所地の家庭裁判所か、当事者が合意で定めた家庭裁判所に申し立てます。

手続きでは、収入印紙1,200円分と、連絡時に利用する切手代が必要となります。申し立てに必要な書類は申立書とその写し1通、標準的な申し立て添付書類です。

必要に応じて、追加で資料の提出を求められる可能性がありますが、基本的には、親族関係調整調停の申立書があれば申し立ては可能でしょう。

「当人同士の話し合いでは解決できないけれど、第三者を入れて今後の関わり方を決めたい」という場合に、親族関係調整調停を利用して調停委員の意見を聞いていくことも一つの方法です。

調停で合意が成立すると、その内容は調停調書に記載されます。調停調書には確定判決と同一の効力があるため、あらためて公正証書を作る必要はありません。

手続きなどに自信がない場合は弁護士に依頼すれば、調停の申し立てや調停の場での主張整理で力になってくれるはずです。

関連記事:調停委員を味方につける5つのコツ~不利な展開を避けるには?~

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親子問題を弁護士に依頼した場合の費用

親との問題を弁護士に相談したい、あるいは手続きを任せたいと考えたとき、気になるのは費用でしょう。ここでは費用の構成を整理しておきます。

弁護士に依頼する場合の費用は、おおむね次の4つに分かれます。

  • 法律相談料:相談だけを受ける際の費用。初回無料としている事務所もあります
  • 着手金:依頼した時点で支払う費用。結果にかかわらず返金されないのが原則です
  • 報酬金:解決した際に、得られた成果に応じて支払う費用
  • 実費:収入印紙代、郵便切手代、戸籍の取得費用、交通費など

額は、何を依頼するかによって変わります。書面の作成だけを依頼する場合と、接近禁止の仮処分や慰謝料請求の交渉・訴訟まで依頼する場合とでは、必要な作業量が大きく異なるためです。まずは相談の段階で、想定される手続きと費用の見込みを確認しておきましょう。

費用が心配な場合でも、利用でFきる制度があります。分割払いに応じている事務所もありますので、費用を理由に相談自体をあきらめる必要はありません。

関連記事:弁護士費用の相場はいくら?安く抑えるコツを徹底解説
関連記事:弁護士費用が払えない!お金がない人でも使える制度4選

親子関係の解消についてよくある質問

勘当されたら相続権はなくなりますか?

なくなりません。勘当は法律上の制度ではないため、親から「勘当だ」と言われても相続権に影響はありません。親が特定の子に相続させたくない場合は、家庭裁判所に推定相続人の廃除を請求するか、遺言を作成するといった手続きが必要になります。

逆に、親の借金を引き継ぎたくない場合は、相続開始後に相続放棄を検討することになるでしょう。

分籍すれば親と扶養の関係もなくなりますか?

なくなりません。分籍はあくまで戸籍を分ける手続きであり、法的な親子関係はそのまま残ります。直系血族としての扶助義務も、相続権も変わりません。戸籍上で親と同じ欄に載らなくなるという点に意味を見出す手続きだと理解してください。

親に「今後関わらない」と一筆書いてもらえば安心ですか?

書面があっても、相手の行動を強制する力はありません。約束を破られる可能性は残ります。

ただし、相手が自ら約束したという記録が残るため、その後に接近禁止の仮処分を申し立てたり、相談窓口に事情を説明したりする際の資料になります。書いてもらう意味はありますが、それだけで解決すると考えないほうがよいでしょう。

親が押しかけてくる場合、警察は動いてくれますか?

状況によります。暴力や器物損壊など明確な犯罪行為があれば対応してもらえる可能性がありますが、「親が家に来る」というだけでは民事不介入として扱われることが少なくありません。まずは相談記録を残すことを目的に相談し、並行して接近禁止の仮処分などの法的手続きを検討するのが現実的です。

未成年ですが、親から離れることはできますか?

未成年の方が自分の判断だけで親元を離れることは、原則として困難です。ただし、虐待を受けている場合は児童相談所に相談してください。

一時保護など、親元から離れるための対応を検討してもらえます。学校の先生やスクールカウンセラー、自治体の相談窓口に伝えることからでも構いません。一人で抱え込まないでください。

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まとめ

親子関係は法的に解消することは基本的にはできません。例外として特別養子縁組では実親との関係が消滅しますが、養子となれるのは原則15歳未満の子どもに限られます。戸籍上の親子に血縁がない場合は、親子関係不存在確認の手続きが使えることもあります。

しかし、法的な親子関係を解消できなくても、親子が仲良く付き合っていく必要はありませんし、会わなくてはいけない義務はどこにもありません。

親のつきまといなどで悩んでいる場合は、できるだけ連絡先を伝えずに引っ越し、住民基本台帳事務における支援措置を申し出れば、親に居所を知られずに済む可能性があるでしょう。戸籍上の関係を断ちたい場合は分籍が有効です。相手が押しかけてくる状況が続くなら、接近禁止の仮処分という手段もあります。

なお、「絶縁状」や「勘当」に法的な効力はありません。書面を交わす場合も、それだけで相手の行動を止められるわけではないと理解しておきましょう。すでに受けた被害については、慰謝料を請求できる場合もあります。

手続きに自信がない場合や、どの方法を選ぶべきか迷う場合は、弁護士に相談すればスムーズに進められるでしょう。親子関係はなかなか断ち切れないものですが、できるだけ心理的な負担が軽減できるように親子関係を見直していきましょう。

弁護士
東拓治弁護士

東 拓治 弁護士
 
福岡県弁護士会所属
あずま綜合法律事務所
福岡県福岡市中央区赤坂1丁目16番13号上ノ橋ビル3階
電話 092-711-1822

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