「民事再生法」とは?4つのメリットと3つのデメリットを解説

会社の経営不振が続いている場合には、経営者の方は、「倒産」も視野に入れて情報収集する必要に迫られることでしょう。

「倒産」といえば、「破産」などの清算型の手続きのイメージが強いかもしれません。

しかし、会社の事業の再建をはかることを目的とした「民事再生」「会社更生」の再建型の倒産手続きもあります。

本記事では、民事再生法に基づく民事再生手続きについて、利用できるケースやメリット・デメリット等を解説していきます。

目次

「民事再生法」とは

民事再生法に基づく民事再生とは、どのような手続きなのでしょうか。

民事再生法とは

民事再生法は、主に法人の事業の再生を目的として、再建型の倒産手続きである「民事再生」について定めている法律です。

再建型の手続きを定めている法律には、民事再生法のほかに、会社更生法があります。

会社更生法では株式会社のみを対象にしていますが、民事再生法では株式会社以外の合同会社なども適用対象になります。

つまり、民事再生法は、会社更生法よりも広い範囲の会社を適用対象としており、民事再生は中小企業なども利用しやすい手続きになります。

民事再生の内容

民事再生は、基本的に、会社の経営者が裁判所の監督のもとで経営を継続しながら、会社の事業の再建計画を作り、事業の再構築をはかっていく手続きです。

基本的に経営陣が退陣しないまま再生をはかるため、同じ経営陣のもとでの会社の再建がどうみても難しい状態になってしまえば選択できません。

なお、再建計画については、債権者から一定数の合意を得て、さらに裁判所から認可を得て進める必要があります。

民事再生における再建方法

民事再生手続きの再建計画には、主に次のような種類があります。

自力再生型

自力再生型は、民事再生手続きによって債務を減額してもらうなど圧縮して、企業が事業から得た収益で再建していく類型です。

自力再生型は、民事再生が本来想定している再建の形ともいえます。

ただし自力再生型は、本業においてある程度の収益を確保できる会社でなければ選択できません。

なお、民事再生手続きによって銀行からの新規の融資が得られない状況になるので、資金繰りができるかどうかも踏まえて、自力再建できるかを検討する必要があるでしょう。

スポンサー型

民事再生には、スポンサー型の再建方法もあります。

スポンサー型は、自社の事業の収益で再建するのではなく、スポンサーから経済的な援助を受けて再生計画を実行していきます。

民事再生を申し立てたことが明らかになると、顧客や取引先に不安を与え、企業の信頼が大幅に低下します。

しかしスポンサー型では、民事再生の申立てと同時にスポンサーを公表して、企業の大幅な信頼低下を防ぐ対応が可能になります。

清算型

清算型は、事業の一部または全部を別会社に譲渡して、その代金を原資として会社を清算する方法です。

会社は清算されますが、別会社において事業の再生・継続が可能になります。

民事再生法を適用できる会社

では、民事再生法を適用できるのは、どのような会社なのでしょうか。

民事再生法の適用対象

民事再生法は、適用対象の会社形態を限定していません

つまり会社が株式会社であっても、合同会社、合名会社、合資会社であっても、民事再生手続きを利用できる可能性はあります。

民事再生の申し立ての要件

民事再生を適用できる会社の形態は限定されませんが、すべての会社がどのような場合でも民事再生を申し立てられるというわけではありません。

会社が民事再生を申し立てられるのは、次の2つの場合に限られます。

  1. 会社に、破産手続きの開始の原因となる事実(支払不能または債務超過)が生じるおそれがある場合
  2. 会社が事業の継続に著しい支障をきたすことなく弁済期にある債務を弁済できない場合

なお1.の場合には、会社だけでなく、会社の債権者も民事再生を申し立てることができます。

民事再生の4つのメリット

民事再生には、次のようなメリットがあります。

債務を圧縮できる

民事再生は、会社の債務を圧縮できるというメリットがあります。

具体的には、債権者に、債権の返済を一部免除してもらったり、支払い期限を延長してもらったりして、会社が負っている債務を軽減することができます。

事業を継続できる

民事再生は、破産などとは違って会社を再建するための手続きなので、事業を継続できるという大きなメリットがあります。

再生計画を実行して事業が軌道に乗れば、会社をそのままの形で継続することができます。

経営陣を交代せずに済む

民事再生では、原則として、手続き開始後も会社の経営陣が継続して業務遂行と財産管理を行える点も大きなメリットです。

清算型の破産はもとより、同じ再建型の会社更生手続きでも、経営陣は退陣し第三者によって手続きが進められます。

一方、民事再生では、経営陣は退陣せずにそのノウハウ等を活かしながら手続きを進めることが可能です。

もっとも会社の経営難が経営陣の悪質な経営によるような場合には、管財人が選任され、経営陣が退陣することはあります。

社員の雇用を継続できる

民事再生では、事業を継続するため、社員の雇用も継続できる可能性があります。

しかしスポンサー型の再建計画においては、スポンサーの意向によって社員のリストラが条件になることもあります。

民事再生の3つのデメリット

上記のように多くのメリットがある民事再生ですが、同時に次のようなデメリットがあるので注意しましょう。

企業の信頼が低下する

民事再生手続きを行えば、官報などから周囲に明らかになるため、顧客や取引先等からの信頼が低下することは間違いありません。

そのため、民事再生前と同様には、取引を継続できない可能性があります。

また企業イメージの低下によって、消費者の購買行動が変化し、商品が売れないといった状況に陥る可能性もあります。

担保権を実行される可能性がある

民事再生では、会社に担保付債権をもつ担保権者が担保権を実行することは、妨げられません。

そのため、会社の事業の継続に必要不可欠な財産に対して担保権が設定されているような場合には、事業が継続できなくなる恐れがあります。

この点は、大きなデメリットとなりますので、担保権者に対する対応が別途必要になることがあります。

なお、同じ再建型の会社更生手続きでは、担保権者は自由に担保権を実行できないこととされています。

税務関係の知識や負担が必要になる

民事再生によって免除してもらった債務の一部については、債務免除益として、課税対象になります。

ただし、一定の要件のもとでは過去の欠損金で相殺できる可能性がある等、税務上の複雑な取り扱いがあります。

そのため、民事再生に詳しい税理士への依頼が必要になったり、税負担が必要になったりする可能性があることはデメリットといえます。

民事再生手続きの概要

では、簡単に、民事再生手続きの概要についてみていきましょう。

民事再生手続きの手順

民事再生手続きは、債務者となる会社(もしくは債権者)が裁判所に申し立てをして、裁判所が再生手続開始決定を下すことによってはじまります。

開始決定があると、会社の資産の調査がおこなわれ、負債を確定させるために債権者に対する債権の届出や調査も行われます。

そして再生計画案の作成を行って、債権者集会での可決と裁判所の認可によって、再生計画案が正式に成立することになります。

再生計画案が成立した後には、会社は計画案にそって債務の弁済などを行っていくことになります。

なお再生計画認可決定後3年間は、監督委員による監督を受けながら、計画案を実行していかなければなりません。

その後、再生に目処がついた場合などには、裁判所によって再生計画の終結が宣言されます。

申し立ての必要書類

民事再生の申立て時には、次のような書類を裁判所に提出する必要があります。

  • 申立書
  • 会社の定款と登記事項証明書
  • 債権と担保権の内容を記載した債権者一覧表
  • 会社の財産目録
  • 会社の貸借対照表および損益計算書 など

民事再生の手続きは、複雑で手間がかかるので、弁護士や税理士に相談しながら進めることが大切です

詳しくは、弁護士等に相談しながら必要書類を揃えていきましょう。

申し立ての際に納める費用

民事再生の申立ての際には、申立手数料と負債の総額に応じた予納金を裁判所に納める必要があります。

予納金の金額は、「5,000万円以下の負債であれば200万円」などと、それぞれの地方裁判所が独自に金額を定めています。

民事再生における注意点

最後に、民事再生における注意点をいくつか確認しておきましょう。

経営陣の顔ぶれが変わる可能性もある

民事再生は、会社の内部に精通している既存の経営陣に任せることによって、迅速に手続き進めることを基本とする手続きです。

したがって民事再生手続き開始後も、原則として経営陣が継続して業務遂行などを行いますが、経営陣の中に経営を阻害する者がいれば退任させる必要があります。

管財人は選任されなくとも、経営陣の顔ぶれが変わる可能性があることは注意点になります。

一般債権者に勝手に弁済することはできない

民事再生手続きが開始された場合には、会社の債務の弁済は、再生計画に従って行われます。

そのため、経営者であっても、勝手に一部の債権者のみに弁済するようなことは、できません

もっとも、会社に対して担保権を有する債権者に関しては、民事再生手続き後も担保権を実行して優先弁済を受けることは認められています。

費用や当面の運転資金を準備しておく

民事再生を検討する際には、費用も注意点になります。

民事再生では、予納金だけでも200万円以上準備しなければならず、加えて弁護士費用等も必要になります。

また、民事再生の手続きが開始されると、銀行などから新規に資金を調達することはできなくなるので、従業員に支払う給与や運転資金をあらかじめ確保する必要も生じます。

そのため、民事再生を選択する際には、ある程度まとまったお金が準備できることが前提となります。

債権者の理解や協力が必要になる

民事再生の再生計画案については、債権者集会で「出席(または書面等投票)議決権者の過半数の同意」かつ「議決権者の議決権総額の2分の1以上を有する者の同意」を得なければなりません。

また重要な財産について担保権が設定されている場合には、その債権者に担保権を実行しないよう協力してもらう必要も生じます。

民事再生では、裁判所が開始決定をした場合でも、再生計画の効力発生に至ることなく破産に追い込まれるケースも少なくありません。

したがって民事再生の成功率を高めるためには、債権者の理解や協力を得ることが重要なポイントになるといえるでしょう。

まとめ

本記事では、民事再生法に基づく民事再生の手続きについて、解説していきました。

民事再生法の手続きを利用できる会社は、経営が悪化状況にあっても再建できる可能性があり、一定の資金を確保できる会社であることが必要になります。

民事再生を選択するかどうかは、メリットとデメリットの双方を比較して判断する必要があります。

なお、民事再生を選択した場合には、手続きが複雑であるため、弁護士に依頼することが一般的です。

そういった場合に備えて弁護士保険などへの加入を検討することも、経営者にとって重要なリスク管理となることでしょう。

弁護士

木下慎也 弁護士

大阪弁護士会所属
弁護士法人ONE 代表弁護士
大阪市北区梅田1丁目1-3 大阪駅前第3ビル12階
06-4797-0905

弁護士として依頼者と十分に協議をしたうえで、可能な限り各人の希望、社会的立場、その依頼者らしい生き方などをしっかりと反映した柔軟な解決を図ることを心掛けている。

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