「ハーグ条約」とは? ~国を超えた子の奪い合い(連れ去り)について~

日本でも、国際結婚は年々増え、1970年には5000件ほどしかなかった国際結婚は、2005年には4万件を超え、現在もなお2万件を下らない状態が続いています。*

国際結婚の場合、夫婦関係が悪化すると一方の親が海外に子を連れ去ってしまう、といった問題に発展しかねません。

仮に海外に子供を連れ去られ、その場所も判明しない、となってしまうと、距離も離れているため、その後子供に全く会えなくなってしまうという危惧さえあります。

また、海外で結婚していた場合、日本に子供を勝手に連れてきてしまい、トラブルになるケースもあり得ます。

離婚の際、夫婦の一方が、海外に無理やり子供を連れていってしまうというトラブルは、実際に毎年相当な件数に上ります。

このような問題に関し、是非知っておいていただきたいのが、皆さんも聞いたことがあるかもしれませんが、「ハーグ条約」といわれる条約です。

*参考:人口動態統計:夫妻の国籍別にみた年次別婚姻件数 政府統計の総合窓口

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目次

ハーグ条約とは

ハーグ条約の正式名称は、「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」といいます。

国際結婚において、子が海外に連れ去られてしまうと、子供は、それまでの環境、友人や親せきとの繋がりを急に絶たれてしまいます。

そして、子供は突然全く違う文化や言語の世界に飛び込まねばならず、その心身の成長に支障が出ることさえ懸念されます。

年々、国境を超えた人の動きや国際結婚が世界的に増えてきた中、国をまたいだ子の奪い去りの問題も深刻になってくることから、このような弊害を少しでも減らすべく、「子が海外に奪い去られた場合に、子を元の国に戻す」ことや、「国をまたいで離れてしまった親が子と会える」ことが迅速に実現するよう、条約締結国が相互に協力して手続きを進める仕組みが定められました。

これが「ハーグ条約」です。

日本では、平成26年1月24日にハーグ条約締結国となり、同年4月1日から条約の効果が発生しています。

現在は、世界の多くの国がハーグ条約締結国となっています。この条約締結国の間では(一部未発効の国を除く)、相互協力の上、ハーグ条約の定めに従って、子の返還や子との面会が実現されることになります。

ハーグ条約の概要・締結国一覧(令和3年12月1日現在101か国)

外務省領事局ハーグ条約室作成資料

ハーグ条約に基づく日本での申請状況

ハーグ条約の締結を受け、日本では、「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律(実施法)」が成立し、平成26年4月1日より施行されています。

この法律に基づいて、日本でも実際に、「子を返還してほしい」という申請や、「子供に会わせてほしい」という申請が行われるようになりました。これにより、実際に多くのケースで返還や面会が実現している実情があります。

以下の表は、申請件数を示したものですが、【(a)+(b)=子の返還申請件数】、【(c)+(d)=子の面会交流申請件数】となっています。

【資料②:ハーグ条約に基づく申請件数】

年度別申請件数

スクロールできます
 2014年度2015年度2016年度2017年度2018年度2019年度2020年度2021年度
合計11369554256485928470
(a)2619231918272310165
(b)1821171526112011139
(c)5520126108132126
(d)14932223540
引用元:外務省領事局ハーグ条約室作成資料より

(a)日本にいる子の外国への 返還援助申請件数(インカミング返還事案)
(b)外国にいる子の日本への 返還援助申請件数(アウトゴーイング返還事案)
(c)日本にいる子との 面会交流援助申請件数 (インカミング面会交流事案)
(d)外国にいる子との 面会交流援助申請件数 (アウトゴーイング面会交流事案)

・「返還援助申請数」…横ばいで推移。  →年間40件前後(a+b)
・ 面会交流援助申請は、初年度の申請数が多かった。
 (ハーグ条約発効(2014年)以前の連れ去り等は、面会交流援助のみ申請可)

ハーグ条約の日本での実施状況(代替執行など)

ハーグ条約のおかげもあって、日本では、子供を返還してほしい、という事案につき、相当な件数で返還が実現できています。詳しくは下の【資料③】を見てください。

ただ、裁判所の執行官が子を親から引き離して返還させる強制的な返還方法=代替執行による子の返還実現率は、9件中、「代替執行」による実現が1件、「人身保護法」による実現が3件と、過去には44%しか達成されておらず、その実効性が問題視されていました。

そのような中、令和元年5月10日に法改正がなされ、「民事執行法及び国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律の一部を改正する法律」が成立し、国際的な子の返還の強制執行に関する実施法の規定が改正され、こちらは令和2年4月1日から施行されています。

この改正法では、「代替執行」について、より要件を緩和しており、それまでなかなか実現できなかった代替執行が今後成功するよう変わっていくことが期待されました。

実際、改正後の法律では、5件中3件が「代替執行」による実現、内1件が「人身保護法」による返還、と推移しており、代替執行手続による子の返還実現率は80%と、大きく数字を伸ばしています(下記【資料③】参照)。

【資料③】ハーグ条約に基づく申請のこれまでの実績

引用:外務省領事局ハーグ条約室作成資料

まずは外務省に連絡を

このように、国をまたいだ子供の奪い合いについては、ハーグ条約や法律がその保護を手厚く保障し、手続きや仕組みも工夫されてきています。

したがって、海外に子供を連れ去られてしまった、日本に連れ去られた子供がいる、等の場合には、ハーグ条約に締約している国であれば、子を返還するよう外務省に助けを求めることができますので有効活用してみてください。

まずは、外務省(日本の中央当局)に、子供の返還援助申請、面会交流援助申請受付を行い、審査を受け、当事者間の連絡の仲介、外務省の費用負担による裁判外紛争解決手続機関(ADR)の紹介、弁護士紹介制度の案内、面会交流支援機関の紹介等の支援をしてもらうことになります。

海外に子供を連れ去られてしまった等の問題でお困りの場合は、外務省に連絡をして、手続きのサポートを受けることが有益です。

参考:外務省HP

【連絡先】

外務省中央当局外務省領事局ハーグ条約室外務省領事局ハーグ条約室

〒100-8919東京都千代田区霞ヶ関2-2-1

TEL:03-5501-8466

URL:http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/hague/index.html

E-mail:hagueconventionjapan@mofa.go.jp

ハーグ条約に基づく申請手続きの流れ

子が日本から他のハーグ条約締約国へ連れ去られた方、又は他のハーグ条約締約国に子が留置された方に関するハーグ条約に基づく返還手続の概要は下図の流れになります。

【資料④:ハーグ条約に基づく申請の具体的な流れ】

【海外に子が連れ去られた場合の手続きの流れ】

外務省HPハーグ条約

【日本へ連れ去られた子の返還申請があった場合の手続きの流れ】

外務省

返還が認められる場合

実際に裁判手続きまで進んだ場合に、裁判所が子の返還の決定を下すためには、以下の要件が定められています。

ハーグ条約に基づき、以下の要件を満たしていれば、裁判所は、子供を連れ去り監護している者(相手方)に対して、裁判所が、子を常居所地国に返還するよう命ずることになります。

【返還事由】

  1. 子が16歳に達していないこと   ※裁判所が決定を出すまでに16歳になった場合は認められません。
  2. 子が日本国内に所在していること
  3. 常居所地国の法令によれば、当該連れ去り又は留置が申立人の有する子についての監護の権利を侵害するものであること
  4. 当該連れ去りの時又は当該留置の開始の時に、常居所地国が条約締約国であったこと

返還が認められない場合

逆に、裁判所は、以下の1から6までに掲げた事由のいずれかがあると認めるときは、子の返還を命じてはならないとされています。

なお、1~3までの事情又は5の事情がある場合であっても、一切の事情を考慮して常居所地国に子を返還することが子の利益に資すると認められるときは、裁判所は、子の返還を命ずることができるとされています。

【返還拒否事由】

  1. 連れ去り又は留置開始の時から1年以上経過した後に裁判所に申立てがされ、かつ、子が新たな環境に適応している場合
  2. 申立人が連れ去り又は留置開始の時に現実に監護の権利を行使していなかった場合(当該連れ去り又は留置がなければ申立人が子に対して現実に監護の権利を行使していたと認められる場合を除く。)
  3. 申立人が連れ去り若しくは留置の開始の前にこれに同意し、又は事後に承諾した場合
  4. 常居所地国に返還することによって、子の心身に害悪を及ぼすこと、その他子を耐え難い状況に置くこととなる重大な危険がある場合
  5. 子の年齢及び発達の程度に照らして子の意見を考慮することが適当である場合において、子が常居所地国に返還されることを拒んでいる場合
  6. 常居所地国に子を返還することが人権及び基本的自由の保護に関する基本原則により認められない場合

返還までの期間など

裁判などの場合、一般的には、1年やそれ以上など、比較的長い期間を要するのが通常ですが、子を返還してもらうという手続きの性質上、なるべく早く手続きが進むよう、法的にも配慮されています

具体的には、返還の申立てをした後、2週間程度を目途に第1回期日が開かれ、その際に調停や和解が成立しない場合には、裁判所がおよそ6週間程度を目安に、「返還申立てを認めるかどうか」の審理を行い、決定を下すことになっています。

申立てを認める決定が出た場合、法改正前は、間接強制(子を返還しない場合に1日当たり一定の金額を支払わせるよう強制する方法)を経てから2週間後に、代替執行が可能とされていましたが、先ほど述べた令和2年4月1日施行の改正法では、一定の要件のもとに、間接強制を経ずに、そのまま代替執行に進むことができるとされました。

これにより、より迅速かつ柔軟な子の返還が認められるようになったといえます。

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最後に~何よりもお子様の幸せを一番に~

このように、国際的な子の奪い合いについては、現在では手厚い手続きが用意されていますので、お困りの場合は、なるべく早くに手続きをとることをお勧めします。

なお、このような国際的な子の奪い合いについては、「子どもを取られてしまう」との思いから、親同士が感情的になって、「何としても奪い返してやる」という気持ちで激しく争ってしまうことも少なくありません。

しかしながら、ハーグ条約の基礎とするところは、「子どもにとってどうすることが(どちらの親のもとに居た方が)幸せか」ということが何よりも大切だということです。

したがって、お子様の真の幸せを考えた場合、ケースによっては、「返還申請はしない」「面会だけさせてもらう」といった選択肢をすべきこともあるかと思います。

「奪われたから返せ」と感情的になる気持ちはもちろん理解できますが、外務省や弁護士、といった第三者に相談する際には、「お子様の幸せや将来」を再優先に考えてみてあげてほしいと思います。


この記事を書いた人
篠田弁護士

篠田恵里香 弁護士

東京弁護士会所属

へいわ総合法律事務所 代表弁護士

東京都豊島区東池袋三丁目1番1号 サンシャイン60 45階
Tel.03-5957-7131

2008年弁護士登録。
男女問題、交通事故を中心に、幅広い分野を扱う。
大切な人生の分岐点を、一緒に乗り越えるパートナーとして、親身になって対応させていただきます。

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