隠れ残業とは?企業の実態や原因、取るべき対策を徹底解説

隠れ残業は、労働者の健康や生活の質に悪影響を及ぼすだけでなく、企業にとってもリスクとなります。

隠れ残業が原因で従業員のモチベーションや生産性が低下した場合、企業の業績に悪影響を与える可能性があるでしょう。ほかにも、隠れ残業が原因で労災が発生した場合、企業は労災の補償を支払うことになります。

この記事では、隠れ残業の問題点や発生する原因、企業が行うべき対策について解説しています。

隠れ残業について詳しく知りたい方や、隠れ残業をなくすための対策を検討している方は、ぜひこの記事を参考にしてください。

目次

隠れ残業とは

隠れ残業とは、勤務時間外に業務をこなしているにもかかわらず、その時間を正確に報告しないことで、労働時間が実際よりも短く見えるようにしていることを指します。

残業は実際に削減されているのか?

コロナ禍以降、働き方改革が加速したといわれていますが、実際のところはどうなっているのでしょうか。

厚生労働省の調査「労働時間制度の現状等について」によると、労働基準関係法令の違反が認められた事業場数のうち、労働時間に関する違反が見られた事業場数は、実数・割合ともに減少しています。

参考 平成31年31.6%、
   令和2年24.2%
   令和3年21.6%

実際に残業削減に取り組む企業の割合を正確に出すことは困難ですが、違法な事業者数が実数・割合ともに減少していることから、社会全体で残業を減らそうとし、その効果は出ているものと思われます。

しかし、隠れ残業は「会社に報告していない労働時間」であり、違法な残業が減少していると思われる調査結果は、実は隠れ残業によって実現している可能性について考えなければなりません。

厚生労働省「労働時間制度の現状等について」

隠れ残業の問題点

プライベートとの切り替えが難しくなる(ワークライフバランスの悪化)

隠れ残業によって、勤務時間とプライベートの時間の区別が曖昧になり、仕事に集中できなくなることがあります。

そのため、プライベートの時間を確保することが困難になり、健康や家族関係など、生活の質に影響を与える可能性があります。

ストレスなどから体調に悪影響を及ぼす

隠れ残業が続くと、ストレスや疲労などの問題が生じることがあります。

そのため、体調を崩すリスクが高まり、生産性やクオリティが低下する可能性があります。

従業員の残業量を把握できない

隠れ残業は、時間外労働の記録がつかないため、従業員の残業量を正確に把握できなくなることがあります。

そのため、従業員の労働時間を適切に管理することが難しくなり、過労やストレスなどの問題が生じる可能性があります。

残業代を支払われなくなってしまう

隠れ残業によって、残業代を支払われなくなる問題があります。

これは、時間外労働の記録が正確につけられず、従業員が実際に働いた時間に対して適切な報酬を受け取れなくなることがあるためです。

これは労働法に違反することになり、企業にとってリスクとなります。

従業員のモチベーション・パフォーマンスが低下する

上記のように従業員が無報酬で働かされることで、従業員がやる気をなくしてしまい、モチベーション・パフォーマンスが低下してしまう恐れがあります。

また、労働環境が悪化することで、さらに従業員のストレスや不満がたまり、離職や生産性の低下につながる可能性があります。

隠れ残業が発生する原因

規制に対して残業量が減っていない

従業員が一日にこなさなければならない業務量は変わらず労働時間のみ短縮すれば、相対的に業務量は過剰となり残業が避けられなくなります。

この場合、労働時間規制の導入だけではなく、業務量の見直しが必要です。

残業を評価する風潮が残っている

残業を当たり前のように考え、労働時間規制を守らない組織文化がある場合、従業員が自主的に残業することが増え、労働時間が減らないことがあります。

業種・業態によっては残業やむなしという場合もあるので、

「残業=悪」ではなく「必要のない残業=悪」という考え方にシフトし、組織として浸透させる必要があります。

業務効率化・生産性向上の取り組みが進んでいない

労働時間の短縮やフレックスタイム制度など、働き方改革を進めることで、労働時間を減らすことができます。

しかし、これらの制度の導入が遅れている場合、労働時間規制だけでは解決しないことがあります。

勤怠管理上の残業時間は管理しても実際の残業を従業員の裁量に任せては隠れ残業が発生してしまいます。

会社として業務量を減らすために効率化・生産性向上の施策を取らなければ実態と異なる

隠れ残業によるテレワーク・在宅勤務の課題

勤務時間の把握が難しい

テレワークや在宅勤務では、オフィス内での勤務時間と異なり、従業員の勤務時間を正確に把握することが難しくなります隠れ残業が生じる原因となります。

コミュニケーションの不足

テレワークや在宅勤務では、オフィスでのコミュニケーションが減少するため、チーム内での情報共有や意思決定が遅れる可能性があります。

また、コミュニケーション不足により、社員のモチベーション低下につながる場合があります。

作業環境の違い

自宅での勤務は、家庭や家族からの影響を受けることがあります。そのため、従業員が勤務時間を調整し、夜遅くまで働くことがあるかもしれません。

そのような場合、隠れ残業が発生する可能性があります。

ストレスや孤独感

テレワークや在宅勤務により、従業員は社交的な環境を離れ孤独感を感じることがあります。

そういったストレスによって効率が落ち、労働時間が増える可能性が高くなります。

オンラインツールの依存

テレワークや在宅勤務では、オンラインツールに頼ることが多くなります。

しかし、オンラインツールは稼働時間が長くなると、従業員にとって疲れやすくなり、結果として隠れ残業が発生しやすくなると考えられます。

隠れ残業に対して企業が行うべき対策

残業の可視化

社員の労働時間を正確に把握することが、隠れ残業の解消につながります。

企業は、社員が残業している時間を可視化する方法を検討し、残業時間を把握することが重要です。

具体的な手段としては、

  • 出勤
  • 退勤の打刻
  • 業務時間の管理システムの導入

などが挙げられます。

ワークライフバランスの改善

従業員が過剰な残業をしないように、ワークライフバランスを改善することが大切です。

例えば、在宅勤務やフレックスタイム制度の導入が挙げられます。また、社員の働き方について相談できる窓口の設置や、メンタルヘルス支援の充実なども重要です。

コミュニケーションの改善

従業員と上司、同僚とのコミュニケーションを改善することで、業務のミスやトラブルを防ぎ、隠れ残業の削減につながります。

企業は、社員同士や上司とのコミュニケーションを円滑にするため、情報共有ツールの導入やミーティングの実施などを検討することが必要です。適切なコミュニケーションの実現によって、業務状況や問題点を共有し、効率的な業務遂行を促すことができます。

業務の見直しと効率化

業務の見直しと効率化によって、隠れ残業を減らすことができます。

企業は、業務プロセスの見直しや、自動化などの改善を検討することが必要です。

マネジメントの強化

従業員が隠れ残業をする原因として、マネジメントに問題がある場合があります。上司が業務を適切に分配し、従業員の負担を軽減することが重要です。

また、従業員のやる気やモチベーションを高めるために、適切な報酬や評価制度を導入することも考えましょう。

まとめ

隠れ残業の実態を把握していないということは、違法行為をそのまま放置しているという企業にとっては非常にリスキーな状態といえます。

従業員が上司に言いづらくサービス残業となっている可能性もあるため、企業は実態を把握し、仕事量を可視化し、従業員が時間通りに働ける環境を構築できるように努めましょう。

弁護士

畝岡 遼太郎 弁護士

大阪弁護士会所属

 

西村隆志法律事務所

大阪市北区西天満2丁目6番8号 堂島ビルヂング501号
TEL:06-6367-5454

ひとりひとりに真摯に向き合い、事件解決に向け取り組んでます。気軽にご相談が聞けて、迅速に対応できる弁護士であり続けたいと考えております。 

※事前予約いただければ平日夜間や土日にも対応可能です。

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