裁判する場合は、相手が住所不明なら住所の特定をしなければいけません。
しかし相手の住所を特定するためにはいくつかの方法があります。
最終的に相手の住所が不明でも訴えることは可能。
ただし、制約も出てきてしまいますので、注意していきましょう。
可能な限り、相手の住所は何らかの方法で特定できた方が有利です。
本記事では、相手が住所不明でも裁判はできるのか?対処法3つを解説していきます。
参考にして、相手の住所が不明でも泣き寝入りはしないようにしましょう。
記事に入る前に・・・
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住所が不明でも訴えることができるのか
相手の住所が不明でも、民事訴訟を起こすことはできます。
ですが、そのためには厳格なルールがありますので、法律の専門家に相談する必要があるでしょう。
原則として、裁判の際には相手の住所を特定しなければいけません。
裁判を起こす際には、訴状を提出しなければいけませんが訴状には、
- 氏名
- 住所
- 電話番号
などの情報を記載する欄があります。
そのため、基本的には、相手の住所がわからないと訴えることはできないのです。
どうして住所が必要なのかというと、裁判が始まる旨を相手にも知らせる必要があるからです。
もしも相手が気付いていない間に裁判が起こされてしまい、相手に膨大な損害賠償の請求が認められてしまえばどうなるでしょうか。
そういうことを防ぐために、日本の法律では裁判を起こす際には、相手の住所を記載しなければいけないことになっています。
記載された住所に「裁判が始まりますので、準備してください」という通知を送っているのです。
裁判をする場合に必要な相手の情報
裁判をする際の訴状で必須項目は氏名と住所です。
この二つは必ず記載が必要になりますので覚えておきましょう。
それ以外に訴状に基本的に記載する項目は、
- 電話番号
- FAX番号
- 勤務先の住所や名称
- 勤務先の電話番号
などです。
そのほかに訴状には、事件名や訴訟物の価額などの記載も必要ですし、もちろん起訴する側の自分の情報も必要です。
内容証明を送ったけど届かなかった
損害賠償請求などで、裁判よりも先に内容証明郵便を送り、話し合いを行おうとするケースが多数あるでしょう。
しかし、知っているはずの住所に内容証明郵便を送付しても、相手に届かないことがあります。
この場合には、相手が知らないうちに引っ越した可能性もあり、住所があなたからはわからなくなってしまった状態です。
しかし、相手が行方不明の場合は、弁護士に依頼することで容易に相手の住所を追うことも可能。
方法は後述しますので、参考にするといいでしょう。
相手が住所不明で訴えることができる条件とできない条件
相手の住所が不明で訴えることができる条件とは、以下の場合に限ります。
- 訴状が、相手の住所地、居所、事業所または営業所などに届かない
- 勤務先などに訴状が届かない
- 就業場所の相当のわきまえを有するものに交付する方法でも訴状が送達できない
上記3点に該当すれば、付郵便送達制度を利用し、裁判を始めることが可能です。
または、調査を尽くしても相手の住所地がわからない場合は、公示送達の制度を利用して裁判を開始できます。
調査を尽くす方法は弁護士などに依頼して特別な調査をしてもわからないケースに限りますので注意しましょう。
そして、訴えることができないケースとは、上記3点全てで調査を尽くしていないケースや、弁護士などに依頼せずに調査を尽くしていないケースです。
さまざまな方法で手を尽くして調査をしていないケースでは相手の住所がわからないとはいえず、訴えることはできません。
調査する方法
では、相手の住所地はどのようにして調査すればいいのでしょうか。
一般的な方法を3つご紹介します。
自力で調査する方法
まずは、自力で調査する方法があります。
最近まで住んでいた場所がわかる場合は、相手の住民票から追跡することは可能です。
但し、赤の他人が住民票を閲覧することはできません。相手の親族に限られていますので、相手の親族がわかるなら調査を頼んでみましょう。
または、共通の友人や知人などがいるなら、相手が現在どこに住んでいるのかを口コミで調査する方法もあります。
いずれにしても、自力で調査することは難しく、相手の住所がわからない場合は、弁護士や探偵などを使って、調査した方が無難です。
探偵を使う方法
探偵を利用するのも一つの手段です。
探偵というと敷居が高く、どうやって頼めばいいのかわからない、または抵抗のある方も多いでしょう。
ですが、探偵が行う、聞き込みや張り込み、尾行などには違法性はなく、調査のプロといえます。
素人が自力では調査できないようなことでも、粘り強く調査してもらえますので、どうしても相手の住所がわからずに、裁判を起こしたい場合は依頼してみるといいでしょう。
弁護士を使う方法
そしてもっともおすすめな方法が弁護士を利用する方法です。
弁護士は職務上請求や弁護士会照会などの特権を活かして、住所不明な訴えたい相手の所在を突き止めることかできます。
職務上請求の権利を使えば、赤の他人であっても、住民票や戸籍などの情報を確認することができます。
また、弁護士会照会の特権を利用すれば、裁判の証拠を取得するために、企業などに照会をかけることが可能です。
弁護士会照会を受けた企業は法律上、回答する責任があります。
弁護士照会による調査について
弁護士には特権があるとご紹介しましたが、弁護士照会(弁護士法23条2項)についてもう少し詳しくご説明します。
調査するのに必要な情報
弁護士照会を行うためには、「照会申出書」を弁護士会に提出しなければいけません。
照会申出書には、「知り得たい情報」「理由」「情報の具体的な使用目的」などを記載する必要があります。
住所不明の相手を調べたい場合は、知り得たい情報には相手の住所を知りたい旨を記載し、「理由」には、借金返済の裁判を起こすため、などと記すことになるでしょう。
「情報の具体的な使用目的」には、裁判の送達を相手先に郵送する必要があるため、などと記載します。
弁護士照会で得られる情報とは、以下のような情報です。
- 携帯電話のメールアドレスから割出せる電話番号
- 勤務先から割り出せる現住所や給与額
- 銀行の預金残高情報
- 証券会社の保有している株の情報
- 保険会社の加入情報
- 医療機関から病院にかかった記録情報
- 子どもの学校の在籍情報や子どもの住所
- 事故の実況見分調書
- 服役している場所と収容年月日
- 出入国の記録情報
- 日本に住んでいる外国人の住所情報
- 店舗を営んでいた場合の情報
相手の住所を調べたい場合は、相手の勤務先や子どもの学校がどこかがわかれば、弁護士照会を利用することで、情報を調べることができます。
相手が外国人の場合でも住所不明の相手の住所を割り出すことが可能です。
ただし、弁護士照会は、弁護士会で厳正な審査を受けた後に照会できることを覚えておきましょう。
ですから、正当な理由がない限りは、みだりに弁護士照会で相手の個人情報を割り出すことはできません。
万が一、不要な情報まで得られた場合は、不要な情報は黒塗りになって返ってきます。
費用相場はどのくらい
弁護士照会を行う場合の費用相場は、1件につき、10,000円程度です。
弁護士会によって、費用は変わりますので、頼んだ弁護士がどの弁護士会に所属しているのかで費用は変わってきます。
あくまでも相場と考えておくといいでしょう。
弁護士のホームページによっては50,000円程度の費用がかかると記載されているケースもありますので、弁護士に依頼する際には、最初に弁護士会照会を利用した場合いくらくらいかかるのかを確認するようにしてください。
弁護士に依頼する際の注意点
弁護士に住所不明の相手の住所の割り出しを依頼する場合には、注意点もありますので、先にチェックしておくといいでしょう。
まず、弁護士会照会を利用すれば、高確率で相手の住所を割り出すことができます。
しかし、正当な理由がなければ、弁護士会の審査は通過できません。
ですから、どんな事案でも弁護士照会を利用すれば相手の住所を特定できるとは限りません。
照会で知り得た情報は全てが依頼者に開示されるわけではないことも覚えておきましょう。
事案に不要と判断された情報は黒塗りになって返ってきます。ついでに、相手の個人情報を抜き取ることはできませんので、覚えておきましょう。(弁護士法23条1項)
また、弁護士照会で知り得た情報は一つの事案にしか利用できません。
流用することは認められていないのです。もしも、別の事案でも利用したいと考えるなら、再度弁護士に依頼し、新たに照会をかけてください。
もしも、流用した場合は、弁護士が処分を受けることになりますので、注意が必要です。
弁護士会照会費用は、弁護士会によってさまざまです。
また、弁護士の事務所によって費用設定も違いますので、事前に費用は確認するべき項目です。
後で後悔しないためにも先に確認するようにしましょう。
そして、基本的に弁護士に何かを依頼する場合は、起こしたい裁判に詳しい(得意な)の弁護士かどうか、自分とは相性が悪くないか、などを確認することも大切です。
その上で、印鑑や身分証明、証拠などを持参して弁護士には依頼しましょう。
また、弁護士は事件そのものを解決するものです。
ですから、裁判は自分で起こしたいが、相手の住所だけを割り出すために弁護士に弁護士照会を依頼するというような依頼の仕方は基本的にはできないでしょう。
自分で裁判を起こしたいが、相手の住所だけ特定したいという場合には探偵を使う方がいいかもしれません。
もしも弁護士に依頼する際には、事件そのものを解決するように依頼しなければいけません。
調査を尽くしても特定できなかった場合
もしも調査を尽くしても相手の住所が特定できなかった場合には、公示送達という手段もありますので、ご紹介します。
公示送達を送る
公示送達とは、裁判所の掲示板に被告に宛てた呼び出し状を掲載してもらう制度です。
2週間が経過した時点で、被告人に送達ができたものとします。
しかし、この制度では、被告人に実際には送達が届いておらず、一方的に原告の主張だけで、裁判が結審し、被告人が敗訴する恐れがあります。
ですから、裁判所は公示送達には慎重で、できるだけ調査を尽くした上での実施となっています。
無闇に公示送達の制度利用は認められませんので、自分で裁判を起こすことは控えた方がいいでしょう。
もしも相手の住所がわからない場合には、弁護士に依頼した方が無難です。探偵には弁護士照会のような特権はありませんので、確実に相手の住所を突き止めたい場合は、適切ではありません。
公示送達の有効性
公示送達は住所不明の相手に裁判を起こすこと自体には有効な手段ですが、もしも借金を相手から取り立てたい場合は、あまり有効ではありません。
結局相手の所在がわからなければ勝訴したところで、相手からお金を回収する手段がないからです。
離婚したい相手の住所がわからない場合でも相手の住所がわからなければ離婚届にサインはしてもらえませんので、有効にはならないでしょう。
公示送達は、あくまでも最終手段と考えて、調べ尽くしてもどうしても相手の住所がわからない場合に利用した方が無難です。
公示送達の流れ
公示送達を行う場合の流れは以下の通りです。
①相手方へ裁判を起こす旨の通知書を作成しましょう。
すでに内容証明郵便などを送付していた場合には同じもので構いません。
できるだけA4版で作成し、コピーを4部作成します。原本には、通知者の印を押してください。
②公示送達の申請書に必要事項を記入し、記名と押印を行い、通知書のコピーの一部を最後に綴じてください。
各ページにはページ数を記載します。その上で上部の余白には捨印が必要です。
③収入印紙1,000円分を1枚目の台紙に貼ってください。割印は不要です。
④1,048円分の予納郵便切手が必要です。また、裁判所からの連絡に別途切手が必要になる場合がありますので確認しましょう。
⑤添付書類を添付して相手が最後に居住していた先の裁判所に提出してください。なお添付書類は以下の通りです。
- 申立人の資格証明書(申立人が法人の場合)(3ヶ月以内のもの)
- 相手方の資格証明書(相手方が法人の場合)(3ヶ月以内のもの)
- 相手方の住民票または、不在住証明書等(3ヶ月以内のもの)
- 戻ってきた郵便物(封筒及び書類)
- 通知書の原本
- 通知書のコピー1部
- 調査報告書 ※相手方が住所不明なことを想定しているので、住所が不明であることを追記してください。
- 到達証明申請書 ※1枚目が申請用で2枚目が証明用です。必要事項を記入し、押印した上で、1枚目、2枚目それぞれに通知書のコピーを綴じて、各ページ上部の余白に捨印をしてください。収入印紙欄には150円分の収入印紙を貼付し、割印は押しません。
⑥公示送達の許可が得られれば、公示送達が2週間裁判所に掲示されます。
併せて区役所などの市町村役場にも掲示されます。
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まとめ
住所不明の相手に対して裁判を起こすことはできます。
ですが、もしも裁判を起こしても、借金や損害賠償を支払ってもらったり、離婚したりなどはできませんので、注意が必要です。
住所不明のまま裁判を起こすよりも、弁護士に依頼し、弁護士会照会の制度を利用して裁判を起こしたい相手の住所を調べましょう。
事件を解決するためには、必要な手段になりますので、迷わず弁護士に相談することがおすすめです。
事前に弁護士保険へご加入されるのは、いかがでしょうか。
木下慎也 弁護士
大阪弁護士会所属
弁護士法人ONE 代表弁護士
大阪市北区梅田1丁目1-3 大阪駅前第3ビル12階
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弁護士として依頼者と十分に協議をしたうえで、可能な限り各人の希望、社会的立場、その依頼者らしい生き方などをしっかりと反映した柔軟な解決を図ることを心掛けている。
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