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等々、相手に損害賠償請求をしたいが、「個人では情報を集めることに限界がある。」そういった場合、どうすればいいのでしょうか?
今回の記事では、そういった自分1人では調べることができないときの法的手段「弁護士会照会制度(23条照会)」についてご紹介していきます。
記事に入る前に・・・
だけど費用的に無理・・・という時代は終わりました。
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弁護士会照会制度とはどういった制度なのか?
「弁護士会照会」という言葉を初めて聞きました。
まずは、弁護士会照会について簡単に解説します。
弁護士会照会制度とは?
弁護士会照会制度とは、弁護士が受任している事件について、
官公庁や企業などの団体に対して必要な事項を調査・照会することで、
証拠や資料を収集、事実を調査するなど、職務活動を円滑に行うために設けられた制度です。
普段生活をしている中で触れることの少ない弁護士会照会制度ですが、弁護士法23条に定められている法律です。
弁護士会照会とは
弁護士がトラブルを抱えている方から依頼(委任)された案件に関する証拠や、資料を集めて調査することのひとつの手段として弁護士会照会があります。
滞りなく事件解決のために企業や団体などに協力を仰ぐことで、迅速に情報収集を行うために設けられた制度です。
日本弁護士連合会によると、弁護士会照会の受付件数は、2019年には全国で年間約22万件に達しており、年々増加傾向にあります。
弁護士が事件を解決するための情報収集手段のひとつとして、弁護士会照会は有効活用されているということが分かります。
なお、弁護士会照会は、弁護士自身が行うのではなく、弁護士会が行います。
照会を受けた個人や団体・事業者は、内容に応じて回答・報告をするという流れになります。
弁護士会照会を利用した事例
住所の特定
▼例 浮気・不倫、交通事故の事件。
相手の携帯電話番号を基に携帯会社に対し「住所」を照会します。
生命保険の調査
▼例)離婚トラブルや相続案件。
生命保険会社に対し、相手(配偶者)の「生命保険の契約内容」を照会します。
亡くなった方の銀行の通帳や引き出しの伝票の調査
▼例 遺産相続等の案件。
被相続人の「銀行取引履歴(通帳の内容。過去10年分まで可能)」や遺産の使い込みがあったか(不当利得返還請求事件)について、 口座のある銀行に対して「窓口で引き出したときの伝票(過去10年分まで可能)」を照会します。
相手の預金の有無を調査
▼例 債権回収の事案
相手の取引銀行に対して「預金」の有無等を照会します。
(※裁判で勝訴した場合などの条件があります)
上記はほんの一部ですが、このように、対象者の情報や資産状況等を確認することや、住所不明の訴えたい相手の所在を突き止める場合などにおいて、弁護士会照会は非常に効果的です。
弁護士会照会をするためにはどうすればいいの?
弁護士会照会にあたっては、弁護士が所定の書類を作成し弁護士会へ提出した後、弁護士会の審査に通らなければなりません。
では、弁護士へ依頼すればどんなことでも照会できるのでしょうか?
調べてほしい内容が審査要件を満たさず、調べてもらえないことがあるのでしょうか?
さっそく、その審査とはどういったものなのか見ていきましょう。
照会を申請する弁護士が質問事項等を所定の書面に記載し、所属する弁護士会に提出
弁護士会によって、照会するに値する案件か、また正当性(※1)があるか否か審査
※1 正当性とは・・・法令や社会通念に基づき、正しく道理にかなっていると認められる状態のこと
照会の必要性が認められた案件のみ、「官公庁」や「企業」など、該当する事業所に照会が行われる
【照会が認められなかった場合】
「再考」や「拒否」をされますので、担当弁護士と十分に話し合いをして照会内容を精査していく必要があります。
弁護士会照会で何が分かり、何ができないのか
相手の携帯番号しか分からない場合
電話番号(固定電話・携帯電話問わず)から、契約者又は購入者の氏名・住所・契約年月日が分かります。
*判明するのは、契約時の住所等本人が申告しているものになります。
遺産相続の際の相続人の使い込み状況を知りたい場合
相手の銀行口座を照会する必要があるので、銀行へは過去にさかのぼって照会を行うことになります。この時に必要な年月を絞って照会をすることで、スピーディーに書類を入手することができます。
弁護士会照会の注意点として、照会先企業によって回答可能な範囲は違うため、思うような回答が得られないこともあります。
信頼できる弁護士とよく内容を精査して照会をする必要があります。
弁護士会照会をしてもらうだけの依頼はできるの?
では、弁護士に依頼するときに「相手の情報だけを照会してほしい!あとの請求は自分でやります」と依頼することは可能なのでしょうか。
答えは「NO」です。
弁護士会照会は、弁護士が依頼者から具体的な事件(損害賠償請求等)を受任していることが必須ですので、資料の取得のみを目的として弁護士に照会を依頼することはできません。
弁護士会照会を利用する際の5つの注意点
- 弁護士に事件を依頼(委任契約)しないと利用できない
- 審査に通らないと照会はできない
- 照会した情報すべてが依頼者に開示されるとは限らないし、そもそも回答を拒否される可能性がある
- 事件解決の目的以外の利用は禁止されている
- 照会されなかったとしても、依頼したらその分費用がかかる
正当な理由がない限り、むやみに弁護士会照会で相手の個人情報を割り出すことはできません。
しかし、事件解決のためにはとても有効な手段ですので、是非信頼のおける弁護士とよく話し合い弁護士会照会を活用していってください。
弁護士会照会を利用する際の費用
弁護士会照会自体にも費用はかかりますか?
ある程度の費用は掛かってしまいますが、照会制度自体は非常に有用です。
弁護士会照会制度を利用するときは、所属弁護士会へ負担金を支払う必要があります。
弁護士が作成した提出資料と、回答資料の返信用の郵送費用と合わせて支払う必要があります。
費用の金額は、照会する内容によって異なりますが、1件あたり5,500円+郵便代ですので、1件につき6,000~8,000円程度です。
なぜ、弁護士会照会制度が必要なのか?
弁護士会照会制度の存在理由とは?
弁護士に依頼した本人が、早期解決のために必要な資料を弁護士に提示できなかった場合どうなるでしょう?
弁護士が、依頼者からトラブル解決のために依頼(委任)を受けて、そのトラブル(紛争)を解決しようとするとき、そのトラブル(紛争)の事実を立証するための資料が必要ですよね?
もし、その必要な資料や情報を依頼者が提示できない場合、「資料を持っているのではないか」と考えられる、官公庁や企業に対して、必要事項を照会します。
そうすることで、事件解決に導くことができる可能性が高まります。
日本弁護士連合会は、弁護士会照会制度という権限がなぜ認められるのかを以下のように説明しています。
弁護士は、「基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命」(弁護士法1条)とし、依頼を受けた事件について、依頼者の利益を守る視点から真実を発見し、公正な判断がなされるように職務を行います。このような弁護士の職務の公共性から情報収集のための手段を設けることとし、その適正な運用を確保するため弁護士会に対し、照会を申し出る権限が法律上認められているものです。
(日本弁護士連合会「弁護士会照会による情報開示の対象となった皆さまへ Q2」
https://www.nichibenren.or.jp/activity/improvement/shokai/qa_a.html参照日:2024/2/27)
弁護士という職業は、人権を守り、社会正義を実現するという点で社会的信用があるからこそ、このような照会の権限が認められているのだということがわかります。
弁護士会照会は弁護士しか利用することができない?
弁護士会照会は、弁護士法により、弁護士のみが利用できる制度です。
機密性の高い情報であるため「人権を尊重し、社会正義を実現する責務を負う弁護士」に限って特別に開示する制度です。
担当弁護士以外に照会の権限は持っていません。
そのため、事件解決のために情報を調査したいときは、弁護士に依頼する必要があります。
弁護士会照会は欲しい情報以外も調べることができる?
裁判に必要な情報以外も、いざという時のために知っておきたいです。
実は、弁護士会照会制度を利用できるのは、依頼を受けた案件の範囲に限られます。
また、回答義務はあるとされておりますが、照会を受けた企業や団体によっては回答をしてくれない場合もあることを念頭に置いておく必要があります。
例えば、携帯電話番号をもとに住所を調べるための照会においては、必ずしもすべての会社が回答してくれるわけではありません。
この点は、事前に携帯電話番号からどこの会社の携帯電話かを確認し(検索すれば簡単に特定することができます)、弁護士と事前によく話し合ってから照会をするのがよいでしょう。
弁護士会照会は個人情報保護法に違反しないの?
今のご時世、個人情報に厳しいですが、大丈夫なんでしょうか?
この点について詳しく解説します。
「相手の情報を調べるなんて、個人情報保護法に違反するのではないか?」と心配になる場合もあるかもしれません。
照会に至るまでには、厳正な審査が行われます。
以下、確認していきましょう。
- 弁護士会照会の申請をした場合、弁護士会が照会申出書を確認し、厳格な審査が行われます。
- その審査を通過した照会のみが、弁護士会長名で官公庁・企業・事務所に対して照会を行います。
- 個人情報の保護に関する法律は、当事者の同意が得られなくても、第三者と情報を共有できる場合として「法令に基づく場合」をあげています。
この法令には、弁護士法23条の2が含まれています。
(個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」及び「【個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン】に関するQ&A」7-16参照)。
そのため、当事者の同意なしで、照会内容を弁護士会に提出することができます。
取得した情報の管理について
ご存じの方も多いと思いますが、弁護士は法律によって秘密保持の義務が定められており、高いレベルの守秘義務が課せられています。
実際には、どのように情報管理をしているのですか?
弁護士会照会に対して回答・報告した内容は、申請を行った担当弁護士が、その事件解決のためのみに利用するものになります。
その事件解決のため以外で情報を使用することはもちろん許されてはいません。
もし、事件処理以外で情報が利用された場合には、弁護士の懲戒事由となることもあります。
厳正な審査を通過し、開示された情報の中に、照会には該当しない不要な情報があった場合、その不要な情報は黒塗りにされ、確認することはできません。
手に入れた情報は、適切に管理する義務が定められています。
「正当な理由がないのにその業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らす」ことが禁止されており、罰則が定められています(刑法134条)
このように、入手した情報は、弁護士により適切に管理されていることがわかります。
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まとめ
弁護士会照会制度(23条照会)とは、弁護士が受任した事件について、滞りなく事件解決のために情報収集を行うために設けられた法律上の制度です。
弁護士会照会では、電話番号から契約者の氏名・住所、特定の金融機関に対し口座の有無やその残高を調べることができます。
相手の情報や資産状況等を確認することができますので、債権回収や遺産分割等の事案で利用されることもあります。
弁護士会照会の受付件数は年々増加傾向になっています。
通常、あまり耳にすることがない「弁護士会照会制度」ですが、いざという時のためにこの記事を読んでくださった方のお力添えができたら幸いです。
また、あらかじめ弁護士保険などで、今後の様々なリスクに備えておくことをおすすめします。
弁護士 松本隆
神奈川県 弁護士会所属
横浜二幸法律事務所
所在地 神奈川県横浜市中区山下町70土居ビル4階
TEL 045-651-5115
労働紛争・離婚問題を中心に、相続・交通事故などの家事事件から少年の事件を含む刑事事件まで幅広く事件を扱う
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