

松本 隆 弁護士
横浜二幸法律事務所
残業代が支払われない
有給休暇を取らせてもらえない
シフトを一方的に減らされた
給料や労働条件を一方的に引き下げられた
突然解雇された、契約を更新してもらえない
職場でハラスメントを受けている
労災を隠蔽されそうになっている
こうした労働問題に直面したとき、多くの方が「どこに相談すればいいのか」「労働基準監督署に行けば解決するのか」と悩みます。 やっかいなのは、それが法律違反にあたるのかどうか、当事者には判断がつかないことが多いという点です。「会社の対応がおかしい気はするけれど、違法とまでは言えないかもしれない」——そう感じている段階でも、相談できる窓口はあります。
労働問題の相談先は、社内の窓口・公的機関の窓口・弁護士などの専門家という3つの層に分かれており、それぞれ「できること」が違います。無料で法的なアドバイスがほしいのか、会社に指導してほしいのか、お金を取り戻したいのかによって、行くべき場所が変わります。
公的機関の中でも役割は分かれています。労働基準監督署は賃金不払いや長時間労働など労働基準法違反に関する相談に対応しますが、明確な証拠がないと動いてもらえないケースも多く、平日日中しか開いていません。一方、都道府県労働局の総合労働相談コーナーは、あらゆる労働問題の初期相談に対応し、適切な窓口への案内や助言を受けられます。
本記事では、社内・公的機関・専門家という相談先の全体像から、ケース別にどの窓口を選べばよいか、平日の日中に時間が取れない場合の相談方法、相談前に準備すべき書類、そして相談したあと実際にどうなるのかまでを、厚生労働省の公表データをもとに解説します。 労基署が動いてくれないケースと、そのときにどうすればよいかまでまとめていますので、労働トラブルに詳しい弁護士監修のもと、参考になれば幸いです。
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労働問題の相談先は「公的機関」だけではない|社内・公的機関・専門家の3つの層
「労働問題の相談先」と聞くと、多くの方が労働基準監督署を思い浮かべます。しかし実際には、相談先は大きく3つの層に分かれており、それぞれ「できること」が大きく異なります。
まず全体像を押さえておくと、自分の状況にあった窓口を選びやすくなります。
①社内の窓口(人事・ハラスメント相談窓口・労働組合)
意外に思われるかもしれませんが、職場のハラスメントに関する相談窓口は、法律ですべての企業に設置が義務づけられています。
労働施策総合推進法(いわゆるパワハラ防止法)30条の2により、事業主は労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制を整備しなければならないとされています。大企業は2020年6月1日から、中小企業は2022年4月1日から義務の対象です。また、相談したことを理由に解雇その他の不利益な取扱いをすることも同条2項で禁止されています。
社内に労働組合がある場合は、組合の相談窓口も選択肢になります。社内に組合がない場合でも、1人で加入できる「合同労組(ユニオン)」があり、加入すれば組合として会社に団体交渉を申し入れることが可能です。
関連記事:ユニオン(労働組合)とは?特徴、メリット・デメリットを徹底解説
②公的機関の窓口(労基署・総合労働相談コーナーなど)
国の窓口としては、労働基準監督署、都道府県労働局の総合労働相談コーナー、同じく労働局の雇用環境・均等部(室)、電話相談の労働条件相談ほっとラインの4つがあります。本記事で詳しく解説するのはこの4つです。
これに加えて、都道府県が独自に設置している労働相談窓口(東京都労働相談情報センター、千葉県労働相談センターなど、名称は自治体により異なります)と、都道府県労働委員会によるあっせんもあります。国の窓口が平日日中中心であるのに対し、自治体の窓口は夜間や土日に相談日を設けている場合があります。
③専門家の窓口(弁護士・社会保険労務士・法テラス)
公的機関は、会社に対して行政指導を行ったり、話し合いの場を用意したりはしてくれますが、あなたの代理人として会社と交渉し、お金を回収してくれるわけではありません。
未払いの残業代を実際に払わせたい、解雇を撤回させたいといった段階になると、代理人として交渉・労働審判・訴訟を行えるのは弁護士だけです。社会保険労務士は労働分野の専門家ですが、裁判の代理人にはなれません(特定社会保険労務士はあっせん等の代理が可能です)。
費用の面で不安がある場合は、日本司法支援センター(法テラス)の民事法律扶助があります。収入と資産が基準以下であれば、無料の法律相談と、弁護士・司法書士費用の立替えを利用できます。
3つの層の違いを一覧で比較
| ①社内の窓口 | ②公的機関の窓口 | ③専門家(弁護士) | |
| 費用 | 無料 | 無料 | 有料(法テラスの利用で軽減可) |
| 会社への強制力 | なし(社内対応) | 行政指導・是正勧告はあるが、金銭の支払いを強制はできない | 労働審判・訴訟で判断を求められる |
| 代理交渉 | 労働組合なら団体交渉が可能 | 不可 | 可能 |
| 土日・夜間 | 会社による | 原則平日日中(ほっとライン等は例外) | 事務所による |
| 匿名での相談 | 窓口による | 可能な窓口あり | 原則、実名での相談 |
迷ったときは、②の公的機関のうち「総合労働相談コーナー」から始めるのが確実です。あらゆる労働問題をワンストップで受け付けており、内容に応じて労基署や雇用環境・均等部に取り次いでくれます。
関連記事:弁護士費用が払えない!お金がない人でも使える制度4選
労基署など公的相談窓口で相談できること【相談窓口の選び方】

労働問題の相談というと、労働基準監督署(労基署)がまず頭に浮かぶのではないでしょうか。
しかし、より適切な解決につなげるために、相談内容に応じた窓口選びが重要です。
労働基準監督署が効果的な相談内容
- 残業代未払い(実労働時間の証拠がある場合)
- 違法な長時間労働(36協定違反がある場合)
- 有給休暇取得拒否(請求の証拠がある場合)
- 労災申請の問題(業務起因性が明確な場合)
総合労働相談コーナーが適している相談内容
- 解雇や雇止めの問題
- 労働条件の不利益変更
- 配置転換の相談
- 初めての労働相談で窓口が分からない場合
労働局が対応する相談内容
- 職場でのハラスメント
- 育児・介護休業の取得拒否
- 男女差別
- 派遣労働者の待遇
それぞれの窓口について詳しく見ていきましょう。
労働基準監督署
労働基準監督署は、会社が労働法令等に違反しないように監督指導する機関です。そのために労働者からの申告も受け付けています。
しかし、労働者のためのよろず相談窓口ではありません。また会社と労働者の間に入って仲を取り持ってくれるわけでもありません。
例えば、明白な法令違反があるならば、労働基準監督署に相談すべきでしょうが、そうでないときに労働基準監督署に相談に行くのは、必ずしも適切とはいえません。
労基署職員は、不当解雇や労働災害の対応など深刻な問題で、大わらわです。
「上司に少し不満がある」などの法令違反以外での悩みごとで労基署に行っても、後回しにされかねません。
全国労働基準監督署の所在案内はこちらから。
全国に320ヶ所以上あります。
労働基準監督署に相談(申告)するとどうなる?
労基署に申告すると、まず職員が詳しい事情を聞き取りします。明確な法令違反がある場合は、会社への立ち入り調査が行われ、問題が確認されれば是正勧告が出されます。
是正されない場合は、業務停止処分や刑事罰の対象となることも。ただし、証拠が不十分な場合は「様子を見てください」と言われることもあります。
都道府県労働局「総合労働相談コーナー」(初めの相談におすすめ)
初めの相談は都道府県労働局の「総合労働相談コーナー」がおすすめです。
総合労働相談コーナーは、職場のトラブルの相談や、解決のための情報提供をワンストップで行っている機関です。以下のようなあらゆる分野の労働問題を対象としています。
- 解雇
- 雇止め
- 配置転換
- 賃金の引下げ
- 募集・採用
- いじめ・嫌がらせパワハラ
ここでは、会社と労働者との間の様々なトラブルについて、助言や解決の場を提供してくれます。
そもそも職場で問題が起こっても、法令違反かどうかさえわからないことも多いと思います。
労基署は、法令違反への対応がメインの仕事です。
労基署にいきなり相談に行くよりも、まず総合労働相談コーナーで相談すれば、法令の基本的な内容についても教えてもらえます。法令違反の疑いのある事態なら、指導監督の権限を持つ労基署に取り次いでくれます。
総合労働相談コーナーの所在地 各都道府県労働局、全国の労働基準監督署内、駅近隣の建物など379か所に設置されています(令和7年4月1日現在)。
総合労働相談コーナーに相談するとどうなる?
総合労働相談コーナーでは、専門相談員が無料で対応し、問題に応じて助言・情報提供を行います。必要に応じて労働局長による会社への「助言・指導」や、中立的な「あっせん」による解決も可能です。予約は不要で、すべて無料、秘密は厳守されます。
手続きにかかる期間は、助言・指導は98.5%が1か月以内、あっせんは1か月以内が43.5%、2か月以内が33.0%というのが令和6年度の実績です。 では、申し出れば実際に会社は動くのでしょうか。この点は数字を見ると制度ごとに差があります。詳しくは「総合労働相談コーナーに相談したらどうなる?助言・指導とあっせんの実際の数字」の章で解説します。
都道府県労働局の雇用環境・均等部
労働者と事業主との間で、男女均等取扱い、育児・介護休業、パートタイム労働者の雇用管理等について民事上のトラブルが生じた場合、解決に向けた援助を行う機関です。
労働局長による紛争解決の援助や調停機関による調停も行われます。
職場でのトラブル解決の援助を求める方へ(雇用環境・均等部の役割についての解説)
都道府県労働局雇用環境・均等部(室)の連絡先 雇用環境・均等部(室)所在地一覧
雇用環境・均等部に相談するとどうなる?
ハラスメントや育児・介護休業などの問題について、専門職員が相談に応じます。労働局長による紛争解決の援助や、調停委員による調停も行われます。企業への指導が必要と判断されれば、改善に向けた働きかけも行います。
労働条件相談ほっとライン
平成26年に、平日夜間・土日に誰でも労働条件に関して無料で相談できる電話相談窓口として開設した、厚生労働省の委託事業です。
違法な時間外労働、過重労働にる健康障害・賃金不払残業などの労働基準関係法令に関する問題について、専門知識を持つ相談員に対して電話相談ができる公的窓口です。
ほっとラインに相談するとどうなる?
電話での相談に専門知識を持つ相談員が対応し、労働基準関係法令に基づいたアドバイスを受けられます。より詳しい相談が必要な場合は、労働基準監督署など適切な機関を紹介してもらえます。
相談窓口ごとの相談内容

相談窓口の使い分けを整理しましょう。
おおむね7つに分類できますが、すべて総合労働相談コーナーで受付可能です。
| 内容 | 主なもの | 相談窓口 |
|---|---|---|
| ①労働条件 | 労働時間、賃金、解雇等の労働条件に関すること (賃金未払い、長時間残業、労働条件が雇用契約と異なる、有休が取れない、不当解雇など) | 労働基準監督署 |
| ②安全衛生 | 職場の安全や衛生 (危険な作業環境など) | 労働基準監督署 |
| ③労災保険 | 労働災害・労災保険 | 労働基準監督署 |
| ④職場のトラブル | トラブル全般 | 総合労働相談コーナー |
| ⑤ハラスメント関係 | セクシャルハラスメント、妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント、パワーハラスメント | 雇用環境・均等部(室) |
| ⑥妊娠・出産・育児・介護休業関係 | 性別を理由とする差別、妊娠・出産・育児休業等を理由とする不利益取扱、育児・介護休業 | 雇用環境・均等部(室) |
| ⑦パートタイム労働 | パートタイムなどの非正規労働に関する相談 | 雇用環境・均等部(室) |
※ 上記は全て「総合労働相談コーナー」で受付可能。(①②③は労基署にも取り次いでくれます)
電話相談、メールでの相談なども可能な場合があります。
なお、匿名でも相談を受け付けている窓口があります(対応は窓口によって異なります)。ただし、匿名の相談や電話だけの相談は、内容の裏づけが取れないため、実名で資料を持参した相談にくらべて優先度が下がる場合があります。 名前を伏せて情報だけを届けたいのか、それとも自分の案件を動かしてほしいのかによって、使う窓口と方法を変えるのが現実的です。
厚生労働省では、雇用・労働に関する相談窓口等を検索できるポータルサイトが用意されていますので、ご確認ください。
【ケース別】あなたの困りごとはどこに相談すればいい?
ここまで4つの公的窓口を紹介してきましたが、「結局、自分の場合はどこに行けばいいのか」が一番知りたいところだと思います。
大まかな切り分けは、労働基準法などの「法令違反」にあたるものは労働基準監督署、会社との「民事上のもめごと」は総合労働相談コーナー、と覚えておくと迷いません。よくあるケースごとに見ていきましょう。
残業代・給料が支払われない
相談先:労働基準監督署
賃金の全額払いは労働基準法24条、時間外労働の割増賃金は同37条で定められており、いずれも違反すれば罰則の対象です。タイムカードや給与明細など、実労働時間がわかる資料を持参してください。
ただし、労基署は会社に是正勧告はできても、あなたの代わりに未払い分を取り立ててはくれません。実際に回収したい場合は弁護士への依頼が必要になります。
関連記事:未払残業代は必ず請求できる!残業代を請求するための5つのポイント
有給休暇を取らせてもらえない
相談先:労働基準監督署
年次有給休暇は、労働基準法39条で定められた労働者の権利です。さらに、年10日以上の有給休暇が付与される労働者については、そのうち年5日を、使用者が時季を指定して取得させることが義務づけられています(同条7項)。
「人手が足りないから」という理由で一律に拒否することはできません。会社の時季変更権(同条5項)は、事業の正常な運営を妨げる場合に限って認められるものです。
関連記事:有給休暇の労働基準法による定義とは?付与日数や取得義務について詳しく解説!
労働時間が長すぎる・休みが取れない
相談先:労働基準監督署
法定労働時間は1日8時間・週40時間(労働基準法32条)で、これを超えて働かせるには36協定の締結・届出が必要です(同36条)。36協定の上限を超えた残業や、そもそも36協定が届け出られていない場合は、明確な法令違反にあたります。
自分の会社の36協定は、就業規則とあわせて閲覧できるはずですので、可能であれば内容を確認しておきましょう。
シフトを一方的に減らされた(シフトカット)
相談先:まず総合労働相談コーナー
シフト制で働いている方の「急に勤務日を減らされた」という相談です。契約上どこまでが約束された労働日なのかによって扱いが変わるため、まずは雇用契約書・労働条件通知書を持って総合労働相談コーナーで整理してもらうのが確実です。
なお、会社側の都合による休業と評価される場合には、労働基準法26条により、休業期間中は平均賃金の60%以上の休業手当を支払う義務があります。この点は労働基準監督署の管轄です。
給料や労働条件を一方的に引き下げられた
相談先:総合労働相談コーナー
「約束した賃金が支払われない」は労働基準法24条の問題で労基署ですが、「一方的に賃金を引き下げられた」は労働契約法8条〜10条の民事上の問題であり、労基署ではなく総合労働相談コーナーが窓口になります。
労働条件の変更は労使の合意が原則で(労働契約法8条)、就業規則の変更による不利益変更には合理性が必要とされています(同9条・10条)。
関連記事:就業規則の原則【新入社員でも理解ができる】4つのポイント
突然解雇された・契約を更新してもらえない
相談先:内容によって分かれます
30日前の予告も解雇予告手当もなく解雇された場合は、労働基準法20条違反として労働基準監督署が窓口です。
一方、「解雇されたが不当だと思う」という解雇そのものの当否は、労働契約法16条の民事上の問題であり、総合労働相談コーナーが窓口になります。撤回や補償を求めるのであれば、労働局のあっせんか、弁護士に依頼しての労働審判・訴訟が選択肢になります。
関連記事:【解雇されてしまった】 無効を主張するとき、押さえておくべき12のポイント!!
パワハラ・セクハラを受けている
相談先:社内のハラスメント相談窓口 → 都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)
ハラスメント相談窓口の設置は全企業の義務です(労働施策総合推進法30条の2)。社内窓口が機能しない、相談したのに対応してもらえないという場合に、雇用環境・均等部(室)が援助を行います。
参考:職場のハラスメントに関連する相談機関一覧|あかるい職場応援団(厚生労働省)
関連記事:これってアウト?! 実際にパワハラ認定された3つの事例と対応策
契約社員・パートで正社員との待遇差がある
相談先:都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)
非正規雇用の待遇に関する相談は、雇用環境・均等部(室)が担当します。まず会社に対して、待遇差の内容と理由の説明を求めることができます。
職場が危険・安全対策がされていない
相談先:労働基準監督署
危険な作業環境や安全衛生上の問題は、労働安全衛生法の管轄として労働基準監督署が対応します。
なお、実際に体調を崩したりケガをしたりして会社に損害賠償を求める場合は、安全配慮義務違反(労働契約法5条)の民事上の問題となるため、弁護士への相談が必要になります。
相談前の必要な準備と効果的な相談方法
どの窓口に相談する場合でも、事前の準備が結果を左右します。しっかりと準備することで、限られた相談時間を有効に使え、より具体的なアドバイスが得られます。
相談に必要な書類の準備
相談では、問題の具体的な証拠となる書類が重要な役割を果たします。とくに労働基準監督署に申告する場合は、証拠の有無が動いてもらえるかどうかを大きく左右します。以下の書類を可能な限り用意しましょう。
- 労働条件通知書や雇用契約書
会社との労働条件の約束を示す基本的な書類です。採用時に受け取った書類や契約書は必ず保管しておきましょう。 - タイムカードや給与明細のコピー
残業代の未払いや労働時間に関する問題を訴える場合の重要な証拠となります。可能な限り過去の分も含めて準備します。 - 会社とのメールやLINEのやり取り記録
労働条件の変更や指示内容について、会社側とやり取りした記録は重要な証拠となります。特に文書化されたものは確実に保管しておきましょう。 - 就業規則のコピー
会社のルールを定めた就業規則は、労働条件の適法性を判断する上で重要な資料となります。自身の手元にない場合は、会社に開示を求める権利があります。 - 自身で記録している勤務記録や業務日誌
タイムカードなどの公式記録がない場合でも、自身で付けている勤務記録は補助的な証拠として有効です。日々の記録を習慣にしておくことをおすすめします。
相談内容の整理方法
効果的な相談のためには、問題の発生から現在までの経緯を整理しておくことが重要です。以下のポイントに従って整理しましょう。
時系列での整理
いつから問題が発生したのか、どのような経緯で現在に至ったのかを、日付とともに整理します。「〇月〇日に〇〇があり、その後…」というように、具体的な事実を時系列で並べることで、状況が明確になります。
具体的な被害の内容
残業代であれば具体的な金額、労働時間であれば実際の勤務時間数など、できるだけ具体的な数字で示せるようにします。「かなりの長時間労働」といった曖昧な表現は避け、「毎日午後10時まで働いていた」というように具体的に記録します。
効果的な相談のポイント
労働基準監督署での相談をより効果的にするために、以下のポイントを意識しましょう。
客観的事実の提示
感情的な訴えは避け、「いつ、どこで、何が」起きたのかを客観的に説明できるようにします。特に法令違反の疑いがある点については、具体的な事実関係を示せるようにしましょう。
証拠書類の準備
重要な証拠書類はコピーを複数用意しておきます。特に給与明細やタイムカードなど、金銭的な請求の根拠となる書類は必須です。
相談時間の確保
初回の相談では30分から1時間程度かかることも想定されます。十分な時間的余裕を持って訪問しましょう。
労基署などの公的機関での相談はどんなふうに行われるのか

このような公的相談機関では、どんなふうに相談が行われるのでしょうか。
まず、一番気軽に相談できる「総合労働相談コーナー」およびハラスメントや両立関係の雇用環境・均等部(室)について解説します。
「使用者は、前項の申告(=労働者が労働基準法又は同法に基いて発する命令に違反する事実を行政官庁又は労働基準監督官に申告)をしたことを理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取扱をしてはならない。
1. 都道府県労働局「総合労働相談コーナー」
①相談者
労働者のみならず、学生、就活生の相談も受けてもらえます。
内定などの問題のほか、就活でハラスメント問題なども深刻になっています。
身近に就活生などがいる場合などの参考にしてください。
②相談の対応
専門の相談員が面談もしくは電話で対応してもらえます。
予約は不要、料金も無料です。
③相談者の保護
相談者のプライバシーの保護に配慮されており、秘密は厳守されます。
令和6年度の総合労働相談件数は120万1,881件で、5年連続で120万件を超えています。内訳は次のとおりです。
| 相談の内容 | 件数 | 割合 |
| 法制度の問い合わせ | 81万4,454件 | 60.3% |
| 労働基準法等の違反の疑いがあるもの | 20万7,619件 | 15.4% |
| 民事上の個別労働関係紛争相談 | 26万7,755件 | 19.8% |
| その他 | 6万1,017件 | 4.5% |
このうち民事上の個別労働関係紛争の相談内容では、「いじめ・嫌がらせ」が54,987件(17.4%)で13年連続の最多、次いで「自己都合退職」41,502件(13.1%)、「解雇」32,059件(10.1%)と続きます。
相談者の内訳は、労働者からが703,078件(58.5%)、事業主からが349,415件(29.1%)です。労働者だけでなく、会社側からの相談も受け付けている窓口であることがわかります。
2. 都道府県労働局の雇用環境・均等部
相談者、相談の対応などは(1)総合労働相談コーナーと同様です。
後でも触れますが、会社の管理職や人事労務の担当者などが法令の正確な知識のないままに、間違った対応をしていることがしばしば見受けられます。
あなたがこのような公的機関の情報を示すだけで、管理職や人事労務担当者が自分の間違いに気が付いて問題解決に至ることも十分に考えられます。
3. 労働基準監督署
労基署については、単なる相談ではなく「申告」が必要です。
すなわち「違法行為の事実を告げ、労基署に何らかの対応を求める」ことになるので、違反行為であることの証拠を集めなければなりません。
また、以下のように、自分が問題だと考えていることを、あらかじめ明確にしておきましょう。
- その被害を立証できる証拠があるのか、 証人がいるのか。
- どのようなトラブルが起こっているのか。
- そのトラブルはいつごろから発生し、具体的にどんな被害が生じているのか。
なお、いきなり労働基準監督署に行くのではなく、まずは、総合労働相談コーナーで相談すれば、どのような準備が必要かということもアドバイスしてもらえるはずです。
相談者や相談の対応、プライバシーの保護については、公的機関と同様に扱われます。
総合労働相談コーナーに相談したらどうなる?助言・指導とあっせんの実際の数字
「相談したところで、本当に何かしてもらえるのか」——これが一番気になるところではないでしょうか。
総合労働相談コーナーで相談したあと、実際に会社に働きかける手続きが都道府県労働局長による「助言・指導」と紛争調整委員会による「あっせん」です。厚生労働省は、この2つの実績を毎年度公表しています。令和6年度の数字を見ると、制度ごとにかなり性格が違うことがわかります。
助言・指導は約95%が実施され、98.5%が1か月以内に終わる
都道府県労働局長による「助言・指導」は、令和6年度に8,865件の申出があり、そのうち処理が終わった8,664件のうち、実際に助言・指導が行われたのは8,256件(95.3%)でした。処理の期間も、8,538件(98.5%)が1か月以内に終わっています。
申し出れば、ほぼ確実に、かつ短期間で会社への働きかけが行われる制度だといえます。
あっせんは「会社が出てこない」ケースが45%ある
一方、紛争調整委員会による「あっせん」は事情が異なります。令和6年度の申請は3,867件で、処理が終わった3,782件の内訳は次のとおりです。
| 処理の内容 | 件数 | 割合 |
| 双方が参加してあっせんを開催 | 1,848件 | 48.9% |
| 一方が不参加で打ち切り | 1,718件 | 45.4% |
| 合意の成立 | 1,143件 | 30.2% |
注目すべきは、45.4%が「一方が参加しなかったため打ち切り」になっている点です。あっせんは話し合いの制度であり、会社側に参加を強制することはできません。会社が出てこなければ、そこで手続きは終わってしまいます。
逆にいえば、双方がテーブルについたケースに限れば合意率は59.3%です。会社が応じさえすれば、半数以上はまとまっているということです。
期間は、1か月以内が43.5%、2か月以内が33.0%、2か月を超えるものが23.5%でした。
あっせんで実際に合意した金額の例
厚生労働省は、令和6年度のあっせん事例もあわせて公表しています。実際に合意にいたった解決金の例は、次のようなものです。
- いじめ・嫌がらせを理由に退職した短時間労働者のケース:解決金20万円
- 解雇の撤回を求めて賃金6か月分(162万円)を請求したケース:解決金10万円で合意
- 雇止めについて150万円を請求したケース:給与2か月分(50万円)で合意
- 基本給・賞与の減額分100万円を請求したケース:約86万円で合意
請求額に近い金額で合意できたケースもあれば、大きく下回ったケースもあります。あっせんは早く・無料で解決できる反面、金額面では譲歩が前提になりやすい制度です。
請求額をしっかり主張したい、会社が話し合いに応じないという場合は、弁護士に依頼して労働審判や訴訟に進むことになります。
出典:厚生労働省「令和6年度個別労働紛争解決制度の施行状況」(令和7年6月25日公表、令和7年10月28日一部数値修正)
関連記事:労働審判ってどんな制度? 1から10まで詳しく解説!
労基署などに相談することのメリット・デメリット

相談するメリット
労基署に相談するメリットは、何と言っても専門の相談担当者が無料で相談にのってくれることです。
相談担当者は、多数の事例を扱っています。法律の専門的な知識はもとより、解決のための様々なヒントも提供してくれるでしょう。
総合労働相談コーナーなら、助言にとどまらず、最終的にはあっせんなどの解決までサポートしてくれます。
労働基準監督署なら、問題事例と考えれば会社に対して改善の指導警告もしてくれます。
相談するデメリット
労基署に相談する際、やはり心配になるのは、「公的機関にタレ込んだのか、告げ口したのか」などと会社の上司や場合によっては同僚などからも白い目で見られかねないことです。
公的機関に相談したことを理由に会社で不利益な処分などをするのは法律で禁止されています。
しかし、中には、嫌がらせや村八分のような制裁を受けることもあるかもしれません。
会社の上司の不当な取り扱いなら、社内の相談窓口に相談するほうが、早期に円満な解決が図れることもあります。上司の知識不足や認識不足などから、間違った取り扱いになっていることもしばしば見受けられるからです。
ハラスメントについては、相談窓口の設置がすべての企業に義務づけられています(労働施策総合推進法30条の2第1項)。さらに、相談したことや調査に協力して事実を述べたことを理由に、解雇その他の不利益な取扱いをすることは法律で禁止されています(同条2項)。社内窓口があるかどうかは、就業規則や社内イントラネットで確認できます。
なお、問題が単なる相談にとどまらず、例えば、未払残業代があった場合にその支払いを求めることも考えるならば、公的機関への相談だけでは解決しないことも多いでしょう。
そのようなケースでは、労働問題の専門の弁護士や社会保険労務士などへの相談のほうが、ふさわしいこともあります。
相談後のフォローと対応の確認方法
労働基準監督署への相談後、問題の解決に向けた適切なフォローアップが欠かせません。会社の対応状況を確認し、必要に応じて追加の対応を検討しましょう。
是正勧告後の確認方法
会社が是正勧告を受けた後、実際にどのような対応をしているか、記録を取っておきましょう。具体的な改善内容や時期を文書で残しておくことが重要です。
もしも是正勧告後も改善が見られない場合は、その事実を具体的に記録し、労働基準監督署への再度の相談を検討します。その際、会社の対応状況を示す新たな証拠(給与明細、勤務記録など)を継続的に収集します。
解決までの一般的な流れと期間
申告から調査開始までは通常1〜2週間程度で、是正勧告から改善報告までは約1ヶ月程度かかります。
完全に解決までの期間は、1ヶ月〜半年程度が目安ですが、案件により大きく異なります。
平日の日中に時間が取れない・匿名で相談したい場合の窓口
公的な相談窓口の多くは平日の日中しか開いていません。しかし、働きながら相談する方のために、時間外に使える手段も用意されています。
夜間・土日に電話で相談する
先ほど紹介した労働条件相談ほっとラインが中心になります。厚生労働省の委託事業で、平日は17:00〜22:00、土日祝日は9:00〜21:00に無料で電話相談ができます。労基署が閉まっている時間帯をちょうど埋める形の受付時間です。
また、都道府県が設置している労働相談窓口の中には、夜間や土日の相談日を設けているところがあります。お住まいの都道府県名と「労働相談」で検索して、実施日時を確認してみてください。
24時間いつでも調べる・情報を届ける
労働基準監督署チャットボットは、労働条件・安全衛生・労災保険などに関する一般的な問い合わせに24時間対応しています。管轄の労働基準監督署の住所や電話番号を調べることもできます。
ただし、これはAIによる自動応答です。個別の事案についての相談には対応しておらず、個人情報を入力しないよう注意が呼びかけられています。「まず制度の概要を調べたい」「自分の管轄署を知りたい」という段階での利用に向いています。
名前を出さずに相談したい場合
会社に知られることを心配される方のために、労働基準関係情報メール窓口があります。労働基準法などの違反が疑われる事業場の情報を、24時間メールで届けることができます。
ただし、こちらは寄せられた情報を立入調査の対象を選ぶ際の参考にするための窓口で、内容に対する個別の回答や相談への対応は行われません。「回答がほしい」場合は、総合労働相談コーナーやほっとラインを使ってください。
参考:労働基準関係情報メール窓口|厚生労働省
参考:労働基準行政の相談窓口|厚生労働省
労基署に相談する

労基署(労働基準監督署)は、「会社が労働法を守っているかどうかを監視監督する」ところです。会社が労働法に違反していることが発覚すると、労基署はその会社に対して調査をしてくれます。
相談する具体的な方法を、以下で紹介します。
労基署の電話相談を利用
労基署に訪問するのはハードルが高いなら、まずは電話相談を検討してみてください。
労基署に行くことまではしたくないけれど、会社が労働法を守っているのかどうかを聞いてみたいというときには、相談内容をまとめて労基署に相談の電話をしてみると良いでしょう。
簡単な相談であれば、この電話相談で解決することもあります。
| 相談手段 | 受付時間 | 詳細 | |
| 電話 | 労働基準監督署(各所) | 平日9:00~17:00 ※各署によって異なる | こちら |
| 労働条件相談ほっとライン | 平日:17:00~22:00 土日祝:9:00~21:00 | 0120-811-610 詳細はこちら | |
| メール | 24時間365日 | こちら | |
実際に労基署に行って相談する
複雑な相談は、電話では難しいものです。特に、電話では書類などの資料を見せることはできません。
「残業代が発生するのかどうか」「長時間労働に該当するか」「労働条件が聞いていた内容と違う」など、相談内容は多岐にわたりますが、 証拠となる資料がないと労基署の職員も助言はしにくいものです。
そのため、労基署にきちんと聞いてもらいたいというときには、最初から直接労基署に行って相談するのがよいでしょう。
労基署は弁護士とは違う!?
労基署は「会社が労働法を守っているかどうかを監視監督する」ところですので、相談者の代理人として会社と交渉してくれるわけではありません。
ましてや、裁判所のように民事上の請求が認められるかどうかを判断するところでもありません。
たとえば、未払残業代を会社に支払ってもらうためには、弁護士に依頼して交渉や裁判を行う必要があります。
気になるのは費用面だと思います。労働問題では回収額に応じた報酬体系をとる事務所もあり、また収入が一定以下であれば法テラスの立替制度も利用できます。
関連記事:残業代請求を弁護士に依頼する場合の費用と成功するためのポイントを解説
労基署が立ち入り調査や是正勧告を行う
労基署が強制力を持って行えるのは、企業に対する行政処分です。
残業代不払いや36協定を無視した長時間労働、悪質な罰金制度などの明らかに違法な行為が公然と行われている・強く疑われる場合には、労基署は立ち入り調査を行います。
結果として、違法な行為であるとわかれば、会社に対して是正勧告をし、それでも会社が改善しない場合には業務停止処分や刑事罰が発動されるように動きます。
労基署に動いてもらうためのポイントはこれだ

1 事実を正確に把握してメモを作っておく
労基署など公的相談窓口の担当者は、総じてとても親切であることが多いです。それでも、職員は様々な相談で忙殺されています。
口頭だけの説明は、聞く人の立場からすれば大変な手間です。簡単でも良いので、自分なりに何を相談したいか、メモをして準備するのがベストです。時系列の簡単なメモで構いません。
相手はプロであり、話を聞く訓練も徹底的に積んでいます。あれこれ文章を練って、飾り立てる必要はありません。
2 可能な限り資料を用意しておく
証拠となりそうな資料があれば、できる限り準備しましょう。とはいえ、社内資料などは持出しできないことも考えられます。
会社の残業の申告記録や入退出記録を労基署などに持ち込めば話は早く済ませられます。
しかし「これらの資料は社外秘だ。勝手に持ち出したのは懲戒事由に当たる。窃盗罪にも当たる」などと言って、会社が懲戒処分の理由(口実)にしたり、最悪は刑事告訴などに及ぶケースもあり得るでしょう。
そのようなおそれがある場合は、自分なりのメモでもかまいません。
3 何について相談したいのかはっきりさせておく
「何があなたの相談の趣旨なのか」「何を望んでいるのか」について、できるだけはっきりさせておきます。
例えば、残業時間をちゃんと申告して時間外手当を払ってもらいたいのか、それとも、労働時間が異様に長く疲れきっているので何とかしたいのか、あるいはその両方なのか、といったことです。
具体事例で、見てみましょう。
Aさんは、長時間の残業が続いているのに、上司から「残業の申告は月20時間以内にしろ」といわれているので、同じ課の5人の同僚も含め、申告時間は月20時間以内にしている。(自分の課だけでなく、会社全体で以前から行われている)
証拠になるよう、実際の残業時間は自分たちで手帳やスマホにメモしている。
また、会社のビルの入退出記録を見れば、毎日夜8時9時まで残っている客観的な記録も残っている。
このような場合、Aさんは、
- 長時間残業の改善
- (いわゆるサービス残業に対して)きちんと残業代を支払ってほしい
という2点について相談・改善したい、とはっきりさせることが大事だといえます。
労基署が対応してくれないケースと、そのときの次の一手
ここまでのポイントを押さえても、労基署に必ず動いてもらえるわけではありません。そもそも労基署の管轄外であるケースと、管轄内でも動けないケースがあります。あらかじめ知っておくと、遠回りをせずに済みます。
まず知っておきたい「相談」と「申告」の違い
労働基準法104条1項は、事業場に労働基準法違反の事実がある場合、労働者はその事実を行政官庁または労働基準監督官に申告できると定めています。この「申告」が、労基署に調査や指導を求める正式な手続きです。
窓口で「困っているので相談したい」とだけ伝えると、法制度の説明やアドバイスを受けただけで終わってしまうことがあります。会社を調査してほしい、指導してほしいという希望があるなら、その意向をはっきり伝えてください。
なお、申告したことを理由に不利益な取扱いを受けることは、前述のとおり同条2項で禁止されています。
ケース1:そもそも労働基準法違反ではない
労基署が扱うのは、労働基準法などの法令違反です。パワハラ、退職勧奨、解雇が権利の濫用にあたるかどうかといった問題は、労働契約法や民法上の問題であり、労働基準法違反ではありません。そのため、労基署では対応を断られることがあります。
ケース2:法的な争いがある
労働基準法違反かどうかについて会社側に言い分がある場合、労基署は是正勧告に踏み切れないことがあります。
たとえば残業代の未払いを申告しても、会社が「固定残業代として支払っている」「管理監督者にあたるので割増賃金の支払義務はない」と反論してくることがあります。会社の主張に理由がないことが明らかであるとまではいえない場合、その判断は裁判所に委ねられることになります。
ケース3:会社が指導に従わない
労基署は是正勧告や指導を行えますが、会社の財産を差し押さえて未払い分を回収するようなことはできません。指導をしても会社が改めなければ、労基署としてはそこで手詰まりになります。
動いてもらえないときは司法手続きへ
上の3つは、いずれも行政ではなく司法の手続きで解決する領域です。労働審判や訴訟であれば、労働基準法違反にあたらないケースでも、法的な争点があるケースでも、会社が任意に応じないケースでも、裁判所に判断を求めることができます。
労基署に行っても解決しなかったからといって、あきらめる必要はありません。手段が変わるだけです。
関連記事:【給料の未払いが発生】確実に払ってもらうための4つのポイント
労働基準監督署の「上」はどこ?対応に納得できないときの相談先
「労基署に行ったのに取り合ってもらえなかった」「担当者の対応に納得できない」。そんなとき、労基署より上の組織に相談できるのかという疑問を持つ方は少なくありません。
労働基準行政は3つの層でできている
労働基準行政は、次の3層構造になっています。
厚生労働省 労働基準局 ↓
都道府県労働局 ↓
労働基準監督署(全国各地)
つまり、労働基準監督署の直接の上部組織は、その都道府県の「労働局」です。さらにその上が、厚生労働省の労働基準局にあたります。
ここまで紹介してきた総合労働相談コーナーや雇用環境・均等部(室)も、この都道府県労働局に置かれている部署です。労基署と別の役所ではなく、同じ労働局という組織の中で役割が分かれていると考えるとわかりやすいでしょう。
労基署の対応に苦情を伝えたい場合
厚生労働省は、労働基準監督署の監督指導業務に対する苦情・要望・意見を受け付けるメール窓口を設けています。送り先は厚生労働省労働基準局監督課の労働基準監察室で、事業場の所在地を管轄する都道府県労働局の監督課でも受け付けています。
ただし、注意点があります。この窓口に寄せられた内容は今後の監督指導業務の参考にするためのもので、個別の回答は行われません。また、監督指導を担当した労働基準監督官に直接送付されるものでもありません。
つまり、「自分の案件をもう一度動かしてもらう」ための窓口ではないという点は理解しておく必要があります。
参考:労働基準監督署の監督指導業務に対する苦情・ご要望・ご意見|厚生労働省
「上に言えば動く」とは限らない
組織としての上下関係はありますが、上位の組織に伝えれば個別の案件が動く、という仕組みにはなっていません。
前の章で見たとおり、労基署が動けない理由の多くは担当者の姿勢ではなく、そもそも労働基準法違反にあたらない、法的な争いがある、強制力がないといった制度上の限界によるものです。組織の階層をさかのぼっても、この限界は変わりません。
会社に対して具体的な結果を求めるのであれば、行政の上位組織をたどるよりも、司法手続きに切り替えるほうが確実です。
関連記事:弁護士費用の相場はいくら?安く抑えるコツを徹底解説
労働基準監督署などへの相談によくある質問
労働基準監督所などへの相談によくある質問の一例は以下のとおりです。
- 24時間対応の労働相談の電話窓口はありますか?
- 総合労働相談窓口とは何ですか?
- 労働基準監督署への相談はどのようにすればいいですか?
それぞれ簡潔に回答します。
24時間対応の労働相談の電話窓口はありますか?
公的機関には、24時間対応の電話相談窓口はありません。労働基準監督署の電話相談は平日の日中のみです。
ただし、時間外に使える手段はあります。電話であれば、労働条件相談ほっとラインが平日17:00〜22:00、土日祝日9:00〜21:00に無料で対応しています。
24時間使えるものとしては、一般的な問い合わせに自動応答する労働基準監督署チャットボットと、違反が疑われる事業場の情報を送れる労働基準関係情報メール窓口があります。ただし、いずれも個別の事案についての相談に人が回答する窓口ではありません。
詳しくは「平日の日中に時間が取れない・匿名で相談したい場合の窓口」の章をご覧ください。
総合労働相談窓口とは何ですか?
総合労働相談窓口(コーナー)とは、都道府県労働局や労働基準監督署内などに設置されている、あらゆる労働問題をワンストップで受け付ける窓口です。令和7年4月1日現在、全国379か所にあります。
相談だけでなく、都道府県労働局長による「助言・指導」や、紛争調整委員会による「あっせん」の入口にもなっています。予約は不要で、料金は無料です。
労働基準監督署への相談はどのようにすればいいですか?
労働基準監督署への相談は、まず証拠を集めるように指示されることがほとんどなので、窓口での相談がおすすめです。窓口に相談をしてもすぐに対応してもらえない場合は、時間を見つけて電話してみましょう。
なお、証拠がすぐに集まっている場合には、すぐに動いてもらえる可能性もありますが、場合によっては行政的な動きになってしまう場合もあります。
まとめ
職場のトラブルを相談できる窓口を、社内・公的機関・専門家の3つの層に分けて紹介しました。
どこに行けばいいか分からないときは、まず総合労働相談コーナーです。あらゆる労働問題をワンストップで受け付け、必要に応じて労働基準監督署や雇用環境・均等部に取り次いでくれます。明らかな法令違反があるなら労働基準監督署、ハラスメントなら社内窓口と雇用環境・均等部、というのが基本の使い分けになります。
ただし、相談している中で、未払の残業代があることが判明する場合もあります。残業自体に法的な問題がある場合、労基署は労働環境の改善を促してくれる可能性がありますが、未払残業代の請求まではしてくれません。 未払残業代を含め、個人で会社と戦うためには弁護士や社労士といった法曹関係者が強い味方になりますが、着手金などの費用面が悩ましいところです。
費用面だけが理由で泣き寝入りをするのを避けるために、こうした費用が出る弁護士保険でリスクヘッジをしておくといいでしょう。
そのためには「弁護士保険」へご加入していただき、今後のトラブルに備えていただくことをおすすめします。

玉上 信明(たまがみ のぶあき)
社会保険労務士
健康経営エキスパートアドバイザー
紙芝居型講師(登録商標第6056112号)
日本紙芝居型講師協会(登録商標第6056113号)
日本公認不正検査士協会アソシエイト会員
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