昨今はクラウドソーシングサービスが発達するなどで、実力あるフリーランスが仕事を獲得するのが容易になっています。
そんな中、せっかく仕事をしたにも関わらず、報酬が支払われないというケースもあります。
このページではフリーランスが報酬未払いにあったときの解決方法と予防策についてお伝えします。
「弁護士に相談なんて大げさな・・・」という時代は終わりました!
経営者・個人事業主の方へ
フリーランスで報酬未払いが発生するケース
フリーランスで報酬の未払いが発生するケースは「SNSから受注した場合」や「仕事内容が不明瞭な場合」などがあります。
SNSから受注するケース
SNSはフリーランスにとっては大事なコミュニケーションツールの一つですが、SNSで仕事を受注するにあたっては注意が必要です。
匿名性の高いSNSでは相手方の人間性や属性などが見えにくいため、過度な要求や嫌がらせを受けることが少なくありません。
また、メッセージの削除や編集が容易にできるため、報酬に関する約束や成果に関することがうやむやになってしまうこともあります。
さらには、成果物を納品した直後に相手方がアカウントを消すことで報酬の未払いが発生してしまった、というトラブルも少なくありませんので注意しましょう。
仕事内容が不明瞭なケース
相手方から提示された仕事内容があいまいだったり、仕事内容が二転三転していたりする場合には気を付けましょう。
言われた通りの成果物を納品しても、納得感が得られず検収完了されない・理不尽なリテイクを何度も要求される等トラブルになる可能性が高いからです。
相手方も成果物の完成ビジョンが明確でないために起こるケースですが、こちらがどんなに要求をのんだとしても相手方の不満感につながってしまい、最終的に「きちんと仕事をしてもらえなかった」と報酬の未払いに発展してしまいます。
報酬未払いは何故起こるのか?
まず、報酬未払いはなぜ起こるのか、その原因を確認してみましょう。
自分側に原因がある場合
報酬が未払いとなる原因が自分側にあるケースとしては、
- 請求書を発行していない
- 納品物の不備などで検収完了していない
- 支払日を間違えていた 等
ということがあります。
1つ目は請求書を発行していないなど、請求についてのフローに問題がある場合です。
委託先と直接契約を結んで請求をする場合でも、間に第三者が介在する場合や、クラウドソーシングサイトなどの仕事のマッチングサービスを利用する場合でも、基本的に報酬を得るためには、仕事を終えてから、金銭の支払いに関する何らかの手続きが必要です。
最も多いのが、請求書を発行して相手に請求をしていない場合です。
請求書を発行していないと、相手方の経理担当が支払いに気づかず、報酬を振り込んでもらえません。
その他にも、クラウドソーシングサイトやマッチングサービスの報酬引き出しに関する手続きを行っていないなど、請求までのフローに漏れがないか注意をしましょう。
次に、納品物の検収が完了しておらず、報酬発生の条件が満たされていない場合です。
納品した物に問題がある場合には請求書を発行していたとしても、支払いが行われないことがあります。
きちんと検収が完了しているかどうかを確認しましょう。
また最後に、支払日の認識を誤解している場合も考えられます。
ある程度累積的に作業をするとき等、支払日の他に締日が設定されていることがあります。
締日を支払日だと勘違いし、「報酬の支払いをしてもらえない」と思い込んでしまう事がないようにしっかりと確認しましょう。
相手側に原因がある場合
相手側に原因があるパターンとしては、
- 担当者と経理部門の支払日の伝達ミス
- 支払い処理漏れ
- 支払いをしたくない
- 支払いできる資金がない
といった場合があります。
業務担当者と請求関係の処理をしている経理部門の人の担当が違う場合には、支払日に関する事務処理を誤り、報酬未払いが発生することがあります。
経理部門の支払い処理漏れを起こした場合にも報酬未払いが発生します。
中には、業務委託したけども、その内容が気に入らないなどの理由をつけて、支払いをしたくないという会社もあります。
このような会社には厳正に対応すべきでしょう。
最後に、相手方に支払能力(資金)がなくなっていることがあり、その結果報酬未払いとなっていることがあります。
この場合には貸倒れ償却のために裁判などをして強制執行をする必要があります。
報酬の未払いに気づいたらすべき4ステップ
報酬の未払いに気づいたときには次の4つのステップで解決の道筋を考えましょう。
1. まずは自分に落ち度がないか確認
まずは自分に落ち度がないかを確認しましょう。
- 自分が請求書を発行していない
- 締め日(支払い日)を間違えている
- 納品した物が納品基準を満たしていない
自分に落ち度があるにもかかわらず相手に報酬の請求をすると、相手の心証を悪くする可能性が非常に高いです。
自分側に不備があった場合には、その不備について相手側に報告をして、なるべく早い入金をしてもらえるように交渉をしてみましょう。
2. 担当者に電話やメールで督促する
自分に落ち度がなく、相手の落ち度で報酬の未払い状態になっている場合は、まずは相手の業務担当者にやわらかな督促をしてみましょう。
例えば、経理担当者が支払いの処理漏れをしているだけで、仕事自体は続いているような場合には、相手の業務担当者とはずっと連絡を続けている状況です。
まずは業務担当者に電話・メールなど普段コミュニケーションを取っている方法で督促をしてみましょう。
このときに、直接担当している人の反応が薄いような場合には、請求書の処理の担当や、直接の業務担当者の上司にも認識できる形でメッセージを送ります。
メールの場合にはCC・BCCに相手の上司を入れることや、チャットツールをつかっているような場合にはそれらの人にメンションを入れるなどして気づいてもらうようにしましょう。
3. 内容証明郵便を発送する
自分に落ち度がなく、相手に落ち度があり報酬未払いが発生していながら、相手が支払いに応じない場合や相手からの反応がない場合には、内容証明郵便を発送して請求を行ないましょう。
内容証明郵便とは、どのような内容の郵便物を送ったか証明してもらえる郵便法に基づく郵送物で、本来は特定の期限までに何らかの意思の疎通を行うようなケースで利用されます。
書留扱いとなる為郵便局員から手渡しされ、裁判の前段階などに利用することがあります。
内容証明の文章は、
- 契約の内容
- 自身が行った業務の内容
- 報酬の金額
- 支払い期限に支払いがないこと
- いつまでに支払いもしくは回答をすること
- 期限までに支払い、回答がなければ法的手続きを利用すること
などを記載します。
内容証明郵便は、比較的大きな規模の郵便局でのみ出すことができるので、事前に確認しましょう。
また、内容証明は書式が決まっています。
郵便局に提出するときには書式がきちんと守られているか、訂正をする場合には訂正のルールが守られているか、など確認するようにしましょう。
なお、内容証明の作成のみを弁護士に依頼することも可能です。
4. 裁判所の支払督促や少額訴訟などを利用する
内容証明を送っても、支払いや支払いに向けての前向きな協議がない場合には、法的手続きを起こします。
法的手続きというと、民事訴訟が一般的で、報酬の額が140万円を超える場合には地方裁判所に、報酬の額が140万円以下の場合には簡易裁判所に訴訟を提起します。
報酬の額が60万円未満である場合には、少額訴訟という簡易な訴訟を利用できるほか、金銭債権であることから支払督促を簡易裁判所で行なう手続きの利用も可能です。
+α 公正取引委員会に相談する
業務委託の内容によっては下請法という法律の規定の対象になることがあります。
この場合下請法違反で行政指導を出してもらうため、下請法違反に対する監督官庁である、公正取引委員会に相談してみることも検討しましょう。
報酬未払いを起こさない為の予防策
以上のように、一度報酬未払いを起こすと、支払ってもらうためには面倒で長期間かかる手続きが発生します。
では、報酬未払いを起こさない為の予防策にはどのようなものがあるのでしょうか。
きちんと契約書を作成する
報酬未払いを起こさない為には、きちんと契約書を作成することです。
契約書は、どのようなことをすれば報酬を支払う義務があるのか、どのようなことがあれば報酬を支払わないことがあるのかなど、基本的な事項についてきちんと定めておきましょう。
契約書が作成されていれば、報酬が支払わなかったときにすぐに法的請求に移ることができますし、相手も「フリーランスだから…」と軽い気持ちで報酬の未払いや支払い遅れをしなくなることが期待できます。
どうしても立場上言いづらいときには、メールやチャットの中でこまめに条件をまとめるようにしましょう。
契約書を作成するときに注意したいのが、ネット上にあるテンプレートをそのまま使わないということです。
なぜなら、テンプレートは、自分に有利になっているどころか不利になっているということすら十分にありえます。
契約書を作成する際には、必ず弁護士に相談するようにしましょう。
請求に関するフローの漏れがないように気をつける
請求書の申請忘れや、クラウドソーシングサイトにおける請求処理など、請求に関するフローに漏れがないように気をつけるのは基本です。
相手企業の社会的信用度を確認しておく
相手企業の社会的信用度を確認することも忘れないようにしましょう。
クラウドソーシングサイトなどでは過去の取引に関するレビューが載っています。
支払いがなかったような場合には、低い点数とともにその旨についてのコメントが記載されていることがあるので、参考にしましょう。
サイトを経由せず直接取り引きする際には会社のレビューや、意外なところでは転職サイトの従業員のコメントなど参考にできるものは参考にするのが良いでしょう。
契約時に前金を支払ってもらう
契約時に前金を払ってもらったり業務の途中でお金を払ってもらったり等の交渉をしてみましょう。
クラウドソーシングサイトなどでは、サイトにお金を預けておく仮払いのような制度がありますが、直接契約をする場合にはこのような制度は少ないかと思います。
少しでもお金を払ってもらっておくことで、最後まで仕事をやってもらおうという意識を持ってもらうことが期待できます。
業務のやり取りを記録する
相手方との業務のやり取りを記録することも有効です。例えばメールやサイト内メッセージ、DMをスクリーンショットで保存・印刷するなどです。
このような証拠があれば、報酬の未払いが発生した際の相手方への交渉のカードとなりますし、弁護士への相談時や裁判に発展した場合にも証拠として提示することが可能です。
口約束のみの場合でも、録音までとはいかなくとも時系列等をメモしておくと良いでしょう。
気軽に弁護士相談できる環境を調えておく
気軽に弁護士に相談できる環境を調えておくことも重要です。
ビジネスをする上で弁護士に気軽に相談できる環境というと、顧問弁護士を雇うことですが、フリーランスのような小さな商売では、顧問弁護士のために毎月多額の金銭の支払いをするのは難しいと考えるかもしれません。
しかし、昨今では小規模なフリーランスが利用できるように、相談可能な時間を絞るかわりに少額で契約できるプランを出している弁護士もいます。
また、弁護士費用を軽減することができる事業型の弁護士保険も販売されているので、加入を検討するのも一つの手でしょう。
気軽に弁護士に相談できる環境にしておき、ポートフォリオやホームページなどで顧問弁護士がいることを掲示しておくことは効果的です。
まとめ
このページでは、フリーランスの報酬未払いについて、報酬未払いが起きる原因・対応方法・予防方法を中心にお伝えしました。
一つ一つの取引の金額が大きくないため、トラブルになった際に泣き寝入りを強いられることが多いフリーランスの報酬未払い問題ですが、少額訴訟のように金額が少ない場合でも簡単に終わらせられる場合があります。
また、フリーランス向けの低額な顧問弁護士プランを作っている弁護士も数多くいますので、契約することも検討しておきましょう。
あらかじめ弁護士保険などで、今後のリスクに備えておくことをおすすめします。
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