フリーランス保護法とは 概要や施行日、下請法との違い、内容などを徹底解説

昨今、「フリーランス」という働き方を選択する方が増えてきています。

講師やインストラクター、イラストレーターやカメラマン、配送・配達など様々な業種で、組織に所属するのではなく、1個人として活動する方をフリーランスと定義しています。

こうしたフリーランスの方々には、依頼者から納得できない行為を受けた、取引や業務条件、業務内容の提示がない、といったトラブル経験者が多くいらっしゃいます。

このようなトラブルを防止する目的で、フリーランス保護法が制定されることになりました。

そこで今回は、フリーランス保護法に注目し、概要や施行日、下請法との違い、内容などについて徹底解説します。

施行に向けて、業務発注者だけでなくフリーランスの方も知っておくべき内容となっていますので、ぜひ参考にしてください。

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目次

フリーランス保護法とは

弁護士

フリーランス保護法は、正式には「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)」といいます。

フリーランスが取引先との間で問題やトラブルを回避するための最低限のルールとして、令和4年4月28日可決、同年2月24日に公布されました。

フリーランスは個人で活動していることから、受注先となる組織(発注授業者)との間に、交渉力、情報収集力など、業務を行う上で格差が生じやすく、弱い立場に置かれやすいのが現状です。

こうした状況を打開すべく、取引の適正化や就業環境の整備などを目的として、フリーランス保護法が制定されることになりました。

フリーランス保護法と下請法の違い・関係性

フリーランス保護法と下請法は、規制の内容に一部共通点があるものの、その位置付けや具体的な規制内容には違いがあります。

下請法
独占禁止法の特則として、大企業と下請事業者間の取引を公正にするための規制を設けている

フリーランス保護法
独立した法規制であり、フリーランス(特定受託事業者)に対する保護を主な目的としている

フリーランス保護法では、取引条件の明示、募集情報の正確な表示、妊娠・出産・育児・介護に対する配慮、ハラスメントに関する規制など、フリーランス特有の問題に対処する規定が設けられています。

つまり、この2つの法律はフリーランスや下請事業者の保護を目的としつつ、その対象や具体的な保護措置における違いを持っています。

フリーランス保護法の施行日はいつから?

フリーランス保護法は、2024年2月時点の情報によると、2024年秋頃までに施行予定とされています。

施行に向けた具体的な内容、最新情報については、厚生労働省のホームページを参考にしてください。

厚労省:フリーランスとして業務を行う方・フリーランスの方に業務を委託する事業者の方等へ

フリーランス保護法の条文を紹介

フリーランス保護法は、個人や小規模法人が事業者として安定して業務に従事できる環境を整備することを目的としています(第一条)。

条文によると、「特定受託事業者」と「業務委託」の定義が明確にされており(第二条、第三条)、業務委託事業者には特定受託事業者への給付内容、報酬の額、支払期日等を明示する義務が課されています(第三条)。

弁護士

具体的には、業務委託事業者は特定受託事業者に対し、業務委託を行った際には、直ちにその内容を書面または電磁的方法で明示しなければなりません(第三条第一項)。

また、報酬の支払期日は、業務委託事業者が特定受託事業者の給付を受領した日から起算して60日以内と定められています(第四条)。

条文によると、業務委託における不適切な行為を禁止し(第五条)、特定受託事業者の募集情報の提供に関する規定(第十二条)、妊娠・出産・育児・介護に対する配慮(第十三条)、ハラスメント対策(第十四条)など、幅広い保護措置を設けています。

弁護士

これらの措置は、特定受託事業者が適正な条件下で業務に従事し、その権利を保護するためのものです。

違反した業務委託事業者には、公正取引委員会や厚生労働大臣から勧告や命令が出されることがあり(第八条、第九条)、これに従わない場合には罰則が科されます(第二十四条、第二十五条)。

いずれの条文内容についても詳しくは後述します。

このように、フリーランス保護法の条文を見ると、特定受託事業者の取引の公正性を確保し、健全な労働環境の提供を目指していることがわかります。

なお、詳細については、実際の条文を参考にしてください。

特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律

フリーランス保護法の保護・規制の対象

では、フリーランス保護法の保護や規制の対象について詳しくご説明します。

フリーランス保護法の保護対象

フリーランス保護法の保護対象とは、「特定受託事業者」となっています。

ここ言う特定受託事業者とは、「従業員を雇用していない個人事業主」だけでなく「代表以外に役員や従業員がいない法人」も指しています。

弁護士

理解しやすいようにフリーランスと表現されていますが、実際はフリーランスより保護対象が広い点に注意です。

フリーランス保護法の規制対象

フリーランス保護法の規制対象になっているのは、「特定業務委託事業者」です。

特定業務委託事業者とは、

  • 従業員がいる
  • 特定受託事業者に業務委託している
  • 製造や加工、プログラムやコンテンツ等の作成、サービスの提供のいずれかを委託している

という3つすべての条件を満たしている組織や事業者です。

フリーランス保護法の内容

フリーランス保護法には以下のとおり、特定受託事業者の取引の適正化の観点から3つ、就業環境の整備の観点から4つと、合計7つの内容が含まれています。

取引の適正化

  • 発注内容の明治の義務化
  • 30日以内または60日以内の報酬支払義務
  • 不当な報酬ややり直しの強制の禁止

就業環境の整備

  • 募集広告の明確な表示の義務化
  • 妊娠・出産・育児・介護などに関する配慮
  • ハラスメントの防止措置
  • 契約解除の予告に関する義務

発注内容の明示の義務化

特定業務委託業者は、フリーランスに対して業務委託した場合、直ぐに業務の内容・報酬額・支払期日・受託者・委託者の名称・業務委託日などについて、書面または電磁的方法(メールなど)により明示しなければなりません。

なお、明示できない正当な理由がある事項は省略可能です。

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ただし、あらためて内容が定められた場合は、直ぐにフリーランスに対して明示していかなければなりません。

30日以内または60日以内の報酬支払義務

特定業務委託者は、フリーランスから委託した品物を受領した日、またはサービスの提供を受けた日から60日以内(できる限り短い期間)に報酬を支払わなければなりません。

ただし、例外的に再委託の場合は、30日以内(できる限り短い期間)に定めることを認めています。

フリーランスが受注した内容が他の事業者(元委託者)からの委託業務(再委託)である場合は、元委託者から発注者への支払期日から30日以内(できる限り短い期間)に報酬を支払わなければなりません。

不当な報酬ややり直しの強制の禁止

特定業務委託者には、以下の7つが禁止事項として定められています。

  1. フリーランスに責任がないにも関わらず受領を拒否すること
  2. フリーランスに責任がないにも関わらず報酬を減額すること
  3. フリーランスに責任がないにも関わらず受領物を返品すること
  4. 通常より低い対価を報酬として定めること(買い叩きの禁止)
  5. 正当な理由なく業務外の商品の購入などを強制すること
  6. 協賛金や無償労働などを指示して不当に利益を害すること
  7. 不当な発注内容の変更や強制的にやり直しをさせること

募集広告の明確な表示の義務化

特定業務委託者は、フリーランスに対して募集広告を明確に表示しなければなりません。

募集広告における虚偽表示、誤解を与えるような表示は禁止され、募集広告は常に正確かつ最新の内容に保つことが義務付けられることになりました。

たとえば、

  • 実際に支払われる金額より高い金額を提示する
  • 報酬額の表示が一例であるにも関わらず確約されているかのように提示する

などは禁止されます。

妊娠・出産・育児・介護などに関する配慮

特定業務委託者は、継続的業務委託をしているフリーランスから、妊娠・出産・育児・介護に関する申出があった場合、業務と両立できるよう必要な配慮をしなければなりません。

ただし、必要な配慮については特定業務委託者側に強制されるものではなく、可能な範囲内で対応するよう求められていて、必ず実現しなければならないものではありません。

ハラスメントの防止措置

特定業務委託者は、ハラスメント(セクハラやパワハラ、マタハラなど)によってフリーランスの事業活動の中断や撤退が起きないよう、防止措置を講じなければなりません。

ここでいう防止措置とは、フリーランスからの相談対応のための体制整備、外部の相談機関を準備することなどが含まれます。

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また、フリーランスが相談を行ったこと等を理由として不利益な取り扱いをしてはならないとしています。

契約解除の予告に関する義務

特定業務委託者は、継続的業務委託をしているフリーランスに対し、中途解約したり、更新しなかったりする場合は、少なくとも30日前までに予告しなければなりません。

また、事前予告時から契約満了までの間に、フリーランスより契約解除の理由を求められた場合は、それに応じければなりません。

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なお、事前予告や理由開示に応じなくてもよい例外事由については、まだ定められていないため、今後確認が必要です。

フリーランス保護法に違反するとどうなる?

では、フリーランス保護法に違反する行為があった場合、どうなるのでしょうか?

違反行為を受けたフリーランスは、「フリーランス・トラブル110番」や今後設置される公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省の窓口に直接申告することができます。

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行政機関はフリーランスから報告を受けて、違反した業者に対して調査・立ち入り検査などの対応を取ることになっています。

フリーランス保護法の調査・立ち入り検査

フリーランスから違反行為の報告を受けた行政機関は、特定業務委託者に対し、調査・立ち入り検査を実施し、必要に応じて指導・助言・勧告を行います。

また、違反行為を報告したフリーランスに対し、特定業務委託者は契約解除や、今後取引を行わないといった不利益な扱いをすることは禁止されています。

フリーランス保護法に違反した場合

特定業務委託者がフリーランスの保護法に違反をした場合も、直ちに刑事罰の対象になるわけではありません。

しかし、行政機関からの命令に違反したときや、調査・立ち入り検査を拒んだときは、50万円以下の罰金に処されることが定められています。

フリーランス保護法の実施までに必要な対応は?

では、フリーランスに発注する側である特定業務委託者の立場である場合、フリーランス保護法の施行までにどういった対応をしておけばよいのでしょうか?

以下では、必要となる5つの対応をまとめてみました。

  • フリーランス保護法を用いる場合の契約の洗い出し
  • 契約内容を明確にする
  • 業務委託契約書のひな形を修正する
  • フリーランスに対するハラスメントの防止措置
  • フリーランス募集時の広告を見直す

フリーランス保護法の適用を受ける契約の洗い出し

まずは、フリーランス保護法を実地する契約の特定をしましょう。

フリーランスといっても、従業員を持たない個人事業主や、役員や従業員が代表者以外にいない少数の法人との業務委託契約も含まれるため注意が必要です。

委託内容を明示する

今後、適用対象の契約においては、法の施行後、受託者への委託内容を書面やメール等で明示することが求められることになります。

弁護士

フリーランスに対して委託内容を明確にし、またどのように明示するのか、あらかじめ検討しておきましょう。

業務委託契約書のひな形の修正

フリーランス保護法では、報酬の支払期日に関する規制が設定されているため、支払条件を法の基準に合わせなければなりません。

内容次第では、契約書を修正しなければなりません。

また、継続的な業務委託契約の解約予告期間や更新しない場合の予告をする期間の見直しも求められるため、普段使いされている業務委託契約書のひな形を修正する必要があります。

フリーランスに対するハラスメント防止措置

フリーランスに対するハラスメント防止措置として、相談対応のための体制を整えなければなりません。

また、もともと企業で実施しているハラスメントへの措置をフリーランスにまで拡大するなど、必要な対応策を取りましょう。

フリーランス募集時の広告の見直し

フリーランスを募集する際は、広告内容に特に注意しなければなりません。

虚偽表示や誤解を与えるような表示は廃除し、事実に基づいた正確かつ、最新の情報を掲載しましょう。

まとめ

フリーランス保護法は、フリーランスと事業者間の取引を適正化し、フリーランスの労働環境を改善することを目的とした法律です。

この法律によって、フリーランスは適正な業務を行えるようになる反面、事業者側に様々な規制が設けられることになります。

今後、フリーランスと取引を予定している事業者は、2024年秋頃の施行に向け、フリーランス保護法への対応が求められます。

不安がある事業者は弁護士に相談するなどし、フリーランスとトラブルが起きないよう準備しておかねばなりません。

あらかじめ弁護士保険などで、今後の様々なリスクに備えておくことをおすすめします。

弁護士

畝岡 遼太郎 弁護士

大阪弁護士会所属

 

西村隆志法律事務所

大阪市北区西天満2丁目6番8号 堂島ビルヂング501号
TEL:06-6367-5454

ひとりひとりに真摯に向き合い、事件解決に向け取り組んでます。気軽にご相談が聞けて、迅速に対応できる弁護士であり続けたいと考えております。 

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