「自分で生み出した作品が、無断で盗用されてしまう」
このような理不尽なことが起こってしまったら、どう行動すべきでしょうか。
今回の記事は、自分のアイデアで作成したイラストやデザインを守るために知っておきたい知的財産権について分かりやすく説明していきます。
「弁護士に相談なんて大げさな・・・」という時代は終わりました!
経営者・個人事業主の方へ
知的財産権とは?
時間もお金も労力もかけて作り出した創作物の権利や利益は、どのように守ったらいいのでしょうか?
デザインやイラストレーションの世界では、自分の創造物を守るために「知的財産権」というものが存在します。
では、その「知的財産権」とはどういったものなのか?見ていきましょう。
知的財産権とは
創作活動から生まれる作品や発明などの無形の資産(形を持たない資産のこと)を保護する法律の総称を「知的財産権」といいます。
「知的創造物についての権利(特許権や著作権)」は創作意欲の促進を目的としており、「営業上の標識についての権利(商標権など)」は商号などの使用者の信用維持を目的としています。
つまり、分かりやすく言うと知的財産権とは、「創造的な作品やアイデアを保護するため」の法的な権利です。
これには、「特許権」や「著作権」が含まれます。
この権利は、人々が新しい作品や発明を生み出すことを奨励するために存在しています。
一方「商標権」のような権利は、消費者である我々が「このマークはあの企業のものだ」「このブランドマークがあれば安心」といった、企業や製品を識別し信頼できるように、商号やブランドの独占的使用を保護しています。
- 著作権
文学・音楽・美術などの創作物を保護。作品の公表や複製、改変などの利用を防ぐ。 - 商標権
ブランド名やロゴなど、商品やサービスを識別するための記号に関する権利。 - 特許権
新しい技術や発明に関する権利。他人が同じ技術を使用することを制限。 - 実用新案権
製品の形状や構造など具体的な技術的アイデアに関する権利。 - 意匠権
製品のデザインに対する権利(物品・建造物・画像)
知的財産の特徴
知的財産は、「物」とは異なり「*財産的価値を有する情報」であることがあげられます。
その情報は、簡単に模倣されてしまうという特徴をもっていて、多くの方達が同時に利用することができてしまいます。
こうした特徴から、創作者の権利を保護するために知的財産権の権利(制度)が生まれました。
*財産的価値を有する情報とは…人間の知的活動によって生み出されたアイデアや創作物など
「知的財産権」と「著作権」の違いは?
知的財産権と著作権は別の権利なのですか?
「知的財産権」という大きなくくりの中に「著作権」がある、というイメージです。
「著作権侵害」という言葉は、よく耳にするかと思います。
特に創作活動をされている方はこの言葉に敏感なのではないでしょうか?
では、「知的財産権」と「著作権」の違いとはどういったものなのでしょうか?
知的財産権は創造的な活動から生まれる、様々な成果物(作ったもの・創作物)を保護するための幅広い権利の総称です。
その中の一つが著作権です。
著作権は具体的に文学作品や芸術作品などの創作物に対する保護を指しているので、自身で作品を作成した場合はその作品には作者自身の著作権が発生します。
~例:企業や個人などからイラスト作成を依頼された場合~
- イラスト作成
- 依頼主に納品
- 依頼主がそのイラストを商業利用開始
この場合、「1.イラスト作成」の時点で、作者に著作権が発生することになります。
知的財産権が侵害された場合の対応策
知的財産が侵害されたときはどうすればいいのでしょうか?
一般的には「差止請求」「損害賠償請求」「刑事告訴」の3つの方法があります。
どのように進めていくのか?順番に確認していきましょう。
まず自分の作品と比較し、侵害された部分が著作権などの権利が適用されるか検討します。
侵害(模倣・コピー等)されていることが確認できたら、その作品のスクリーンショットや販売されていたならその記録などの、侵害行為を証明できる資料を集めます。
集めた証拠を元に、以下のような対処をしていくことになります。
- 弁護士などを通じて相手側に販売停止またはSNS等へUPされていた場合はその取り下げ要求など、侵害行為の即時中止を求めて警告状を送ります。
- 相手側との間で交渉が決裂した際には、裁判所への差止請求や損害賠償請求に移行していきます。
- ①②のステップで解決しない場合は、刑事事件として警察に訴えることになります。
②の「差止請求」とは、知的財産権の侵害行為をやめるように裁判所から相手に対して通告してもらう手続きのことです。
差止請求をするということは、知的財産権の侵害をやめさせることに加え対象物の廃棄も請求できるということになります。
- 侵害行為をする者に対するその行為の停止の請求
- 侵害の恐れのある行為をする者に対する侵害の予防の請求
- 侵害行為を組成した物の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の予防に必要な措置の請求
ただし、正式な差止請求をするには時間がかかってしまうことも考慮しなくてはなりません。
一刻も早く侵害を止めたい場合には、まずは仮処分命令を申し立てることがよく行われます。
通常の訴訟では結論が出るまでに1年以上かかってしまいますが、仮処分命令であれば数週間から3か月程度で結論が出る場合もあります。
仮処分命令の申立てのルール
- 保全すべき権利や権利関係があること
- 保全の必要性があること
上記の2点がいずれも満たされている必要があります。
迅速な対応が必要なケースでは、あらかじめ弁護士へ相談することをおすすめします。
知的財産の侵害を防ぐためにはどうすればいいのか?
知的財産権争いが解決するまでとても時間がかかりました…。
いろいろな手続きや労力もかかり、とても大変でした…。
知的財産権が侵害される前に、事前に予防することも大事です。
何より、侵害された側のクリエイターが疲弊し、創作意欲の減退・作品依頼を受ける意欲がなくなってしまうことをまず優先的に避けなければなりません。
特許の出願や商標の登録を適切に行う
知的財産は実体のない財産です。
あってはならないことですが、第三者によって簡単に模倣されたり、アイデアを盗まれたり、侵害されやすい財産といえます。
この知的財産を守るための権利が「知的財産権」になりますので、可能であれば自分の作品(権利)を公式に登録しておくことが重要です。
クリエイターにとって、とても大切で重要な問題ですので、専門家と連携を取り自分の創作活動を守っていきましょう。
権利侵害があった場合はスピーディーに対応
先にも述べましたが、まずは弁護士へ相談することです。
仮に、権利侵害されたまま長期間放置してしまうと、以下の点で不利益を被る可能性があります。
本来なら得られていたはずの利益が失われる可能性
権利を侵害されている状態が続くと、その期間得られていたはずの経済的利益が相手方に収奪されてしまいます。
自分が正当な知的財産権の持ち主であることの証明が難しくなる可能性
模倣された作品等が、何の手段も講じることなくそのまま長期間世に出回ってしまうと、そもそもの著作者が誰であったかの判別が難しくなってしまいます。
さらには、模倣した相手方から逆に「知的財産権の侵害である」と訴えられてしまう可能性も考えられます。
このような事態に陥る前に、知的財産権が侵害されていることに気付いたら、できるだけ早期に知的財産権に詳しい弁護士へご相談いただくことをおすすめします。
著作権・商標権について
改めて「著作権」・「商標権」について確認しておきたいです。
簡単に説明すると、
著作権は、自動的に発生するもので著作権登録することにより法律上での効果が生まれるもの、
商標権は、ロゴ等を商標登録することで使用権を保護することができる、
という、どちらも法制度上の権利です。
【著作権】
著作権とは、著作物を創作した時点で自動的に発生します。
その権利の取得には、何の手続も必要とはしません。
原稿のままの未発表作品でも保護されます。
原則として、他人が未発表の作品を著作者に無断で公表することはできません。
では、なぜ著作権の登録制度というものがあるのでしょうか?
著作者以外の者が著作者の同意なく未公表の著作物を公表すると、「公表権侵害の責任」を負います。
→公表権侵害の責任とは、個人や団体が未公開の作品を許可なく公開した場合に生じる法的責任
ただし、著作者が著作権を譲渡した場合や美術や写真の著作物の原作品を譲渡した場合は、著作物の公表に同意したものと推定されます。
著作権の登録制度は、「著作権関係の法律事実を公示する」あるいは「著作権が移転した場合」の取引の安全を確保するために存在します。
登録をした結果、法律上一定の効果が生まれます。
ただし、プログラムの著作物を除くその他の著作物については、創作しただけでは登録はできません。
著作物を公表または、著作権を譲渡した等の事実があった場合にのみ、登録が可能となります。
【商標権】
よく目にする、ロゴマークなど特定の商品やサービスを提供する際に使用される商標に対して、その使用権を保護する法的な権利のことです。
商標権を登録することで、独占的に使用する権利を得ることができます。
また、他者が同一または類似している商標を無断で使用することを防ぐことができます。
出願日から2~3週間程度経過後、出願内容が一般に公開されます。(出願公開)
出願された後に、商標審査官による審査が行われ、審査を通過したもの(登録できない理由がなかったもの)のみが商標登録を受けることができます。
出願や登録(更新)等する際に、所定の料金の納付が必要になります。
利用許諾契約について
利用許諾契約(ライセンス契約)とは、著作権や特許、意匠、商標などの知的財産権を保護されている対象を、一定の条件で第三者に利用させることを許諾(正式な許可)する契約です。
得意先や他社に自分が作成した作品を納品する、もしくは外部委託して作成してもらった作品を利用する場合は、契約書によって利用範囲や条件を明確にしておく必要があります。
例えば、下記の事例の場合などはよくあるパターンだと思いますので、参考にしてください。
得意先から「HPに載せているイラストをカラー化したいので、イラストを2色からカラーに変更して欲しい」との依頼があった。
また、カラーに変更したのち、広報用のチラシにも使用したいとのこと。
外部のイラストレーターに委託作成してもらったイラストを、自由に色を変更してもいいのかな?
この点、以下4つについて確認する必要があります。
- イラストレーター(著作者)に、制作委託したイラストの使用範囲や著作権の取扱いに関する取り決め事項等について、確認をする必要がある
- 著作者からイラストの著作権が自社に譲渡されている場合、チラシに掲載することには問題はない
- イラストに彩色することは「著作物の改変」になるため、「著作者人格権を行使しない」との取り決めが両者になければ、著作権法に違反する可能性がある
- 使用範囲がHPに限定されており、広告やチラシへの掲載や他誌への転載等が入っていない場合は、契約違反になる
この事例で分かることは、著作者(イラストレーター)から自社や得意先が警告を受けたり、チラシ配布の差止めや損害賠償を請求されたりなどのおそれがあるということです。
イラスト納品先のA社が、権利を侵害してしまっていることに気が付かないこともありますので、契約内容はしっかりと確認をしましょう。
知的財産を侵害してしまった場合はどうなる?
知的財産権を侵害した場合どのような罰があるのでしょうか?
罪を犯したのが法人の場合、特に重い刑罰となります。
知的財産権侵害の刑事罰
知的財産権の侵害は、特許法や著作権法などにより刑事罰の対象となります。
知的財産権を無視して、無断で創作や商標などを利用し作成されたものは、模倣品・海賊版と言われるものです。
模倣品・海賊版を作成する行為、無断で創作や商標などを利用する行為は権利侵害にあたります。
このような権利侵害に対しては、創作や商標などの利用禁止や損害賠償を求められ、決して許される行為ではありません。
また、知的財産権の侵害が相手方の故意や過失によって行われ、かつその行為により損害が出た場合は、民法第709条に規定された損害賠償の請求を行えます。
差止請求と比べた場合、損失を補填できる点が最大のメリットと言えますが、訴訟を起こすための費用と、解決するまでの長い期間を要することは覚悟しておかなければなりません。
権利侵害が起こる前に、事業主用の弁護士保険に加入されることも検討されることをおすすめします。
知的財産権を侵害してしまった場合の対応策
では、故意ではなく知的財産権を侵害してしまい、警告状が自身の元へ届いてしまった場合はどのように対応すればよいのでしょうか?
無自覚に、たとえ悪意なく知的財産を侵害してしまった場合でも、やはり法的な責任が発生する可能性があります。
まずは下記に上げた適切な対応策をとりましょう。
まずは自身の行為が、実際に知的財産権を侵害しているかどうかを確認します。
自分では判断が難しい場合は、専門家や弁護士に相談して権利侵害の有無や範囲を確認しましょう。
侵害が確認された場合は、直ちにその行為を停止します。
停止内容は、製品の製造・販売停止や広告の取り下げ、関連するSNSコンテンツの削除などが含まれます。
できれば専門家や弁護士を通じて、権利者に対して侵害があったことを認め、謝罪をし、同時に解決策について話し合う意向を示します。
悪意がなかった点を強調し、できるだけ円滑に問題解決を図ることが重要です。
権利者との間で損害賠償の支払いやライセンス契約の締結などが必要な場合はそちらについても話し合い、双方にとってより良い解決策を見つけます。
和解案が出された場合は、その条件をよく理解し合意します。
迅速に手順を踏んでいくには、専門的な法的アドバイスを受けることが重要となってきます。
専門家や弁護士にアドバイスを求めることをおすすめします。
まとめ
個人で活動されているクリエイターの方にとって、とても重要な知的財産権について説明させていただきました。
~大切なこと~
- 専門家の方に相談しながら自分の権利を守る
- もし、権利を侵害されてしまった場合は証拠を残して弁護士に相談
- 侵害行為を停止するように、書面(内容証明郵便)で相手方に警告
- 警告をしても無視をされてしまった場合損害賠償請求をする
- 知的財産権の侵害を悪意なく行った場合でも、責任を回避することは難しいため速やかに適切な措置をとることが必要
昨今、自身が気付かない内に作品を盗作されていたり、また学習機能AIによって勝手に学習されてしまっていたりと、自分一人の力ではどうにもならないことが頻発している業界でもあります。
この記事が少しでもクリエイターの方、個人事業主で活動されている方のお役に立ち、今後もより良い創作活動の一助になれれば幸いです。
また、弁護士保険でトラブルの予防していただくこともオススメします。
東 拓治 弁護士
福岡県弁護士会所属
あずま綜合法律事務所
福岡県福岡市中央区赤坂1丁目16番13号上ノ橋ビル3階
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【弁護士活動20年】
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