Aさんは普段はバスで通勤していますが、今朝がた交通事故があったらしく、道路が大渋滞しています。
このままでは遅刻すると思って、自転車を使い会社に向かいました。
ところがその途中で不注意で転倒してケガをしてしまいました。
病院での診察で全治2週間と診断され、会社も当分の間休むことにしました。
通勤災害だから労災になるのではないかと思って、会社に相談しました。
ところが、断られてしまいました。
「会社に届け出た通勤経路にはバス通勤と書いてある。自転車通勤は認めていない。」
「自転車でスピードを出しすぎて転んだんだろう。君の不注意だ。」
「治療は健康保険で受けることができるだろう。今回の2週間の休みも有給休暇を使えばいいだろう。」
このように言われ、Aさんは釈然としません。
いっそ自分で労災の申請をしてみようか、と考えています。
このような A さんのために、労災とはそもそも何なのか、どんな給付を受けることができるのか、労災申請は自分でも簡単にできるのか、困ったときの相談窓口等、大事なポイントをまとめました。
ぜひ、この記事で、労災の全体のイメージをつかんでください。
注:労災の正確な用語としては「申請」でなく「請求」といいます。
記事に入る前に・・・
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労災(労働災害)とは
労災の意味や、どんな場合に給付が受けられるのかを解説します。
なぜ労災保険があるのか。その目的は?
労災保険は、労働者が仕事上や通勤の途中で、ケガや病気、死亡した時などに、国が事業主に代わって必要な補償などを行う公的な保険制度です。
本来はこのような労働災害については、会社が治療費を払ったり、休業中の賃金の一定の割合を支払う義務があります(労働基準法第75条、76条)。
しかし、会社に支払能力がなかったり、大きな事故などで会社だけでは支払いが難しくなることもあります。
そのため、会社(事業主)が保険料を負担し、国が労災についての補償などを行う「労働者災害補償保険(労災保険)」という仕組みが作られています。
全国の会社がお互いに保険料を出し合い、労働者が労災事故にあったときに助け合う仕組みであり、これにより、労働者は、安心して仕事をすることができます。
もともとは業務上の災害の補償を目的としていましたが、労働者の通勤中の事故についても給付を行うようになりました。労働するために会社へ向かうのですから、その通勤途中の事故についても、労働者を保護する必要があるからです。
業務災害と通勤災害(まとめて労働災害といいます)について、労災保険の給付が行われるためには、労働基準監督署長(労基署長)が労働災害と認めることが必要です。そのための要件はおおむね次項の通りです。
業務災害 2つの要件
業務上のケガや病気、死亡事故などに対して補償するものです。
業務災害と認められるためには次の2つの要件を満たす必要があります。
①業務遂行性
労働者が労働契約に基づく業務の上で発生したケガや病気などであること。すなわち「労働者が労働契約に基づき事業主の支配下にある状態」で発生したものであることです。
従って、実際の作業のときだけでなく、仕事の準備をしているときや後片付けのとき、出張中の事故なども業務遂行性のうちに含まれます。
特に出張中については、往復の移動中や宿泊中などの職務を遂行していない時間も、業務上の都合により、その場所にいる必要があった、ということで業務遂行性が広く認められています。
出張中のホテルで酔って階段から転倒し死亡した事案でも裁判所が業務遂行性を認めたものがあります。
②業務起因性
業務に起因してケガや病気などになったことです。
例えば、本人が喧嘩をしたり、勝手に飲み会で飲みすぎたりという本人の勝手な行為などによる事故は業務に起因するものではないとされ、業務災害とは認められません。
なお、ケガの場合は業務に起因することが把握しやすいのですが、病気(疾病)の場合は業務に起因するのか日常生活など別の原因によるのか判断が難しいことがあります。
厚生労働省では、労災保険の補償対象となる疾病を「職業病リスト」として定めています。
その内容は必要に応じて見直されています(最近の例では石綿(アスベスト)関連疾患など)。
【参考】職業病リスト
通勤災害の要件(合理的な経路と方法)
通勤途中でのケガ、病気、死亡事故などです。 「通勤」とは、労働者が就業のために住居と就業場所との間を往復することや、 単身赴任の人が帰省先の住居から赴任先の住居に移動することなどを指します。
通勤災害と認められるには、合理的な経路及び方法により行うことが必要です。
通常の経路・手段だけでなく、合理的な代替経路手段も含まれます。
冒頭のAさんの場合、普段のバス通勤でなく、交通事情からやむなく自転車通勤に切り替えたのも、これに該当すると思われます。
その他の例として、通勤の途中でのお子さんの保育園への送り迎えは合理的な経路・手段とされます。通勤途中で日用品を買うためにコンビニに寄るのは「合理的な経路から外れた」とされますが、その後合理的な経路に戻った後で事故に遭えば、通勤災害と認められます。
労働者の過失の有無を問わない
業務災害・通勤災害のいずれも、労働者の過失があっても全額の給付が受けられます。
業務であれ通勤であれ、労働者はリスクを負って対応しているのです。
「過失があれば給付をケチる」といった対応では、働く人の士気を損ないます。
そもそも会社がリスクを労働者だけに押し付けて、儲けだけ得るのはおかしい、と考えるべきです。
Aさんの場合、不注意での転倒でも通勤災害として全額の給付が行われます。
ただし、労働者が故意に事故を起こした、または、重大な過失があった場合は、給付されない場合や減額される場合はあります。
労災の認定は会社ではなく労基署長が行う
労基署長(労働基準監督署長)が労災かどうかを認定します。
つまり、会社が「労災ではない」と決めることはできません。
仮に会社が労災ではないと言い張っても、労働者が自分で労災の申請をすることもできます。(後述で解説)
なお、会社が、労災が発生時に労基署に報告書を提出しないとか、虚偽の報告をした場合は会社に刑事罰が科されることがあります。
いわゆる「労災隠し」として厚生労働省が厳しく注意喚起しています。
労災の給付の概要
労災保険の給付は、健康保険と比較して、とても充実したものです。
会社のいうように「健康保険でやっておけ!」では、手厚い給付を受けられません。
業務災害と通勤災害とでは言葉の違いがあります。
業務災害なら「休業補償給付」、通勤災害なら「休業給付」と言います。(「補償」という字の有無の違い)
以下では主な給付の内容について、補償という字を特に入れずに説明します。
①療養給付
ケガや病気で働けないときは無料で療養を受けられます。
健康保険のような3割の自己負担はありません。
②休業給付
ケガや病気で働けず賃金を得られないときには、休業4日目から概ね月給の80%の給付を受けられます(休業3日目までは会社が給付の責任を持っています)。
前述の A さんは、有休を取る必要はなく、治療に専念しつつ休業給付をもらえます。
なお健康保険でも似たような制度として、労働災害以外の傷病で休んだ場合の「傷病手当金」があります。
しかし、これは最長でも1年半までしか給付されません。労災の休業給付には期間の制限はありません。
もっとも、休業開始から3年たっても復帰できないような場合には、会社から打切補償をはらって労働者を解雇することが認められています。
ただし、これはあくまで労働契約の解約の定めです。
休業補償に限らず労災の給付は労働者の退職によって打ち切られることはありません。
労災によって働けなくなったのですから、退職すれば打ち切るというのでは、被災した労働者の「迅速かつ公正な保護」という労災保険の目的が果たされないからです。
③傷病年金
ケガや病気が療養後1年6ヶ月たっても治らず、重い状態が続くときに年金などがもらえます。
④障害給付
ケガや病気が一応治っても一定の障害が残ったときに、その状況により年金または一時金がもらえます。
給付水準は、③④とも大変重い症状のときにはボーナス込みの年収に近いこともあります。
年金のほかに特別の一時金をもらえることもあります。
遺族給付
ケガや病気のために労働者が亡くなったときに、その状況によりご遺族は年金または一時金をもらえます。
給付の水準は、状況次第で③④に近いものになることもあります。
このような、傷病、障害や遺族まで含めた手厚い給付は健康保険にはないものです。
労災の申請(請求)の手続き
会社が労災の手続きを嫌がる、というときに、労働者 Aさんは自分で労災給付の請求ができるのでしょうか。
もちろん可能です。
むしろ、労働者が自ら請求するのが本来の原則なのです。
まず代表的な例として療養給付と休業給付の手続きの概要をご説明します。
その上で、会社が協力してくれないときの対応などの注意点を説明します。
労災の申請(請求)手続きの概要
被災した労働者(死亡事故の場合はそのご遺族)が所定の保険給付請求書を作成して労基署に提出します。
会社はこれらの書類に証明を行うことになっています。
なお、労災の用紙には沢山の種類があります。よほど慣れた人でもない限り、実際には労基署に行って事情を話して、相談の上でふさわしい用紙をもらってくるのが適切でしょう。
なお、療養給付については、「療養(補償)給付請求書」を病院や薬局などを通じて労働局に請求する場合や、病院に証明してもらって自身で労基署に請求する場合があります。
実際には、これらの請求書を作るのはかなり煩雑なので、被災労働者や遺族に代わって会社が作成することが普通に行われています。
実際の書式は次からダウンロードできますので、イメージを把握できるでしょう。
ただし、実際の手続きに当たっては、労基署でふさわしい用紙をもらってくるのが適切でしょう。
労基署への請求手続は無料です。
①療養の給付について
労災保険指定医療機関ですと、治療費はかからず無料で受けることが可能です。
指定医療機関以外で治療を受けることも可能ですが、一度費用を立て替える必要があります。
後日、療養の費用全額を労災保険から支払ってもらう、という流れになります。
最寄りの労災保険指定医療機関については、次のリンクで検索できます。
指定医療機関で治療を受ける方が手続きも簡単なので、最寄りの機関があるか一度検索してみてください。
労災保険指定医療機関検索
(例1)療養の給付請求書
指定医療機関で治療を受けたときの請求書です。
- いつどのような事故が起きたのか
- どこの病院などでどのような治療を受けたのか
- 傷病の部位や状態はどうか
といったことを記載します。
会社は「上記の通り間違いありません。」という証明欄に記入し捺印します。
その上で、指定医療機関を通じて労働局に提出されます。
なお、業務災害用と通勤災害用とでは用紙が異なります。
(例2)療養の費用請求書
指定医療機関以外で治療を受けた場合には、治療費全額をいったん支払った上で、後日、労災の認定が得られればその費用全額を給付してもらえます。
これにより自己負担は一切なくなります。
そのための請求書です。
労災の支払基準は基本的には健康保険の点数制に準じています。
健康保険でカバーされない自由診療枠の治療などは、労災認定を受けても全額返ってこないこともあります。
治療の前に、医師に労災でカバーされる治療内容かどうか確認しておくことが大切です。
療養の内訳や金額など詳しい内容を記入し、領収証その他の費用の明細書などを添付する必要があります。
会社が証明欄に記入捺印することは、療養の給付と同じです。
ただし、医療機関などに療養の内容の証明欄に記入してもらい、また療養費用を記載する必要があります。
この用紙は、業務災害用、通勤災害用というだけでなく、それぞれについて医院以外に、
- 薬局
- 柔道整復
- はり
- きゅう
- 訪問看護
などの種類があります。
療養の給付の内容・手続や請求書の記載例などは次のリンク先の資料を参照してください。
【参考】厚生労働省「療養(補償)給付の請求手続」
②休業給付について
業務災害は「休業補償給付請求書」、通勤災害は「休業給付請求書」に事業主から休業についての証明をもらい、医療機関等から療養の期間や経過などの状況についての証明を受け取り、労基署に提出します。
給付の内容・手続や請求書の記載例などは次のリンク先の資料を参照してください。
なお、この資料では、ケガや病気で療養後1年6ヶ月たっても治らず、一定の状態が続くときの傷病(補償)年金についてもあわせて解説されています。
傷病(補償)年金については、傷病の状況を見て労基署長が職権で認定するので、請求手続は不要です。
③その他の給付について
それぞれの給付ごとに解説の資料が用意されています。
一覧表のうち代表的なものを以下に掲載しています(療養給付、休業給付も再掲)。
以下のリンクからダウンロード可能です。
労災申請(請求)の4つのポイント
1. 会社が労災請求の証明をしてくれないときの対応
会社が証明をしてくれない場合は、労働者自身が手続をすれば労基署で受け付けてくれます。
その上で、労基署が会社に事情を聴取するなどで労働災害かどうかを認定してくれます。
この点は厚生労働省の次のパンフレットで明記されています。
2. 労災の請求の時効
労災と気がつかずに長い時間を経過してしまうと、労災給付の請求権が時効で消滅してしまいます。
会社から「そんなものは労災ではない。」また「健康保険でやっておけ。」などと言われて泣き寝入りしていると、時効で権利が消滅しかねません。
会社が協力してくれない場合には、労働者が自分で労基署への請求を検討すべきでしょう。
3. 労基署で労災認定されなかったときの対処法
労基署で労災認定がされないとか、認定内容に疑問があれば、審査請求などができます。
①都道府県の「労働者災害補償保険審査官」への審査請求
当該労基署を管轄する都道府県の「労働者災害補償保険審査官」(「審査官」)に審査請求ができます。
審査請求の期限は、労基署長の決定を知った日の翌日から3か月以内です。
②厚生労働省の「労働保険審査会」への再審査請求
前述①の審査官への審査請求の決定に不服があれば、厚生労働省の労働保険審査会に再審査請求ができます。
③行政訴訟(原処分の取消訴訟)
上記①、②の決定に不服があれば、行政訴訟で原処分(労災不認定処分)取消しを求めることができます。
4. 会社への損害賠償請求
労災について本来は会社が賠償すべきところを、労災保険でカバーしているものです。
労災保険の給付は迅速な対応などを目的としているため、給付の内容が定型的固定的なものになっています。
労災保険でカバーできない精神的な損害の慰謝料そのほかの損害については、会社を相手として民事訴訟で争うことも可能です(「労災民訴」)。
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困ったときの相談窓口
困ったときの相談窓口をまとめてみました。
なお、公的機関に相談したり、労働者自身が労災請求をしたりした場合、会社が労働者に解雇・降格・減給など不利益処分をすることは法律で禁止されています(労働基準法第104条2項、公益通報者保護法など)。
労働基準監督署
会社が労災請求に協力してくれない時には、労基署に相談してみましょう。
そのアドバイスも得ながら、請求書を提出してみるべきでしょう。
【参考】 全国労働基準監督署の所在案内(全国に320ヶ所以上あります。)
都道府県労働局「総合労働相談コーナー」
はじめから労基署に行くのは敷居が高いと感じる場合には、総合労働相談コーナーに相談することも一つの手です。
あらゆる労働相談を幅広く受けてくれる窓口です。労基署への取り次ぎもしてくれます。
【参考】 総合労働相談コーナー
弁護士・社会保険労務士などの専門士業者
人事労務関係に詳しい弁護士への相談も一つの選択肢です。
会社との紛争が想定される場合には、弁護士のアドバイスを受けておくことをお薦めします。
また社会保険労務士は、人事労務関係の専門家です。
労災請求などの手続きの際には相談に行くとよいでしょう。
あらかじめ、弁護士保険でトラブルの予防をするのはいかがでしょうか。
玉上 信明(たまがみ のぶあき)
社会保険労務士
健康経営エキスパートアドバイザー
紙芝居型講師(登録商標第6056112号)
日本紙芝居型講師協会(登録商標第6056113号)
日本公認不正検査士協会アソシエイト会員
弁護士 松本隆
神奈川県 弁護士会所属
横浜二幸法律事務所
所在地 神奈川県横浜市中区山下町70土居ビル4階
TEL 045-651-5115
労働紛争・離婚問題を中心に、相続・交通事故などの家事事件から少年の事件を含む刑事事件まで幅広く事件を扱う
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