【男性の育休】 父親の役割を果たすのに役立つ4つのポイント

育児休業取得率

女性の取得率は 82%
男性の取得率は  6%

男性の育児休業の利用希望があるにもかかわらず「取得ができなかった人」は 35%

                                         *2018年度の厚生労働省

男性の取得率は6%と、上昇傾向にあるもののまだまだ低いといえます。男性が育児休業を利用できない理由として、次のようなことが挙げられています。

「職場が育児休業を取得しづらい雰囲気」

「職場の人手不足」

「今後のキャリア形成に悪影響がありそう」

今回の記事では、育児休業を積極的に取りたいと考えている男性に向けて、「育児休業制度についての概要」「パタニティー・ハラスメント*(パタハラ)を受けたときの対処法」について解説いたします。

* パタニティー・ハラスメント・・・ 育児休暇や育児のための時短を申し出る男性に対するいやがらせ

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目次

育児休業は男女平等、全国共通、非正規でも取得できる

育児休業は育児・介護休業法という法律で定められた制度です。制度の特色をはじめに確認しましょう。

育児休業は男女平等

育児休業は男性・女性を問わず(パパ・ママを問わず)、原則として1歳になるまでの子どもを育てる従業員なら取得することができます。

もちろん、配偶者が専業主婦でも共働きでも関係なく取得可能ですし、妻が働いていて、夫が専業主夫の場合も、妻自身が育児休業を取得する事ができます。

育児休業は全国共通

育児休業制度は育児・介護休業法という法律で定められた全国共通の制度(強行法規)です。

会社の就業規則に記載があるかどうかは関係ありません。

例えば、「我社では就業規則で男性の育児休業は認めていない」等といっても、従業員が会社に申し出れば取得できます。

仕事が忙しいとか余人をもって代えがたい、というのも理由になりません。(育児・介護休業法第6条)

育休が取得できないケース

育児休業制度は、「日々雇用される者」、「期間を定めて雇用される者」を原則として適用除外としています。

また、新入社員などを労使協定で適用除外とすることもできる、とされています。(育児・介護休業法第2条、5条、6条)

ただしこの要件には様々な例外があり、正確に理解しておく必要があります。

① 日々雇用される者

育児休業の対象外とされています。

② 非正規社員(契約社員・嘱託社員・パートなど有期雇用契約の方、派遣社員)

「非正規社員には育児休業がない」と単純に思い込まないでください。

育児休業申し出の時点で、下記2つの要件を両方満たせば育児休業をとることができます

実質的には長期雇用に近いので「育児休業の必要性がある」という趣旨です。

育休を取得した上で職場復帰してもらうのが望ましい人だ、と考えても良いでしょう。

【要件1】 
同一の事業主に引き続き1年以上雇用されていること

【要件2】 
子が1歳6か月に達する日までに、労働契約(更新される場合には、更新後の契約)の期間が満了することが明らかでないこと

要件2について、少しわかりにくいかと思いますが、次のように考えてください。

「子どもが1歳6ヶ月に達する日までに労働契約が満了してしまいますか。
さらに、更新されないことがはっきりしていますか?」

要するに子どもが1歳6ヶ月に達する日までに確実に労働契約が終了してしまうなら、育児休業の対象にはしない、ということです。

「労働契約が存続する見込みがあるのならば育児休業を取得できる」と理解すれば良いでしょう。

③ 労使協定に定めがあれば育児休業の対象外になってしまう

以下の人は、労使協定で規定されている場合、育児休業の対象外となってしまいます。

逆に、労使協定がなければ会社は育児休業の申し出を拒否できません(育児・介護休業法第6条)。

その1: 1週間の所定労働日数が2日以内の人
その2: 入社1年未満の人
その3: 休業申し出から1年以内(1歳から1歳6か月までの育児休業をする場合には、6か月以内)に雇用関係が終了することが明らかな人

育児休業制度についての概要

以上は、育児休業の特徴的な点を先に説明したものです。

ここでは育児休業制度のあらましを確認しておきましょう。

対象者

育児休業を取れるのは、原則として1歳に満たない子を養育する男女従業員です。

前述1、(3)特別な勤務形態に該当する人でなければ、男女を問わず会社に申し出さえすれば取得できます。

期 間

原則として、子どもが1歳になるまでの間で、従業員が希望する期間です。

「保育所等に入れない」などの場合、1歳6か月又は2歳までの延長も可能です。

なお会社によっては、さらに長い育児休業を定めているところもあります。

就業規則をしっかりご覧ください。

① 女性と男性での違い

「男女平等」とは言いましたが、女性(お母さん)の場合は、産後8週間の産後休業がありますので、育児休業は産休明けからとなります。

一方、男性(お父さん)の場合は産休がないので、奥さんの出産後すぐに育児休業を取ることができます。

② 「パパママ育休プラス」

両親とも育児休業をする場合は、一定要件を満たせば、子どもが1歳2か月になるまで育児休業を取得できます。

ただし、育休期間は親1人につき1年間が限度です。

パパとママが代わる代わる休業することも、同時に休業することも可能です。

「パパママ育休プラス」の具体例

(参考)厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし」

上記は代表的な例です。このテキストでは、ほかにも様々な事例が説明されています。

育児休業以外に利用できる制度

男性の育児を支援する制度は、育児休業だけではありません。次のような制度もあります。(もちろん女性も利用できます)

長期間の育児休業を取るのを躊躇しても、様々な制度を利用できますのでぜひご検討ください。

① 3歳未満の子どもを育てる従業員が、希望すれば利用できる制度

・短時間勤務

所定労働時間を原則として一日6時間(正確には5時間45分から6時間)に制限してもらうことができます。

これは有期契約の従業員でも利用できます。

・所定外労働の制限

所定外労働(残業)を制限してもらうことができます。

② 小学校就学までの子どもを育てる従業員が、希望すれば利用できる制度

・時間外労働の制限

時間外労働を1か月について24時間、1年について150時間以内に制限できます。

但し、事業の正常な運営に支障のある場合を除きます。

・深夜業の制限

深夜(午後10時から午前5時)に労働しないことができます。

但し、事業の正常な運営に支障のある場合を除きます。

・看護休暇

小学校就学前の子どもが1人の場合は1年度に5日まで、2人以上の場合は10日まで、子どものための看護休暇を1日又は半日単位(所定労働時間の2分の1)で取ることができます。

(参考)厚生労働省「両立支援のひろば」 働く方々へのお役立ち情報こんなときは

給付金制度

育児休業の場合は、会社からの給料は無給ということが普通です。

しかし、国として経済的な支援策が設けられています。

① 育児休業給付

従業員が1歳未満の子どものために育児休業を行う場合に、給付されます。(子が1歳を超えても休業が必要と認められる場合は、最長で2歳に達するまで)

育児休業開始から6か月までは休業開始前賃金の67%相当額、それ以降は50%相当額です。

この給付金は非課税です。次項②社会保険料の免除も考えると、休業前の手取り賃金との比較で、ほぼ8割程度のお金がもらえることになります

② 社会保険料の免除

健康保険料、厚生年金保険料は、産前産後休業中および育児休業中は申し出により支払いが免除されます。

雇用保険料も、産前産後休業中、育児休業中に会社から給与が支給されない場合は、保険料負担はありません。

要件は「育児休業等を開始した日が含まれる月から、終了した日の翌日が含まれる月の前月までの期間(ただし、子が3歳に達するまで)」となります。

賞与・期末手当等にかかる保険料についても免除されます。

しかも、社会保険料の免除を受けても、健康保険の給付は通常通り受けられます。

また、免除された期間分も将来の年金額に反映されます。

厚生労働省パンフレット 「育児休業や介護休業をする方を経済的に支援します」

育休を拒む企業への罰則

会社が従業員の育児休業の申し出を拒んだときには、厚生労働大臣は会社に対し報告を求める、また助言・指導や勧告を行うことができます。

厚生労働大臣の勧告に従わなかった場合には、厚生労働大臣は会社名を公表する事ができます。

(出典)厚生労働省「両立支援のひろば」

育休取得での「不利益取り扱い」「ハラスメント」は禁止されている

育児休業等取得の申し出や、実際に取得したことを理由として、不利益な取扱いをすることは禁止されています。

また、育児休業を取りにくくするような言動(ハラスメント行為)も禁止されています。

男性・女性にかかわらず禁止されていますが、男性の場合にはとりわけ尖った形で不利益取り扱いやハラスメントが行われることも少なくないようです。

原則的な取り扱いに加えて、特に男性の場合に注意しておくべき点をまとめました。

1. 不利益取り扱いの禁止

育児休業等の申し出や取得などを理由として、従業員に対し不利益な取扱いをすることは禁止されています。

「育児休業等」とされているのは、上記「育児休業以外に利用できる制度」の取得などを妨げる場合も同様に取り扱われるからです。

① 不利益取り扱いの具体例

不利益取り扱いとは、例えば次のようなことを指します。(これらはあくまで例示です。これ以外でも該当するものがありえます)

  • 解雇すること、有期雇用契約の契約更新拒否
  • 正社員を非正規社員とするような労働契約内容の変更の強要
  • 降格させること、業務に従事させないなど就業環境を害すること、自宅待機命令
  • 減給や賞与等の不利益査定、昇進・昇格の人事考課での不利益評価、不利益な配置変更など

【該当する事例】

・妻が出産予定なので、育児休業を取得したい旨を申し出たが、「長期の休暇は認められないから退職するように」と言われた。

・育休からの復帰にあたり、短時間勤務制度を利用したいと申し出たところ、人事担当者から「短い労働時間の正社員はいない、短時間勤務をするならパートになるように」と言われた。

② 派遣社員についての不利益取り扱い

派遣社員も、育児休業等の申し出や取得などを理由とした不利益取り扱いは禁止されています。

上記①は当然ですが、派遣社員特有の問題として、次の取扱いも該当します。

  • 派遣労働者が育児休暇に入るまで契約通りの仕事ができるのに、派遣先の事業主が派遣元に対し別の派遣労働者との交代を求める
  • 派遣契約の更新をしない   など

③ 不利益取り扱いの認定について

「育児休業等を理由として」の不利益取り扱いの認定では、育児休業等の事由の終了から1年以内に不利益取扱いがなされた場合は、原則として該当すると判断されます。

事由の終了から1年を超えている場合でも、実施時期が事前に決まっていたり、ある程度定期的になされる措置(人事異動、人事考課、雇止めなど)については、事由の終了後の最初の当該措置の実施までの間に不利益取扱いがなされた場合には、該当していると判断されます。

この要件は大変複雑にみえますが、例えば、休業から復帰した直後に不利益な人事処分がなされた場合に限らず、その後一定の期間の間に行われた処分も該当しうる、と覚えておいてください。

「不利益な処分だ」と思うことがあれば、後述の公的相談窓口や弁護士などに相談されることをお勧めします。

2. ハラスメント行為の禁止

妊娠・出産・育児などを理由とした女性(母親)向けのハラスメント行為は、マタニティー・ハラスメント(マタハラ)ですが、育児に取り組む男性(父親)へのハラスメントはパタニティ・ハラスメント(パタハラ)といいます。

事業主にはマタハラ・パタハラ行為の防止対策が義務付けられています(育児・介護休業法第25条)

具体的なハラスメント行為は、次のように広範なものです。

これらの言動で、本人が仕事をする上で支障が生ずるような場合に該当します。

①「制度利用への嫌がらせ型」

「育児休業の利用についての言動で、就業環境を害するもの」です。

(その1)解雇その他不利益な取扱いを示唆するもの

育児休業するなら辞めてもらう」「次の査定のときには昇進しないと思え」など

(その2)制度等の利用の請求等又は制度等の利用を阻害するもの

上司から「育児休業の請求を取り下げてくれ」と言われる

同僚から「この忙しいときに育児休業を取るなど身勝手だ」と繰り返し言われる

(その3)制度等を利用したことにより嫌がらせ等をするもの

育児休業から復帰した人に雑務だけ押し付ける

「育児休業を取るような無責任な人とは仕事できない」などと繰り返し言われる

②「状態への嫌がらせ型」

「忙しい時期に育児休業を取るなんて自分勝手だ」などと上司・同僚から繰り返し言われる

(参考)厚生労働省ポータルサイト

職場におけるセクシュアルハラスメント対策や妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント対策は事業主の義務です!!

困ったときの相談窓口

育児休業に関連する不利益取り扱いやハラスメントに悩む場合は、次の窓口に相談してみてください。

雇用環境・均等部(室)へ相談

労働者と事業主との間で、男女均等取扱い、育児・介護休業、パートタイム労働者の雇用管理等について民事上のトラブルが生じた場合、解決に向けた援助を行ってくれます。

育児休業に関しての第一の相談窓口です。

参考

・ 職場でのトラブル解決の援助を求める方へ(雇用環境・均等部の役割についての解説)
・ 都道府県労働局雇用環境・均等部(室)の連絡先 雇用環境・均等部(室)所在地一覧

総合労働相談コーナーへ相談

都道府県労働局の総合労働相談コーナーは、職場のトラブルに関する相談や、解決のための情報提供をワンストップで行っています。

育児休業のみでなく、関連して様々な問題も相談したいなら総合労働相談コーナーも一つの選択肢です。

どこに相談したらいいかわからないときなども、よろず相談窓口としてご活用ください。

総合労働相談コーナー

労基署へ相談

明白な法令違反ならば、労働基準監督署に相談すべきでしょう。育児休業を理由に不当解雇された、などというのもその一例です。

【参考】全国労働基準監督署の所在案内

弁護士へ相談

育児休業に関して、会社とのハードな交渉が予想されるときには弁護士への相談をご検討ください。弁護士はあなたの代理人として、会社との交渉を一手に引き受けてくれます。

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まとめ

男性の育児休業など子育てへの関与には、まだまだ十分に理解が得られていないようです。

しかし、子育ては母親だけがするものではありません。

かつて「子育てをしない男を父親とは言わない」という言葉が流行しました。

ある意味では世界共通の真理だと思います。

育児にも家事にも積極的に参加できるように、妻とよく話し合って育児休業その他の制度を十分に活用してください。

ぜひお子様を立派に育て、円満な家庭環境を守り、父親として夫としての大切な義務を全うしましょう。

また、今後の様々なリスクに備え「弁護士保険」へのご加入もご検討ください。

この記事を書いた人
社会保険労務士

玉上 信明(たまがみ のぶあき)

社会保険労務士 
健康経営エキスパートアドバイザー
紙芝居型講師(登録商標第6056112号) 
日本紙芝居型講師協会(登録商標第6056113号)
日本公認不正検査士協会アソシエイト会員

弁護士
東拓治弁護士

東 拓治 弁護士
 
福岡県弁護士会所属
あずま綜合法律事務所
福岡県福岡市中央区赤坂1丁目16番13号上ノ橋ビル3階
電話 092-711-1822

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