両親が亡くなった後に荷物の整理をしていたら、自筆の遺言書が出てきた。
「すぐに開封してしまっていいの?」
「相続人が多く相続税申告の期限も迫っているので、遺言書の内容はできるだけ早く知っておきたい。」
「検認の手続きはどのぐらい時間がかかるのだろうか」
「もし遺言書を検認せずに開封してしまったら、その遺言書は無効になるの?」
亡くなった人が遺言書を作成している場合、家庭裁判所に「検認」の手続きを受ける必要があります。
この記事では、遺言書の検認手続きに関してよくある疑問点や注意点について解説いたします。これから遺産相続にかかわる予定のある方は、ぜひ参考にしてみてください。
記事に入る前に・・・
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遺言書検認の手続き
遺言書の検認は、遺言書を見つけた人が、家庭裁判所に対して遺言書を持って行き、相続人となる人たちの立会のもとで遺言内容を確認するかたちで行います。
ただし、遺言書検認が必要なのは「自筆証書遺言」または「秘密証書遺言」の2つだけです。
「公正証書遺言」については遺言書の検認手続きは必要ありません。
また、令和2年7月10日よりスタートした「自筆証書遺言を法務局で保管してもらう制度」を利用した場合にも、検認手続きを省くことができます。
検認が必要な場合の手続きの流れを大まかに説明すると、以下のようになります。
遺言書検認の流れについて
検認の申し立て
相続人が、家庭裁判所に対して検認の申し立てを行います(遺言書を見つけた本人でなくても問題ありません)
遺言書検認の申し立てを行う家庭裁判所は、「亡くなった方の最後の住所地を管轄している家庭裁判所」です。
相続人となる人の住所地や、遺産となる不動産がある場所を管轄する家庭裁判所ではありませんので、注意しておきましょう。
検認の申し立てに期限などはありませんが、遺言書の内容が確定しない限り、遺産分割手続を行うことができません。
遺産分割の完了を前提として行う相続税の申告には期限(相続発生から10ヶ月以内)がありますので、遺言書を見つけたらできるだけ早く検認の申し立てを行うようにしましょう。
また、相続放棄の期限についても、遺言書検認手続きとは別に進行していきます。
遺言書の内容がわからないと、相続放棄をすべきかどうかの判断を正しく行うことができません。
戸籍謄本などの必要書類をそろえるのにはかなり時間がかかることもありますから、注意が必要です。
必要書類の提出
申し立てに際して必要書類を提出します。
遺言書検認の申し立てに必要な書類は以下の通りです。
- 家事審判申立書
- 遺言書1通につき800円分の収入印紙(家事審判申立書に貼り付けます)
- 相続人となる人全員の戸籍謄本
- 亡くなった人の親族で、相続発生時にすでに亡くなっている人がいた場合には、その人の戸籍謄本(出生〜死亡までの詳細が記載されているもの)
検認期日のお知らせ
家庭裁判所から「検認期日(相続人が立ち会って検認を行う日程)」のお知らせが来ます。
検認期日は、申し立ての1ヶ月〜2ヶ月後となることが多いです。
検認の実施
検認期日において、申し立てを行った家庭裁判所内で検認が実施されます。
遺言書を発見した人に対しては、「遺言書はどこにどのような形で保管されていましたか」などの質問がされることがあります。
筆跡に不自然な点がないかなどの確認も行われます。
裁判官や裁判所事務官の方が遺言書を開封して確認作業を行い、遺言内容を調書に記録していきます。
検認に立ち会った人の氏名などの情報も記録されます。
検認済証明書の発行
検認が完了すると、家庭裁判所は「検認済証明書」を発行してくれます。
証明書の発行は必ず必要というわけでありませんが、これがあって初めて、遺言書に基づいた相続登記その他の相続手続きを行うことが可能となります。
検認済証明書の発行には、手数料として150円が必要です。
検認済通知の発送
検認に立ち会わなかった相続人がいる場合には、家庭裁判所からその人たち宛に「検認済通知」が送られます。
検認済通知には遺言内容が記載されていますので、検認に立ち会わなかった人も遺言書の内容を知ることが可能です。
検認手続きの完了
以上で検認手続きは完了です。
検認手続きが完了すると、その遺言書を使って遺産相続に関する諸々の手続き(銀行の預貯金の払い戻しや、不動産登記名義の変更など)を進めることが可能になります。
遺言書の内容に基づいて遺産分割が完了すれば、相続税の申告手続きも適正に行うことが可能になりますので、期限までに完了するようにしましょう。
遺言書検認の費用
遺言書の検認手続きにかかる費用は、以下のようなものです。
- 遺言書1通につき800円の収入印紙代
- 裁判所から送られてくる郵送物の郵便切手代(数百円程度)
- 検認済証明書の発行費用150円(遺言書1通につき)
- 戸籍謄本の取得費用(1通につき数百円程度)
なお、遺言書検認の手続きは、弁護士などの法律の専門家に代行を依頼することも可能です(戸籍謄本の取得などもすべて代行してもらえます)
弁護士に遺言書検認の手続きを依頼した場合の費用は、諸費用込みで10万円〜20万円程度が相場です。
遺言内容に関する異議申し立てについて
遺言書の検認が完了したとしても、これはあくまでも「発見された遺言書はこうだった」ということが確定したに過ぎません。
遺言書の作成過程そのものに異議がある場合や、遺言書の内容が不適当であるなどの場合には、検認手続きを経た遺言書であっても無効となるケースはあります。
また、相続人となる人全員の話し合いのもと、遺言書内容とは異なるかたちでの遺産分割を行うことも可能です。
遺言内容に対して異議がある場合には、遺言無効確認の訴えなどを別途提起します。
遺言書検認に関するよくある質問
以下では、遺言書の検認関して寄せられることの多い質問について説明します。
遺産相続に関する手続きが初めてという方は参考にしてみてください。
遺言書を検認しないで開封してしまった場合はどうなる?
遺言書は、検認手続きを経ずに開封してはいけません。
最悪の場合、5万円以下の過料が課せられてしまうこともあります(ただし、実際に過料が課せられるケースは極めてまれです)
たとえ遺言書に封がされていなかったとしても、その遺言書は検認の手続きに付さなければなりません。
誤って開封してしまった遺言書も、その効力が無効となってしまうわけではありません。
ただし、内容の改ざんや故意の隠匿などの事実が明らかになった場合には、その改ざんや隠匿に関わった人は相続人としての権利を失う可能性があります。
遺言書検認には相続人全員が参加しないといけない?
遺言書検認の手続きに必ず参加しなくてはならないのは、申し立てをした相続人だけです。
その他の相続人の立ち会いは任意とされていますので、遺言書の検認を他の相続人が拒否しているとか、用事があっていけないとかいった状況のある人は、必ずしも参加する必要はありません。
検認に立ち会わなかった相続人に対しては、後日に検認済通知の発送が行われますから、遺言書の内容を知ることも可能です。
生前に遺言書を検認してもらうことはできる?
遺言書の検認は生前に行うことはできません。
遺言書を作成する人が、遺言が確実に実行されるかどうか心配に感じているという場合には、公正証書遺言などのかたちで遺言を作成するようにしましょう。
公正証書遺言は検認手続きが必要ありません。
また、遺言執行者を指定しておくことで、確実に遺言内容を実現してもらうことが可能になります。
また、令和2年7月からは自筆証書遺言を法務局に保管してもらえる制度がスタートしています。
この場合も、公正証書遺言と同様に検認手続きは不要となります。
まとめ
今回は、遺言書が見つかった場合に申し立てる必要がある「遺言書検認の手続き」について解説いたしました。
検認の手続きを行うためには、相続にかかわる人すべての戸籍謄本の取得が必要になるなど、煩雑な手続きが少なくありません。
手続きの進行に不安があると言う方は、遺産相続に関する専門家に相談することを検討してみてください。
遺産相続の手続きは、弁護士や司法書士といった専門家に代行を依頼することができます。
是非、今後の様々なリスクに備え「弁護士保険」へのご加入もご検討ください。
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