訴状の書き方と記載例|貸金・損害賠償の見本つき【本人訴訟向け】

「貸したお金を返してもらえない。弁護士に相談したら費用倒れになると言われた。それなら自分で裁判を起こしたいけれど、訴状をどう書けばいいのかわからない」

このような理由で、本人訴訟(弁護士に依頼せず、自分自身で裁判を起こすこと)を検討する方は少なくありません。

弁護士の意見として、率直なところ「(少額訴訟以外で)本人訴訟はあまりおすすめしない」という派が多数かと思います。ただ、経済的な事情など様々な理由で本人訴訟をしないといけない場面もあるかと思いますし、簡単な裁判であれば効果的な場合もあります。

そこで本記事では、「知人に100万円を貸したが、返済期限を過ぎても返してもらえない」というケースを例に、訴状の書き方を記載例つきで解説します。

なお、令和8年5月21日に改正民事訴訟法が施行され、訴状の提出方法や費用の納め方が大きく変わりました。本記事は改正後の手続きに沿って説明しています。

参照元:裁判所「改正民訴法等で変わる民事訴訟手続の概要」 

本記事でわかること

  • 訴状の記載例(貸金・損害賠償)
  • 本人訴訟に必要なもの(オンライン提出と新しい手数料)
  • 形式的な訴状の書き方
  • こちらの主張が通る訴状のポイント

※本人訴訟(自分自身で裁判を起こすこと)を検討している方向けの内容です。
本人訴訟を迷っている場合は、以下記事からご覧ください。

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目次

本人訴訟をするということ

裁判というと、相手を弁論で言い負かすことが大事だと思っている方もいるかもしれません。

しかし、実際の裁判では口頭でするわけではなく、主張と証拠で戦うことがメインになります。

ですので、いかに「ご自身の主張をルールに沿ってわかりやすく書面で伝えるか」がポイントになります。

訴状について

訴状とは

民事訴訟(裁判)をする場合、裁判所に訴状を提出する必要があります。

訴状とは、訴えを提起する際に、

  • 訴える人「原告」 (あなた)と訴訟代理人(弁護士がいる場合)の情報
  • 訴えられる人「被告」(相手方)とその被告の訴訟代理人(弁護士がいる場合)の情報
  • 請求の趣旨(裁判によって原告が求めること)及び請求が認められるために必要な事実 

などを記載し、裁判所に提出する必須書面です。※詳細は後述します

法律上、訴状に必ず書かなければならないのは、「当事者及び法定代理人」と「請求の趣旨及び原因」です(民事訴訟法第134条第2項)。これが欠けていると、裁判所から補正(書き直し)を求められます。

また、訴状を提出するときは、裁判所に申立手数料を納めます。以前は収入印紙を訴状に貼り、別途郵便切手も納めていましたが、令和8年5月21日以降に起こす裁判では、申立手数料に一本化されています。※詳細は後述します

どこのどの裁判所で争うのか

まず裁判をしたいと思ったらどこに行けばいいのでしょうか。

どの裁判所で争うの?(地裁か簡裁か)

請求する額が140万円超えるか超えないかで判断します。

140万円を超える場合・・・地方裁判所
140万円以下の場合・・・・簡易裁判所

もちろん例外もあります。

不動産に関すること(引渡、明渡し、境界線の確定など)は140万円以下であっても地方裁判所で裁判することも可能です(不動産の売買代金や賃借料の支払いを求める争いを除く)。

また、行政訴訟は地方裁判所になります。

その他にも、(離婚など家庭内トラブルや、相続、養子等の問題等)家事事件については、家庭裁判所となります。

どこの裁判所(場所)で訴訟をするの?(自分の住所地か相手の住所地かそれとも他の場所か)

裁判所は日本全国400ヶ所以上ありますが、どの裁判に訴状を提出するかは法律で決まっています。

原則は、被告(相手方)が住んでいる都道府県を管轄する地方裁判所(簡易裁判所)です。

例
被告が、大阪市北区に住んでいる場合は、大阪地方裁判所(大阪簡易裁判所)に訴状を提出。
被告が、東京都立川市に住んでいる場合は、東京地方裁判所立川支部(立川簡易裁判所)に訴状を提出。

その他、貸金や売買契約の争いであれば「支払いをすべき場所」、不動産に関するトラブルであれば「不動産のある場所」、交通事故などであれば「交通事故(不法行為)があった場所」などでも裁判が可能となります。

これは請求するものの種類によって変わってきますので(特別裁判籍といいます)、民事訴訟法第5条を読んで調べてみるといいでしょう。

また、事前(契約時)に管轄の裁判所が決まっている場合はその裁判所となります。

参考    移送について ~裁判所の変更~

管轄外の裁判所に訴状を提出した場合など、裁判所が他の裁判所で裁判をすべきと判断した場合は、裁判所から連絡があり、他の裁判所に変更されることがあります。

また、被告側より、いま申立てられている裁判所で裁判をするのが不都合である場合などは、被告側から「移送の申立て」をされることもあります。

事前に準備するもの

訴状を提出するにあたって、以下を用意する必要があります。

訴状の提出方法は、次の3つです。

  • オンラインで提出する(民事裁判書類電子提出システム「mints(ミンツ)」を利用)
  • 裁判所に直接持参する
  • 裁判所に郵送する

オンライン提出は、令和8年5月21日から、弁護士をつけない本人でも利用できるようになりました。

mintsを使うには、事前にアカウント登録が必要です。なお、弁護士などの訴訟代理人はオンライン提出が義務ですが、本人訴訟の場合は書面(持参・郵送)でも提出できます。

参照元:裁判所「民事訴訟」

1)訴状とその証拠

訴状と証拠を準備します。

証拠を出す際は、以下の書類が必要です。

・証拠書類
・証拠説明書

(証拠説明書は簡易裁判所では提出は必須ではありません)

★提出する訴状及び証拠書類(コピー)の部数について(書面で提出する場合)

被告の数+1部が必要となります。

  被告が1名の場合は「2部」

  被告が3名の場合は「4部」ということになります。

★印鑑について

個人が申立する場合は認印でも可(但しシャチハタは不可)です。

法人が申立する場合は法人の代表者印を使用します。

修正が必要になることもありますので、捨印を訴状の各ページの上部余白部分に押印すると便利なことがあります。(弁護士が提出するときは捨印は押しません)

オンライン(mints)で提出する場合は、押印は不要です。

2)申立手数料

訴状を提出するときは、裁判所に申立手数料を納めます。金額は、相手に請求する金額(訴訟物の価額)と提出方法によって決まります。

例えば、今回のように100万円を請求する場合の手数料は次のとおりです。

  • 書面(持参・郵送)で提出する場合:12,500円
  • オンライン(mints)で提出する場合:11,400円

オンラインで提出すると、書面で提出する場合より1,100円安くなります。また、被告が2名以上の場合は、1名増えるごとに2,000円が加算されます。

納付方法は、原則としてペイジー(Pay-easy)による電子納付です。インターネットバンキングや金融機関のATMから支払うことができます。以前のように、収入印紙を購入して訴状に貼る必要は、原則としてなくなりました。

参照元:裁判所「手数料額早見表」

※令和8年5月20日までに起こした裁判(旧法適用事件)には、改正前のルールが適用されます。

関連記事:裁判にかかる費用は平均いくら?事案別シミュレーションと費用を抑える方法を解説

3)郵便切手(原則不要になりました)

以前は、相手に書類を送るための郵便切手(6,000円程度)を、手数料とは別に裁判所へ納める必要がありました。

令和8年5月21日以降に起こす裁判では、郵便費用が申立手数料に一本化されたため、郵便切手を別に用意する必要はありません。上記2)の手数料には、郵便費用に相当する額が含まれています。

4)相手が法人の場合

相手が会社(法人)の場合、商業登記簿謄本(登記事項証明書)の提出が必要となります。

法務局で商業登記簿謄本(又は登記事項証明書)を取りに行きましょう。

法人は、

  • 株式会社
  • 有限会社
  • 合名会社
  • 合資会社
  • 合同会社
  • 医療法人
  • 一般社団法人
  • 農業協同組合

などを指します。

5)送達場所の届出書(必要に応じて)

あなたに対して裁判所から書類を送る場合、どこに送ってほしいか、希望する場所を選ぶことができます。

送達場所等の届出書(裁判所「民事訴訟で使う書式」内)

用紙の□をレ点でチェックし、希望する場所を記入してください。

あなたの住所でも勤務先でもない場所(例えばあなたの実家)に書類を送って欲しい場合は「その他の場所」の□をレ点でチェックし、「原告等との関係」の部分に「父の家」などと関係を記入し、その住所を記入してください。

なお、mintsを利用してオンラインで書類を受け取りたい場合は、その旨を別途届け出ることで、裁判所からの書類をオンラインで受け取ることができます。

訴状の書き方について  

訴状の記載例(貸金100万円を請求する場合の完成形)

まずは、訴状の完成形を見てみましょう。以下は、知人に貸した100万円の返還を求めて、簡易裁判所に書面で訴状を提出する場合の記載例です。

          訴 状

令和○○年○○月○○日
○○簡易裁判所 御中

〒○○○-○○○○ ○○県○○市○○ ○丁目○番○号
原告 ○○ ○○ 印
電話 ○○○-○○○-○○○○

〒○○○-○○○○ ○○県○○市○○ ○丁目○番○号
被告 ○○ ○○

貸金返還請求事件
訴訟物の価額 100万円
手数料額 1万2500円

第1 請求の趣旨
1 被告は、原告に対し、100万円及びこれに対する令和○年△月▲日から
  支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
との判決並びに仮執行の宣言を求める。

第2 請求の原因
1 原告は、被告に対し、令和○年○月○日、弁済期を令和○年△月△日と定めて、
  100万円を貸し付けた(甲第1号証、甲第2号証)。
2 令和○年△月△日は経過した。
3 よって、原告は、被告に対し、上記消費貸借契約に基づき、貸金100万円
  及びこれに対する弁済期の翌日である令和○年△月▲日から支払済みまで
  民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める。

第3 関連事実
1 原告と被告は、○○の知人である。
2 原告は、令和○年○月以降、被告に対し、電話及びメッセージで繰り返し
  返済を求めたが、被告は返済に応じていない(甲第3号証)。

証拠方法
甲第1号証 借用書
甲第2号証 振込明細書
甲第3号証 メッセージのやり取りを印刷したもの

付属書類
1 訴状副本 1通
2 甲第1号証から甲第3号証までの写し 各○通
3 証拠説明書 ○通

※上記は本記事の事例をもとにした記載例(サンプル)です。実際の事実に合わせて書き換えてください。

訴状は大きく分けて、「当事者の表示」「請求の趣旨」「請求の原因」「証拠方法」「付属書類」の5つのパートでできています。それぞれの書き方は、この後の章で順番に解説します。

なお、裁判所のウェブサイトでは、貸金、売買代金、賃金、敷金返還など請求の種類ごとに、訴状の書式(Word)と記載例(PDF)が公開されています。当てはまる書式がある場合は、ダウンロードして使うとよいでしょう。

参照元:裁判所「民事訴訟で使う書式」

当事者(原告・被告)の表示について

                       訴   状

①           ○○年○月○○日  

②           〇〇地方裁判所 御中 

                  

③           〒○○○-○○○○  ○○県○○市○○ ○丁目○○番○○号

 原告   ○○ ○○  

④           〒○○○-○○○○  ○○県○○市○○ ○丁目○○番○○号

    被告   ○○ ○○

⑤           ○○請求事件               

⑥           訴訟物の価額       ○、○○○、○○○円      

    手数料額           ○○、○○○円      

※令和8年5月20日までは、ここに収入印紙を貼っていました。現在は原則としてペイジーで納付するため、貼る必要はありません。

(以下 請求の趣旨に続く)

訴状の各項目を解説します。

①「書類作成日」を記載します。

②「訴状を提出する裁判所」を記載します。

③原告(あなた)の氏名、郵便番号、住所、電話番号、ファックス番号を記載します。

ファックスがないという場合は省略します。

補足

1 住所(所在地)の記載について (以下④⑤も同様)

イ.当事者の住所地が仙台市(県庁所在地)の場合は仙台市(県庁所在地の市)からその他の市町村の場合は宮城県(県名)から記載してください。

ロ.何丁目、何番地の丁目、番地等の記載を省略しないで正確に記載してください。

    ○ 仙台市青葉区中央1丁目2番3号

  × 仙台市青葉区中央1-2-3

2 原告又は被告が法人(株式会社、有限会社等)の場合の記載について

    所在地   宮城県仙台市青葉区○ ○5丁目3番1号
会社名   ○○商事株式会社
代表社名   代表者代表取締役 仙台太郎 印

(株)(有)というような略称にせず正しく記載しましょう。

また、代表者名を記載する場合代表取締役の記載の前に代表者という記載してください。

原告が法人の場合は、印鑑は会社の代表者印を使用。

3 原告又は被告が未成年の場合の記載について

まず未成年者の住所・氏名を記載し、その下の行に親権者(通常両親がいる場合は両親)の住所・氏名を下記のように記載してください。

住所 ○○県○○市○○町○丁目○番○号
原告 青葉三郎
住所 ○○県○○市○○町○丁目○番○号
法定代理人 親権者父 青葉太郎 印
法定代理人 親権者母 青葉花子 印

※原告又は被告が未成年の場合はその親権者(親)の戸籍謄本が1通必要となります。

(被告側に弁護士がいる場合)代理人の氏名、郵便番号、住所、電話番号、ファックス番号を記載します。 

相手に弁護士がいない場合や、いるかどうかわからない場合は、記載する必要はありません。

④被告(相手)の氏名、郵便番号、住所、電話番号、ファックス番号

住所がわからない場合は、相手の職場(就業先)でもかまいません。

被告が複数いる場合の書き方

お金を借りた本人と連帯保証人をまとめて訴える場合など、被告が複数いるときは、被告全員の住所と氏名を並べて記載します。

〒○○○-○○○○ ○○県○○市○○ ○丁目○番○号
被告 ○○ ○○

〒○○○-○○○○ ○○県○○市○○ ○丁目○番○号
被告 △△ △△

請求の趣旨では、被告全員に同じ金額の支払いを求めるのか、被告ごとに別の金額を求めるのかを、はっきり書き分けます。

連帯して支払いを求める場合の例(借りた本人と連帯保証人など)

1 被告らは、原告に対し、連帯して、100万円及びこれに対する
  令和○年○月○日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。

被告ごとに別の金額を求める場合の例

1 被告○○は、原告に対し、○○万円を支払え。
2 被告△△は、原告に対し、○○万円を支払え。

「連帯して」と書かないと、請求額を被告の人数で割った金額ずつの請求として扱われるおそれがあります(民法第427条)。全員に全額を請求したい場合は、必ず「連帯して」と記載しましょう。

また、被告が2名以上の場合は、申立手数料が1名増えるごとに2,000円加算されます。書面で提出するときの訴状の部数も「被告の数+1部」必要です。

同じ原因に基づく請求であれば、被告のうち1人の住所地を管轄する裁判所に、まとめて訴えを起こせる場合があります(民事訴訟法第7条、第38条前段)。

⑤事件の表示(事件内容)

例 損害賠償請求事件 貸金返還請求事件など

「何を」(貸した金を)、「どうして欲しいか」(返還して欲しい)が分かるような内容。

⑥訴訟物の価額

訴訟で原告が被告に請求したい金額になります。

つまり、裁判で原告側の請求が全て認められた時の金額を記載します。ただし、元金とあわせて請求する遅延損害金や利息は、訴訟物の価額には含めません(民事訴訟法第9条第2項)。今回のケースでは、貸したお金の100万円が訴訟物の価額になります。

また、手数料額に関しては以下をご参照ください。

手数料額早見表/裁判所

例えば今回の100万円を請求するケースで見ますと、早見表の「訴えの提起」の100万円の行をみて、書面で提出する場合は12,500円、オンライン(mints)で提出する場合は11,400円だということがわかります。

請求の趣旨及び原因

裁判所

第1 請求の趣旨   上記Ⓐ  

あなた(原告)がこの裁判によって、被告に対し請求する内容を簡潔に記載したものになります。

判決の主文にも引用されますので、原告が被告に対して何を請求しているのかをはっきり書く必要があります。

例えば、『(100万円の)支払いを希望する。できなければ、(週に一回無償で6か月間働くこと)を支払いにかえて行う。』みたいな曖昧な請求はできません。

100万円を請求する例

1   被告は、原告に対し、次の金員を支払え。

    金 1、000、000円 (請求の原因2の残額)

    上記金員に対する 令和3年3月31日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員

2   訴訟費用は被告の負担とする。

    との判決及び仮執行宣言を求める。

なお、金銭を請求する場合は、全て上記に当てはめて作成いただいても問題ありません。

遅延損害金に関しては、付加しても付加しなくてもいいです。

また起算日を「訴状送達の日の翌日から」にすることもあります。

遅延損害金の利率について

遅延損害金については、当事者間にあらかじめ取り決めがある場合はその利率。

取り決めがない場合は以下の法定利率を請求することが可能です。(2026年9月現在)

一般民事の債権の場合

  • 令和2年3月31日までに生じた場合 年5%
  • 令和2年4月1日から令和11年3月31日までに生じた場合 年3%

法定利率は3年ごとに見直されます。令和8年4月1日からの3年間も、年3%のまま据え置かれました。令和11年4月1日以降の利率は未定です。

参照元:法務省「令和8年4月1日以降の法定利率について」

遅延損害金の起算日について

ア.当該金銭の支払いについて支払期限の約束(取決め等)がある場合

「支払期限の翌日」が遅延損害金の起算日となります。

イ.支払期限について取決めがない場合

配達証明付内容証明郵便で「この書面到達の日から○日以内に支払うこと」というような催告をした場合は、その支払期限の翌日が起算日となります。

(例: 1月10日に「この書面到達の日から7日以内に支払うこと」という文面が到着した場合1月18日が起算日になります。)

催告をしていない場合は、 一般的には「訴状送達の日の翌日」が遅延損害金の起算日になります。

その他、交通事故や傷害事件等の不法行為に基づく損害賠償請求の場合はその「不法行為の日」(交通事故があった日)が起算日となり、売買契約の解除などの理由で売買代金の返還を請求するような場合は、被告が「売買代金受領の日」から遅延損害金の請求が可能となります。

第2 請求の要点(請求の原因) 上記Ⓑ

請求する理由となる事実を記載します。

トラブルの内容や事実関係を知らない人が経緯を順序だてて記載する必要があります。

5W1H(いつ/どこで/誰が/誰に/なにを/どうした)にそって具体的に書いていく必要があります。

ここをしっかり書くかどうかで判決に影響を及ぼします。

「請求の原因」と聞くと「裁判をするに至った原因」を書く場所だと思う方が多いと思います。

しかし、「請求の原因」というのは専門用語で、「請求が認められるために必要な事実」のことを言います。

例えば、貸金返還請求では、

  • お金を渡した事実
  • お金を返す合意をしたこと
  • 弁済期が到来したこと

の3つを具体的に書く必要があります(①②はまとめて書くことが多いです)。

※逆に言えば、お金を貸した経緯は書かなくても問題ありません。

具体的には、

1 原告は、被告に対し、
「令和○年○月○日、弁済期を令和〇年△月△日と定めて、100万円を貸し付けた」(甲・借用書)。
←証拠を甲第1号証として入れるとよりよいです。
2 約束の期日の 「令和〇年△月△日は到来した」

となります。

請求原因で何を主張するのかは、法律の条文に従って決まっています。

貸金返還請求であれば民法第587条の載っておりますし、不法行為であれば民法第709条に載っております。

ただ、複数の条文にまたがっていることもあるので、簡単にわかるわけではありません。

請求原因の書き方がわからないということであれば、弁護士のバイブル的な本「要件事実マニュアル」を参考にするとよいでしょう。

なお、証拠など請求の要点(請求の原因)を立証できる証拠があれば、証拠についての記載もここでします。

損害賠償を請求する場合の記載例(不法行為)

ここまで貸金返還請求を例に説明してきましたが、物を壊された、ケガをさせられた、名誉を傷つけられたなど、相手の違法な行為で損害を受けた場合は、不法行為に基づく損害賠償請求(民法第709条)になります。慰謝料の請求も、この損害賠償請求の一種です(民法第710条)。

事件名は「損害賠償請求事件」とします。

請求の趣旨の例

1 被告は、原告に対し、○○万円及びこれに対する令和○年○月○日から
  支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
との判決並びに仮執行の宣言を求める。

※遅延損害金の起算日は、不法行為があった日にします。

請求の原因の例

1 被告は、令和○年○月○日、○○(場所)において、原告が所有する○○
  (以下「本件物品」という。)を床に投げつけ、破損させた(甲第1号証)。
2 被告は、本件物品が原告の所有物であることを知りながら、故意に上記行為をした。
3 原告は、上記行為により、本件物品の修理費用として○○万円の損害を受けた
  (甲第2号証)。
4 よって、原告は、被告に対し、不法行為に基づく損害賠償として、○○万円
  及びこれに対する不法行為の日である令和○年○月○日から支払済みまで
  民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める。

※上記は記載例(サンプル)です。実際の事実に合わせて書き換えてください。

損害賠償請求の「請求の原因」では、次の4つを具体的に書く必要があります。

  • 相手の行為(いつ、どこで、何をされたか)
  • 相手の故意または過失
  • 損害の内容と金額
  • 相手の行為によって損害が生じたこと(因果関係)

貸金返還請求と違い、損害の金額を自分で計算して、その根拠を証拠で示す必要がある点に注意しましょう。修理の見積書、領収書、診断書などが証拠になります。

関連記事:「精神的苦痛」で慰謝料は請求できる?ズバリ!請求のポイントや相場を分かりやすく解説

なお、交通事故の損害賠償請求には、裁判所が専用の書式を用意しています。また、60万円以下の金銭の支払いを求める場合は、少額訴訟用の書式が使えます。

参照元:裁判所「民事訴訟(交通事件)で使う書式」
参照元:裁判所「少額訴訟で使う書式」

関連記事:少額訴訟は自分でできる|60万円以下のお金を取り戻す手続きと費用【体験談4件】 

第3 関連事実

請求の要点(請求の原因)以外にも本事案に関連する内容があればここに記載しましょう。

例えば、お金を貸した経緯や過去にも何度もお金を貸したことがあってトラブルになっていたという事実など、特に裁判所に知っておいて欲しい事実を記載するのがいいでしょう。

証拠方法 上記Ⓒ  

証拠のコピーは事前に裁判所に提出する必要があります。

証拠のコピーには、提出順に番号を付与してください。番号は赤字で書類の右上に「甲第1号証」などのように記載します。(被告側は乙第1号証、乙第2号証。)

証拠書類などはバラバラにならないようにホチキスで止めてから提出しましょう。

オンライン(mints)で提出する場合は、証拠をPDFにして提出します。証拠は訴状の提出と同時ではなく、事件のフォルダにアクセスできるようになってから提出します。

例

甲1 契約書
甲2 事故証明書        など

もちろんLINEやメール、携帯で撮影した写真、会話の録音なども証拠になります。

ただ、録音したものは文字起こしする必要があります。

付属書類 上記Ⓓ

訴状と一緒に出す書類で、具体的には「訴状副本」や相手が法人であった場合は「登記簿謄本」(申立書添付書類)、「証拠説明書」などが当たります。

書き方 例

・甲第1号証から甲第3号証までの写し  各〇通
・登記事項証明書
・証拠説明書 

証拠説明書について

裁判では、証拠説明書を訴状と一緒に提出する必要があります(簡易裁判所では必須ではありません)。

証拠を作成した日付や作成者名、その証拠で何を立証しようとしているのかなどを記載してください。

証拠説明書は表形式で作成します。

証拠説明書はその名の通り、証拠として提出する証拠について説明する書面で、この証拠説明書をもとに裁判官は確認します。

①号証

訴状の証拠で記載した番号とあわせて書きます。   

例) 甲1、甲第1号証

②標目

証拠物の名前を記載します。

例 契約書 / 受領書 など

名前がわからないものに関しては「○○と題する書類」のような書き方でも可能です。

また、写真等を提出する場合は、標目の下に、撮影対象、撮影時期、撮影者の記載が必要です。

③原本・写し について

提出する書類が原本か・写しかを記載してください。

④作成者 

誰が作成した書類かを記載してください。 (例: 原告 被告など)

⑤立証趣旨

どのような事実を証明するための証拠かを具体的に記載してください。

訴状の作成上の注意点

訴状の形状はA4用紙を利用します。

手書きの場合は、ペン又はボールペンで作成してください。

ワードなどで作成する場合は、フォントは明朝体の12ポイント。(一行は37文字で1ページ26行、)左側に3センチの余白を残す必要があります。

ホチキスで2箇所止める必要があります。また、下部にページ数を記載してください。

なお、オンライン(mints)で提出する場合は、印刷、押印、ホチキス留めは不要です。訴状の内容は、入力フォームに直接入力するか、PDFファイルにして提出します。

効果的な訴状の書き方

当然ですが、訴状を提出するのは裁判所で訴状を読み、判決を出すのは裁判官です。

本人訴訟をする場合、その裁判所にスムーズに提出ができること、当方の主張が正しく伝えられることが必要になります。

裁判官は多忙です。

日弁連のパンフレットによると、大都市の裁判官は常時一人当たり単独事件を200件、合議事件(他の裁判官と裁判を行う事件)を約80件抱え、さらに毎月約45件の新しい裁判が割り当てられるといわれています。

参照元:日本弁護士連合会パンフレット(裁判官・検察官の増員について)

また、都市部以外も民事、家事事件、少年事件など様々な事件を対応しなければならないので、全国の裁判官が多忙だと思った方がいいです。

そうなるといかに裁判官に読んでもらうかが重要になります。

裁判官に読んでもらいやすい文章

・簡潔で正しい文章であること

(1つの文章には1つの内容だけを盛り込むこととし、文章を区切るのがよいです)

・事実、推測、意見を区別して書くこと

(例えば、事実であれば「〇〇という事実があった。」、推測であれば「〇〇であると思われる。」、意見であれば「〇〇とされるべきである。」というように書くとわかりやすいです)

・裁判官が慣れ親しんでいる形式であること

本記事の記載例のほか、裁判所のウェブサイトで公開されている訴状の書式と記載例が参考になります)

関連記事:AIで作った訴状は正しい?そのまま提出してよいか判断基準を解説

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だけど費用的に無理・・・という時代は終わりました。
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丸山弁護士

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*1 件数は2025年3月現在  *2  2013年~2024年。単独型弁護士保険として。2023年3月当社調べ。*3 補償額は実費相当額もしくは一部 *4 初期相談‥事案が法律問題かどうかの判断や一般的な法制度上のアドバイス 募集文書番号 M2022営推00409

まとめ

本人訴訟は日本では意外に多く使われる方法です。訴状の書き方は煩雑で裁判の手続きも手間がかかりますが、今回のように借用書などの証拠がそろっていて、争点が少ない事案であれば、費用を抑えるための現実的な選択肢になります。令和8年5月21日からはオンラインで訴状を提出できるようになり、手数料も書面で提出する場合より安くなりました。

実際に本人訴訟をやってみた方の体験談は、以下の記事で紹介しています。

関連記事:弁護士なしで裁判!本人訴訟のやり方・費用・勝率は?やってみた体験談あり【弁護士監修】

また、判決で勝っても、相手が支払わない場合は強制執行の手続きが必要になります。

関連記事:裁判で勝ったのに支払いされない!?そんな時の強制執行の流れと費用について徹底解説

ですが、平日休みが取れない方や法律がよくわからない方、裁判の勝率を上げたい方には、弁護士に依頼する方がおすすめです。

実際に本人訴訟よりも、弁護士に依頼した訴訟の方が勝率は高いですし、裁判で裁判官が「弁護士さんに相談した方がいいですよ」と言っている様子は多く見受けられます。

(個人的には経済的な理由で依頼までできないとしても、せめて相談だけはしてみるのがよいと思います)。

できるだけあなたの悩みを解決するためには迷わず弁護士に相談してみてください。

事前に弁護士保険にご加入いただき、様々なリスクに備えていただくことも良いかもしれません。

弁護士
松本隆弁護士

弁護士 松本隆

神奈川県 弁護士会所属
横浜二幸法律事務所
所在地 神奈川県横浜市中区山下町70土居ビル4階
TEL 045-651-5115

労働紛争・離婚問題を中心に、相続・交通事故などの家事事件から少年の事件を含む刑事事件まで幅広く事件を扱う

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