突然郵便で少額訴訟を訴えると届いたら…
あなたならどうしますか?
身に覚えがあってもなくてもまずは、恐怖心を感じるのではないでしょうか。
少額訴訟とは、60下の少額の少額の訴訟に用いられる裁判形式のことで、2021年には、5,435件の少額訴訟の訴えがありました。
実は、少額訴訟は減少傾向で、1998年に制定されて以来、2010年までは増加傾向でしたが、昨今は年々件数が減少しています。
便利に利用できる少額訴訟ですが、60万円以下の訴訟にしか利用できないため、なかなか利用できないのが現実なのかもしれません。
ですが、友人関係や親族関係の金銭トラブルではよくある金額ですので、少額訴訟を訴えられることは身近に起こり易いこと。
今回は、少額訴訟を訴えられた方に向けて、無視したらどうなるのか?無視した場合のリスク2つと少額訴訟を有利に進める方法をお伝えします。参考にして少額訴訟に備えておきましょう。
記事に入る前に・・・
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少額訴訟とは
少額訴訟とは、1998年に制定された制度で60万円以下の金銭トラブルで利用できる訴訟のことです。
例えば、友人に10万円貸したがなかなか返ってこない場合や、キャンセルしたショッピング分の返金がなされない場合、離婚した相手の養育費が滞っている場合などに適用されます。
少額訴訟のメリットは、原則として1日で審理が完了することです。
通常訴訟では、半年以上の期間をかけて、詳しく審理し解決しますが、少額訴訟ではすぐに結論が出るという点で人気の訴訟方法。
しかし、簡易的な審理止まりになりますから、詳細を調べて欲しい場合や、煩雑な事件の場合には、有効に利用できないというデメリットがあるでしょう。
少額訴訟の訴状が届いたら無視できる?
少額訴訟の訴状が届いたら無視することはできます。
ですが、無視することで、大きなリスクが伴いますので、無視するのは得策ではありません。
少額訴訟の裁判の期日は基本的に平日の昼間のケースばかりですので、無視したくなくても、仕事の都合でどうしても出席できないこともあるでしょう。
ですが、訴状を無視する必要はありません。
どうしても出席できない旨を裁判所に申し立てることで、期日を変更してもらうことも可能ですので、訴状が届いたら慌てることなく冷静に対処していきましょう。
身に覚えのない訴状や、事実に反する訴えであれば、堂々と立ち向かった方が賢明です。
無視することで、相手の訴えを全面的に認めることになりますので、無視はしないようにしてください。たとえ、相手の訴えが事実そのものであったとしても、有利に裁判を進めるためには無視しないようにしましょう。
少額訴訟を無視した場合のリスク2つ
少額訴訟を無視した場合には2つのリスクがありますので、覚えておいてください。
面倒だなと感じても、無視はせずに、冷静に対処することが肝心です。
1.相手の訴え全面的に認めたことになる
少額訴訟の訴状を無視することで、相手の訴えを全面的に認めたことになり、相手の思うような判決が言い渡されてしまいます。
たとえば、借りたお金が5万円だったとしても相手が10万円だったという訴えを起こしていた場合、10万円の返済プラス利息分が取り立てられてしまうことも。
たとえ、訴状の内容が事実だとしても、あなたに事情があり、すぐには返済できない場合でも、すぐに取り立てられてしまうリスクもあるでしょう。
少額訴訟は無視せずにきちんと期日に裁判所に出向いた方が得策です。
あなたの事情に鑑みた判決を言い渡してもらえます。
2.財産を差し押さえられる可能性も
少額訴訟を無視してしまった場合は、相手の言い分を全面的に認めた判決になるため、相手の要望通りに金銭を返済していかなければいけません。
あなたの事情を考慮はしてもらえないため、もしも返済ができない場合は、財産が差し押さえられる危険性があります。
所有している預貯金や不動産、給与などが差し押さえられてしまいますので、少額訴訟を無視する行為は控えるべき行動です。
きちんと裁判所に出向き、返済が困難な事情などを裁判所で主張することで、分割返済などを検討してもらえますので安心できます。
少額訴訟の答弁書は無視してもいい?
「答弁書」とは、裁判所と相手方に、基礎された内容に対して、自分の言い分を伝えるために提出する書面です。
少額訴訟の答弁書は、裁判所から届いた手紙の中に入っています。
答弁書はきちんと期日までに裁判所に提出しましょう。
もしも、相手の訴状の内容に齟齬があるなら、確実に答弁書で反論しなければなりません。
答弁書で反論しなければ、全面的に相手の訴状の内容を認めてしまう結果になってしまいます。
出席の有無にかかわらず答弁書を提出すべき理由
少額訴訟の答弁書は、裁判に出席の有無にかかわらずに書きましょう。
当日出廷したときたとえ、当日欠席したとしても、答弁書に書いた内容を「法廷で弁論したとみなしてもらう」ことができます。(擬制陳述)
つまり、あなたが裁判に出席して反論したことと同じ効力があるのです。
ですから、裁判への出席よりも、答弁書を優先して提出していきましょう。
答弁書の書き方
内容は、あなたの所在地などの基本的な項目、原告側の請求を認めるのかどうか、違う箇所を明確に記したり、あなたの言い分などを答弁書に記載します。
最初の「請求の趣旨に対する答弁」に関しては以下の内容で書くことが多いです。
定型文として利用されるので、裁判所の答弁書の書類には、事前に記載があります
請求の趣旨に対する答弁
- 原告の請求を棄却する。
- 訴訟費用は原告の負担とする。
相手の請求を認めるとき
紛争の要点(請求の原因に対する答弁)の部分に関して記載していきます。
相手の言っていることが正しければ、「すべて間違いありません」をチェック、一部誤りがある部分に関しては、「次の部分が間違っています」もしくは「次の部分は知りません」にチェックをしましょう。
そして相手の主張に相違があるときは、仮に証拠がなくともきちんと記載しておくことが重要です。
また、相手の主張を認めて、分割払いを希望する場合(和解を希望する場合)には、きちんとチェックしてください。返済期日の記載も忘れずに。
ここは相手が受ける受けない関係なく、現実的に自身ができることを書くことが重要です。(月に1万円しか払えないのに、月に3万円支払うなどは記載しないなど)
相手の請求を否認するとき
紛争の要点の欄にご自身の主張を書きます。
(裁判所のフォームでは「私の言い分は次のとおりです。」の欄)
その場合、証拠書類のコピーを一緒に提出してください。
たとえば、答弁書の添付書類に、すでに返済した借金の領収書や振込明細を添付するなどです。
たとえ、公的な証拠でなくても、LINEなどのやりとりで「今日、確かに10万円返済したからね」などの記載があるなら、その部分をスクリーンショットで保存して証拠として提出してみましょう。
裁判では証拠が全てになりますので、証拠もなしに争っても勝てる見込みはありません。できるだけ証拠になりそうなものを見つけて保管しておくようにしましょう。
無視はしないで!少額訴訟の流れ
少額訴訟の一般的な流れを解説します。
一般的な流れ
出典:裁判所
①相手が少額訴訟にて訴えると、数日以内にあなたの元に裁判所から手紙が届きます。
手紙の中身は、相手の訴状のコピーと、口頭弁論期日呼出状、答弁書です。
②まずは訴状の内容をチェックして、相手の言い分が間違っていないかどうかをチェックします。
たとえば、既に完済している借金についてであれば、反論する必要があるでしょう。返済途中にもかかわらずに、全額返済を求められているなら、分割払いを約束しているはずだなどと反論する必要があります。
いずれにしても訴状の中身はきちんと確認し、事実かどうかをまずは見極めてください。
③手紙の中には裁判の期日の記載がありますので、出席できるかどうか予定を確認します。
裁判は平日の昼間ですので、調整ができない場合は、まずは裁判所に相談し、裁判の期日の変更を依頼しましょう。
変更しても出席できそうにない場合は、無視せずに、答弁書を期日までに提出します。
④答弁書の提出期日は、裁判所からの手紙の中に記載がありますので、期日までに確実に提出しましょう。
ただし、答弁書の提出は義務ではありません。
ですが、もしも訴状の内容が事実と異なる場合や、どうしても借金をすぐには返済できないなどの事情がある場合は、分割払いを依頼する旨などを答弁書に記載して提出する必要があります。
⑤答弁書を提出したら、あとは裁判期日に裁判所に出向きましょう。
なお、少額訴訟の場合、代理人で弁護士や司法書士、家族・従業員(裁判所が許可した場合)などが出席することもできます。
通常の裁判では、代理人には原則、弁護士しかなれなせん。
しかし、弁護士に依頼すると当然ながらお金がかかってしまいます。特に少額訴訟の場合は代理人に依頼すると費用倒れになることも。
なお、代理人を立てる場合には、裁判所に代理人申請をしなければいけませんので、忘れないようにしましょう。裁判所が認めれば、代理人を立てることが可能です。
少額訴訟は基本1日で判決まで言い渡されることが特徴です。ですので、なんとか1日だけ都合をつけて出席をするよう調整するとよいでしょう。
代理人許可申請書はこちらからダウンロードできます。
通常訴訟に移行するための申述書を書く
訴えられた側が少額訴訟を拒否することもできます。
少額訴訟か通常の裁判かは、被告側にも選択する権利があるのです。
つまり、あなたが少額訴訟を拒否した場合は、通常訴訟に移行することになります。
訴状の内容に納得できずに、十分な審理を求めたい場合などは通常訴訟を検討してみるといいかもしれません。
ただし、拒否と無視することは違いますので、ただ無視しても少額訴訟を拒否して通常訴訟に移行されたことにはなりませんので、注意が必要です。
通常訴訟を希望したい場合は「通常訴訟移行陳述書」を提出する必要がありますので、覚えておきましょう。
陳述書にサンプルは特にありませんが、以下の内容が含まれていれば問題ありません。
陳述書の提出には期限がありませんが、裁判の期日前に提出する必要があります。
答弁書の中に陳述書が含まれているもののフォーマットが裁判所のホームページにはありますので、利用すると便利です。
通常訴訟移行陳述書が含まれた答弁書はこちらからダウンロードできます。
上のチェックボックスにチェックして提出すれば、通常訴訟に移行しますので、裁判所からの手紙を待ちましょう。
少額訴訟は無視せずに上手に利用して有利にする
少額訴訟に限らずですが、訴訟は無視すべきではありません。
無視することで相手の言い分が全て認められて、あなたには不利な判決が言い渡されてしまいます。
最悪のケースでは財産を差し押さえられるリスクもあるでしょう。
訴訟内容が正しければ、素直に認めて時間を節約しよう
もしも、相手の訴状が全面的に正しければ、答弁書を正しく記載後に提出し、そのまま少額訴訟での判決を待ちましょう。
あなたが病気になって借金の返済が難しい場合は、その旨を答弁書に記載し、分割払いにしてもらうなどの措置を依頼すれば、裁判所は柔軟に対応してくれます。
全面的に訴状の内容が正しければ、無駄に争う必要はありません。
むしろ、時間の無駄になりますので、時間短縮のためにもそのまま少額訴訟で進めて判決を待ってください。
スムーズな審理の完了のためにも答弁書は提出し、できるだけ裁判にも出席するようにしましょう。
弁護士に依頼する
少額訴訟をされたとき、弁護士に依頼したいと思われるかもしれません。
しかし少額訴訟で、弁護士に依頼すると費用倒れになる確率が高いです。(司法書士等も同じ)
ですので、お金のことを気にしないというケース以外は、自分で戦わなければなりません。
9割原告が勝訴するといわれている少額訴訟。
初めての裁判。
自分だけで戦えといわれてもなかなか難しいものです。
そこで、おすすめなのが、弁護士に法律相談だけをするということがおすすめです。
法律相談はだいたい30分5,000円ほどかかりますが、トータル的に考えるとメリットは多いといえます。
判決に納得できない場合は
通常訴訟とは違い、控訴することができません。
もし、納得できないということであれば、同簡易裁判所に対して一度、異議申し立てが認められます。
認められると、同裁判所にて通常の裁判が行われます。
弁護士に依頼する
前提として少額訴訟で、弁護士に依頼すると費用倒れになる確率が高いです。
(司法書士も同じ)
なので可能な限り自分でする、もしくは法律相談を有効に使っていくのがいいかと思います。
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まとめ
少額訴訟を無視することは相手の言い分を全て認めることになり、あなたに不利な判決が出てしまうので、得策ではありません。
裁判所の手紙に書かれている期日までに確実に答弁書を提出し、できるかぎり裁判にも出席していきましょう。
もしも、答弁書の書き方がわからないなどの場合には、司法書士や弁護士に相談するのも一つの手段です。
少額訴訟は1日で審理が完了することが特徴ですので、時間をかけずに問題を解決できるでしょう。
もしも、ある日突然裁判所から少額訴訟の手紙が届いても、無視することなく、冷静に対処することが大切です。
あらかじめ弁護士保険などで、今後の様々なリスクに備えておくことをおすすめします。
木下慎也 弁護士
大阪弁護士会所属
弁護士法人ONE 代表弁護士
大阪市北区梅田1丁目1-3 大阪駅前第3ビル12階
06-4797-0905
弁護士として依頼者と十分に協議をしたうえで、可能な限り各人の希望、社会的立場、その依頼者らしい生き方などをしっかりと反映した柔軟な解決を図ることを心掛けている。
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