懲戒解雇についての基礎知識【不当解雇に遭った時の3つの対処法】

懲戒解雇は、単純な解雇と違い、「契約違反」や「社内規則違反」、「違法行為」といった労働者の問題行為・不正行為に対する懲戒処分になります。

懲戒処分には

  • 戒告(文書・口頭による注意)
  • 譴責(始末書の提出)
  • 出勤停止
  • 降格・減給
  • 諭旨解雇
  • 懲戒解雇

などがありますが、懲戒解雇はその中で最も重い処分です。

この記事では、どのようなことが懲戒解雇にあたるか、懲戒解雇となると退職金や転職にどんな影響があるのか、不当な懲戒解雇を受けた時にどのような対処をすればよいかについて解説します。

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目次

懲戒解雇とは? 普通解雇や退職勧奨との違いについて

普通解雇は、契約違反、規則違反を理由に、会社と労働者の間で結ばれた労働契約を解約することをいいます。

例えば、能力不足や勤務態度・勤怠不良(無断欠勤・遅刻等)、協調性の欠如等が挙げられます。

「労働契約で約束された労務提供ができない」という労働者に対しての評価を理由にしているため、不正行為・問題行為を理由としている懲戒解雇とは性質が異なります。

普通解雇

労働者の契約違反・規則違反といった「」に対する評価を理由にした解雇

懲戒解雇

労働者の不正行為・違法行為といった「行為」に対する評価を理由にした解雇

会社側が労働者に対して一方的に労働契約の解約を伝えるものであり、労働者の承諾は必要ありませんが、普通解雇は

  • 客観的にみて合理的な理由がある
  • 社会通念上の相当性がある

という2つの要件を満たす必要があります(労働契約法第15条)。

退職勧奨は会社側から労働者への労働契約解約の申し入れであり、労働者との合意による雇用契約の終了を目標とすることをさします。

退職勧奨は、会社側が労働者に対して自発的に退職することを促すものの、あくまでお願いしている立場であり、労働者はこれに応じる義務はありません。

懲戒解雇を受けると、転職や再就職に不利になるのか?

日本において懲戒解雇はめったに受けるものではなく、よほどのことではないと懲戒解雇にならないため、転職希望先の採用担当者は自社でも同じ事態になるのではないかと採用を見送る可能性があります。

法律上、懲戒解雇の事実を転職先に伝える義務はありませんが、後々それが再就職先に知られると会社からの信頼を著しく損なうでしょう。

懲戒解雇の理由が転職先の業務に影響を与えるものであれば、経歴詐称を理由に解雇の可能性もあるため、面接時や入社後には注意が必要です。

逆に言えば、懲戒解雇の理由や状況によって、転職の影響は軽減されるということです。

重大な規則違反や犯罪行為に関連する懲戒解雇は、転職や再就職において特に厳しい影響を及ぼす可能性が高い一方、比較的軽微な違反に基づく理由や転職先の業務に全く影響を与えないと考えられる理由による解雇の場合は、影響は大きくないと言えます。

また、スキル、経験、資格によっても、懲戒解雇の影響は変わります。

過去の実績や専門知識が強力であれば、新たな雇用主はそれを評価し、懲戒解雇の問題を軽視することがあります。

懲戒解雇を受けると退職金はもらえない?

就業規則や退職金規定で退職金制度を設けている会社は、それに基づいて退職金を支払わなければならないというのが原則です。

これは懲戒解雇処分を受けたうえでも同様です。

しかし、就業規則や退職金規定に減額事由や不支給事由が定められていて、かつ退職者に著しい背信行為があった場合、減額や不支給が認められるケースがあります。

退職金がもらえるか否かは懲戒解雇に該当する問題行為や不正行為の内容によって判断されます。

懲戒解雇を言い渡されても有給休暇は消化できるの?

懲戒解雇が即時解雇か予告解雇かによって有休消化できるかどうかが決まります。

即時解雇は文字通り、解雇を言い渡す当日に雇用関係を終了させる解雇方法のことです。

予告解雇は、30日以上前に事前に予告して解雇する方法のことです。

懲戒解雇であっても、会社側は原則として少なくとも30日前には解雇予告をしなければならず、予告しない場合には30日分以上の平均賃金(予告手当)を支払わなければなりません(労働基準法第20条1項)。

しかし、「労働者の責めに帰すべき事由」に該当する場合には、解雇予告を行わずに即時解雇が認められます。

懲戒解雇だからといって常に「労働者の責めに帰すべき事由」があるとは言えませんが、懲戒解雇の際には即時解雇が通常であるため、その時点で有給休暇は未消化のまま消滅します。

懲戒解雇が認められる判断基準について

懲戒解雇は「客観的に合理的な理由」があり、その処分が「社会通念上相当であること」が求められます。

合理的理由とは、労働者の行為が企業秩序を著しく乱すものかどうかで判断されます。

具体的には、就業規則の懲戒解雇事由に該当するかどうかであり、さらにその事由に該当しても社会的に見て懲戒解雇処分が適当かどうかで判断されます。

法律的に明確な基準はありませんが、懲戒解雇になり得る行為の主なものは下記の6つになります。

  • 経歴詐称
  • 業務上横領
  • 転勤の拒否など重要な業務命令の拒否
  • 会社の名誉を著しく害する重大な犯罪行為
  • セクハラ・パワハラ
  • 無断欠勤

① 経歴詐称

経歴詐称は信用に関わる重大な違反であり、雇用主は正確な経歴情報を提供することが期待されます。 虚偽の経歴情報は信頼を損ね、採用の妥当性に影響を与えるため、懲戒解雇が妥当とされることがあります。

② 業務上横領

業務上横領は会社の財産や信用を損なう重大な違反であり、信頼関係が壊れる可能性が高く、会社の損害も通常甚大であることが多いため、懲戒解雇が妥当とされることがあります。

③ 転勤の拒否など重要な業務命令の拒否

重要な業務命令や転勤などを拒否することは、組織運営に深刻な影響を与える可能性があり、業務の円滑な遂行に支障をきたすため、懲戒解雇が妥当とされることがあります。

④ 会社の名誉を著しく害する重大な犯罪行為

業務と関わりのないプライベートな私生活上の行為であっても、殺人や傷害、強盗、性犯罪といった会社の名誉を著しく損なう重大な犯罪行為は、会社の信頼とイメージに深刻な影響を与える可能性があるため、懲戒解雇が妥当とされることがあります。

⑤ セクハラ・パワハラ

セクハラやパワハラは従業員の人権や安全を脅かす行為であり、企業の倫理や法的責任に違反する重大な問題です。これらの行為は懲戒解雇の正当な理由となります。

⑥ 無断欠勤

無断欠勤は業務の円滑な運営に深刻な影響を与える可能性があり、適切な通知や理由承認なしに何度も欠勤することは違反行為であり、懲戒解雇の妥当な理由となり得ます。

一般的な懲戒解雇までの流れ

1)問題行動の調査と精査

該当者の問題行動や規律違反について、関係者の聞き取り調査や証拠の収集が行われます。

これらに基づかない懲戒解雇は不当解雇にあたる可能性があるため、会社は事実確認を必ず行う必要があります。

2)該当従業員からの事情聴取

会社が該当従業員に、問題行動について弁明の機会を与えます。

弁明の機会の有無は、裁判所が懲戒解雇か否かを判断するポイントの一つであるため、どんなに悪質な問題行動であったとしても必ず設けなければなりません。

3)就業規則に反するかの確認

就業規則に懲戒解雇に関する規定があるか、当該問題行動が就業規則に反するかを確認します。

なお、同一の行為について、すでに他の懲戒処分(戒告、譴責、出勤停止、降格、減給など)が行われた場合は、その同一の行為を理由に懲戒解雇することはできません。同じ行為に対して二度処分することは二重処罰となるからです。

また、問題行動が起きた後に設けられた規則はその問題行動に対して適用されてはいけません(不遡及の原則)。

4)従業員への懲戒解雇の通知

会社が該当従業員に対して懲戒解雇の意思表示(通知)をします。

通常は「懲戒解雇通知書」という書面で行われ、手渡し、郵送、メール等で渡されます。

5)職場内への懲戒解雇の周知

職場内へ懲戒解雇の事実が通知されます。

懲戒処分は、問題行動に対してこれを戒め、再発の防止と社内秩序の回復のために行われます。

懲戒処分にあたる事由があったことやそれに対して会社が懲戒処分を行った事実を社内に周知することは、他の従業員に対して同様の行為を行わないよう戒め、再発防止や従業員の規則遵守意識の向上が期待できます。

また、問題行動や就業違反に対して、会社が懲戒処分という形で厳正に対応するということが他の従業員が知ることで、会社に対しての信頼が上がり、モチベーションの向上や社内秩序の向上が図られます。

なお、懲戒処分該当者の氏名は、再発防止・企業秩序維持の観点から氏名を公表する必要性が強い例外的な場合を除いて、公表されないことが通常です。

6)退職時の手続き(離職票の発行など)

懲戒解雇であっても、会社は失業保険の受給ができるよう離職票を発行します。

懲戒解雇の場合は「自己都合退職」として受給できる時期や受け取ることができる日数について不利益を受けることがあります。

その他は通常の退職や普通解雇と同じく失業保険の手続きを行います。

会社側の退職手続きの例
  • 社会保険(健康保険、厚生年金)の資格喪失手続き
  • 住民税の特別徴収の中止手続き
  • 源泉徴収票の交付
  • 最終給与の支払い
  • 年金手帳の返還

懲戒解雇になりやすいケース

懲戒処分の中でも特に懲戒解雇になりやすいケースとして下記の3つがあります。

① 横領や着服などの犯罪行為

犯罪行為の中でも社内における地位や役職を利用した犯罪については特に懲役解雇になりやすいといえます。

② 社内や取引先との浮気や不倫

秩序や風紀を乱す行為は人間関係に悪影響を及ぼす可能性があるため、懲戒解雇の可能性が高くなります。

通常、社内不倫は私生活上の範囲の行為と認められるため原則として懲戒解雇とはなりにくいですが、社内で不埒な行為に及んだ場合や、不倫関係の事実が社外に漏れたりして社会的信用を傷つけたり正常な業務運営を阻害したと認められる場合は、懲戒解雇の可能性が高くなります。

③ 職種によっては交通ルール違反も懲戒解雇になりやすい

運送会社のドライバーやタクシー運転手と言った職業運転手は、交通ルール違反によって懲戒解雇の可能性があります。

業務時間外の私生活上であっても、飲酒運転や悪質な交通違反があった場合は、会社の社会的信用を著しく傷つけ会社に損害を与えることになるため、懲戒解雇の可能性が高くなります。

懲戒解雇が不当となるケース

先述の通り、下記2件の要件が満たされていない限り懲戒解雇は認められません。

  • 客観的に見て合理的理由がない場合
  • 社会通念上相当と認められない場合

例えば、未婚の男女の社内恋愛であれば、直接的に業務に影響を与えない限り、恋愛関係は個人的な私生活の範疇であるため、解雇の理由としては合理的ではありません。

不法行為や問題行為があったとしても、それが非常に軽微で社内秩序を乱したと言えないようなものであれば、それに対する制裁としての懲戒解雇は不当となる可能性があります。

不当な懲戒解雇にあった場合の3つの対処法

①就業規則や雇用契約書を確認・確保する

②解雇理由証明書を会社に請求する

③弁護士に相談する

① 就業規則や雇用契約書を確認・確保する

懲戒解雇をする場合、該当理由が就業規則に記載されていなければなりません。

まずは懲戒解雇された理由が就業規則や雇用契約書に記載されているかを確認しましょう。

手元にない場合は就業規則を見せるよう会社に依頼します。

就業規則は労働者に周知されていなければ効力が生じないため、断られた場合は周知されていないと判断され規則自体が無効になります。

② 解雇理由証明書を会社に請求する

解雇理由証明書とは、解雇理由が具体的に記載された書面です。

就業規則のどの条項に該当したのかという点やそれに至る経緯、事実関係が記載されるため、後に会社と争うことになった場合に重要な資料になります。

解雇予告された従業員が解雇理由証明書を請求した場合、会社は遅滞なくこれを交付する必要があります(労働基準法第22条2項)。

請求した事実が証拠として残るよう、請求はメール等で行うのが望ましいでしょう。

③ 弁護士に相談する

法的根拠に基づいて今後の対応を検討するためにも、懲戒解雇が不当であると感じる場合にはなるべく早く弁護士に相談しましょう。

懲戒解雇の無効を争う際に、引き続きその会社で働くのか、それとも退職は受け入れて逸失利益や慰謝料と言った金銭的な解決策を引き出すのかといったゴールを明確にした上で計画を立てることができます。

労働基準監督署に相談することに意味はあるのか

労働基準監督署(労基署)とは、企業が労働基準法を守っているか監督する機関です。

労働者からの相談・通報によって労基署が企業に指導勧告や是正勧告を行ったり、場合によっては立ち入り調査を行う可能性があります。

しかし、労基署は労働基準法に反した労働について改善指導を行う立場であり、労働契約法について定められている解雇については相談に乗るくらいしか対応できません。

不当解雇についてアドバイス程度はもらえる可能性がありますが、実行力・強制力を持っていないので、それならば最初から弁護士に相談し、早めに証拠収集や戦略やスケジュールの組み立てに動いたほうが良いでしょう。

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まとめ

いかがでしたでしょうか。

懲戒解雇は問題行動、規則違反に対する懲戒処分すなわち罰としての性質を持っています。そのため解雇の要件は厳格です。

普通解雇に比べてその後の生活への影響が大きいため、懲戒解雇された場合は労働法に詳しい弁護士に早めに相談することをおすすめします。

弁護士

畝岡 遼太郎 弁護士

大阪弁護士会所属

 

西村隆志法律事務所

大阪市北区西天満2丁目6番8号 堂島ビルヂング501号
TEL:06-6367-5454

ひとりひとりに真摯に向き合い、事件解決に向け取り組んでます。気軽にご相談が聞けて、迅速に対応できる弁護士であり続けたいと考えております。 

※事前予約いただければ平日夜間や土日にも対応可能です。

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