私人逮捕とは、警察官などの捜査機関に属さない一般人が、現行犯を逮捕できる制度のことです。
電車内での痴漢事案で、私人逮捕が事件解決に貢献しているという統計があり、市民の力で犯罪を防ぐ重要な手段となっています。
しかし、誤った判断で行動すると、逆に訴えられたり、損害賠償を請求されたりするリスクもあります。
本記事では、私人逮捕の正しい要件とトラブルを避けるためのポイントについて、具体的に解説します。
知識がないまま私人逮捕を行うと、取り返しのつかない事態を招く可能性もあるため、ぜひ最後までご覧ください。
記事に入る前に・・・
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私人逮捕とは法律で認められた正当な行為
一般市民による犯罪者の逮捕を指す、いわゆる「私人逮捕」は、法律で認められた正当な行為です。
ドラマなどでも、一般人が犯人を取り押さえたりするシチュエーションを見たことがあります。
私人逮捕についての要件は厳格に定められており、むやみに行うと逆に法的責任を問われる可能性があることに注意しましょう。
私人逮捕は「現行犯の逮捕」が唯一許される方法
私人逮捕については、憲法や法律で、明確に認められています。
たとえば、現行犯逮捕は、日本国憲法第三十三条において、以下のように定められています。
何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。
(引用元:e-GOV法令検索)
ここでは、「現行犯として逮捕される場合を除いては」と規定されており、令状主義の例外として認められています。
また、刑事訴訟法第二百十三条においては、以下のように定められています。
現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。
つまり、私人による逮捕は、現行犯の場合に限って許可されているのです。
これは、現行犯の場合は犯罪の事実が明白で、人違いや誤認の危険性が低いためです。
ただし、私人が逮捕した場合は、直ちに警察官や検察官に引き渡す義務があり、自ら取り調べすることは認められていません。
私人逮捕が注目される理由
スマートフォンの普及により、誰もが簡単に動画を撮影・配信できる時代となりました。
私人逮捕の様子が頻繁にSNSで共有され、一般市民の間でも、関心が高まっています。
特に、痴漢や万引きなどの現行犯に対する私人逮捕は、防犯カメラや目撃者が少ない状況では、事件解決に重要な役割を果たしています。
一方で、その手続きや要件について正しい理解がないまま行動すると、私人逮捕をした側が法的責任を問われるリスクもあるため、慎重な対応が必要です。
また、2023年末以降、私人逮捕の様子を撮影・投稿するYouTuberが相次いで逮捕される事態が発生しました。
これらのケースでは、収益目的で意図的に私人逮捕の機会を作り出したり、逮捕の様子を撮影・公開したりする行為が問題視されています。
私人逮捕は、緊急かつやむを得ない場合の例外的措置です。
その趣旨を踏まえれば、意図的に機会を作り出すことは、制度の目的に反するものと言えます。
また、逮捕時に過剰な実力行使が行われたり、逮捕された人物の映像を公開することで人権侵害したりする事例もあり、それらも重大な問題となっています。
私人逮捕における実力行使について
逮捕時の実力行使は、社会通念上必要かつ相当と認められる限度内であれば、正当行為として許容されることがあります。
例えば、逃走を防ぐために犯人の腕をつかむ程度の行為は認められますが、抵抗していない相手に対して必要以上の力を加えることは違法です。
判断基準として、犯人の体格や抵抗の程度などが考慮されます。
同じように、私人による手錠の使用は、原則として認められていません。
しかし、現行犯逮捕の際の実力行使として、状況に応じて認められる場合があります。
私人逮捕が認められる条件と具体例
私人逮捕は必ずしも「合法」「良いこと」というわけではないのですね。
私人逮捕には厳格な法的要件が定められており、これらを満たさない逮捕は違法とみなされます。
逮捕者が民事・刑事上の責任を追及される可能性もあるため、法的要件を正確に理解することが重要です。
現行犯逮捕と準現行犯逮捕
私人逮捕は現行犯および準現行犯の場合にのみ認められます。
時間的・場所的な接着性が必要で、犯罪行為との関連性が明白でなければなりません。
単に犯罪を目撃しただけでは不十分で、逮捕の必要性が客観的に認められる状況であることが必要です。
また、逮捕時において、社会通念上、必要かつ相当と認められる限度内での実力行使は許容されますが過剰な実力行使は違法となります。
逮捕後は速やかに警察官や検察官に引き渡すことが義務付けられており、この引き渡しが遅れると逮捕監禁罪に問われる可能性もあります。
現行犯逮捕はできるのは「明らかに犯罪者」と分かる場合のみ
現行犯逮捕が認められるのは、目の前で犯罪が行われている、または行われた直後の状況に限られます。
この場合、犯人であることが明白であり、犯人が逃げたり時間が経ったりする前に、すぐに捕まえる必要があります。
準現行犯逮捕に該当する4つのケース
刑事訴訟法第212条第2項に基づく準現行犯は、以下の場合に認められます。
- 犯人として追われている場合
- 被害品や凶器を所持している場合
- 身体や服に犯罪の明らかな痕跡がある場合
- 呼び止められて逃走しようとする場合
たとえば、泥棒が金品を盗んだ後、現場近くでそれを持ったまま発見されて逮捕される、などのケースがあります。
軽微な犯罪は「逃亡のおそれ」などの条件が必要
30万円以下の罰金、拘留または科料に当たる軽微な犯罪の場合、私人逮捕は更に厳しい条件が課されます。
犯人の住居や氏名が明らかでない場合や、逃亡のおそれがある場合にのみ認められます。
この規定は、軽微な犯罪に対し、過度な人権制約を防ぐためのものです。
軽微な犯罪に該当する例
軽微な犯罪とは、具体的に以下のようなケースが該当します。
- 過失傷害罪
- 侮辱罪
- 道路交通法違反
- 軽犯罪法違反
これらの軽微な犯罪の場合、犯人の身元が判明している、または逃亡のおそれがないケースでは、現行犯であっても私人逮捕は認められません。
私人逮捕の成功例
適法な私人逮捕の典型例として、店舗での万引きや電車内での痴漢行為への対応があります。
万引きの場合、商品をバッグやポケットに入れた時点で窃盗罪が成立し、その場での逮捕が可能です。
痴漢の場合も、現認による明白な証拠があれば私人逮捕が認められます。
ただし、いずれの場合も逮捕の必要性が認められ、かつ社会通念上相当な実力行使の範囲内でなければなりません。
過剰な力の行使や必要性のない逮捕は、違法となる可能性があります。
報酬や謝礼を目的とした私人逮捕について
私人逮捕は、目の前で起きた犯罪を食い止め、犯人を確保するための緊急措置として法律で認められている制度です。
懸賞金の発表されている犯人以外に対し、警察から謝礼金が支払われることはありません。
あったとしても、感謝状程度にとどまることが一般的です。
一方、報酬目的で意図的に私人逮捕の機会を作り出す行為は、制度の趣旨に反し、違法な逮捕となる可能性があります。
このような行為は慎むべきだといえるでしょう。
私人逮捕におけるリスクと注意点
私人逮捕は法律で認められた行為です。
しかし、要件を満たさず行き過ぎた対応をした場合、逮捕した側が刑事責任を問われたり、民事上の損害賠償義務を負ったりするリスクがあります。
どのようなリスクが考えられるのでしょうか?
誤認逮捕のおそれや、自分自身の怪我のリスクなどが考えられます。
誤認逮捕のリスクとは
私人逮捕は専門的な知識や経験のない一般市民が行うため、誤認逮捕のリスクが高くなります。
誤認逮捕された人は、身に覚えのない罪で身柄を拘束されるだけでなく、仕事を失うなどの重大な不利益を被る可能性があります。
誤認逮捕をした側は、刑法上の逮捕罪に問われる可能性があるほか、被害者から慰謝料などの損害賠償を請求されるおそれがあります。
ただし、状況から見て犯人だと信じる相当な理由があった場合は、責任を追及される可能性は低くなります。
誤認による責任を回避するために
誤認逮捕を防ぐには、以下の点を確認する必要があります。
- 目の前で犯罪行為を確認する、または明白な証拠が存在する
- 準現行犯の要件である追跡や証拠の存在が明確である
- 犯罪者がその場で取り押さえられない場合に、逃亡やさらなる被害を防ぐための緊急性がある
これらの確認を怠ると、誤認逮捕による法的責任を問われる可能性があります。
行き過ぎた取り押さえが違法とされるケース
私人逮捕では、抵抗や逃亡を防ぐため、必要最小限の実力行使は認められます。
しかし、相手が抵抗していないのにもかかわらず暴行を加えたり、過度に拘束したりする行為は違法です。
社会通念上、逮捕に必要かつ相当と認められる限度を超えた実力行使は、暴行罪や傷害罪に問われる可能性があります。
私人逮捕が違法になる具体例
以下のようなケースの私人逮捕は、違法となる可能性があります。
- 犯人の住居や氏名が明らかで逃亡のおそれがない軽微な犯罪の場合
- 犯行からかなりの時間が経過している場合
- 犯行現場から離れた場所での逮捕
- 逮捕後、直ちに警察官へ引き渡さず、勝手に自分で取り調べする
また、収益目的で意図的に逮捕の機会を作り出したり、相手を追い詰めて脅迫したりする行為は、私人逮捕の制度趣旨に反します。
逮捕の様子を撮影してSNSで公開する行為も、逮捕された人のプライバシー権を侵害するおそれがあり、違法性を問われる可能性があります。
なお、指名手配犯を発見した場合でも、それが現行犯に該当しない限り、私人逮捕はできません。
私人逮捕後に必要な手続き
私人逮捕をした後はどのように行動すべきなのでしょうか?
私人逮捕を行った場合、法律で定められた厳格な手続きに従う必要があります。
手続きを怠ると、たとえ最初の逮捕が適法であっても、その後の行為が違法とみなされる可能性があります。
私人逮捕後は「直ちに警察に引き渡す」ことが義務
刑事訴訟法第214条では、私人が現行犯人を逮捕した場合、直ちに検察官または警察官に引き渡すことを義務付けています。
この「直ちに」という要件は厳格に解釈され、逮捕後に勝手にその場で事情聴取したり、被害弁償の交渉をしたりすることは認められません。
引き渡しの際、警察官は逮捕者の氏名や住所、逮捕の状況を聴取しなければならず、必要に応じて逮捕者に警察署への同行を求める場合があります。
引き渡しの遅延は「逮捕罪」になるリスクがある
正当な理由なく警察官への引き渡しが遅れた場合、私人逮捕は違法となります。
この場合、逮捕した人は逮捕罪や逮捕監禁罪に問われる可能性があります。
例えば、店舗で万引き犯を私人逮捕した際、警察へ引き渡す前に店舗側が独自に事情聴取や弁償交渉を行うことは違法です。
私人逮捕はあくまでも捜査機関に引き渡すまでの一時的な措置にすぎず、それ以上の権限は認められていません。
誤認だった場合の責任を最小限に抑える方法
誤認逮捕のリスクを最小限に抑えるためには、逮捕時の状況を具体的に記録しておくことが重要です。
たとえ誤認であっても、犯人だと信じる相当な理由があれば、民事・刑事上の責任を免れる可能性があります。
また、逮捕の際は必要最小限の実力行使にとどめ、速やかに警察に引き渡すことで、リスクを軽減できます。
万が一、誤認が判明した場合は、直ちに警察や弁護士に相談し、適切な対応を取ることが重要です。
私人逮捕は最後の手段【警察への通報を第一に】
私人逮捕は法律で認められた行為ですが、一般市民が行うには、多くのリスクが伴います。
専門的な訓練を受けていない状況で、安易に行動を起こすことは、得策ではありません。
まずは警察への通報を優先するなど、より安全な選択肢を考える必要があります。
私人逮捕は勇敢な行動ですが、まずは安全を優先すべきですね!
犯人を止めるよりも警察を呼ぶほうがリスクは少ない
目の前で犯罪が発生した場合でも、まずは110番通報を優先すべきです。
痴漢や万引きなど、目撃者が少なく犯人の特定が難しい犯罪においては、私人逮捕が事件解決に重要な役立つことがあります。
しかし、それはあくまでも緊急やむを得ない場合の最終手段です。
それよりも、目撃証言を記録する、防犯カメラの映像保存を依頼するなど、証拠保全に協力するほうが安全で効果的です。
このような犯罪の制止や通報による協力も、事件解決の一助となります。
自分や他人の安全を最優先に考える
私人逮捕を行う場合、犯人が凶器を所持していたり、予期せぬ暴力的な抵抗に遭ったりするかもしれません。
また、誤認逮捕や過剰な実力行使により、逆に法的責任を問われる可能性もあります。
判断に迷う場合は、自分や周囲の人々の安全を第一に考え、警察の到着を待つべきです。
治安の維持は確かに重要ですが、必ずしも私人逮捕という手段を取る必要はありません。
もしも自分自身が私人逮捕されてしまったら
自分自身が、冤罪等で私人逮捕されてしまった場合、必要以上に抵抗しない方が無難だといえます。
怪我のリスクもありますし、私人逮捕時の実力行使に正当性があったと考慮されてしまう恐れがあるためです。
そして速やかに弁護士に相談することが重要です。
弁護士は、取り調べに対する適切な対応方法のアドバイスや、必要に応じて検察官との交渉を代行することが可能です。
また、私人逮捕そのものの違法性を主張することも可能です。
特に、「逮捕時の状況から社会通念上の相当性を欠く実力行使があった場合」また「警察への引き渡しが遅延した」というようなケースでは、違法な逮捕として損害賠償請求が認められる可能性もありますので、合わせて弁護士に相談してみましょう。
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*1 件数は2023年3月現在 *2 2013年~2022年。単独型弁護士保険として。2023年3月当社調べ。*3 99プランの場合 *4 初期相談‥事案が法律問題かどうかの判断や一般的な法制度上のアドバイス 募集文書番号 M2022営推00409
まとめ
私人逮捕は、現行犯逮捕に限って認められる例外的な制度です。実施する場合は、現行犯や準現行犯の要件を満たしているか、また逮捕の必要性について、慎重に判断しましょう。
また、逮捕後は、直ちに警察官に引き渡すことが義務付けられています。
ただし、安易な正義感による私人逮捕は避け、可能な限り警察への通報を優先することが賢明です。
犯罪の制止や証拠を押さえるといった協力も、立派な社会貢献となるでしょう。
弁護士 黒田悦男
大阪弁護士会所属
弁護士法人 茨木太陽 代表
住所:大阪府茨木市双葉町10-1
電話:0120-932-981
事務所として、大阪府茨木市の他、京都市、堺市にて、交通事故被害者側に特化。後遺障害認定分野については、注力分野とし、医学的研鑽も重ねています。
また法人の顧問をはじめ事業上のトラブルにも対応をしています。
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