有給休暇は買取可能!? 買取が認められる3つのケースについて

職場を退職するにあたって、会社の人員不足に気を使ってぎりぎりまで働いたり、引き継ぎのスケジュール調整で退職日直前になってしまったりなど、有給休暇を消化できそうにないという場面にあうことがしばしばあります。

退職日までに有給休暇を消化できない場合、雇用主に有給休暇を買い取ってもらうことはできるのでしょうか。

この記事では

  • 有給休暇の買い取りは原則として「違法」
  • 例外で認められるケースに対応していれば有給休暇の買取は可能
  • 有給休暇を買い取ってもらう際の注意点

について解説します。

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目次

有給休暇の平均付与日数や取得率について

有給休暇は、「心身の疲労を回復しゆとりある生活」を実現することを目的とし、勤続期間によって取得できる日数が法律で定められています。

厚生労働省の調査によると、令和3年の有給付与日数の平均が18.0日、有給取得日数は平均で10.1日、取得率は56.3%になります。

その年に取得した有給休暇の半分程度しか消化されておらず、業種別・企業規模別に見ても取得率80%を超える例がなく、有給を完全に消化している事例は非常に稀であるとわかります。

厚生労働省 令和3年就労条件総合調査の概況

有給休暇の買い取りはしてもらえる?

有給休暇の買取は法律で原則禁止されています。

買取を法律で認めてしまうと雇用主が労働者に対して「給料を払う代わりに休みを取らせずに働かせる」可能性があるためです。

先述の通り、有給休暇は労働者の「心身の疲労を回復しゆとりある生活」を実現することを目的としているため、有給休暇の買取はこの目的に反することになります。

しかし、買取の禁止はあくまで原則であるため、例外に該当すれば買取が認められるケースがあります。

就業規則に記載があれば可能な場合も

就業規則に有給休暇の買取について記載していることがありますので、まずは就業規則を確認しておきましょう。

記載がなくても退職者の申し出があった場合に個別に対処することもあります。

これは有給休暇の買取が原則禁止であり、その例外に対してどのような対応をとるかは企業側の判断に委ねられているためです。

買取可能な3つのケース

法律で定められた日数を上回る有給休暇

勤続期間が6ヶ月以上かつ全労働日の8割以上出勤した場合、勤続期間に応じて有給休暇が付与されます。(労働基準法第39条)

この法律で定められた日数を上回る有給休暇がある場合は、法律の制限を受けないため買取が可能です。

年次有給休暇の付与日数

雇入れの日から起算した勤続期間付与される有給日数
6ヶ月10日
1年6ヶ月11日
2年6ヶ月12日
3年6ヶ月14日
4年6ヶ月16日
5年6ヶ月18日
6年6ヶ月以上20日

退職時に残っている有給休暇

退職によって労働者が有給休暇を取得する機会がなくなるため、退職までに消化しきれない有給がある場合、雇用主と退職者双方の合意があれば買い取りが可能です。

時効になった有給休暇

年次有給休暇は2年を過ぎるとその権利が消失します。

労働者は消失してしまった有給休暇を消化できないため、代わりに消失した有給休暇に対して日数に応じた金銭を支払うことは認められます。

有給休暇の買取における注意点

買取可能なケースはあくまで例外的に認められているというもので、労働者が雇用主に対して有給休暇の買取を請求する権利はありません。

また、雇用主に対して有給休暇の買取を義務付ける法律もありません。

トラブルを避けるため最終的に有給休暇を買い取るケースが少なくないだけで、有給休暇の買取に応じるか否かは雇用主の判断に依るため、必ずしも有給休暇を買い取ってもらえるわけではないということを覚えておきましょう。

「制度上買取はできない」「過去に前例がない」といって買取を拒否する可能性がありますが、未消化の有給休暇がある場合は有給休暇の取得は労働者の権利であることをしっかり伝える必要があります。

買取に応じない場合は退職日をずらして有給休暇を消化するという手段もありえます。

また、買取に応じた場合でも、その額は雇用主が自由に決めることができます。

有給休暇の価格は?

有給休暇の買取額はいくつかの決め方がありますが、主な決め方は下記の3つになります。

1 平均賃金で計算

平均賃金で計算する場合、過去3ヶ月の賃金を日数で割り、1日の平均額を算出して、それを有給休暇の買取額として算出します。

2 通常賃金で計算

所定の労働時間を基に算出します。

時給制の場合は一日の所定労働時間数をかけて算出し、月給制の場合は月の所定労働日数で割り算出します。

3 標準報酬月額の日割り計算

標準報酬月額は健康保険や厚生年金の保険額を決定するときに用いられる月額賃金のことです。

これを基に一日の給与を算出し、買取額とします。

標準報酬月額は一年間変わらない数字が用いられるため、退職するタイミングによって有給休暇の買取額が変わることはありません。

上記3つは買取の際によく使われる主な算出方法で、必ずしもいずれかが用いられるわけではありません。

先述の通り、有給休暇の買取は雇用主が任意で行うものなので、例えば「買取金額は一律5,000円」と設定することも可能です。

買取額の算出方法は就業規則で決めている場合もありますし、退職時に都度算出する場合もありますので、まずは就業規則を確認し、記載がない場合は上司に相談するようにしましょう。

有給休暇の買取代金は給与になる?

有給休暇の買取を行った場合、そのお金は原則として「賞与」として扱われます

「退職金(退職所得)」として扱われる方が税金・保険料の面で有利ですが、「時効になった有給休暇」「法律で定められた日数を上回る有給休暇」は給与所得に分類されるため、買い取ってもらった有給休暇にかかる所得税は給与所得と同じ税率で引かれます。

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丸山弁護士

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まとめ

いかがでしたでしょうか。

  • 有給休暇は原則買取不可
  • 例外に該当していれば買取可能だが、雇用主に対して義務はない
  • 有給休暇の買取を希望する際は就業規則を確認しておく

という点に注意して、未消化の有給休暇を残さないようにしましょう。

消化しきれない有給休暇がある場合は、まず就業規則を確認し、記載がない場合でも雇用主側と交渉できるよう「有給休暇の取得は労働者の権利であること」を覚えておきましょう。

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弁護士
東拓治弁護士

東 拓治 弁護士
 
福岡県弁護士会所属
あずま綜合法律事務所
福岡県福岡市中央区赤坂1丁目16番13号上ノ橋ビル3階
電話 092-711-1822

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