「さて、お昼休憩としますか!」
重い腰を上げ、仕事中にふと立ち上がった瞬間・・・
「ギグッ!」
体中に響き渡る激痛・・・
あ、歩けない・・・
痛い・・・
立てず、這いつくばらなくては移動ができない・・・
コロナ渦を経て、在宅勤務が増え、通勤することも少なくなり、運動が減ったこともあり、仕事中は座りっぱなしの方も多いのではないのでしょうか。
その影響からか腰への負担が増えて、「ぎっくり腰」を発症してしまったという声をよく耳にします。
もし、業務の影響でそのような状態になってしまった場合、その後も仕事を続けるにあたり今までと同様のパフォーマンスを出すことが難しいため、まずはその症状を抑えなくてはならないですよね。
治療していくにあたり、もしかすると
仕事の影響で「ぎっくり腰」になってしまったのだから労災でおりるのかもしれない!?
と思われる方もいらっしゃるのではないのでしょうか。
この記事では、業務中にぎっくり腰になり、業務中に起きたからこそ、「労災」で費用が賄うことができるのか、どうなのか。
また、できる場合には、どういう場合なのかを詳しくご説明いたします。
記事に入る前に・・・
だけど費用的に無理・・・という時代は終わりました。
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ぎっくり腰・腰痛は労災認定される?基準は?
ぎっくり腰や腰痛って労災になるんですか?
腰痛が業務上のものとして労災認定できるかを判断するために、「業務上腰痛の認定基準」を厚生労働省で定めています。
基準としては、①「災害性の原因による腰痛」と②「災害性の原因によらない腰痛」の2種類あり、突発的かそうでないかで区分されています。
① 災害性の原因による腰痛
負傷などによる腰痛で、以下2つの要件を満たすものが対象です。
- 腰の負傷またはその負傷の原因となった急激な力の作用が、仕事中の突発的な出来事によって生じたと明らかに認められること
- 腰に作用した力が腰痛を発症させ、または腰痛の既往症・基礎疾患を著しく悪化させたと医学的に認められること
<事務職員に発生した災害性の腰痛>
Aさんは、会社の倉庫内の狭いスペースから、約10kgの重さの荷物を無理な姿勢のまま運びだそうとし、荷物を持ち上げた瞬間に腰に激しい痛みを覚え、そのまま動けなくなった。
その後、病院へ搬送され、腰部捻挫の診断を受けた。
<判断>
Aさんの腰痛は、荷物が詰まってほとんど身動きが取れないような狭い倉庫内で、腰に無理のかかる姿勢で目的の荷物を持ち上げたことによって、腰の筋肉へ強い異常な負荷がかかったと認められるため、労災認定された。
厚生労働省
② 災害性の原因によらない腰痛
突発的な出来事が原因ではなく、重量物を取り扱う仕事など腰に過度の負担のかかる仕事に従事する労働者に発症した腰痛で、作業の状態や作業期間などからみて、仕事が原因で発症したと認められるものは「災害性の原因によらない腰痛」とされます。
<電気工事労働者に発生した非災害性の腰痛>
Bさんは、電気工事会社の作業員として主に電柱に上って作業する業務に約3年従事したのちに腰痛を発症し、医師から筋・筋膜性腰痛と診断された。
Bさんの作業のうち、毎日3時間程度は腰部を安全帯で電柱に固定した上で、両足を留め金の上に置いて行う作業にあった。
<判断>
この作業は、腰部にとって不自然で無理のかかる姿勢を保持するものであった。
Bさんの腰痛は、その作業の特性から腰部の筋肉に継続的な負担がかかったことが原因となって発症したと認められるため、労災認定された。
厚生労働省
腰痛が労災と認められた具体例
具体的にはどういったものが労災になりますか?
分かりやすい事例を2つ紹介します。
事例1
Aさんはスーパーでレジ打ちや搬入作業、商品管理をしていた。
搬入作業では、商品を整理し、段ボールに詰めて台車に積み、売り場に運んでいた。
段ボールは約5㎏で、6~8個を一度に運び、狭い通路(作業スペースは幅50㎝程度)での作業だった。
しかし、この作業中に腰痛を発症。
半年間我慢して仕事を続けたが、治療しても改善せず、入社二年後に休業した。
<判断結果>
Aさんは、狭い通路で「腰部にとって極めて不自然な姿勢で毎日数時間程度行う業務」に該当するとして、労災認定された。
事例2
長距離トラック運転
Bさんはトラックの配達ドライバーで、ルート配送業務をしていた。
毎日約8時間かけて県内20ヶ所以上に商品を配送し、積み下ろしと回収も行う。
複数の荷をまとめて持ち運ぶので、積荷の重さは通常30㎏以上になる。
最大で100回近く積み下ろしをしており、腰に過度の負担がかかっていた。
<判断結果>
Bさんは短期間で「概ね20㎏程度以上の重量物又は軽重不同の物を繰り返し中腰で取り扱う業務」の為、長時間同じ姿勢での作業を行っていたことが認められ、労災認定された。
ぎっくり腰・腰痛で労災に認定される割合はどのくらい?
ぎっくり腰や腰痛で労災に認定される割合は一概に言えるものではありません。
労災に認定されるかどうかは、個々のケースや労働者の状況、労働環境、その地域の法律や基準によって異なります。
また、厚生労働省の発表では、職場における腰痛発生件数は、1978年(昭和53年)のピーク時に比べ減少傾向にありましたが、2013年(平成25年)から再び上昇傾向が見られます。
2021年(令和3年)には、全業種合計で5,879件の腰痛発生が報告されています。
こんな場合のぎっくり腰・腰痛では労災に認定される?
労災になるかどうかはケースバイケースなんですね。
例えば、以下のような場合でも労災認定されるケースはあります。
「労災認定されないだろう」とあきらめる前に、一度問い合わせしてみるとよいでしょう。
1:椎間板ヘルニアなどの既往症がある場合
椎間板ヘルニアなどの既往症や持病がある労働者が、仕事が原因で腰痛が再発または重症化した場合でも、労災認定の対象になります。
ただし、労災で補償されるのは、悪化する前の状態に回復させる治療に限られます。
2:長時間のデスクワークの場合
長時間デスクワークによる腰痛が労災として認定されるのは通常、多くありません。
なぜなら、通常のデスクワークは不自然な姿勢を要求するものではなく、途中で姿勢を変えたり腰を伸ばしたりすることが可能だからです。
ただし、以下のケースの場合には対象となる可能性があります。
- 毎日数時間極めて不自然な姿勢を取る
- 長時間同じ姿勢を続ける業務で腰痛が発生
長時間椅子に座って同じ姿勢で仕事をしていると、腰痛を発症したり悪化したりすることがあります。
姿勢の変更や腰を伸ばすことができないような業務をしていた場合には、業務上の原因による腰痛として労災が認定される可能性はあります。
3:パート・アルバイトの場合
パートやアルバイトの従業員でも、腰痛で労災補償を受けることができます。
また、ぎっくり腰自体は、通常労災認定の対象となりませんが、発症時の動作や姿勢の異常性から「腰への強い力の作用があった」と判断される場合には、労災補償の対象になる可能性があります。
4:保育士・介護士の場合
保育士や介護士は、仕事の特性から腰に大きな負担がかかり、腰痛やぎっくり腰を発症しやすい職業です。
ですが、腰の疲労の蓄積による腰痛やぎっくり腰は、加齢や筋力不足などの業務以外の原因も考えられ、労災が認定されるケースは残念ながら多くありません。
基本的には、「災害性の原因による腰痛」にも「災害性の原因によらない腰痛」にも当たらないことが多く、ぎっくり腰や日常的な腰への負担による腰痛で労災が認定されるケースは少ないと言えるでしょう。
しかしながら、保育士が腰痛等を発症したことについて業務との因果関係があると裁判で認められた例もあります
(大阪地方裁判所判決 平成10年2月16日)。
5:テレワーク(在宅勤務)中の場合
コロナ禍以降、テレワーク(在宅勤務)が急速に広がり、テレワーク(在宅勤務)中の腰痛についても要件を満たせば、労災認定の対象になります。
厚生労働省では、「テレワークを行う労働者の安全性を確保するためのチェックリスト」を以下のように定めており、腰痛防止の為のチェック項目も設けています。
事業主も留意することが必要です。
ぎっくり腰・腰痛の労災認定による補償内容
ぎっくり腰・腰痛が労災認定された場合には、以下のような補償を受けることが可能です。
- 療養補償給付
- 休業補償給付
- 障害補償給付
- 介護給付
- 遺族給付
この中でも、主だったものを以下で紹介します。
1:病院の治療費
労災指定の医療機関で受診した場合、そのケガが労災と認定された場合には治療費はかかりません。
また、患者それぞれに実施した診断・検査・投薬・治療などの医療行為を点数表に従い、換算します。
腰痛のある患者に行われる主な検査としては、
・レントゲン(単純X線撮影)
・ CT(コンピュータ断層撮影)
・ MRI(核磁気共鳴画像法)
の3つがあります。
2:整骨院の施術費
労災保険の適用となった場合、整骨院での施術による窓口負担がゼロになります。
申請をするのに億劫だと思われる方もいるかと思いますが、労災申請しなかったことで会社と本人にペナルティーが課せられる場合がありますので注意しましょう。
3:休業補償
腰痛やぎっくり腰で欠勤する場合、労災認定されていれば、休業補償給付の支給を受けられます。
なお、おおよそですが、給与の8割くらいが労災から休業補償されます。(休業補償給付+特別支援金)
仕事が原因でぎっくり腰・腰痛となった場合の対処法
ぎっくり腰も腰痛も、急に起こった時はどうすればいいのでしょうか?
まずは症状の緩和、次に労災申請、労災申請が通らなかったら、次はその対処法を講じる必要がありますね。
応急処置・自己処置方法
就業中に急にぎっくり腰や腰痛になってしまった場合、まずは以下のように対処するとよいでしょう。
- 楽な姿勢と深呼吸:痛みが強い場合は、無理に動かず、深呼吸をしながら楽な姿勢を取ります。
- 冷やす:氷枕や冷却パックを使って痛みや炎症を抑えます。
- 姿勢の注意:腰に負担のかからない姿勢を保ちます。中腰姿勢や特定の姿勢は控えます。
- サポーターの使用:腰痛ベルトやサポーターを使用して腰部をサポートします。
- 薬の使用:医師の指示に従い、痛みや炎症を抑える薬を使用します。
- 普段の生活に戻る:痛みが軽減したら、無理のない範囲で普段の生活に戻ります。
- 運動の増加:痛みが減少してきたら、徐々に運動量を増やしていきます。
ただし、症状が重い場合や、自己処置だけでは改善しない場合は医師や専門家に相談することが重要です。
また、適切な姿勢や運動法、薬の使用についても医師の指示に従いましょう。
対処法に関する注意点
ぎっくり腰は、簡単に言うと腰の捻挫です。
捻挫の時と同様の対処をすることで、悪化を防ぐことができます。
また、“RICE“という言葉があります。
“Rest、Icing、 Compression、Elevation”の4つの頭文字から名付けられています。
Rest(安静)は、無理に動き回ったりせず痛めた部分を悪化しないようにします。
Icing(冷却)は、痛めた患部を冷やすことです。
Compression(圧迫)は、内出血を抑えて患部の回復を早くします。
Elevation(挙上)は、痛めた部分を心臓よりも高い位置にもっていくことで腫れを抑える効果があります。
会社が労災申請に協力してくれない場合の対処法
会社が労災を認めなくても諦めてはいけません。
労災の申請をすることは労働者の権利です。
労災の治療では健康保険を使うことはできません。
たとえ健康保険を使って怪我の治療をしていたとしても、そのケガが労災であると認められた場合には健康保険組合から返金の請求があります。
労災の申請が滞ってしまうと、一時的な治療費の自己負担が膨大になってしまう可能性も考えられます。
労災でケガが発生した場合には、きちんと労災申請をしたうえで治療を受けましょう。
会社が労災を認めない場合は、労働基準監督署に相談して労災申請することも一つの手です。
労働基準監督署に相談することで、会社に対して連絡や指導をしてもらえることもありますので、労災申請は諦めずに行いましょう。
【おまけ】業務によるぎっくり腰・腰痛の予防方法
やはり腰痛やぎっくり腰にならないようにするのが一番ですね。
業務で行える予防方法としては、以下の4点になります。
作業管理
- 自動化・省略化
不自然な姿勢を伴う作業では、機械による作業の自動化を行う。 - 作業姿勢
作業台や椅子を適切な高さに調整する。 - 休憩・作業量・作業の組み合わせ
適切な休憩時間や姿勢を変え、作業時間の見直しをしてみる。
作業環境管理
- 室温管理
温度が低いと腰痛を悪化させやすいので、適切な温度を保つ。 - 照明・振動
作業場所では安全性の確保の為、照明の明るさや滑りにくい床等にする。
健康管理
- 健康診断
腰への負担が大きい業務の場合は、医師による腰痛の健康診断を定期的に行う。 - 腰痛予防体操の実施
ストレッチ等を行い、身体の柔軟性を身に着けケガのしにくい体つくりを行う。
労働衛生教育
- 心理・社会的要因に関する留意
組織的な取り組みとして、上司や同僚のサポート、腰痛で休むことを受け入れる環境づくり、相談窓口の設置など行う。
あなたが泣き寝入りしないために
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*1 件数は2023年3月現在 *2 2013年~2022年。単独型弁護士保険として。2023年3月当社調べ。*3 99プランの場合 *4 初期相談‥事案が法律問題かどうかの判断や一般的な法制度上のアドバイス 募集文書番号 M2022営推00409
まとめ
業務中のぎっくり腰や腰痛は、労災で補償できます。我慢せず病状が悪化する前に病院で診てもらいましょう。
ただし、すべての症状が労災で認定されるものではなく、認定される条件というのが細かく決定しています。
また、申請が通るにはご自身の職場環境や業務内容などがとても重要なカギとなります。
ご自身の健康な身体を維持する為にも、身体を労り、ちょっとした隙間時間にストレッチ等し、予防することがとても重要です。
それでも、業務中にぎっくり腰や腰痛になってしまった場合は、労災を申請していただき、今後、新たな気持ちで仕事に集中できるようしっかりと療養してください。
また、労災に関して疑問点やトラブルが発生しても焦らぬよう、もしもの備えとして「弁護士保険」で心強いミカタを備えておくことをお勧めいたします。
弁護士 黒田悦男
大阪弁護士会所属
弁護士法人 茨木太陽 代表
住所:大阪府茨木市双葉町10-1
電話:0120-932-981
事務所として、大阪府茨木市の他、京都市、堺市にて、交通事故被害者側に特化。後遺障害認定分野については、注力分野とし、医学的研鑽も重ねています。
また法人の顧問をはじめ事業上のトラブルにも対応をしています。
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