【試用期間中にクビ】コロナ経営不振というだけでは安易に解雇できない?!

就職や転職した際に、一定の期間「試用期間」が定められている会社が多くあります。

多くの場合はこの期間を終え正規雇用となるかと思いますが、中には「会社から試用期間中にクビを言い渡された」というケースも少なからずあります。

特に最近のコロナ不況で、試用期間中にクビになった、という事態が目立っているようです

今回の記事では、試用期間についての解説と、実際にクビになってしまった時の対処法をまとめました。
ぜひ参考にしてみてください。

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目次

試用期間とはそもそも何か

試用期間は何のためにあるのか

試用期間とは「本採用前において、試用期間中の勤務状態等により、本採用をするか否かを判断するための期間」などと説明されています。

会社の立場で考えると理解いただけるでしょう。

会社としては入社前に本人の経歴や能力資格などをいろいろ調べていても、実際に入社して働いてもらうと「こんなはずではなかった。とても雇い続ける事ができない。」と思うことがありえます。

とりわけ、中途採用の社員は、即戦力として期待して入社してもらうのです。その期待に反する場合に、これでは本採用はできない、と思うのは当然でしょう。

「私は英語が得意です。」というので「海外との商談の即戦力になってもらいます。」として採用したのに、英語の商談など全くできない、ちょっと日常会話ができるだけだった、というのでは本採用はしたくないでしょう。

接客のプロとして期待して採用したのに、お客様としょっちゅうトラブルを起こすのでは、早々にお引取りいただきたくなるでしょう。

このような場合に備えて就業規則等に次のような規定がよく置かれています。

「試用期間中の勤務状況を観察した結果、従業員としての適格性を欠くことが明らかになったときは、本採用しないことがある。」

試用期間の法的性質(解雇権留保付の労働契約)

以上の問題を、試用期間の法的性質として、掘り下げてみてみましょう。

最高裁の判例や学説では、試用期間の法定な性質を「解約権が留保された労働契約が成立している」と考えています。

すなわち労働契約は既に成立しています。会社が勝手に解雇できるわけではないのです。

ただし「一定の条件に当てはまる場合には会社から解約できる」という「解約権」が留保されている、と考えられています。

それでも、会社が解約権を自由に行使できるわけではありません。
採用される従業員は、本採用されることを期待して、他の企業への就職の機会を放棄しています

従って解約権の行使は、客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認されうる場合にのみ許される。とされています。

(参考:三菱樹脂事件最高裁昭和48年12月12日判決)

「試用期間」と本採用後で違いがあるのか

以上の通り試用期間だからといって、会社が簡単にクビにできるわけではありません。

とはいえ、本採用後と比べて試用期間の方がクビになりやすいのでしょうか。確認してみましょう。

なお、試用期間と解雇については二つの場合が考えられます。

1)試用期間中に解雇される(試用期間満了前の解雇・本採用拒否)
2)試用期間終了後に本採用を拒否される

いずれの場合でも解雇できるかどうかについて要件は特に変わらないと考えられています。

以下では両方の場合をまとめて考えます。

(1)試用期間は本採用後に比べて解雇要件が若干緩和される

試用期間はそもそも「実際の就労状況を見て的確性を判断する」という趣旨の期間です。

前述のように、働いてもらっている間に「期待はずれ」とわかることもあります。

採用後の調査で新しい事実がわかる、ということもあるでしょう。

例えば経歴の詐称が後日判明する、といった場合です。実際の就労状況や当初知なかった事実が分かった場合に、本採用はできないとして解雇ないし本採用拒否することはありえます。

それが「解約権留保」という意味です。

(2)試用期間で解雇が許された事例・許されなかった事例

どんな場合に、試用期間中の解雇が認められるのでしょうか。あるいは許されないのでしょうか。裁判例で見ていきましょう。

解雇が許された事例

【専門的な能力の不足】

専門的な能力を期待したのに、期待はずれだった事例です。

(例1)技術系社員として採用したが、その適格性が不足し改善の可能性もない。
(例2)中途採用者でAランクの高い給与で採用したが、仕事を積極的にしない、英語能力も不十分、上司の命令に従わず協調性にも欠ける。

【基本的な能力の不足】

(例1)新卒社員で、いくら教育指導しても、単純ミスを繰り返すなど、他の新卒社員より大幅に事務能力が劣る。
(例2)業務指示に速やかに応じない。採用面接でパソコン操作が得意といっていたのに、満足にパソコンが使えない。

解雇が許されなかった事例

(例1)ささいなマナー違反。
会長に声を出して挨拶しなかったので解雇したというのは、社会通念上許されないとされました。

(例2)教育指導で改善が見込まれる事例
新入社員について、遅刻、文書の誤字脱字、暴言、命令不服従といったことがあっても、教育指導で容易に改善できるはずであり、解雇は許されないとされました。

(例3)短期間の観察だけで解雇した事例
3か月の試用期間だったが、1ヶ月半で能力が劣るとして解雇。適格性を欠くと判定するには早すぎる、とされました。

このような事例からおわかりいただけるように「一般的な勤務態度・執務能力であれば試用期間であっても簡単に解雇されることはない」と考えて差し支えないでしょう。

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(3)コロナ経営不振というだけでは安易に解雇できない

以上の(2)の事例は従業員本人の能力や資質の問題でした。

では、新型コロナの関係で会社が経営不振に陥ったり、そのおそれがある場合はどうでしょうか。

そもそも従業員の能力資質等の問題でなく、会社の事情で従業員を解雇する場合には、厳格な要件が必要です。(整理解雇の4要素)

この厳格な要件は試用期間中の従業員にも適用されると考えられています。

整理解雇の4要素とはなにか

会社が経営不振などの事情で、従業員に特段の落ち度がないのに解雇する場合を「整理解雇」と言います。

整理解雇が認められるには、次の4つの要素をすべて満たさなければなりません

裁判の判例などで確立した考え方です。

1.「経営上の必要性」:整理解雇しなければ経営が重大な危機に陥る。
2.「解雇回避措置」:解雇を避けるため次のようなできる限りの措置を取ること。
            新規採用停止、配転・出向、労働時間短縮、希望退職募集など。
3.「人選の合理性」:被解雇者として指名される労働者の人選が合理的であること。
4.「手続の妥当性」:整理解雇事由について、労働者に時間をかけ、誠意を持って十分に説明すること。

整理解雇の4要素は試用期間中の解雇についても適応される

試用期間中に解雇する場合でも「整理解雇の4要素」に当てはまることが必要とされています。

経営不振のために、試用期間中の労働者を解雇して労働者と争いになった事件について、ある裁判例では試用期間中の従業員も正規の従業員と同様に扱うべきであるとして、次のように述べています。

・試用期間中の労働関係は、正規の従業員のそれの如く確定的でないにしても、実質は正規の従業員と同じく取り扱われなくてはならない

・申請人(解雇された従業員)は会社の正規の従業員と同じ法的地位にある。 試用期間中の従業員である故をもって安易な解雇を許すものではない

・労働者が会社からの収入によりその生計を維持している場合に解雇されその職場から放逐されることはその生活の資金源を奪われ、労働者に生活の危機をもたらす・・労働者の生存権への不必要な侵害を避けるべく労働者の解雇は特に慎重を極めねばならない。

(常磐生コン事件・福島地裁いわき支部決定昭和50年3月7日)

(4)解雇が明確に禁止される場合

以上に述べた以外でも、法令の定めなどで解雇が制限される場合があります。試用期間中の従業員にも適用されます。

妊娠中の社員

妊娠中の社員は解雇が禁止されます。

試用期間中であっても同様です。(男女雇用機会均等法第9条)

労働局の個別紛争解決援助事例で次の事例が紹介されています。

会社側は「妊娠を理由とする解雇が禁止されていることは知っているが、試用期間中であることから辞めさせても解雇には当たらないと考える。」と主張しました。

労働局は、「試用期間中であっても妊娠を理由に解雇することは均等法に違反する。」としました。そのうえで、解雇を撤回するだけでなく、次のように会社に助言しています。

「女性労働者が妊娠をきっかけに体調不良となり、医師から休業などの指導を受けた場合は、事業主は休業させるなど指導事項を守ることができるようにするため、必要な措置を講ずること」

(出典) 厚労省「平成17年度男女雇用機会均等法の施行状況」で掲載

病気やケガをした場合

業務災害による病気やケガの場合には、休業期間や休業後30日間は解雇できないことが法律上定められています(労働基準法第19条1項)。

通勤災害や私傷病のケースでは、この解雇制限の適用はありません。

しかし、復帰後どうしても雇用を維持することが困難なケースでのみ、解雇が認められるとされており、この点は試用期間中でも同様です。

それでもクビになったときの対抗策

上記2のとおり、試用期間中でも会社が従業員を解雇できる場合はかなり限定されています。

会社の経営者や人事労務担当者などが、そこまでの知識がなく「試用期間」という言葉に引きずられて、安易に解雇できると思い込んでいる場合が少なくありません。

従業員の側でもよくわからずに泣き寝入りしてしまうことが多いのではないでしょうか。

「不当解雇ではないか?」と思ったならば、次のように対応することをお勧めします。

ただし、従業員にはそれだけの知識も交渉力もないでしょう。専門の弁護士などに早い段階から相談することをお勧めします。

(1) 解雇無効を争う

上記2のとおり、試用期間中であっても会社が解雇できる場合はかなり限定されていますので、解雇無効を争うことも検討しましょう。

もっとも、解雇無効で復職するのがよいのか、未払い賃金や慰謝料などを含めた金銭解決とするのか、いずれが得策などは専門の弁護士とよく相談されるべきです。

弁護士による会社との交渉では未払賃金や慰謝料を支払ってもらって退職を受け入れるという解決方法が多いと思われます。

(2) 必要な具体的準備

どのような交渉であれ、次のような資料を集めるなどの準備をしておきましょう。

できればこのような交渉のときから弁護士に入ってもらうと、会社としてもいい加減な対応はできないので効果が大きいでしょう。

① 就業規則の写しを交付してもらう

就業規則の中で上記1、(1)のような規定が定められているかどうかを確認します。

なお、会社が就業規則を見せないといったときには「何月何日人事部の誰々に就業規則写しの交付を求めたが、応じてくれなかった。」ということを記録しておきます。

就業規則は労働契約の共通の基本事項を定めたものです。

労働契約の当事者である従業員は見せてもらう権利があります。人事部の担当者でも、そんな基礎的なことさえ知らない人がしばしば見受けられます。

② 解雇理由を記載した解雇通知書の交付を求める

交付されないなら、会社に解雇理由の説明を求めてしっかり記録します。

後々「解雇をされたのか、合意退職したのか」が争いにならないように、客観的に分かる資料(書面かメールが望ましいです)で「解雇であること(会社の解雇の意思表示)」を残しておくことが重要です。

なお、①でも②でも、このような会社の非協力的な姿勢があれば、紛争における公的機関のあっせん、調停、労働審判、訴訟などで従業員側に有利に働きます。

③ 試用期間中の教育・指導・注意等の内容の検討

会社が能力不足とか適性を欠く、というのなら、「それでは会社は十分な教育・指導を行ったのかですか?」と争うことが必要です。

指導などの証拠があれば集めておきます。文書などが残っていなくてもできる限り思い出して記録しておきます。

争うときに重要な証拠となります。

④ 会社の主張への異議申し立て

会社の主張「能力に欠ける、協調性を欠く、経歴詐称だ。」といったことに異議があれば、解雇権濫用として解雇無効を主張します。

「こんな会社はやめてやる!」と思ったときの注意点

逆に、会社の対応にほとほと愛想が尽きて、もうやめようとした場合にはどうでしょうか。

結論を言えば、従業員側から辞めるのは簡単です。

但し、未払賃金や正当な退職金などを請求したいのなら、安易に自分から辞めるとは言わない方が良いでしょう

このあたりの交渉テクニックについても、専門の弁護士としっかり相談してください。

(1)契約期間の定めのない労働契約

従業員は、理由を問わずいつでも労働契約解約の申し入れが可能です。

申し入れから2週間たてば会社の承諾がなくても労働契約は終了します(民法第627条第1項)。

申し入れは口頭でも可能ですが、書面で「退職届」などを提出するのが適切でしょう。

(2)契約期間の定めのある労働契約(有期労働契約)

有期労働契約なら契約期間も契約の内容であり、期間途中の退職は基本的に契約違反となります。

ただし、就業規則や労働契約・雇用契約などで、契約期間途中でも退職できる定めがあれば、それに従って退職できます。

(3)やむを得ない事由があれば即時に辞職可能(民法628条)

会社でのハラスメントや過重労働に耐えられない、とか、家庭の事情でどうしても遠隔地に引っ越しせざるを得ない、といった場合なら、(1)の無期労働契約、(2)の有期労働契約いずれでも、即時に辞職可能です。

困ったときの相談窓口

このような紛争については、公的機関や労働問題に詳しい弁護士との相談が適切です。

会社とのハードな交渉が控えていると思いますので、早めに弁護士と相談することをお勧めします。

公的な相談窓口

都道府県労働局「総合労働相談コーナー」

ワンストップで様々な相談にのってくれます。電話相談なども受付けてくれます。
「助言・指導」や「あっせん」もしてくれますし、法律違反の問題なら労働基準監督署などに取り次いでくれます。

都道府県労働局「総合労働相談コーナー」(総合労働相談コーナーの所在地)

労働基準監督署

試用期間中であっても不当な解雇は強行法規違反です。

 ※ 総合労働相談コーナーがはじめの相談にはふさわしいでしょう。

労働基準監督署への相談も一つの方法です。とはいえ、労基署は監督機関であり、指導助言やあっせんをしてくれるわけではありません。

労働基準監督署(全国労働基準監督署の所在案内)

弁護士

会社とのハードな交渉等が見込まれるなら、労働問題の専門弁護士がふさわしいでしょう。

初回の相談は無料とか比較的安い料金で対応してくれる先生も多いようなので、ぜひ、あたってみてください。

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まとめ

希望をもって入社したのに、試用期間の途中で解雇されたり、本採用されなかった、というのは、大変なショックだと思います。

それが理不尽な解雇ならば、本当にその会社があなたにふさわしいのかどうか考え直した方が良いかもしれません。

コロナショックで業績不振のために、弱い立場の試用期間中の従業員をクビにするような会社は、将来性があるでしょうか。

そんなことも考え直す必要があるでしょう。

あなたご自身の一生の問題です。様々な選択肢をこの機会に検討してみてください。

この記事を書いた人
社会保険労務士

玉上 信明(たまがみ のぶあき)

社会保険労務士 
健康経営エキスパートアドバイザー
紙芝居型講師(登録商標第6056112号) 
日本紙芝居型講師協会(登録商標第6056113号)
日本公認不正検査士協会アソシエイト会員

弁護士
小林義典弁護士

小林義典 弁護士

東京弁護士会
袖ヶ浦総合法律事務所

住所:千葉県袖ケ浦市神納2-5-18 SKYCITY13-A
電話番号: 0438-42-1247

2009年弁護士登録。

交通事故、労働事件(労働者、使用者)から、家事事件等の一般民事事件を手広く行っています。

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