■いただいた質問内容
私は30代の会社員の男性です。
子どもが幼稚園に入園し、妻に時間の余裕ができたため、パートに出てもらうことになりました。
その結果、夫婦の時間を取ることが少なくなり、数か月間セックスレスの状態となっています。
そして、その間、ふとしたことがきっかけで職場の同僚と不倫関係になってしまいました。
ここ数日妻の様子がおかしいように感じていますが、もし妻が浮気に気づいていたとしたらどうしようと悩んでいます。
子どももまだ小さいですし、離婚までは考えていません。
浮気をしたことを正当化するつもりは全くないのですが、「セックスレスによる浮気」なので妻にも責任がないわけではないと思っています。 ですので、浮気をしたとしてもセックスレスという事情があれば法律的に離婚の理由にならずに済むのかどうかを知りたいです。
記事に入る前に・・・
だけど費用的に無理・・・という時代は終わりました。
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どこからがセックスレスか
セックスレスの定義は?
セックスレスについて、法律上の明確な定義はありません。
裁判例でも長期間性交渉がない状態を「セックスレスである」と認定しているケースはありますが、「どのくらいからがセックスレスになるか」は明確にされているわけではないのです。
よって、どのくらいの期間夫婦生活がなければセックスレスといえるのかは何とも言えないところです。
弁護士目線からは、数か月夫婦生活がなければセックスレスだと認定される可能性があると思います。
1年以上であればセックスレスと言って差し支えないと思います。
日本性科学会の定義する「セックスレス」とは?
日本性科学会という団体がセックスレスを
「①特殊な事情が認められないにもかかわらず、②カップルの合意した性交あるいはセクシャル・コンタクトが1か月以上なく、③その後も長期にわたることが予想される場合」
と定義しております(①~③の数字は筆者が記載)。
なぜ「1か月」かというと、通常は1か月も性交渉がなければ今後もないだろうことが予測されるからだと思われます。
ただ、この定義があるからといって裁判官が1か月性交渉がない場合すべてをセックスレスだと認定するとは限らないので注意が必要です。
弁護士の視点からは、
- 子育てが大変であるとか忙しい時期であるとか特殊な事情があった(①)
- 子育てが落ち着けば性交渉の機会が増える見込みがあったので長期にわたることが予想されない(③)
などという反論があり得るように思います。
また、この定義が1994年に定義されたかなり古いものであることにも留意する必要があります。
セックスレスが原因の浮気は法的にアウト?セーフ?
配偶者からの「離婚」の要求を拒絶できるか
冒頭の事例のように、セックスレスが原因で夫が浮気した場合、妻からの離婚の請求は拒絶できるのでしょうか。
結論から言うと、基本的には「アウト」です。
つまり、浮気をした証拠があるケースでは、少なくとも裁判に持ち込まれた場合、妻からの離婚の請求は拒絶できず、認められてしまうでしょう。
理由は、簡単です。
民法第770条1項1号が定める離婚原因「配偶者に不貞な行為があったとき」に該当してしまうからです。
「セックスレス」という事情があったとしても、「浮気をしてもいい」という事にはなりませんし、「離婚の原因にならない」ということにはならないのです。
配偶者からの「慰謝料請求」を拒絶できるか
では、セックスレスが原因で夫が浮気した場合、妻からの慰謝料請求は拒絶できるのでしょうか。
ア 原則(多くのケース)
こちらも結論から言うと、基本的には「アウト」です。
つまり、浮気をした証拠があるケースでは、少なくとも裁判に持ち込まれた場合、
「妻からの慰謝料請求は、離婚同様、拒絶できず認められてしまう」でしょう。
イ 例外その1(すでに婚姻関係が破綻している場合)
ただし、慰謝料請求については例外があります。
結婚している状況で浮気をしても慰謝料請求ができないのは、「すでに婚姻関係が破綻していた場合」です。
婚姻関係が破綻したといえるかがどのように判断されるかというと、
東京地判平成22年9月9日は、「民法770条1項5号の『婚姻を継続しがたい重大な事情がある』と評価できるほどに,婚姻関係が完全に復元の見込みのない状況に立ち入っていることを指す」としています。
その際の考慮要素としては
① 婚姻の期間
② 夫婦に不和が生じた期間
③ 夫婦双方の婚姻関係を継続する意思の有無及びその強さ
④ 夫婦の関係修復への努力の有無やその期間
等の事情を挙げており、これらを総合して判断するとしています。
例えば、別居をした場合、婚姻関係が破綻していたと評価される可能性は高いです。
逆に、家庭内別居の場合、上記①~④の事情が証拠によって最大限有利に主張できれば婚姻関係が破綻したと認められる可能性がありますが、そのような事情がない場合、裁判官に認めてもらうのは難しいでしょう。
以上から、婚姻関係が破綻していたといえれば、浮気(不貞行為)をしたとしても慰謝料請求をされることはありません。
ウ 例外その2 セックスレスの場合はどうか?
(セックスレスの場合に慰謝料の減額は認められるか?)
セックスレスの場合、多くのケースでは、「婚姻生活は問題なく送れていることが多い」ので、婚姻関係が破綻したという主張は認められないでしょう。
ですので、「一切慰謝料請求されない」、ということにはなりません。
しかし、セックスレスという事実が「慰謝料減額」の反論の理由にはなる可能性があります。
つまり、「セックスレスという状況下では、性欲が思うように解消できないのだから、浮気したことについて同情の余地があるはず。だからせめて慰謝料を『減額』してほしい。」
という反論を主張することができる余地はないわけではありません。
現に、近時の裁判例(東京地裁平成29年11月20日)でセックスレスという事情があったために慰謝料が減額されたケースがありましたので見てみましょう。
事案
原告:妻、被告:夫の浮気相手、A:原告の夫
・H13.7 Aと原告の結婚
・H15.7 セックスレス状態になる
・H24.4 Aと被告の浮気が発覚
・H24.11 Aと被告が今後一切浮気しないこと、違約金100万円を定めた誓約書を結ぶ
・H28.7 Aと被告が再び浮気をしてしまう
・H28.12 原告が被告に対して慰謝料請求の裁判を起こした
(裁判中のH29.4に被告は別居をしてAと同居を始めた) 被告は、「Aと原告がセックスレスになっていたのであるから慰謝料は減額されるべきである」と主張したが、認められるか?
結婚して2年でセックスレスになっているので、セックスレスの期間は「15年」近くになります。(ですので、この事案では明らかにセックスレスといえるため、その点は問題になりませんでした)
※この裁判例は、妻から夫への慰謝料請求の事案ではなく、「妻から浮気相手の女性への裁判の中で、浮気相手の女性が『セックスレスだったじゃないの!』と反論した事案」です。
ですので、「セックスレスの当事者ではない浮気相手がセックスレスであったことを慰謝料請求減額の反論として出すことができる」という点もポイントです。
さて、結論から申し上げると、なんと裁判官は、セックスレスを理由に慰謝料の減額を認めたのです。
具体的には、
「10数年にわたりセックスレス状態にあり、原告にもその原因の一端があること」や
「本件不貞行為の開始時である平成28年7月頃の時点でAと原告の夫婦関係は一定程度希薄化していたものと認められ、殊に、Aが原告と別居するようになった平成29年4月2日以降は、Aと原告の夫婦関係は相当程度希薄化しているものと認められる。」
ということで、慰謝料を180万円にまで減額しました。
(※不法行為の裁判の場合、弁護士費用として180万円に1割である18万円がプラスされるので最終的には198万円が認められました)
ただ、裁判官は、「減額した結果180万円になる」としか言っていないので、このケースで「セックスレスという事情がなかった場合、もともと一体いくらの慰謝料になるはずだったのか」はよくわかりません。(そういう意味では実務家泣かせの裁判例です)
原告は、この部分に該当する慰謝料としては「400万円」を請求していたので、もし全額認められるとしたら400万円なのですが、裁判官が慰謝料を
①400万円だと認定していれば「220万円の減額」だったことになり、
②300万円だと認定していれば「120万円の減額」だったことになり、
③250万円だと認定していれば「70万円の減額」だったことになり、
④200万円だと認定していれば「20万円の減額」だったことになります。
(もちろんこの4通りだとは限りませんが、慰謝料は裁判官が類似のケースを調べた上で最終的には「えい」って決めるものできりのよい数字になるため、これのどれかの可能性が高いです)
では、一体これらのうちどれに近いのか?
ここから先は推測になりますが、せっかくですので、どのくらい減額されるのかを推理してみたいと思います。
多少はお役に立つ内容かもしれません。(あくまで推測ですので内容を保証できるものではありません。)
この事案での慰謝料請求額を決めるポイントとなった事情は、以下の4点です。
①1度夫に浮気をされて2度と浮気しないという誓約書までもらっていたのに夫が同じ人と2度目の浮気をしてしまったこと
②最終的に妻は夫から離婚を申し出られてしまったこと
③夫が家を出て浮気相手と隣駅で暮らし始めたこと
④1度目の浮気のときに浮気相手に対する慰謝料は300万円だったところを80万円まで下げたが、実際は夫が浮気相手に64万円を裏で出していたこと
です。
通常の浮気のケースに比べると悪質な感があり、やや重たいケースの印象を受けます。
特に誓約書を結んでいるのは裁判所も最初に挙げている事情ですし、大きいでしょう。
ただ、「十数年セックスレスだった」という事実は同情すべき点があるくらい長期間かと思われますので、減額は20万円のような少額ではないと思われます。
そうなると、裁判官は慰謝料の金額を
②300万円だと認定して「120万円の減額」をした
③250万円だと認定して「70万円の減額」をした
のどちらかが近いのではないかと思われます。
よって、婚姻期間15年で十数年セックスレスだった場合、70万円から120万円くらい(もう少し一般化すると50万円~150万円くらい)の減額がありうるというのではないか、というのが私の出した結論(推測)です。
裁判例にもある通り、セックスレスの期間だけでなく夫婦の関係などの事情も影響しますので幅が出てしまいます。
なお、一番最初の挙げた事例の「数か月」程度のセックスレスのケースですと、裁判になった場合、10数年のケースでさえ50万円~150万円だとすると、大きな減額は期待できないように思います。
(※繰り返しますが、あくまで個人的な考察ですので内容を保証するものではありません。)
セックスレスが原因で浮気をした側(有責配偶者)が離婚や慰謝料を請求することはできるか
離 婚
浮気をした側は有責配偶者といいますが、有責配偶者からの離婚請求は有名な最高裁判例があります。
最判昭和62年9月2日によれば、浮気をした側が離婚を請求することができるための条件(要件)は
①長期間別居していること
②未成熟の子がいないこと
③配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状況に置かれるなどの特段の事情がないことです。
セックスレスのケースでは①②③すべてが認められることはあまりないといってよいと思いますので、有責配偶者からの離婚請求はできない可能性が高いでしょう。
慰謝料
自分が浮気をしてしまっている以上、さすがに慰謝料請求をすることはできないと思います。 ただ、自分が浮気をしていない状態でセックスレスであった場合、離婚をするにあたって慰謝料請求をすることができる可能性はあるでしょう。
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まとめ
いかがでしたか?
セックスレスはセンシティブな話なので、取り上げにくいテーマではありますが、近時、セックスレスに悩んでいる方が多いということで記事にしてみました。
ただ、裁判例が多いわけではなく、まだまだわからないことが多いように感じます。
そのため、弁護士個人の意見も可能な限り入れてみました。
少しでも参考になれば幸いです。
弁護士保険にご加入いただき、今後のトラブルの予防をすることもオススメしております。
弁護士 松本 隆
神奈川県 弁護士会所属
横浜二幸法律事務所
所在地 神奈川県横浜市中区山下町70土居ビル4階
TEL 045-651-5115
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