「前妻の子に財産を渡したくない」
「前妻の子と、相続のことで関わりたくない」
「後妻や今の子に、できるだけ多くを残したい」
このように、前妻との間に子がいる相続で悩まれている方は少なくありません。
前妻の子とは疎遠なことも多いため、疑問に思う方もいるでしょう。
結論から言うと、前妻の子にも後妻の子と同じ相続権があります。
財産をまったく渡さないことは、原則としてできません。
本記事では、前妻の子の相続分を最小限にするための具体的な方法や遺留分の考え方、揉めずに手続きを進めるための注意点について、弁護士監修のもと、わかりやすく解説していきます。
記事に入る前に・・・
だけど費用的に無理・・・という時代は終わりました。


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前妻の子にも相続権がある

前妻の子は、後妻の子とまったく同じ割合の相続権を持ちます。
離婚で夫婦の関係は終わっても、親と子の関係は法律上ずっと続くからです。
弁護士しかし、離婚した前妻本人は、相続人になりません。

ということは、前妻に相続財産が渡ることはないけれど、前妻の子には渡るということですか?
「相続させたくない」と思ってもゼロにはできない
前妻の子の取り分を完全にゼロにすることは、原則としてできません。
理由は「遺留分(いりゅうぶん)」という制度があるからです。
たとえ、相続人が「全財産を後妻に相続させる」という遺言を残していても、前妻の子は自分の遺留分にあたる金額を請求できます。
遺言はとても強い効力を持ちますが、遺留分まで奪うことはできません。
だからこそ、現実的な目標は「ゼロにする」ではなく「最小限に抑える」になります。
前妻の子の法定相続分は後妻の子と同じ
前妻の子の取り分の目安は、後妻の子と完全に同じです。
この目安を「法定相続分」と呼びます。
法律が定めた標準的な分け方のことです(民法900条)。
配偶者がいる場合、配偶者が2分の1、子ども全員で残りの2分の1を分け合います。
子どもが複数いれば、その2分の1を人数で等しく割ります。
たとえば相続人が後妻と、後妻の子1人、前妻の子1人の合計3人の場合で見てみましょう。
- 後妻が2分の1
- 子2人がそれぞれ4分の1ずつ
このように、前妻の子だからといって、相続の割合が減らされることはありません。
遺留分は法定相続分の半分
前妻の子の遺留分は、その人の法定相続分の半分です(民法1042条)。
先ほどの例で前妻の子の法定相続分が4分の1なら、遺留分はその半分の8分の1になります。
つまり遺言で前妻の子の取り分をゼロと書いても、前妻の子は遺産全体の8分の1にあたる金額までは請求できる、ということです。
前妻の子の法定相続分・遺留分と遺産が6,000万円だった場合の遺留分額を、家族構成ごとに見てみましょう。
| 相続人の構成 | 前妻の子の法定相続分 | 前妻の子の遺留分 | 遺産6,000万円の場合 |
| 後妻・後妻の子1人・前妻の子1人 | 4分の1 | 8分の1 | 750万円 |
| 後妻・前妻の子1人(後妻の子なし) | 2分の1 | 4分の1 | 1,500万円 |
| 配偶者なし・前妻の子1人のみ | すべて | 2分の1 | 3,000万円 |
相続人の人数によって、遺留分は決まります。
前妻自身は相続人にならないが例外もある
離婚した前妻は相続人にならないため、前妻に直接財産が渡ることはありません。
相続人になるのは、あくまで前妻との間に生まれた子です。
ただし例外があります。
前妻の子が、前妻の再婚相手などと「特別養子縁組」をした場合です。
特別養子縁組は実の親との親子関係を法律上終わらせる制度のため、この場合は前妻の子が相続人になることはありません。
一方、一般的な「普通養子縁組」では実の親との関係は残るので、前妻の子は引き続き相続人のままです。
また、前妻の子がすでに亡くなっていて、その子(あなたから見れば孫)がいる場合は、孫が代わりに相続します(代襲相続)。
前妻の子に相続させない(最小限にする)5つの方法


前妻の子と交流もないし、正直遺産を渡したくないです…。
弁護士完全にゼロにはできませんが、後妻や今の子に遺産を多く残す方法はあります。
以下で、代表的な5つの方法を紹介します。
どれか一つを選ぶというよりも、状況に応じて組み合わせましょう。
公正証書遺言で後妻側に集中して相続させる
最も基本になるのが遺言書です。
「後妻と今の子に相続させる」と遺言で指定すれば、遺留分を除いた大部分を後妻側に集めることができます。
遺言には自分で書く自筆証書遺言もありますが、形式の不備で無効になったり、死後に偽造を疑われたりするリスクがあります。
特に、前妻の子という揉めやすい相手がいる場合は、公証役場で作る「公正証書遺言」を強くおすすめします。
作成には公証人という法律の専門家が関与するため無効になりにくく、原本が公証役場に保管されるので紛失や改ざんの心配もありません。
作成には公証人へ支払う手数料がかかり、遺産額に応じて数万円から十数万円程度が目安です。
証人も2人必要になります。
手間と費用はかかりますが、死後に遺言が無効とされて家族が前妻の子と全面的に協議し直す事態を考えれば、十分に見合う備えといえるでしょう。
あわせて、遺言の中で「遺言執行者」を指定しておくことをおすすめします。
執行者を決めておけば、前妻の子の協力がなくても、預貯金の解約や不動産の名義変更といった手続きが進められます。
後妻側だけで手続きを完結しやすくなるという点で、前妻の子と関わりたくない場合に特に有効です。
詳しくは後述しますが、遺言があれば、前妻の子と話し合わずに手続きを進められる利点もあります。
生前贈与で遺産そのものを減らす
生きているうちに後妻や今の子へ財産を贈与しておけば、相続が始まった時点での遺産が減り、結果として前妻の子の取り分も小さくなります。
ただし注意点があります。
相続人に対する生前贈与は、原則として相続開始前10年以内のものが遺留分の計算に含まれます(民法1044条)。
そのため、亡くなる直前にまとめて贈与しても、遺留分の計算上は遺産に加算されることがあり、期待したほど効果が出ないこともあります。
そのため、早い時期からコツコツ贈与しておくとよいでしょう。
たとえば年間110万円までは贈与税がかからない非課税枠(暦年課税制度)があり、これを毎年使って後妻や今の子に少しずつ移しておく方法がよく使われます。
10年、20年と続ければまとまった額を移せます。
ただし贈与税のルールや相続税との関係は複雑です。
財産の渡し方を誤ると課税されることもあるため、実行前に税理士に相談しながら進めるのが安全です。
生命保険を活用する(受取人を後妻側に指定)
生命保険金の受取人を後妻や後妻の子に指定しておけば、原則として遺産分割の遺留分の対象になることはありません。
これは、受取人固有の財産として扱われるためです。
現金を保険に置き換えることで、前妻の子の取り分を実質的に減らせる可能性があります。
注意したいのは受取人の指定です。
受取人を「相続人」とだけ書いた場合、前妻の子も含まれてしまう場合があるため、後妻や今の子の名前を具体的に指定しておくことが重要です。
なお、生命保険には、前妻の子から遺留分を請求されたときの支払い原資としての役割もあります。
不動産が多く現金が乏しい家庭では、保険金を遺留分の支払いに充てることで、自宅などの不動産を手放さずに済みます。
ただし、遺産のほとんどを保険につぎ込んだり、他の相続人との不公平が大きすぎたりした場合には、例外的に遺産に戻して計算される可能性があります。
過去の判例でも、特段の事情があれば持ち戻しの対象になり得るとの判断を示しています。
あくまで全体のバランスの中で活用する手段と考えてください。
遺留分を生前に放棄してもらう
前妻の子本人が納得しているなら、生前に遺留分を放棄してもらう方法があります。
遺留分を放棄してもらえれば、遺言で後妻側に集めた財産に対して後から請求される心配がなくなります。
ただし、生前の遺留分放棄には、前妻の子本人の申立てと家庭裁判所の許可が必要です(民法1049条)
本人の自由な意思によるものか、放棄に見合う代償があるかなどを家庭裁判所が審査します。
前妻の子に相応の財産を渡す代わりに放棄してもらう、といった合意ができる関係であれば有効な選択肢となるでしょう。
反対に、前妻の子と話し合いができないほど関係がこじれている場合には、この方法は使えません。
本人が家庭裁判所に出向いて申し立てる必要があり、協力を得られることが前提となるためです。
前妻の子との関係が良好なうちにある程度の財産を渡しておき、将来の請求を防ぐ、という前向きな解決策として検討するとよいでしょう。
推定相続人の廃除
相続人としてふさわしくない重大な事情がある場合に限り、家庭裁判所に申し立ててその人を相続人から外す制度があります。
これを「推定相続人の廃除」といいます(民法892条)。
認められれば、その相続人は遺留分も含めて、一切相続できません。
ただし、被相続人への虐待や重大な侮辱、著しい非行があった場合など、要件は限られており、認められる例は稀です。
単に疎遠である、仲が悪いという理由だけでは認められません。
期待しすぎず、あくまで例外的な手段と理解しておきましょう。
5つの方法の比較
ここまで5つの方法を個別に見てきました。
以下で、それぞれの効果や注意点をまとめます。
| 方法 | 取り分を減らす効果 | 主な注意点 |
| 公正証書遺言 | 遺留分を除いた大部分を後妻側に集められる | 遺留分までは奪えない |
| 生前贈与 | 遺産そのものを減らせる | 相続開始前10年以内の贈与は計算に戻り、贈与税もかかる |
| 生命保険 | 受取人を後妻側にすれば実質的に取り分を減らせる | 過大だと遺産に戻して計算される可能性がある |
| 遺留分の生前放棄 | 後からの請求リスクを消せる | 本人の同意と家庭裁判所の許可が必要 |
| 推定相続人の廃除 | 遺留分ごと相続から外せる | 認められる例は極めて稀 |
実際には、これらを単独で使うより、遺言を土台に生前贈与や生命保険を組み合わせるのが基本です。
どの方法をどう配分するかは、家族構成と遺産額で変わります。
このほか、養子縁組によって法定相続人が増えると、子一人あたりの法定相続分や遺留分が小さくなる場合があるため、相続対策の一つとして紹介されることもあります。
理屈の上では相続人の数を増やすと各自の遺留分は小さくなりますが、戸籍上の親子関係が増える、後で関係を解消するには離縁の手続きが必要になるため、安易に勧められる手段ではありません。
検討する場合は弁護士に相談した方がいいでしょう。
最も現実的なのは「遺留分相当だけ渡す」こと

最も現実的でトラブルの少ない方法は、前妻の子の取り分をゼロにしようとするのではなく、遺留分にあたる分だけは渡す前提で遺言を作成することです。
たとえば遺産6,000万円、相続人が後妻・後妻の子・前妻の子の3人なら、前妻の子の遺留分は750万円です。
遺言で前妻の子に750万円を、残りの5,250万円を後妻と今の子に相続させると定めておけば、前妻の子に渡す財産を最小限に抑えながら、後で遺留分侵害額を請求されて揉める可能性を減らせます。
弁護士「前妻の子への相続をゼロ」を目指すのではなく、遺留分を踏まえた遺言を作成することが重要です。

必要最低限を補償してあげる、ということですね。
遺留分を侵害するとどうなる?
遺言で前妻の子の取り分を遺留分より少なくすると、前妻の子は不足分を請求できます。
これを遺留分侵害額請求といいます。
前妻の子への相続をなくすような遺言を作ると、死後に前妻の子から後妻や今の子に対して遺留分侵害額請求が行われ、結局は支払うことになります。
しかも交渉や裁判に発展すれば、後妻側が時間も費用も負担することになります。
最初から遺留分相当を渡しておけば、こうしたトラブルを避けられます。
2019年の改正で「金銭による請求」に
遺留分の請求は、2019年7月に施行された相続法の改正で、金銭による請求に一本化されました。
改正前は不動産について共有持分が発生することもありましたが、現在は金銭の支払いによって解決する仕組みとなっています(民法1046条)
これは後妻側にとって重要なポイントです。
たとえば自宅不動産を後妻に相続させたい場合でも、遺留分の支払いに充てる現金さえ用意しておけば、不動産を前妻の子と共有する事態を避けられます。
生命保険などで支払い用の現金を準備しておくと安心です。
揉めない遺言にするコツ
遺言には、財産の分け方だけでなく「付言事項」と呼ばれるメッセージを残せます。
なぜこの分け方にしたのか、これまでの経緯や家族への思いを書き添えておくと、前妻の子の感情的な反発をやわらげる効果が期待できます。
あわせて、前妻の子に過去にまとまった援助をしている場合は、その記録を残しておくことも有効です。
生前に渡した分は特別受益として考慮される可能性があり、後の話し合いで根拠になります。
法的な強制力を持たせたい部分と、感情面に配慮する部分を分けて設計するのがコツです。
やってはいけない3つのNG対応

良かれと思ってやったことが、かえって大きなトラブルを招くことがあります。

相手方と穏便に済ませる方法はありますか?
弁護士前妻の子がいる相続で、避けるべき代表的な3つの行動を挙げます。
無断で遺産分割協議を進める
前妻の子を外して、遺産分割の話し合いを進めるのは避けましょう。
相続人全員が参加していない遺産分割協議は無効となるからです。
前妻の子も、法律上のれっきとした相続人です。
後から前妻の子の存在が判明すれば、せっかく終えた手続きをやり直すことになります。
一方的に相続放棄を求める・財産を隠す
前妻の子に「放棄してくれ」と一方的に迫ったり、遺産の内容を隠したりすることは、逆効果です。
相続放棄するかどうかは本人が決めることで、強制はできません。
そもそも相続放棄は家庭裁判所での手続きが必要で、本人が応じる義務もありません。
頼んでも断られれば、それ以上は打つ手がなくなります。
財産を隠して少なく見せようとしても、預貯金や不動産は調査で明らかになることが多く、発覚すれば不信感から交渉が決裂してしまうことも考えられます。
隠していた財産が後から出てくれば、それまでまとまりかけていた話も白紙に戻りかねません。
最初から誠実に開示したほうが、結果的に穏便にまとまります。
連絡を放置する
前妻の子と関わりたくない気持ちから連絡を後回しにすると、事態が悪化しがちです。
遺産分割が必要な場合、連絡を取らない限り手続きは前に進みません。
放置している間に相手が弁護士をつけて請求してくることもあります。
連絡したくないのであれば、生前に遺言を用意し、話し合い不要な状態を作っておくのがベターです。
「前妻の子に連絡したくない」場合の考え方

前妻の子と連絡を取りたくないという悩みは、生前の準備で大きく軽減できます。
弁護士鍵になるのはやはり遺言です。
遺言書があれば遺産分割協議は不要になる
有効な遺言があれば、相続人全員での話し合いをせずに相続手続きを進められます。
誰が何を相続するか、すでに遺言で決まっているため、前妻の子と分け方を協議する必要がなくなるからです。
これが、遺言を残す大きなメリットです。
連絡したくない相手と顔を合わせたり交渉したりせずに済む、という安心感のためにも、遺言は早めに用意しておく価値があります。
遺言があっても連絡が必要になるケース
遺言があっても、前妻の子への連絡が完全に不要になるわけではありません。
遺言の内容を実現する遺言執行者には、相続人へその内容を知らせる義務があります。
また、遺言で渡される分が遺留分に満たない場合、前妻の子のほうから請求してくる可能性はあります。
連絡を一切ゼロにはできないものの、こちらから協議を持ちかける手間は省けます。
居場所がわからないときの調べ方
前妻の子の住所がわからない場合でも、戸籍の附票を取り寄せれば、現在の住所を調べられます。
被相続人の戸籍をたどることで前妻の子の戸籍にたどり着き、附票から現住所を把握できます。
戸籍をたどる作業は、本籍地が何度も変わっていると煩雑になりがちです。
自分で集めるのが難しい場合は、司法書士や弁護士に依頼すれば戸籍の収集から居場所の特定まで代行してもらえます。
また、専門家を通して連絡すれば、前妻の子と直接やり取りせずに済むため、精神的な負担も軽くなります。
生前にやるべき対策の進め方

弁護士前妻の子に対する相続対策は、亡くなった後では選択肢が限られます。

やはり、生前のうちに準備を進めておくことが重要ということですね。
次の手順で進めると整理しやすくなります。
- 財産の棚卸し
預貯金・不動産・保険などをすべて書き出し、遺産の全体像と遺留分のおおよその金額を把握する - 方針を決める
後妻と今の子にどれだけ残したいか、前妻の子にいくらまで渡すかの方針を固める - 遺言書を作る
方針に沿って、公正証書遺言で確実に残す。遺留分に配慮した内容にする - 生前贈与や保険を組み合わせる
遺産自体を減らす、遺留分の支払い用の現金を保険で準備するなど補強する - 専門家に最終確認する
遺留分の計算や税金まで含めて、弁護士・税理士に内容をチェックしてもらう
前妻の子の相続でよくある質問

あなたが泣き寝入りしないために
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まとめ
前妻の子にも後妻の子と同じ相続権があり、遺留分があるため取り分を完全にゼロにはできません。
公正証書遺言・生前贈与・生命保険・遺留分の生前放棄などを組み合わせれば、取り分を最小限に抑えられる場合があります。
最も現実的な対応は、遺留分相当だけを渡すことです。
本記事で紹介してきた対策は、すべて生きているうちにしかできません。
亡くなった後では遺言も贈与も間に合わず、残された家族が前妻の子との協議に苦労することになります。
前妻の子の相続に少しでも不安があるなら、早めに専門家へ相談し、自分の家族に合った対策を形にしておくことをおすすめします。
遺留分の金額や具体的な手続きはご家庭の事情によって変わるため、実際の対策にあたっては相続にくわしい弁護士・税理士にご確認ください。

東 拓治 弁護士
福岡県弁護士会所属
あずま綜合法律事務所
福岡県福岡市中央区赤坂1丁目16番13号上ノ橋ビル3階
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