2013年に新語・流行語大賞を受賞した「ブラック企業」という単語を、あなたも一度は耳にしたことがあるかと思います。
労働基準法違反や労働安全法違反などの法令違反を犯した企業を、厚生労働省がリスト化・公表を行うなど、世の中は「ブラック企業を撲滅しよう」という流れになっています。
しかしながら、いまだに「闇残業」「過労死問題」等ブラック企業を連想させるワードがニュースで取り上げられたりSNSで話題になったりと、まだまだ身近な問題であることがうかがえます。
今回の記事ではブラック企業の定義や見分けるポイントをお伝えしたいと思います。
記事に入る前に・・・
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ブラック企業の定義とは
ブラック企業について明確な定義はありませんが、厚生労働省では、以下のような特徴を上げています。
(1)労働者に対し極端な長時間労働やノルマを課す
(2) 賃金不払残業やパワーハラスメントが横行するなど企業全体のコンプライアンス意識が低い
(3)このような状況下で労働者に対し過度の選別を行う
厚生労働省
この他にも、
・雇用契約の内容が不透明
・ワンマン経営(経営者が会社の舵取りを単独で行うこと)
等のような特徴がある場合には、ブラック企業体質といえます。(もちろんすべての企業がそうとは限りません)
また、飲食・小売業や介護業など人と接する業種や、アパレル系や不動産業など売り上げノルマが課せられている業種は、ブラック企業化しやすいでしょう。
飲食・小売業では、1店舗内に正社員よりもアルバイトの比率が多くなりがちで、結果的に正社員の長時間労働が問題視されています。
さらに、一時期話題となった「ワンオペ」とよばれる1人体制ですべての業務をこなすことについても社会問題となりました。
正社員・アルバイトに関わらずお客様対応はもちろん、クレーム処理や、休憩時間中に起きたことにも対応しなくてはならず、こういった過労働を強いる企業体質はブラック企業であるといえるでしょう。
飲食業のほか、介護業についても同様で、最低限の人員で運営している施設も少なくなく、結果的に深夜帯のワンオペで過労働となるケースも報告されています。
ブラック企業の見分け方
業種によってはブラック企業化しやすい、といってももちろん優良企業も多く存在しています。
では、実際にはどのような箇所からブラック企業だと判断すればいいのでしょうか?
以下で詳しく解説します。
1.求人票
就活時や転職時に求人票を見る機会があるかと思います。
その中で、給与形態や給与額が不明瞭な場合には注意が必要です。また、同業種の他社と比べて極端に給与が高い場合にも注意しましょう。
単純に給与が高い、というわけではなく、残業代込みの給与を記載している・ノルマ達成時の手当を含んだ場合の給与を記載している等、給与が高くなるケースを記載していることがあるからです。
さらに、業務内容が曖昧・抽象的で「実際にどのような業務を行うのか分からない」というような場合にも、ブラック企業の傾向があります。
2.面接
面接時に自身の経歴を伝えるとともに、企業からも業務内容などの説明があるかと思います。
この時、業務内容が曖昧・突っ込んで質問すると嫌な顔をされたり、はぐらかされたりした場合には注意が必要です。
面接の担当者が業務内容に詳しくない、または求人時の業務と実際に行わせたい業務が異なる場合があるからです。
また、面接時間が極端に短い・仕事に関係ない話ばかりされるなど面接に力を入れていない場合にも気を付けましょう。
本人の能力に関わらず採用されることが決まっている=頭数を揃えたい(どのような人物でも採用しないと業務が回らない)という事が考えられます。
3.採用人数が極端に多い
例えば、「新規事業の立ち上げのため」「人事異動のタイミングで」等、採用人数が増加する理由が明確である場合には警戒する必要はないかと思います。
しかし、新卒採用時でも同業他社と比べたときに、採用人数枠が2~3倍など多すぎる場合には注意が必要です。
ブラック企業の特徴として、「時期に関わらず退職者が一定数いる(離職率が高い)」というものがあります。
あらかじめ一定数退職者がいることを予測し多めに採用する、という手段をとるために、採用人数が多くなる傾向にあります。
4.採用募集が年中ある
上記でも触れたとおり、時期に関わらず退職する社員がいるため、時期に関わらず採用の募集をかける必要があります。
その結果、年中募集をかけている、という状況は少なくありません。
可能であれば、求人募集を掲載しているサイトやハローワークの職員などに「いつから募集をかけているか?」「どのくらいの頻度で募集をかけているか?」等を訪ねるといいでしょう。
5.中堅層がいない
株式会社DISCOによると、「ブラック企業になると思う目安」について、企業調査では大卒新卒者の就社後3年の離職率が5割、学生調査では3割を超えるとブラック企業になると思う、という結果が出ています。
この意識調査の通り、ブラック企業は特に3年以内の離職率が高い傾向にあります。
そのため、従業員が極端に年上か、もしくは新卒などの若い人の割合が多くなり、30~40代前半の中堅層が多くない、という状況であることが多くあります。
中途採用などを積極的に行っているケースではこの限りではありませんが、その場合勤続年数が短い傾向にあります。
6.社内環境
面接時や職場見学時・入社した後に、ある程度の社内環境がうかがえるかと思います。
その際に、怒鳴り声やパワハラが頻繁に見受けられる、または聞いていた業務内容を違うことをさせられている、さらには社内でしか通用しないようなおかしなルールがある等の場合にはブラック企業である可能性が高いです。
また、そういった社内環境を見られないように、社外の貸会議室などで面接や入社式を行うこともあります。
自社がブラック企業体質であることを悟られないように、あえて大きな会場や豪華な会場を用意している、というパターンです。
あまりにも不自然であると感じた場合には警戒して損はないでしょう。
ブラック企業に入社してしまったら
もしも、ブラック企業だと気づかずに入社してしまった場合、「辞めたい」と思ってもなかなか辞められないという状況に陥ることは多々あります。
そんな時にはどのように対処したらいいのでしょうか?
退職の意思を伝える
まずは退職の意思を伝えることから始めましょう。
といっても、退職を渋られたり、パワハラを受けたりと交渉が難航することが予想されます。
このような場合には早急に弁護士へ相談しましょう。あわせて会社へ内容証明郵便を送ることにより、「いつ退職の意思を示したか」という事が明確となります。
入社したばかりの方で、早期退職には気が引けると言う方もいると思います。 しかし、嫌々働いている状態は、会社にとっても自分にとってもマイナスです。 時間が経てば経つほど辞めにくくもなりますので、ブラック企業だと感じたら早めに退職する方がよいでしょう。
退職の時期を決める(有給消化するなどの交渉をする)
会社に退職の意思が伝えるとともに、具体的な退職日を決めましょう。
有給休暇の残日数がある場合には消化してから退職するようにしましょう。
この期間中に転職活動をすることも可能です。
なおブラック企業の特徴として、「有給休暇を利用することができない」ということが少なくありません。
しかし、有給休暇の取得は社員の権利であり、労働基準法で明確に記載されています。
「有給休暇を取らせない」といった動きがある場合には、社内の労働組合や労働局・労働基準監督署に報告し相談しましょう。
また、以下に当てはまるとき、残有給休暇分を「買い取り」する制度を利用できる場合があります。
・法定以上の有給休暇日数分
・退職前に未消化のもの
・過去2年間で未消化のもの
ただし、会社へ有給休暇の買い取りを請求すること自体はできませんので注意が必要です。(ブラック企業といわれている企業にはない方が多いです)
あくまで会社側と労働者側の合意が必要となりますので、検討する場合には弁護士に相談・確認するようにしましょう。
退職後の手続きをする
退職後に行う作業がいくつかありますので、漏れのないように対応しましょう。
・離職票・源泉徴収票などを郵送してもらう
退職後、会社から発行される書類は主に以下の通りです。
通常2週間程度で発行・発送されますが、ブラック企業の場合にはその限りではありません。
それぞれ取り寄せ方法を記載するのでお試しください。
・雇用保険被保険者証
本人が確認できる書類を持参のうえ、ハローワークにて再発行を依頼する
・離職票
まず「離職票が必要」という事を会社に申告。
そのうえで郵送されない場合にはハローワークに相談・対応してもらう
・健康保険資格喪失証明書
保険証が「全国健康保険協会」の場合、本人が確認できる書類・印鑑・年金手帳を持参のうえ年金事務所にて発行を依頼する
・源泉徴収票
源泉徴収所不交付の届出書を記入のうえ、最寄りの税務署に提出する(給与明細書がある場合には写しを一緒に提出する)
・年金手帳(会社に預けている場合)
本人が確認できる書類を持参のうえ、年金事務所にて再発行を依頼する
・残業代が未払いの場合は請求する
いわゆるサービス残業をしていた場合、まったく残業代が支払われていない場合には直ちに残業代を請求しましょう。
業務日報などの記録や事務所管内からの入退出記録など、何時から何時まで労働していたかを示す証拠を集め、弁護士等へ相談し会社に請求しましょう。
健康保険・年金の種別の変更、確定申告手続きなど
・健康保険の切り替え
1、家族の扶養に入る場合
→配偶者や自分の親の扶養に入り、その勤め先の社会保険に入る方法。
家族の勤め先に申告のうえ、保険組合に書類や要件について問合せましょう。
申請期限:正式に退職した日から速やかに行う
2、国民健康保険に切り替える場合
→市区町村役所の窓口にて申請可能。
健康保険資格喪失証明書・本人が確認できる書類・印鑑(場合によっては通帳が必要なことがあります)を持参のうえ申請しましょう。
3、今まで加入していた保険に任意で継続する場合
→任意継続被保険者制度を利用することで、今まで加入していた保険を継続することができます。
ただし、最大で2年間までですので、その後は国民健康保険などに切り替える必要があります。
申請期限:正式に退職した日から20日以内
・年金の種別変更
退職後1日のブランクもないまま次の職に就く場合には年金の種別変更は必要ありません。
それ以外の場合には以下の通り変更が必要です。
1、家族の扶養に入る場合
国民年金第3号被保険者へ変更となります。家族の勤め先に手続き方法を確認し申請しましょう。
2、国民年金へ切り替える場合
退職した後すぐに働かない場合等には、国民年金に切り替える必要があります。
年金手帳・退職日が確認できる書類・本人が確認できる書類・印鑑を持参のうえ市区町村役場の窓口にて手続きを行いましょう。
・確定申告手続きについて
例えば4月1日に退職し、12月31日までに就職していなかった場合には自分で確定申告する必要があります。退職後に会社から送られてくる源泉徴収票が必要となりますので準備しておきましょう。
なお、失業給付金は収入に含まれません。
・失業保険の申請
タイミングによっては、すぐに職に就けない場合もあります。
- 就職の意思と能力があるにもかかわらず就職できない
- 積極的に求職活動している
- 失業前の1年の間に、雇用保険に6か月以上加入している
上記3点を満たしていれば、失業保険(雇用保険)を申請することができます。
失業保険とは、次の就業先が決まるまでの一定期間失業手当を受けることができる制度です。
○窓口
最寄りのハローワーク
○必要書類
雇用保険被保険者離職票(勤めていた会社から発行されます)
マイナンバーカードまたは本人が確認できる書類1点
証明写真
印鑑(実印でなくてもOKですがシャチハタは不可です)
預金通帳またはキャッシュカード(本人名義の物)
なお、実際に給付されるのは待機期間の7日を過ぎた後からになります。
さらに自己都合により退職した場合には、3か月の給付制限があり、この給付制限が過ぎてからの給付となりますので注意しましょう。
・転職活動を行う
転職活動は就業中でも行えますが、ブラック企業に勤めているとなかなか思うように活動できないでしょう。
上記で紹介した、失業保険を受給しながら新たな職場を探したり、転職サイトに登録し自動で応募できる環境を調えたりすることで、次の職場がスムーズに見つかる可能性が高まります。
ホワイト企業の見つけ方
「もうブラック企業に勤めたくない」と思っても、どうやっていい企業を見つけたらいいのでしょうか?
一般的にホワイトだと言われる企業の特徴を紹介します。
福利厚生が充実している
働きやすさを重視している企業は、様々な手当てや福利厚生が充実しています。
雇用保険や通勤手当など一般的なものから、住宅手当、産前産後休暇・育児休暇、介護休暇等が就業規則に明記されていればホワイト企業だといえるでしょう。
また、形だけの手当でなく、取得実績があるかを同時に確認すると確実です。
残業が少なく柔軟な働き方ができる
ホワイト企業は時間外就業時間が少ない傾向にあります。
就業している人数が多く、適切な業務量を受け持つことができることが理由の一つに挙げられます。
また、フレックスタイム制の導入や、リモートワーク(テレワーク)など、柔軟な勤務体制も特徴の一つです。
様々な働き方について考え、実行に移すことができる企業はホワイトだと言っていいでしょう。
上記で上げたような特徴は一例です。
他にも、以下の特徴が当てはまるでしょう。
- 様々な年代の社員が活躍している
- 女性が働きやすい環境・制度が整っている
- 評価制度が明確にされている
- 研修や社員教育に力を入れている(人を育てる制度が整っている)
- お金に細かい(経費精算や1分単位での残業代の支給など)
OB訪問(リアルの声)やネットの口コミ等を参考にし、面接時に質問をすることでブラック企業かホワイト企業かの判断がつきやすくなるかと思います。
あなたが泣き寝入りしないために
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*1 件数は2023年3月現在 *2 2013年~2022年。単独型弁護士保険として。2023年3月当社調べ。*3 99プランの場合 *4 初期相談‥事案が法律問題かどうかの判断や一般的な法制度上のアドバイス 募集文書番号 M2022営推00409
まとめ
「ブラック企業」と言っても、その実態は多岐にわたります。
パワハラや給料の未払いが発生している場合には、早急に退職・転職すべきだといえます。
また、多少ブラック体質でも自分がやりたいことができる会社と、福利厚生がしっかりしている反面したいことが自由にできない会社を比べると、後者はホワイト企業に見えたとしてもブラック企業だと感じてしまう事もあります。
自分に合った会社を見つける為にも、求人内容や社員や会社の様子をしっかりと確認・観察すべきでしょう。
あらかじめ弁護士保険などで、今後のリスクに備えておくこともおすすめします。
一つ一つのご依頼に全力を注ぎ、あなたのために最善の解決を目指します。
大川ゆかり
当サイト「ミスター弁護士保険」編集長。
法的トラブルは予防と備えが必要ということを広めるべく、弁護士への取材を通じ、情報発信しています。
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