現代社会における、特にシングルマザーの家庭では、お子様を育てていくことは決して簡単なことではありません。
最近では、コロナの影響で収入が激減し、給付金や手当などの社会保障を駆使しても、
「ちょうど賃貸の更新月に当たってしまった」
「たまたま怪我をして医療費がかさんでしまった」等の理由で、
明日の食費さえままならない、といった状況に陥ってしまう方も少なくないと思われます。
もちろん、法律上は、父親に養育費を請求したり、親族に扶養料を求めたりすることはできますが、
「DVが原因で離婚して元夫の居場所さえ分からない」
「両親や親族とも長年音信不通」
といった状況では、事実上経済的な援助をお願いすることが難しい というケースも少なくないと思います。
他にも、
「中絶できる時期を過ぎてしまった」
「産んでも子どもを育てられる経済力がない」
「もともと自分の体が弱くて心配」など、
今後の子育てに不安を抱えている方は、意外にも多いと思われます。
そこで、ここでは子育てをする上で、最悪の事態になる前に知っておきたい知識をお伝えします。
記事に入る前に・・・
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子どもを育てられない不安とは
例えば、少し前に有名になったいわゆる赤ちゃんポスト(親が育てられない子どもを匿名で預かる熊本市の慈恵病院の「こうのとりのゆりかご」)では、2020年までの約13年間の間に、150人を超えるお子様が預けられたとの報告もあります。
一つの病院だけで150人超ですから、それだけ、「子どもを育てられない」決断をしている方が多いことを示しているように思います。
絶対に避けるべきなのは、「子育てができない」と絶望的になった挙句、そのままお子様と共倒れになってしまったり、無理心中を図ったりする、といった事態に陥ることです。
また、極度のストレスの結果、日常的な虐待に発展する、といったケースも危惧されます。
このような最悪の事態に陥ってしまう前に、「子どもを育てられない不安」というイエロー信号を感じたら、まずは第三者に相談することがとても大切です。
親権の放棄はできる?本当に育てられなくなったら
親権とは、主に、子どもの利益のために、親が子どもを養育監護し(「監護権」といいます。)、子どもの財産を管理(「財産管理権」といいます。)する権利義務のことをいいます。
「親権」と書くので、一見、親の権利のように見えますが、あくまで「親権」は、「子どもが育っていくための親の義務」である側面が大きく、「親権を放棄する」ことは、原則として認められません。
しかし、やむを得ない事由があり、親がどうしても親権を行使できない場合には、そのまま親権を保持させることが、かえって親子のためにならないこともあります。
したがって、一定の場合には、家庭裁判所の許可を得て、親が親権を辞することが、法律上も認められています。
また、やむを得ない事由が解消した後に、家庭裁判所の許可を得て、親権を回復することも一定のケースで認められます。
1 親権を行う父又は母は、やむを得ない事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、親権又は管理権を辞することができる。
2 前項の事由が消滅したときは、父又は母は、家庭裁判所の許可を得て、親権又は管理権を回復することができる。
親権を放棄できるやむを得ない事由とは?
それでは、親権を放棄できる「やむを得ない事由」とは、いったいどんなケースを指すのでしょうか。
先ほど述べたとおり、親権は放棄できないのが原則ですので、「どうしても子育てが難しい」と判断される重大な事由が必要となります。
例としては、
- 経済的困窮(失業等により生活苦となり食費もままならなくなった等)
- 重病や障害(重い病気で寝たきりや長期入院となった、大怪我により障害が残り、子どもを育てられる身体状態ではなくなった等)
- 海外赴任(仕事等の都合で海外赴任がやむを得なくなり、赴任先の国内情勢やその他事情により、子どもを連れていけない等)
- 服役(犯罪をしてしまい刑務所に入ることになり、子育てが長期間できなくなった等)
- 再婚(再婚したが、再婚相手が子連れであることを認めてくれない等)
などが典型的な例と考えられますが、その他にも、
「子育てが難しい理由」を裁判所に説明し、裁判所が「やむを得ない事由」があると認めてくれれば、親権を放棄することは可能と考えられます。
親権を放棄する具体的な手続きは?
親子間で、「もう親子の縁を切る!」と言って、事実上親権を放棄することはあり得ますが、これはあくまでも事実上の話です。
法的に親権を放棄するには、家庭裁判所に親権者辞任許可の審判を申立て、裁判所よりこれを許可する旨の決定をもらわねばなりません。
具体的には、
①子どもの住所地を管轄する家庭裁判所に対して、
②親権者辞任許可の審判申立書を提出し、
③家庭裁判所において事情の説明等を行い、
④子どもが15歳以上の場合にはその意見を聴取の上、
⑤家庭裁判所から「親権を辞任することを許可する」旨の審判を出してもらう
という手順となります。
手続きの費用は、子ども一人について印紙代800円と、予納郵券代がかかります。
申立ての方法や具体的な必要資料などは、予め、家庭裁判所に電話連絡や相談をして、確認しておくとスムーズでしょう。
親権辞任の許可審判が下されただけでは、最終的な親権辞任の効果は生じません。
親権辞任許可審判書の謄本と、親権喪失届を、親権者の住所地又は子どもの本籍地の役所に対して、提出する必要があります。
これらが役所に受理されることによって、完全に、親権喪失の法的効果が生じることになります。
子どもの今後はどうなるの?
親権辞任の効果が生じると、お子様に対して親権を行う者がいなくなってしまいますので、代わりに、お子様の法定代理人として、監護養育、財産管理、契約等の法律行為などを行う「未成年後見人」という者を選出する手続きを踏む必要があります。
この手続きを、未成年後見人選任申立てといいます。 【参考】 裁判所HP
申立ての際に、後見人となる候補者を記載するのが原則ですが、どうしても見つからない場合は記載せずに申し立てることも可能ですし、記載した候補者が必ず後見人に選任されるとも限りません。
最終的には、裁判所が、お子様の財産状況や年齢、支援を要する内容、利害関係等の一切の事情を考慮して、適任と思われる人物を後見人として選任します。
親権放棄のメリット・デメリットについて
親権放棄のメリットは、何よりも、子どもとの共倒れ等、最悪の事態を防ぐために、しっかりと家庭裁判所を通じて、自身に代わって、適切にお子様を監護養育、財産管理してくれる人物を選任できる点と言えるでしょう。
また、手続き自体の費用も、弁護士を立てずに行えば、さほど費用の負担なく、手続きを行うことができます。
親権が無くなっても親子関係は残るため、お子様が親の相続権を失わないことも、将来的にお子様に財産を引き継がせることができるという意味ではメリットです。
逆に借金を相続させてしまう可能性はデメリットと言えますが、相続放棄によりこれを回避できますので、決定的なデメリットとまでは言えません。
また、親子である以上は、相互の扶養義務(最終的にお互いが助け合う義務)は残りますが、この点はケースバイケースで、メリットともデメリットとも言えるかと思います。
何よりも、大事なお子様が自身の手から離れてしまうこと、お子様の監護養育や、お子様の進学など大事なことを決定する権限が無くなってしまうことが、一番大きなデメリットといえるでしょう。
その意味では、一度は弁護士に相談して、親権放棄をせずにすむ方法がないか、あらゆる選択肢を検討することはとても大切です。
生活保護やその他制度などを利用することにより、親権放棄の事態を回避できるのであれば、これに越したことはないと言えるでしょう。
仮に、親権放棄の選択をする場合でも、その後のお子様との関係をどうするのかなど、しっかりと一度は弁護士に相談し、方針を立てた方が良いでしょう。
特別養子縁組やNPO法人への相談も
育てられなくなったお子様を、思い悩んだ挙句、遺棄してしまう、などと言った事態も実際に起こっています。
このような事態を防ぐべく、最近は、「子どもを育てる自信がない」という方の相談を聞き、場合によっては子どもを引き取り、お子様の育て方を一緒に考える、という取り組みをしているNPO団体なども充実しています。
例えば、どうしても子どもを自分では育てられない、となった場合に、「子どもが欲しいので是非引き取りたい」というご夫婦を探してくれる、いわゆるマッチングサービスのような手続きを一緒に進めてくれます。
そのようなご夫婦との間で、特別養子縁組を成立させると、こちらの親子関係はなくなり、新しくそのご夫婦との間で、養親子関係が成立します。
その意味では、先ほどの親権放棄とは、完全に元の親子関係が無くなる点で、大きく異なります。
養親にお子様を託した後は、定期的に様子を報告してもらう等の方法もとれますし、養親はこのようなセンシティブな関係をうまく構築していくよう研修を受けるようですので、比較的安心して、お子様を託すことが可能となるでしょう。
親権放棄という手続きに躊躇を覚えられる方は、まずはこのような施設に相談することも一つの選択肢ではないかと思います。
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最後に
お子様をひとりで育てていく、ということは本当に大変なことです。
もし、「もう育てられない」と思っても、自分を責めずに、一人で悩まずに、決して悲観的にはなりすぎないでください。
お子様を出産し、これまで養育し、今後も何とかしたいと必死に考えているだけで本当に素晴らしいことだと思います。
きっと方法はありますので、何よりも、悩みすぎず、まずはご相談に行くようにしてくださいね。
あらかじめ弁護士保険などで、リスクに備えておくことをおすすめします。
2008年弁護士登録。
男女問題、交通事故を中心に、幅広い分野を扱う。
大切な人生の分岐点を、一緒に乗り越えるパートナーとして、親身になって対応させていただきます。
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2019年よりミカタ少額短期保険(株)が運営する法律メディアサイトです!
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