ふとした瞬間、「夫と距離を置きたい」と思ったことはありませんか?
仕事一筋で家庭を顧みない「昭和おやじ」の夫。
そんな夫との関係が微妙な時に、子どもが独り立ちすることになり、残念な気持ちになったことはありませんか?
特に何があったわけでもないのに夫との時間が増えてしまうことに不安を感じてしまう、という女性は、実はあなたが思っているよりも多くいます。
今までは子どもがいたことで何とか夫婦でいることができていたかもしれません。
ですが、今後夫が定年退職した時のこと考えると、もはや「離婚」か「別居」の2択しか浮かばない・・・。
今回は、そんなあなたの背中を押すために、「離婚」と「別居」についてのメリット・デメリットを法的観点でまとめました。
あなたがこれからの人生を楽しく過ごせるように応援しています。
記事に入る前に・・・
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離婚を考える前に別居を考える
夫に一方的な離婚事由(モラハラ・DV等)がある。
または、あなたが将来、生活していくだけの財産を確実に得られるのであれば、すぐに離婚をした方がよいといえます。
しかし、いきなり離婚をするのをためらうという方は、まずは別居という形を取り、婚姻を継続させることを選択される方もいます。
ここでは、いきなり離婚をするわけではなく、別居を選択する上で、考えるべきことについて述べます。
別居のメリット
将来離婚を考えたときに、なるべくスムーズにいくように、また、離婚をしなくても別居などで、 夫と距離を置きたいと考え、「今から何か準備できることはないか?」というあなたの為にポイントをまとめてみました。
① 法的に婚姻関係にあるので扶助義務を残したままでいられる
婚姻関係にある限り、夫婦は、生活費を互いに分担するという、婚姻費用を負担する義務があります。
具体的には、年収が高い配偶者から低い配偶者に対し、自身と同程度の生活をさせる義務(生活保持義務)が生じます。
つまり、別居をしても、婚姻費用を受け取る権利があるので、経済的な部分で配偶者より、一定の援助を受けることが期待できます。
また、急に配偶者が亡くなったとしても、遺産を相続する権利があります。
② 冷静になれる
離婚する、しないにかかわらず一度、冷静になる事が大切です。
離婚した場合の計画を描くにもメリット・デメリットを分析しなければ失敗する確率は高くなります。
また、別居してみて、あらためて夫の良い所に気づき、あなたにとって大切な人と思えるかもしれません。結果、やり直せるかもしれません。
離れてみて「冷静に考えられる事」は沢山あるでしょう。
別居のデメリット
① 夫婦関係が悪化する?
別居によるメリットがある一方、距離を置く(意思疎通がしづらくなる )事によってお互いの気持ちが離れる可能性が高くなります。
「厚生労働省の統計による別居した夫婦の離婚割合は約70%」ですが、厳密に分析すると、その中の20代から30代前後の若年世代の方は短期間1年~2年前後で離婚に至っているという数字があります。
よって、「離婚をしたくない・離婚までは考えていない」という方にはデメリットになるでしょう。
但し、50代以上の団塊世代前後の方は5年から10年前後と離婚までの期間がきわめて長い傾向があります。
つまり、この世代の方は別居したからといって、即離婚という判断はせず、「別居という状況とうまくつきあっている、又は、いた場合もある」という事です。
よって、「夫婦関係が悪化する?」というデメリットには一概には該当するとは言い切れない事がいえます。
むしろ、お互いを尊重し別居という新しい環境に順応しやすく、逆にメリットとなる場合もあるのではないでしょうか。
② 慰謝料の発生(強引に別居に至った場合)
夫が別居または離婚を拒否しているにも関わらず、別居に至った後離婚に発展した場合は夫より慰謝料を請求される場合があります。
単に家を出て行ったのみなら、別居をすることが悪質だと裁判所が認める場合、別居をしたことが民法770条1項2号の「悪意の遺棄」に当たってしまいます。
「悪意の遺棄」をした配偶者は、「有責配偶者」とされ、慰謝料が発生することが多いです。
また、自分から離婚請求をすることが厳しく制限されています。
これは、信義則(相互に相手方を信頼を裏切らないよう誠実に行動すべき法原則)に反する場合に離婚を認めてはいけないという裁判所の考えがあるからです。
但し、正当な別居理由があれば、この限りではありません。
例えば、夫の浮気・お金を入れない・モラハラ等々の事情、また、それらの事情以外にも人それぞれの特別な事情もあります。ケースバイケースです。
よくある『双方の性格の不一致・方向性の違い』という事情があっても『有責配偶者』には該当しません。
しかし、法律の専門家である弁護士に一度相談し「自分が考えている別居の形・方法で問題がないかハッキリさせる」方が安心です。
③ 経済的な部分
婚姻関係が続く限り、自分の生活を切り下げてでも、配偶者に自身と同程度の生活をさせる義務があります(「生活保持義務」と言います。)
そのため、年収が低い配偶者から高い配偶者に対し、同程度の生活ができるでけのお金(婚姻費用)を払うよう請求することができます。
これは別居中であったとしても同じです。
しかし、一度別居が始まってしまうと、相手方はお金を払うことを嫌がることが少なくありません。
最初は払ってくれていたのに、次第に払われるお金が減ったりすることも考えられます。
別居前には必ず書面を取り交すなどし、「約束を守ってもらうように」拘束力を確保しましょう。
書面は夫とあなたの署名と印鑑が押されたものである必要があります。
お金はかかりますが、「厚生省証」という形がいいでしょう。
「強制執行認諾文言」という条項を入れてもらうことで、夫が約束を守らない場合に公正証書を使って強制執行をすることができます。
逆に、書面の取交しをしなかった場合は、不払い率が高くなり、後に調停や裁判にまで発展するケースをよく耳にします。
最悪、公正証書に残せなくても、紙に残しておきさえすれば、調停や裁判で証拠として採用される可能性はありますので、まずは記録を残す事が大切です。
【参考】
婚姻費用の「未払い率が高いのは20代から40代の世代です。」
若年世代に比べ団塊世代前後の50代以上になると一般的には貯蓄を含めた財産があり、仮に沢山あるとは言えない場合であっても、前述した通り、婚姻費用の不払いのリスクはある程度、軽減されることが推察されます。
④ 夫が財産を隠蔽?
夫名義の預金・証券(保険や株)・不動産等の財産分与の原資の隠蔽。
別居中の機会を利用し財産を隠してしまうリスクが考えられます。
別居中の機会を利用し財産を隠してしまうリスクが考えられます。
一旦別居すると、合い鍵を持っているとしても、相手方の家(旧自宅)に無断で入ることは住居侵入罪に当たる可能性があります。
また、旧自宅を出る際に、妻個人の所有物以外の物を持っていくと窃盗罪などに当たる可能性もあります。
その為、別居前には離婚後の財産分与として有効なものは何が存在するのか(資産価値があるのか)を確認し記録しておきましょう。
同居中に、夫宛に送られてくる証券会社や金融機関等からのはがき・封筒を見て、会社名を控えておくといいでしょう。
⑤ 子供の学区(子供の負担)
小中学校の子供がいる場合は学区の問題も押さえておく必要があるでしょう。
新居が今住んでいる所と別の学区の場合(公立の場合)は転校させなければなりません。
但し通える範囲内であれば、転校をしなくても良いケースが沢山あります。教育委員会への簡素な申請ですむ場合が多いので、まずは学校へ相談してみてください。
せっかく仲良くなったお友達や先生とのお別れなど、子供の精神的な負担は極力軽減させたいものです。
また、距離が遠いが「親が送り迎えをするので通学には問題なし」と許可されるケースもありますが、そうすると、親の仕事への影響が少なからずでてきますので、新居の場所は慎重に選ばれる事が望ましいと考えます。
やむを得ず転校させなければいけない場合は 子供の事を考え、集団登校制度があるのかどうか、事前に転校先学区の役所(教育委員会・教育指導課等)に確認してみる事も良いでしょう。
この制度があるか、無いかで色々な意味で子供の負担はとても変わってくるものです。
転校時に必要なこととして、 原則、以下のことが必要となります。
- 住民票の移動
- 子が通っている学校からの「在学証明書」などの書類の請求
- 転校先の学校を管理している区市町村の役所への届け出
別居期間を置いた方がスムーズに離婚できるのか
別居期間を置くことで、のちの離婚がスムーズに進む場合があります。
離婚裁判に発展した場合、別居の事実は「離婚が認められる法的理由」ではありませんが、別居経験の有無、別居期間はみられます。
民法770条1項5号では、「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」があることを裁判上離婚できる場合に挙げています。
そして、「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」は、別居期間が3年から5年にわたる場合、婚姻関係が破綻していて修復の見込みがないとして認められることが多いと思われます。
もっとも、裁判所は、同居期間に比べて別居期間がどれぐらい長いか、どういう経緯で別居に至ったかが考慮されます。
同居期間が長いほど、要求される別居期間が長くなったり、やむを得ない別居理由を求められたりします。
また、厚生労働省の統計によると、別居した夫婦が離婚する割合は約7割です。
年齢別による背景も含め、さまざまな理由があるとは思いますが、別居により相手に離婚の「含みを持たせた事」が一つの要因といえるでしょう。
突然離婚を切り出すのと、切り出さないのでは、相手の納得感に大差がでてくるのではないでしょうか。
離婚を考えている方は、別居期間を設ける方がスムーズに行くでしょう。
別居中不倫について
別居中の不倫はNGです。
別居中だからといって不倫をしてしまうと以下のデメリットが生じます。
相手方から離婚と損害賠償を求められる可能性がある。
別居中に妻が不倫をした場合、性的関係に至っていれば民法770条1項1号の「不貞な行為」に当たり、性的関係に至っていなくても、同項5号の「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当しうることになります。
また、不倫によって、婚姻共同生活の平和の維持という権利・利益を侵害したと言えます。
そのため、配偶者から不法行為に基づく損害賠償請求をされる可能性もあります。
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*1 件数は2023年3月現在 *2 2013年~2022年。単独型弁護士保険として。2023年3月当社調べ。*3 99プランの場合 *4 初期相談‥事案が法律問題かどうかの判断や一般的な法制度上のアドバイス 募集文書番号 M2022営推00409
まとめ
「離婚」と「別居」どちらがお得か判断しやすいようにメリット・デメリットを、それぞれ記載させていただきました。
生活していく上で重要な要素は、経済的な安定(お金)です。
また、「団塊世代前後の50代以上のあなた」にとっては、本編に記載しましたデメリットの一部分に関しては一概には該当せず、むしろメリットに置き換えられる部分もあります。
相殺すると、「別居」を選択するメリットが大きい場合もあるのではないでしょうか。
もちろん別居が絶対という事ではありません。
成人するまで子供や夫につくしてきた「あなた」。
「(家事等の)義務と(充実した生活をしているような)演技」の生活ばかりだった「あなた」。
「新たな人生」をおくる、きっかけになって頂ければ幸いです。
是非、今後の備えとして「弁護士保険」をご検討ください‼
弁護士 松本隆
神奈川県 弁護士会所属
横浜二幸法律事務所
所在地 神奈川県横浜市中区山下町70土居ビル4階
TEL 045-651-5115
労働紛争・離婚問題を中心に、相続・交通事故などの家事事件から少年の事件を含む刑事事件まで幅広く事件を扱う
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