『最近の裁判例』で詳しく解説!! 親権者変更について押さえておくべき7つのこと

30代後半 男性

1年前に妻と離婚。
親権について、最初は私が親権を取るつもりでいたのですが、妻や妻の両親の圧力と子どもが妻になついていたため、泣く泣く諦めてしまいました。
離婚から1年が経ち、私と子どもとの面会交流がだんだん減り始め、不審に思い調べたところ、妻は新しい恋愛に夢中になっており、育児がおろそかになってしまっているとのことでした。
このままでは息子の将来も心配です。
妻がもっている親権を、自分に変更できるかどうか知りたいです。

「離婚を早くしたいがために軽い気持ちで親権を譲ってしまった」という話はよく聞きます。

親権は子どもを養育する上で必要なものですが、離婚のときには安易に手放してしまう人もそれなりにいて、実際によく相談を受けます。

そんなわけで、今回は親権の変更について詳しく解説したいと思います。

記事に入る前に・・・

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目次

一度決まった親権の変更は可能か

当事者同士での話し合いだけでは変更できない

離婚をするときは、夫婦(父母)の「話し合い」だけで親権者を決めることができます。

しかし、離婚後に親権者を変更する場合は、必ず「家庭裁判所の調停」によってしなければなりません。

当事者同士の「話し合い」だけで簡単に変更することはできないのです。

具体的には、家庭裁判所に「親権者変更調停」というものを申し立てることになります。

例外(調停が不要なケース)

親権者が行方不明等で調停に出席できない場合などには、家庭裁判所に「親権者変更の審判」を申し立てることができます。

ポイント

離婚「後」の親権者の変更は家庭裁判所で「親権者変更調停」をしなければならない

親権者変更調停

 「親権者変更調停」ではどういうことが考慮されるか?

民法第819条6項

子の利益のため必要があると認めるときは,家庭裁判所は、子の親族の請求によって,親権者を他の一方に変更することができる

親権者の変更の可否は、「子の利益のため」に変更の必要があるかどうかで決められることになります。

具体的には、

Ⓐ 親権者を指定した経緯

Ⓑ 親権者変更を希望する事情(事情の変更)

Ⓒ 現在の親権者(相手方)の意向

Ⓓ これまでの養育状況がどうであったか

Ⓔ 双方の監護能力(経済面や家庭環境等)や監護の安定性

Ⓕ 子どもの年齢・性別・性格・就学の有無

Ⓖ 子どもの意向

などの事情が考慮されます。

過去の事情であるⒶ、Ⓓなどは変えようがありませんし、Ⓕ子どもの状況やⒼ子どもの意思はこちらではどうしようもできないこともままあります。

ですので、今後、親権者変更をする予定の方は、

「今からどうにかできる事情」であるⒺ監護能力(経済力や家庭環境等)監護の安定性を整備することが非常に重要です。

例えば、正社員になれるチャンスがあるのであれば正社員になってからの方が有利ですし、借金が多額にあるのであれば債務整理をしてからの方がよいかもしれません。

また、Ⓑも重要です。

どうして親権者変更をしたいのかについての説得的な理由があれば有利に話を進められます。

後ほど裁判例を見ていきますので、その際に参照してみて下さい。

ポイント

親権者変更を本気で考えているのであれば

「今からどうにかできる事情」である経済面や家庭環境等の整備をしっかりする

調停での話し合いがまとまらず調停が「不成立」になった場合

自動的に「審判」手続が開始されます。審判では、裁判官が一切の事情を考慮して判断をすることになります。

後ほど挙げる事例はすべて審判における判断です。

親権変更が見込めそうな場合 ~審判で判断されたケースを参考に~

調停はあくまで話し合いですので、お互いの話が平行線のままであった場合には「不成立」となってしまいます。

ここでは、審判において裁判官がした判断を見ていきます。

みなさんが「調停に踏み切るかどうか」を決める際に参考になるかと思いますので、ちょっと長いですが読んでみていただければと思います。

※可能な限り事案を削らないようにしつつ、かつ、わかりやすくしています。

見込めるポイント①現在の親権者の養育状況・生活環境がよくないこと

事例1「母の状況に問題があるとされたケース」(福岡高決平成27年 1月30日判例タイムズ1420号102頁)

父Xと母Yの間には子A(5歳)、子B(4歳)がおり、離婚の際、親権者は母Yとされた。

以下の事情がある場合、父Xによる親権者変更の申立ては認められるか。

  • 子Aらは平成25年X月以降、親権者である母Yではなく父Xに養育されて安定した生活を送っていた。
  • 婚姻生活中、母Yは、子Aらの食事の世話等はしていたが、夜間のアルバイトをしていたため、子Aらの入浴や就寝は父Xが行っていた。
  • 母Yは子Aらの幼稚園の行事参加に消極的であり、保育料の支払いも行っていなかった。
  • 母Yに監護補助者が存在せず、父Xと比べて経済的な不安があった。
  • 親権者を指定した経緯は、親権者になると主張する母Yに父Xが譲歩したためであった。しかも、母Yの住居や昼の仕事が決まり、生活が安定するまで父Xが子Aらを監護することとなり現在に至っている。
  • 母Yは婚姻期間中に不貞行為を行っていた。
  • 母Yは不動産会社への再就職が決まり一定の収入も見込まれていた。

裁判官は、

4歳、5歳といった小さい子の場合、母性が必要であるため親権者は「母親」になりうることを示しましたが、このケースではそれでも

「父Xに親権者変更を認めるべきである」と判断しました。

①~⑥の事情はすべて父Xに有利な事情として考慮されています。

このケースのポイントは、①~⑥の有利な事情があることはもちろんですが、特に、離婚後に事情変更があったわけではないことです。

つまり、「もともと母Yが親権者にふさわしくなかった」ということです。

補足説明が必要なのは⑤ですが、「親権者を指定した経緯」を裁判官は重視します。

今回は、母Yの住居や昼の仕事が決まるまで父Xが子Aらを監護することとなっていただけで、「母Yに監護能力があることを認めていたわけではない」ことが重視されたのです。

また、もう1つ補足説明が必要なのは⑥の母Yが婚姻期間中に「不貞行為を行っていた」という事情です。

裁判官は、「母Yに監護する意思や資格に問題がある」と評価しています。

不貞行為は繰り返される可能性があり、母親が子どもをかえりみなくなってしまった場合、子どもの生活に大きな影響を与えてしまいますので、重視されたのだと思われます。

子どもが変更を希望していること(15歳未満でも尊重します)

事例2「11歳の子どもの意思が考慮されたケース」(東京家審平成26年 2月12日判例タイムズ1412号392頁)

父Xと母Yの間には小学5年生の子A(10歳)がおり、離婚の際、親権者は母Yとされた。以下の事情がある場合、父Xによる親権者変更の申立ては認められるか。

  • 母Yは、離婚後、子Aとともに実家に転居したが、母Yの実家は、父X宅と道路を挟んだ向かいに位置していた。
  • 母Yは実家において、子Aのほか、父B、母C、姉D、弟Eと生活したが、母Yは親族と不仲となっていった。
  • 平成22年年ころから、母Yは、子Aへの監護意欲が希薄となり、監護が疎かになっていき、姉DらがAを監護するようになった。
  • 平成24年、母Yは転居した。子Aは転居を拒否して実家にとどまった。
  • 父Xと子Aは、月1回、週末にかけX宅に宿泊するなどの交流があるが、母Yとの交流はほぼ途絶えている。
  • 父Xは映像制作会社に勤務し、年収は約600万円である。母Yは事務職員であり,月収約15万円である。

裁判官は、子Aが母Yと生活せず現在の生活を続けたいこと、将来的には父X宅に引っ越すことなると思うがその場合でも実家と行き来したいと述べていることを重視しました。

一般的に、未成年は15歳未満である場合、そこまで意思を尊重してもらえないということがままあります。

しかし、今回のケースでは、裁判官は

  • 数か月後には11歳に達する小学校5年生である
  • 子Aの応答ぶり等から十分な判断力を持っている

としており、子どもの意思を十二分に尊重しています

もちろん、「母Yが監護をしなくなっていること」も考慮されていますが、「10歳の子どもの判断を尊重した」という点で多くの方に参考になるのではないでしょうか。

親権変更が見込めなさそうな場合
~審判で判断されたケースを参考に~

申立人が養育できる環境にない

事例3「母の借金がマイナスに働いたケース」(横浜家審平成21年 1月6日家月62巻1号105頁)

母Xと父Yの間には、子A(14歳)、B(11歳)、C(3歳)がおり、離婚の際、親権者は父Yとされた。

以下の事情がある場合、母Xによる親権者変更の申立ては認められるか。

  • 母Xはもともと子Aらの日常の世話を専ら行っていた。
  • 別居後、母Xは両親の補助を受けながら子Aらと安定した生活を送っていた。
  • 子A、Bは母Xと暮らすことを希望しており、子Eは3歳の女児である。
  • 母Xは消費者金融から多額の借入れをし、高額商品をクレジットカード等で購入して質入れ等して換金しているが、金の使途は不明である(借金を借金で返済にあてる自転車操業に陥っていたと推認される)

このケースでは、裁判官は母Xに親権者変更を認めませんでした。

①母Xが子Aらの日常の世話を専ら行っていた事情は、母親としての監護能力に問題はないという評価になるため、「変更してもよい」という方向に傾きます。

また、②別居後は両親の補助を受けながら子Aらは安定した生活を送っていた事情は、子どもの環境が安定しているということで、これも「変更してもよい」方向に傾きます。

③子A、Bは母Xと暮らすことを希望していることは、事例2と同じように子A、Bの意思を尊重するとすれば、「変更してもよい」方向に傾きます。また、子Eは3歳であり女児であるという事情は、母親の下で養育されるほうがより適切であると評価できますので、これも「変更してもよい」方向に傾きます。

そうすると、裁判官としては、このケースでは90%くらいの割合で母親に親権者変更をしてもよいと考えていたということになります。

しかし、④の多額の借金をしていた等の事情が結論をひっくり返しました。

ポイントは多額の借金だけでなく、「高額商品をクレジットカード等で購入して質入れをして換金していた」という点です。

破産する寸前の人がよくやるのですが、クレジットカードで買ったものをすぐに売ると「現金を作ることができる」のです。

しかし、例えば、30万円でパソコンを買って10万円で質入れした場合、手元には「すぐに使える10万円の現金」ができますが、それと同時に「20万円の借金」が発生してしまいます。

つまり、これはその場しのぎの手段どころか「状況をさらに悪化させる方法」なのです。

裁判官は、そういう意味で「自転車操業に陥っていた」という点を重く見て、金銭管理能力に大きな不安があると評価し、親権者変更を認めなかったのでしょう。
(裏を返せば、多少借金があるという事情があったとしても、それだけでは親権者変更にはそこまで大きく影響しないと思われます)

なお、このケースで裁判官は、親権者は父親のままであるが、監護権者は母親にするという形でバランスを取りました。

ただ単に自分の手元で育てたいだけなど特別な事情がない

事例4「変更の決め手に欠けたケース」(東京高決平成30年 5月29日判例タイムズ1458号186頁)

母Xと父Yは、未成年者の子A(幼稚園)の親権者を父親である父Yと決めて離婚した。父Yによる子Aの養育状況は問題ない状況であった。

しかし、母Xは、子Aの面会交流がなかなか実現しないことがあってから考え直し、子Aの出生から離婚までの間、子Aの面倒を見ていたことから子Aの親権者は自分がふさわしいと考えるようになった。

また、離婚当時、母Xには「がんの疑い」があったが、離婚後、がんは重いものではなく、悪性でもなかったということが判明した(事情の変更)。

子Aは3人で暮らしたいと考えている。

母Xによる親権者変更の申立ては認められるか。

このケースにおいて、裁判官は、親権者変更の必要性について、

「母Xが未成年者の出生から離婚に至るまで未成年者の主たる監護者であったといえることや離婚後、母Xに一定の事情の変更があったこと等を考慮しても、父Yと母Xが合意に基づいて親権者を父Yと定め,父Yの下で安定した状況にある未成年者の親権者を変更する必要性は認められない」

として親権者変更を認めませんでした。

なお、離婚当時の母Xの「がんの疑い」が離婚後に重いものではなかったと判明したこと(事情変更)についても、離婚当時に予測ができることであったとして重視しませんでした。

親権の調停申立の際に気を付けるべき3つのポイント

調停委員に対して、心証を良くするために・・・

調停委員も人間であり、感情があります。

あまりに「私は!私は!」と自分の権利を主張しすぎてしまいますと、調停委員はげんなりしてしまいますし、「この人は思いやりがない人だ」と思われてしまう可能性があります。

そうなると、相手への思いやりがない=子どもへの思いやりにも欠けてしまうのではないかと思われてしまいかねません。

調停のような場では、人となりを取り繕うことは簡単ではありませんが、調停委員の話をしっかり聞いて礼儀正しく振舞うことくらいはできるはずです。

・・・などとえらそうに書いておりますが、かくいう私もあまりにも調停委員に話をわかってもらえないときにイライラしてしまっていたらしく、無意識のうちにボールペンをカチカチ鳴らしながら話を聞いていたことがあります(同席した依頼者に後で言われて気がつきました)。

ここは自分も気をつけなければいけないなと思っているところです。

こじれそうなときは、早めに弁護士に相談・依頼する

 弁護士に相談することで自分がどのような環境を整えればよい結果に働くかが明確になる可能性がありますので、親権者変更を考えているのであれば、早めに相談に行くのがいいでしょう。

 また、相手が争ってきそうな場合には弁護士に依頼することも前向きに考える必要があります。

一番わかっていただきたいことは、親権者変更は簡単に認められるものではなく、難易度の高い手続きですので、「自分だけで何とかしようとしても基本的に難しいと思った方がいい」ということです。

「親権を変更したほうが子どもにとっていい」と思ってもらえるような環境を整備する

最初に書きましたとおり、親権者変更において考慮される事情としては

  • 親権者を指定した経緯
  • 親権者変更を希望する事情(事情の変更)
  • 現在の親権者(相手方)の意向
  • これまでの養育状況がどうであったか
  • 双方の監護能力(経済面や家庭環境等)や監護の安定性
  • 子どもの年齢・性別・性格・就学の有無
  • 子どもの意向

などが挙げられますが、今からなんとかできる事情を充実させることが重要です。

収入が安定しているか(相手方より収入が多いと尚よし)

⑤双方の監護能力(経済面や家庭環境等)や監護の安定性において重要な部分です。

心身ともに健康であるか

これも⑤双方の監護能力(経済面や家庭環境等)や監護の安定性において影響がある部分です。

精神的に病んでしまっていたり、重大な病気を抱えていると、将来的に子どもを十分に養育できなくなってしまうと評価されてしまうおそれがありますので、健康には気をつけて生活されるのがよいと思います。

(上の裁判例では「がんの疑い」があったことで離婚の際に親権を譲ってしまった人がいましたが、病気によって判断力がにぶってしまうということもあります。)

子どもに対しての愛情があるか

裁判例からもお分かりの通り、

⑦子どもの意向 は、裁判官もかなり重視する要素です。

子どもに愛情をもって接すれば、子どもも愛情を感じ取り、一緒に暮らしたいと思うこともあるでしょう。

そういう意味では、面会交流は子どもの意思に影響を与える重要なチャンスです。

ただ、子どもを物で釣るのは好ましいことではありません。自分が子どもに対してとても深い愛情があるのだということを心から伝えるように努めましょう。

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まとめ

いかがでしたでしょうか?

親権者変更の手続において考慮される要素について、裁判例を通じて具体的なイメージが少しでも持てたようであればうれしいです。

簡単なことではありませんが、親権者変更を考えている方が良い方向に向かえば、そして、何よりお子様が幸せな暮らしができるようになったらいいなと祈っています。

万が一のトラブルに備え、是非弁護士保険へのご加入をご検討していただくのはいかがでしょうか。

この記事を書いた人
松本隆弁護士

弁護士  松本 隆

神奈川県 弁護士会所属
横浜二幸法律事務所
所在地 神奈川県横浜市中区山下町70土居ビル4階
TEL 045-651-5115

労働紛争・離婚問題を中心に、相続・交通事故などの家事事件から少年の事件を含む刑事事件まで幅広く事件を扱う

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