これってストーカー?~ストーカー被害に遭ったときの正しい対処法を知ろう~

ストーカーとは、もともとの語源では、「つきまとい行為を行う者」のことを言います。

日本では、一般的に、元交際相手や、一方的に恋愛感情を抱いた相手から、執拗なつきまとい行為を行われた場合、「ストーカー」などと呼ぶことが多いと思われます。

ストーカーに関する法規制の観点から見れば、日本では、2000年に初めて「ストーカー行為等の規制等に関する法律(ストーカー規制法)」が制定されました。

法的には、ストーカー規制法で禁止されているストーカー行為を行う者を、「ストーカー」として処罰の対象として扱うことになります。

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目次

ストーカー規制法の制定経緯や改正など

日本では、ストーカーに関する法規制がもともと不十分として問題視されていました

2000年に制定されたストーカー規制法も、女子大生が元交際相手に殺害されるという残虐な事件(桶川ストーカー殺人事件)が起こったことにより、ようやく法整備がなされたものでした。

その後も、「電子メール送信行為」が処罰対象にならないのはおかしいのではないか、SNSによる接触行為は不処罰なのか、など多数の疑問の声が上がっていましたが、なかなか法改正がなされませんでした。

1000通以上も電子メールを連続送信し、その後殺害に及んだ逗子ストーカー殺人事件を受け、2013年には「電子メール送信行為」がようやくストーカー行為として処罰の対象とされました。

また、芸能活動を行っていた大学生に対し、ツイッターやブログへの攻撃的な書き込みなどを繰り返した挙句、20か所以上も刃物で刺すという犯行に及んだ小金井ストーカー殺人未遂事件を受け、2016年には、「SNSやブログなどへの記事投稿行為」が、ようやくストーカー規制法の規制対象となりました。

このように、ストーカー規制法の改正は、過去の残虐な事件を受けて、度重なる改正が行われてきたものといえます。

最近の法改正について

最近の法改正ですが、令和3年6月15日には、これまで規制対象だった、「住居、勤務先、学校など通常いる場所」に加え、通常いる場所以外でのつきまとい行為を規制する見地から、「実際にいる場所の付近において見張る、押し掛ける、みだりにうろつく行為」が規制対象として追加されました。

また、これまでの規制対象である「電話、FAX、電子メール、SNSメッセージ」に加え、手紙などを送り続ける行為を規制する見地から、「拒まれたにもかかわらず、連続して文書を送る行為」が規制対象として追加されることになりました。

令和3年8月26日からは、「GPS機器等を用いた位置情報の無承諾取得等」も規制対象に追加されました。

まだまだ不十分であったストーカー規制法も、ようやく最近になって、「ストーカー行為を必要な範囲において、網羅的に規制することが可能となった」といえると思います。

ストーカー規制法の対象となる「ストーカー行為」とは?

改めて、ストーカー規制法では、いかなる行為を「ストーカー行為」として禁止しているのか、見てみましょう。

ストーカー規制法は、まず、「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的」で、「その特定の者又はその家族等に対して行う」という要件を付しています。

「感情を充足する目的」については、同性愛であっても、友人同士の好き嫌いであっても、対象となると考えられています。

そして、以下の①から⑧を「つきまとい等」と規定し、同一の者に対し「つきまとい等」を繰り返して行うことを「ストーカー行為」と定義して、処罰の対象にしています。

簡単に言うと、①~⑧のつきまとい行為等を繰り返し行った場合には、ストーカー行為として処罰対象になるということです。

  1. つきまとい・待ち伏せ・押し掛け・うろつき等
  2. 監視していると告げる行為
  3. 面会や交際の要求
  4. 乱暴な言動
  5. 無言電話、連続した電話・ファクシミリ・電子メール・SNS・文書等
  6. 汚物等の送付
  7. 名誉を傷つける
  8. 性的しゅう恥心の侵害

「繰り返し」については、同じ行為を繰り返し行わなくても、別々の行為を複数行った場合でもよいとされています

例えば、⑤のSNSでの書き込み、⑥の汚物等の送付、⑦の名誉毀損行為、の3つが行われた場合であっても、繰り返し要件を満たすことになります。

なお、少々細かいのですが、①~④の行為と⑤の「電子メールの送受信」の行為については、「身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われた場合」に「つきまとい等」に当たる、という要件が加えられています。

ストーカー行為に対する罰則は?

ストーカー行為をした場合には、「一年以下の懲役又は百万円以下の罰金」が科せられることになっています。

また、公安委員会から「これ以上ストーカー行為をするな」との禁止命令が出されたにもかかわらず、これに違反してストーカー行為をした者は、「二年以下の懲役又は二百万円以下の罰金に処する」とされており、更に罰則が厳しくなっています。

以前は、ストーカー行為の罰則は、最大で6か月の懲役(禁止命令違反のストーカー行為の場合は最大で1年の懲役)だったことから、犯罪抑止力が乏しいなどと言われておりましたが、現在は、それぞれ法定刑も倍の重さとなっており、日本の法制度上も、「ストーカー行為は重大犯罪である」という傾向になってきたことがうかがえます。

つきまとい行為の具体例と対処法

ストーカー規制法で規制された「つきまとい等」の行為ですが、具体的にどのような行為がこれに当たるか、また、そのような行為に対してどう対処したらよいかを検討してみましょう。※警視庁HPを参考にしたもの。

8つの具体例と対処方法

①つきまとい・待ち伏せ・押し掛け・うろつき等

尾行したり、待ち伏せをしたり、家に押しかけたり、付近をうろうろするような行為はこれに当たります。

<対処法>

  • 一人で悩まず、警察や信頼できる人に相談する。
  • 携帯電話は、いつでも110番できるようにしておく。
  • 外出時は、防犯ブザーを携帯する。
  • 万一の場合は、警察や近隣の人、コンビニエンスストア等へ助けを求める。
  • 夜間の一人歩きはできるだけ避け、明るく人通りの多い道を歩く。
  • 帰宅時など不安なときは、家族に迎えに来てもらうか、タクシー等を利用する。
  • ドアや窓には二重鍵とドアスコープを付け、ドアを開けるときは周囲に注意をする。

②監視していると告げる行為

「今日~にいたよね」、「今日の服装は可愛かったね」、「いつも君のことを見張っているから」などと告げる行為などがこれに当たります。

<対処法>

  • ドアや窓の鍵は頑丈なものを設置し、二重ロックにする。
  • 自宅に、防犯カメラ、非常ベル、防犯センサー、テレビ付インターホン等を取り付ける。
  • 出入りの時に周囲を確認する。
  • 家にいるときでもきちんと戸締まりをする。
  • 厚手のカーテン等により、部屋の内部が見えないようにする。
  • ゴミを捨てる場合は、個人情報が記載されているものは除くか、裁断する。

③面会や交際の要求

「どうして会ってくれないんだ」、「もう一度やり直してほしい」、「プレゼントを受け取ってほしい」などと面会や交際を求める行為がこれに当たります。

<対処法>

  • しつこく面会や交際を迫られてもはっきりと拒否の姿勢を示す。
  • 警察や信頼できる人に相談する。

④乱暴な言動

「ばかやろう、ふざけるな」と暴言を吐いたり、メッセージを送ってきたりする行為、家の付近で車のクラクションを激しく鳴らす行為などがこれに当たります。

<対処法>

  • 危険を感じたときは、防犯ブザーや携帯電話で助けを求める。
  • 速やかに警察に相談する。

⑤無言電話、連続した電話・ファクシミリ・電子メール・SNS・文書等

電話をかけてきて何も話さなかったり、拒否しているにもかかわらず、電話やFAX、メール、SNSや文書等で連絡をしてきたりする行為がこれに当たります。

<対処法>

  • 余分な会話はせず、相手に「電話をかけてこないで下さい。」「警察に訴えます。」など、毅然とした態度で拒絶の意思を伝える。
  • 相手の電話番号や非通知での電話は、着信拒否設定にする。
  • 日時・内容等を記録・保存をしておく。(着信記録の保存、着信画面の写真撮影等。)
  • 電話会社に相談をする。(様々な対応策を教えてくれます。)
  • ナンバー・ディスプレイ機能付き電話を設置する。
  • 電話番号・メールアドレスを変更する。
  • SNS等を利用する際は、個人情報の取扱い等に十分注意する。

⑥汚物等の送付

汚物や動物の死体など、不快に思う物を送ってくる行為がこれに当たります。

<対処法>

  • すぐに警察に届け出る。
  • 届いた時間と内容をメモする。
  • 送り主の不明な届け物などは受け取りを拒否する。
  • 万一、受け取ってしまった場合でも開封せずに現物の写真を撮って警察に提出する。

⑦名誉を傷つける

「お前の過去の不祥事を近所中にばらしてやるからな」などと、名誉毀損行為をほのめかすことなどがこれに当たります。

<対処法>

  • メールなど送信された内容をプリントして警察へ届け出る。
  • むきになって「私もあなたの~~をばらしてやる」などと反撃しない。

⑧性的しゅう恥心の侵害

卑猥な写真を送りつけてきたり、性的に恥ずかしい内容をメールで送信したりする行為などがこれに当たります。

対処法>

  • 住所、電話番号、メールアドレス等の個人情報の管理に注意する。
  • 送り付けられた物(内容)を持って警察へ相談する。

以上が、警視庁のHPを参考にした具体例や対処法となりますが、実際には、相手の性格やストーカー行為の内容によって、柔軟な対応が必要になる場合もあるかと思います。

悩んだときは、何よりも一人で判断せず、信頼できる方や警察、弁護士などに相談することをお勧めします。

ストーカー被害に遭った場合の対処法

ストーカー被害に遭っているかも・・・と不安を感じたときは、何よりもまず、警察へ相談しましょう。

昔は、「ストーカーの相談をしても警察は相手にしてくれない」などと言われていましたが、最近は、悪質なストーカー事件が多発していることに鑑み、筆者の感覚でも、警察は親身になってくれることが多くなった気がしています。

警察や公安委員会は、ストーカー被害の状況に応じて、警告や禁止命令といった対処をしてくれます。

ストーカー被害に悩まれている方が多く口にするのは、「警察に相談なんかしたら、相手を刺激してしまい、更にストーカー被害が過激化するのではないか」という不安です。

たしかに、ストーカーを刺激することにより、ストーカー行為がエスカレートする懸念はありますが、ストーカーはほとんどの場合、面と向かって伝えることができない臆病な方が多い実情もあります。

実際に警察から、「ストーカー行為は止めてください」と連絡を入れてもらえば、大抵の場合は沈静化する傾向にありますので、よほど執着心の強い相手ではない限り、警察への連絡で事件が解決することは多いと言えます。

とはいえ、警察に相談していたにも関わらず、場合によっては殺傷事件にまで発展してしまうことがあることも事実です。

元交際相手の場合は、その人の性格もある程度分かっていることが多いので、殺傷事件まで発展する相手かどうかも、ある程度見通しがつくことが多いように思います。

そのような危険を感じた場合や、相手がよく知らない人物である場合には、やはり特に警戒が必要だと思われます。

警察に相談するとともに、見回りを行ってもらったり、防犯ブザーを持参したり、一人で外出しない、戸締りを徹底するなどの自己防衛対策も合わせて行うのが良いでしょう。

ストーカー被害の証拠はどう集める?

警察に動いてもらう際にも、弁護士に相談する際にも、ストーカー被害の証拠があったに越したことはありません。

その意味では、相手からのメッセージや電話なども、しっかり保存したり録音したりするのが好ましいといえます。

送られてきた物や文書なども、その日時をしっかりメモして、保管しておくようにしてください。防犯カメラの映像や、ストーカー行為を撮影した写真なども、もちろん重要な証拠になります。

とはいえ、急にストーカーが目の前に現れたり、罵声を浴びせられたりした場合に、録画や録音などが難しいということも少なくないと思います。

その場合でも、ストーカー被害はなるべく書面に証拠化しておくことが好ましいといえます。

ストーカー被害に遭った場合には、被害に遭った場所、日時、ストーカー行為の内容(発言や行動をなるべく詳しく)について、日記のようなかたちで、メモに残しておくようにしましょう

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弁護士に相談することも

ストーカー被害は、なんといっても、感情のもつれが一番の原因となっています。

相手が、思い込みや誤解、抑えきれない感情によって、攻撃的な行動に走ることも、ストーカー被害の典型的な悪質事案といえます。

その意味では、ストーカー行為がエスカレートする前に、弁護士を立てて相手と話し合いを行うことも視野に入ります。

弁護士は、感情の対立する様々な事件を解決する専門家ですから、ストーカーに対し、冷静に対応の上、今後ストーカー行為を行わないよう交渉することが有益な場合が多いと思います。

ストーカー行為を行っている人物に対して、内容証明郵便を送るだけでも効果的な場合があります。

どのようなストーカー被害に遭っているのか、相手がどのような性格か、これまでの2人の関係性はどのようなものか、等により方法も異なってくると思われますが、相談するだけでも不安がある程度解消されると思いますので、まずは弁護士を頼ることも視野に入れてみてください。

ストーカー被害に遭っている方は、精神的にも追い詰められていることが多いと思います。

まずは、警察や弁護士などに相談してもらって、気持ちを少しでも楽にすることが大事です。

独りで悩まずに、勇気を出してまずは相談するようにしてくださいね。

様々なリスクに備え、事前に弁護士保険にご加入いただくこともオススメいたします‼

参考資料

(定義)

第二条この法律において「つきまとい等」とは、特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し、次の各号のいずれかに掲げる行為をすることをいう。

一つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、住居、勤務先、学校その他その通常所在する場所(以下「住居等」という。)の付近において見張りをし、住居等に押し掛け、又は住居等の付近をみだりにうろつくこと。

二その行動を監視していると思わせるような事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。

三面会、交際その他の義務のないことを行うことを要求すること。

四著しく粗野又は乱暴な言動をすること。

五電話をかけて何も告げず、又は拒まれたにもかかわらず、連続して、電話をかけ、ファクシミリ装置を用いて送信し、若しくは電子メールの送信等をすること。

六汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又はその知り得る状態に置くこと。

七その名誉を害する事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。

八その性的羞恥心を害する事項を告げ若しくはその知り得る状態に置き、その性的羞恥心を害する文書、図画、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下この号において同じ。)に係る記録媒体その他の物を送付し若しくはその知り得る状態に置き、又はその性的羞恥心を害する電磁的記録その他の記録を送信し若しくはその知り得る状態に置くこと。

2前項第五号の「電子メールの送信等」とは、次の各号のいずれかに掲げる行為(電話をかけること及びファクシミリ装置を用いて送信することを除く。)をいう。

一電子メールその他のその受信をする者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信(電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第二条第一号に規定する電気通信をいう。次号において同じ。)の送信を行うこと。

二前号に掲げるもののほか、特定の個人がその入力する情報を電気通信を利用して第三者に閲覧させることに付随して、その第三者が当該個人に対し情報を伝達することができる機能が提供されるものの当該機能を利用する行為をすること。

3この法律において「ストーカー行為」とは、同一の者に対し、つきまとい等(第一項第一号から第四号まで及び第五号(電子メールの送信等に係る部分に限る。)に掲げる行為については、身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる場合に限る。)を反復してすることをいう。

(つきまとい等をして不安を覚えさせることの禁止)

第三条何人も、つきまとい等をして、その相手方に身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせてはならない。

(警告)

第四条警視総監若しくは道府県警察本部長又は警察署長(以下「警察本部長等」という。)は、つきまとい等をされたとして当該つきまとい等に係る警告を求める旨の申出を受けた場合において、当該申出に係る前条の規定に違反する行為があり、かつ、当該行為をした者が更に反復して当該行為をするおそれがあると認めるときは、当該行為をした者に対し、国家公安委員会規則で定めるところにより、更に反復して当該行為をしてはならない旨を警告することができる。

2一の警察本部長等が前項の規定による警告(以下「警告」という。)をした場合には、他の警察本部長等は、当該警告を受けた者に対し、当該警告に係る前条の規定に違反する行為について警告をすることができない。

3警察本部長等は、警告をしたときは、速やかに、当該警告の内容及び日時を第一項の申出をした者に通知しなければならない。

4警察本部長等は、警告をしなかったときは、速やかに、その旨及びその理由を第一項の申出をした者に書面により通知しなければならない。

5前各項に定めるもののほか、第一項の申出の受理及び警告の実施に関し必要な事項は、国家公安委員会規則で定める。

(禁止命令等)

第五条都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)は、第三条の規定に違反する行為があった場合において、当該行為をした者が更に反復して当該行為をするおそれがあると認めるときは、その相手方の申出により、又は職権で、当該行為をした者に対し、国家公安委員会規則で定めるところにより、次に掲げる事項を命ずることができる。

一更に反復して当該行為をしてはならないこと。

二更に反復して当該行為が行われることを防止するために必要な事項

2公安委員会は、前項の規定による命令(以下「禁止命令等」という。)をしようとするときは、行政手続法(平成五年法律第八十八号)第十三条第一項の規定による意見陳述のための手続の区分にかかわらず、聴聞を行わなければならない。

3公安委員会は、第一項に規定する場合において、第三条の規定に違反する行為の相手方の身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害されることを防止するために緊急の必要があると認めるときは、前項及び行政手続法第十三条第一項の規定にかかわらず、聴聞又は弁明の機会の付与を行わないで、当該相手方の申出により(当該相手方の身体の安全が害されることを防止するために緊急の必要があると認めるときは、その申出により、又は職権で)、禁止命令等をすることができる。この場合において、当該禁止命令等をした公安委員会は、意見の聴取を、当該禁止命令等をした日から起算して十五日以内(当該禁止命令等をした日から起算して十五日以内に次項において準用する同法第十五条第三項の規定により意見の聴取の通知を行った場合にあっては、当該通知が到達したものとみなされる日から十四日以内)に行わなければならない。

4行政手続法第三章第二節(第二十八条を除く。)の規定は、公安委員会が前項後段の規定による意見の聴取を行う場合について準用する。この場合において、同法第十五条第一項中「聴聞を行うべき期日までに相当な期間をおいて」とあるのは「速やかに」と、同法第二十六条中「不利益処分の決定をするときは」とあるのは「ストーカー行為等の規制等に関する法律(平成十二年法律第八十一号)第五条第三項後段の規定による意見の聴取を行ったときは」と、「参酌してこれをしなければ」とあるのは「考慮しなければ」と読み替えるほか、必要な技術的読替えは、政令で定める。

5一の公安委員会が禁止命令等をした場合には、他の公安委員会は、当該禁止命令等を受けた者に対し、当該禁止命令等に係る第三条の規定に違反する行為について禁止命令等をすることができない。

6公安委員会は、第一項又は第三項の申出を受けた場合において、禁止命令等をしたときは、速やかに、当該禁止命令等の内容及び日時を当該申出をした者に通知しなければならない。

7公安委員会は、第一項又は第三項の申出を受けた場合において、禁止命令等をしなかったときは、速やかに、その旨及びその理由を当該申出をした者に書面により通知しなければならない。

8禁止命令等の効力は、禁止命令等をした日から起算して一年とする。

9公安委員会は、禁止命令等をした場合において、前項の期間の経過後、当該禁止命令等を継続する必要があると認めるときは、当該禁止命令等に係る事案に関する第三条の規定に違反する行為の相手方の申出により、又は職権で、当該禁止命令等の有効期間を一年間延長することができる。当該延長に係る期間の経過後、これを更に延長しようとするときも、同様とする。

10第二項の規定は禁止命令等の有効期間の延長をしようとする場合について、第六項及び第七項の規定は前項の申出を受けた場合について準用する。この場合において、第六項中「禁止命令等を」とあるのは「第九項の規定による禁止命令等の有効期間の延長の処分を」と、「当該禁止命令等の」とあるのは「当該処分の」と、第七項中「禁止命令等」とあるのは「第九項の規定による禁止命令等の有効期間の延長の処分」と読み替えるものとする。

11前各項に定めるもののほか、禁止命令等及び第三項後段の規定による意見の聴取の実施に関し必要な事項は、国家公安委員会規則で定める。

(警察本部長等の援助等)

第七条警察本部長等は、ストーカー行為等の相手方から当該ストーカー行為等に係る被害を自ら防止するための援助を受けたい旨の申出があり、その申出を相当と認めるときは、当該相手方に対し、当該ストーカー行為等に係る被害を自ら防止するための措置の教示その他国家公安委員会規則で定める必要な援助を行うものとする。

2警察本部長等は、前項の援助を行うに当たっては、関係行政機関又は関係のある公私の団体と緊密な連携を図るよう努めなければならない。

3警察本部長等は、第一項に定めるもののほか、ストーカー行為等に係る被害を防止するための措置を講ずるよう努めなければならない。

4第一項及び第二項に定めるもののほか、第一項の申出の受理及び援助の実施に関し必要な事項は、国家公安委員会規則で定める。

(職務関係者による配慮等)

第八条ストーカー行為等に係る相手方の保護、捜査、裁判等に職務上関係のある者(次項において「職務関係者」という。)は、その職務を行うに当たり、当該ストーカー行為等の相手方の安全の確保及び秘密の保持に十分な配慮をしなければならない。

2国及び地方公共団体は、職務関係者に対し、ストーカー行為等の相手方の人権、ストーカー行為等の特性等に関する理解を深めるために必要な研修及び啓発を行うものとする。

3国、地方公共団体等は、前二項に規定するもののほか、その保有する個人情報の管理について、ストーカー行為等の防止のために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

(国、地方公共団体、関係事業者等の支援)

第九条国及び地方公共団体は、ストーカー行為等の相手方に対する婦人相談所その他適切な施設による支援、民間の施設における滞在についての支援及び公的賃貸住宅への入居についての配慮に努めなければならない。

2ストーカー行為等に係る役務の提供を行った関係事業者は、当該ストーカー行為等の相手方からの求めに応じて、当該ストーカー行為等が行われることを防止するための措置を講ずること等に努めるものとする。

3ストーカー行為等が行われている場合には、当該ストーカー行為等が行われている地域の住民は、当該ストーカー行為等の相手方に対する援助に努めるものとする。

(罰則)

第十八条ストーカー行為をした者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

第十九条禁止命令等(第五条第一項第一号に係るものに限る。以下同じ。)に違反してストーカー行為をした者は、二年以下の懲役又は二百万円以下の罰金に処する。

2前項に規定するもののほか、禁止命令等に違反してつきまとい等をすることにより、ストーカー行為をした者も、同項と同様とする。

第二十条前条に規定するもののほか、禁止命令等に違反した者は、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

参考:ストーカー行為等の規制等に関する法律 抜粋

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