「もう離婚する!」
売り言葉に買い言葉、パートナーとのケンカで熱くなってしまい思わず口走ってしまったはいいけれど…
「いくらなんでも、ケンカが原因で離婚するのも…」
「離婚するほどのことではないじゃないだろうか…」
「子どももいるし、そもそもパートナーの全てが嫌になったわけではない」
「あの頃の二人に戻れないか」
離婚の二文字が頭をよぎっても、様々な理由でそれを回避しようとします。
夫婦だけで話し合おうとして、感情的になってこじれてしまい話し合いにならなくなってしまっては、それも叶わないのでは…と思ってしまう方も少なくありません。
しかし、調停の場を利用することで、お互いの意思を確認でき、円満な状態に回復することが期待できます。
記事に入る前に・・・
だけど費用的に無理・・・という時代は終わりました。
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円満調停(夫婦関係調整調停)とは
夫婦関係が円満でなくなった場合に、夫婦関係を円満な状態に回復するための調停を円満調停(夫婦関係調整調停)とはいいます。
夫婦を円満にするための申立であり、離婚を望む夫婦が行う離婚調停とは逆になります。
原因がどこにあるのか、どうすればその原因を取り除くことができるか等について、調停委員会を交えて当事者双方から事情を聞き、夫婦自身で夫婦関係を改善する方法を考えていくことになります。
また、円満調停の申立がなされた場合、既に別居状態となっているケースも多いかと思いますが、その間の生活費等の婚姻費用分担の問題や、未成年の子どもと離れている親がいる場合には、その親と子どもとの面会交流をどうするか等についても話し合うことができます。
実際にどれくらいの夫婦が関係を改善できているかを裁判所のデータが示しています。
調査年 | 申立件数 | うち婚姻継続 |
平成28年 | 3,011件 | 487件 |
平成29年 | 2,719件 | 423件 |
平成30年 | 2,066件 | 561件 |
平成30年は27%と、実に4組に1組以上の夫婦が婚姻継続となっていることがわかります。
多くの夫婦が円満調停によって関係を改善・修復しています。
Iさん(30代 結婚8年 5歳の娘一人)
ある日妻から離婚を切り出され、全く身に覚えがないIさんは激昂するも、妻は娘を連れて隣県の実家へ。
結婚5年目以降夫婦仲が以前ほどよくはないと感じていたものの、離婚するほどの行き違いがあったとは思えず、どうすればいいかわからないまま数日を過ごしました。
Iさんは現状に耐えかね、弁護士に相談したところ円満調停の提案があり、申立をすることになりました。
調停の場で、どうやら妻が『Iさんに尊重されていない』と感じていることが原因だと明らかになりました。
日々家事に勤しむ妻にちょっとした小言を言ってしまったり、妻が病気になっても、娘の体調を気にして妻には「寝てれば治る」など特に気に止める様子もなかったり等、ないがしろにされていたことが妻は耐えきれなくなったとの事を調停の場で指摘されました。
最終的に謝罪したIさんの言葉を聞いて、「ずっと心に抱いていたわだかまりが解けた」と妻は言いました。 そして、もう一度Iさんとやり直す決心をし、調停が成立しました。
上記の事例では調停が成立となりました。
しかし、少なくとも片方が一度は離婚を視野に入れた者同士での話し合いになるので、「調停を申し立てたら修復できた!」と簡単にいきません。
ですが、冷静な状態で話し合うことで改善する事例は確かにあります。
円満調停を利用するメリット・デメリット
メリット
①冷静にお互いを把握する
夫婦間では、従来の感情のもつれが邪魔をして、修復の話に至るまでの話し合いが困難なことが多いです。
しかし、「お互いに話し合うつもりはある」状態、すなわち「修復を望む気持ちが残っている」という夫婦であれば、調停の場を借りることにより話が進むこともあります。
第三者を交えることで、互いを、そして自身を冷静な状態で見つめ、話し合うことが期待できます。
②公平な視点からお互いを把握する
知人や友人、または親族を交えての話し合いになると、どちらか一方の非をあげたり、「どっちもどっち」という曖昧な結論に導かれたりして、双方が納得できないまま終わってしまうことが珍しくありません。
円満調停であれば、調停委員に自分の意思を伝え、言いたいことを正しく相手に伝えることができます。
デメリット
①修復が困難なこともある
夫婦の一方が関係修復を目指して円満調停を申し立てるわけですが、場合によってはもう一方が修復は困難であると悟って、離婚の方向で話し合いが進む可能性もあります。
この調停手続は、離婚するかどうか迷っている場合にも利用することができるため、離婚することで意見が一致すれば、同じ手続を利用して、離婚の条件についても話し合うことになります。
また、別居している夫婦が婚姻関係をやり直すために同居を合意したとしても、強制的に同居させることなどもできません。
②手続きが多少面倒
「円満調停をしたい」といってすぐに調停が開かれるわけではありません。
申し立てを行い、裁判所から送られてくる期日に従って調停は進められます。
次に、円満調停の流れや注意点を見てみましょう。
円満調停の流れや注意点
調停の流れは下記のようになります。
円満調停の流れ
①申立て
まずは円満調停に向けて、管轄の裁判所へ申立書を送付します。
この場合の「管轄の裁判所」は相手方の住所地を管轄する家庭裁判所となります。
ただし、相手方との間で、担当する家庭裁判所について合意ができており、申立書と共に管轄合意書を提出すれば、その家庭裁判所でも対応することができます。
この時、「代理人を立てるかどうか」は注意して検討する必要があります。
代理人を立ててしまうと相手方に敵対的なイメージを持たれてしまう可能性もあるので、夫婦の関係修復に役立つかどうかをケースごとに検討する必要があると思います。
②期日の連絡
申立書を提出して1~2週間ほどすると、家庭裁判所から期日の連絡がきます。
1回目の調停期日は、申立てから約1カ月先から2カ月以内で裁判所が指定します。
③調停期日
実際に調停が行われる日です。
調停は平日に行われ、1回あたりの時間はおおよそ2時間程度です。進行によっては更に長くかかる場合もあります。
円満調停当日
待合室
家庭裁判所には待合室があり、申立人待合室と相手方待合室があるので、互いに顔を合わせずに待合室で待つことが可能です。
調停委員は男女一名ずつの計2名で構成されます。
※調停委員とは
調停に一般市民の良識を反映させるため、社会生活上の豊富な知識経験や専門的な知識を持つ人の中から選ばれます。具体的には、原則として、40歳以上70歳未満の人で、弁護士・医師・大学教授・公認会計士・不動産鑑定士・建築士などの専門家のほか、地域社会に密着して幅広く活動してきた人など、社会の各分野から選ばれています。
(引用:裁判所)
聴取
調停が始まると、呼び出しが行われ別室で調停委員と話をします。
基本的に申立人と相手方はそれぞれ調停委員に話をして、調停委員からの質問等に答えることになります。
そのうえで、夫婦関係を改善するための方法を話し合い、調停委員から解決に向けた助言や解決方法の提示を受けることができます。
一般的には、一回につき約30分程度の時間で、交互に聴取を行います。
1回目の調停で双方が合意し調停が成立することもありますが、決着が得られなかった場合は日を変えて2回目を行います(通常は約一か月後に設定されます)。
円満調停では、事情説明書に記載したことに関連した質問が行われます。
円満に修復するにはどうすればよいか、自身の意見・希望を述べましょう。
円満調停が不成立になってしまった場合
残念ながら両者の歩み寄りがならず、調停が不成立に終わってしまう場合もあります。
しかし、調停が不成立に終わっても、円満調停は再度申し立てることが可能です。
2回目の調停で変わることとして、
- 1回目とは調停委員が変わる
- 調停があった以上相手方の何かしらの心情の変化は期待できる
といった点があります。
ただし、不成立直後の調停の申立は再度不成立になる可能性が高いため、受理されないことがあります。
相手方の態度を硬化させることにもなりかねませんので、再度申し立てを希望する場合にはある程度の時間をおき、相手方にも考える時間を持たせるようにしましょう。
円満調停で自分の望む結果を得るためのポイント
円満調停では、相手を言い負かして自分の思い通りに進めてやるといった考え方は禁物です。
調停委員はそういった態度を見透かしますので、心がけから正すことが大事になります。
①調停委員の心象を良くする
相手方の言い分に感情的にならず、反省すべき点は反省する姿勢を見せましょう。
仮に相手方が離婚の意思をあらわにしていても、あなたの真摯な態度を見ることで、調停委員が改善の見込みがあると判断して、あなたの意思を尊重する提案をしてくれる可能性があります。
感情的になって暴言を吐く、自身の非を認めない姿勢、虚偽の発言などはもってのほかです。
②質問に対する回答を事前に考えておく
ほとんどの調停で夫婦どちらにも聞かれる質問があります。
- なぜ夫婦円満でなくなったのか
- 相手の不満は何か
- 自身が相手にしてあげられることは何か
- 円満に向けて自分ができることは何か
- 今後どうしていきたいのか
上記のように夫婦仲に関して、過去・現在・未来の視点からの質問がされます。
「成るように成る」といった曖昧なビジョンでは調停員の心象は決してよくなりません。
これまでの自分の行いやどのような夫婦像に向かって努力するか等の考えをまとめておきましょう。
③事前に弁護士に相談する
円満調停において、弁護士を代理人として立てることは要検討ですが、相談相手としてはこれ以上ない選択です。
過去の事例から適切なアドバイスがもらえることができ、書類の記載についても助言をもらえるでしょう。
円満調停に必要な書類と費用について
書類
①夫婦関係調整調停(円満)申立書 3通
裁判所用・相手方用として2通、申立人用(あなた)の控えとしてもう1通必要です。
裁判所のWebページからダウンロードできます。
②夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書) 1通
戸籍謄本は3か月以内に発行されたものを提出してください。
※この他に必要に応じて(子供がいる等)裁判所から追加の書類提出が求められることがあります。
費用
- 申立費用 収入印紙1200円分
- 連絡用郵便切手
相手方に申立書の写しを郵送するために切手が必要になります。
裁判所によって異なるので、各家庭裁判所へ問い合わせる必要があります。
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まとめ
円満調停は最終手段と言われたりします。
また、円満調停に至る前に夫婦不仲にならないよう、「普段から努力が必要」と言われたりもすることもあるでしょう。
しかし、調停の場に立って初めてパートナーの心情や本心をうかがい知ることができることもあります。
どうしても夫婦だけでは話し合いができないという場合、そのまま放置して悪化してしまう前に、お互いの気持ちを確認することも有意義であると考えられます。
このページをご覧いただいた方の家庭円満を願っています。
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小林義典 弁護士
東京弁護士会
袖ヶ浦総合法律事務所
住所:千葉県袖ケ浦市神納2-5-18 SKYCITY13-A
電話番号: 0438-42-1247
2009年弁護士登録。
交通事故、労働事件(労働者、使用者)から、家事事件等の一般民事事件を手広く行っています。
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