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交通事故で示談書を自分で作成するときに盛り込むべき4つの事項

交通事故示談の多くは、自動車保険会社がすべてをお膳立てしてくれるケースが多いので、示談についての詳しいことはわからないという人も多いと思います。

最近増えている自転車事故や、自動車事故でもこちらが無過失の場合には、自動車保険会社による示談代行を利用できないので、通常の交通事故のように保険会社が間に入ってくれないケースでは、当事者同士で示談を進めていかなければなりません。

また、保険会社が間に入るケースでも「示談書を作成しないで示談する」ことを提案される場合もありますので、本当にそれでよいかどうか迷ってしまうこともあるかもしれません。

そこで今回は、交通事故の示談を行う際に、示談書を作成したほうがいい具体的なケースや、示談書作成時に知っておくべきポイントなどについてまとめてみました。

目次

交通事故における示談書とは

交通事故の示談書

示談書は、交通事故によって生じた損害賠償の負担などについて当事者同士で合意に達したことを記した契約書(和解契約書)のことです。

示談=契約、ということに違和感を覚える人もいるかもしれませんが、法律の上では、私人同士の約束事は契約ということになります。

示談書は何のために作成するのか?

示談書は、当事者双方が同意できた内容を確実に記録するために作成するものです。

したがって、示談(当事者同士の話し合い)がまとまったその場ですべての損害賠償の清算が確実に完了し、その後にトラブルが起きる可能性が少ないのであれば、わざわざ示談書を作成しなくてもよい場合もあるといえます。

しかし、実際の示談では、話し合いのタイミングと賠償金の支払いのタイミングが異なる方が多いでしょう。

そのため、示談が成立した後日に「言った、言わない」といったトラブルが起きることもあります。示談の内容を文書として残しておくことは、これらのトラブルを防止する方法として非常に有効です。

交通事故が起きた場合に示談書を作成した方がよい3つの場合

上で述べたことを前提にすれば、次のようなケースにおいては、示談書を作成しておいた方がよいといえます。

  • 当事者の双方に過失がある場合
  • 示談成立後に重要な事情変更が生じる可能性のあるとき(不測の後遺障害が生じうる場合)
  • 示談がまとまる前に賠償金の一部の支払いを受けた、または受ける場合

当事者の双方に過失がある場合

実際に発生する交通事故には、当事者の双方に何かしらの過失があるケースが少なくありません。

これらのケースでは、事故に対するそれぞれの過失の割合に応じて発生した損害を分担しあうことになります。

特に示談書を作成しないケースでは、示談成立後、損害賠償を支払う直前になって「自分はそこまで悪くない」「そのような過失割合のつもりで示談したわけではない」といった主張を相手方がしてくるケースも珍しくありません。

示談成立後に重要な事情変更が生じる可能性がある場合

交通事故の示談は、事故によって発生した損害が確定した段階で行うのが一般的です。

しかし、実際にすべての損害が発生したことを正確に確認することは簡単ではありません。

たとえば、示談成立後に交通事故を原因とする後遺障害が発生してしまうケースや、示談の際に認知されていた後遺障害がさらに悪化してしまうことも考えられるからです。

このように将来の事情変更が予測されるケースにおいては、将来における再交渉の余地や、加害者が負担すべき責任の範囲などを示談書で明確に定めておいた方がよいといえるでしょう。

示談がまとまる前に賠償金の一部の支払いを受けた、または受ける場合

交通事故で重傷を負った場合などには、ケガの治療費の支払いのために、「とりあえずの賠償金を早く受け取りたい」と被害者が考えるケースもあります。

また、重大な人身事故が生じて、加害者が刑事訴追を受ける可能性が高い場合には、加害者側から早期(治療途中)の示談を求められることもあるでしょう。

これらの場合には、その際の示談が「暫定的なものにすぎない」ことを明確にしておく意味でも、きちんと示談書を作成しておいた方がよいといえます。

示談書を作成する場合に記載すべき内容4つ

交通事故の示談書に記載する内容

自動車(バイク)事故の場合であれば、当事者のいずれか(もしくは双方)に任意保険会社がついている場合がほとんどですから、示談書の様式は保険会社が用意してくれるものを利用すれば問題ないでしょう。

万が一、無保険車同士の交通事故や、自転車による事故が発生し、自身で示談書を作成する際には、損害保険会社(自動車保険会社)などのウェブページで公開されている示談書のひな形などを参考に、それぞれのケースにあわせた内容の示談書を作成しましょう。

以下では、示談書の内容について、特に注意したいポイントについてまとめてみました。

交通事故の当事者の氏名・住所

示談書は、交通事故の当事者同士の私的な契約書です。

そのため、誰と誰との間の示談であるかを正しく表記しておく必要があります。万が一の場合に、当事者の氏名すら記載されていない示談書は、裁判における証拠の価値が低くなってしまうからです。

法律文書における当事者の表記は、氏名と住所とを併記することで行われるのが一般的です。氏名だけでは同姓同名の人がいる可能性があり、当事者を特定するには不十分といえるからです。

また、交通事故の当事者同士で示談書を作成する際には、運転免許証などの公的な証明書によって、それぞれ(特に加害者)の本人確認をきちんと行うべきでしょう。

事故の詳細(事故の特定)

交通事故の示談書を作成する際には、示談する原因となった事実である交通事故についても記載しておくべきです。

特に、双方に過失があるケースでは、実際に発生した交通事故の状況についても詳しく記載しておいた方がよい場合が多いといえるでしょう。

事故状況について認識の食い違いがあることに気づかないまま示談が成立してしまうことは、後のトラブルの原因にもなってしまうからです。

示談書に特記すべき交通事故の情報は、下記のようなものです。

  • 交通事故が発生した日時・時刻
  • 交通事故の発生した場所
  • 加害者についての情報(車両の情報など)
  • 被害者についての情報(車両の情報など) これらの情報については、交通事故を管轄する警察(自動車運転安全センター)が発行してくれる交通事故証明書に記載されている情報を参考にするとよいでしょう。

示談金(賠償金)の額、支払い方法、支払い期限

損害賠償の金額やその支払い方法・期限は、示談書のなかで最も重要なものといえますから、きちんと示談書に記載すべきです。

特に、さまざまな損害が発生している場合には、損害賠償額の金額が高額となる傾向があります。

後のトラブルを防止する意味でも、その内訳(治療費・慰謝料などの費目ごとの明細)まで詳細に記載しておいた方がよい場合もあるかもしれません。

また、支払い方法や支払期限についても、振込先の口座番号まできちんと記載しておいた方がよいといえます。

特に、最近は、金融機関の支店の統廃合なども進められていますので、被害者が認識している支店がなくなっている(支店名が変わっている)というケースもないわけではありません。示談書を作成することにより、これらの伝達ミスを防止するきっかけになることもあります。

さらに、支払期日についても、あらかじめ明確な日時を定めておいて、それを示談書に記載しておいた方がよいでしょう。支払期限が明確でないことは、その後の不要なトラブルの原因となる可能性が高いからです。

清算条項

通常の示談は、交通事故の当事者間で行わなければならないすべての損害賠償の支払いについて、一括で協議するものです。したがって、示談がまとまれば、「その後に新しい損害賠償請求をする」という余地はなくなります。示談書を作成するときには、このことを明確に示すためにいわゆる「清算条項」を盛り込みます。

清算条項は、「甲と乙は、本件交通事故に関し、本示談書に定めるもののほかに何らの債権債務がないことを相互に確認する」といった文章で示されることが一般的です。

留保条項も忘れずに!

清算条項は、賠償責任を負う範囲を明確にする(限定する)という意味合いを持ちます。

ですので、加害者側にとっては、特に重要な条項といえます。

とはいえ、実際の交通事故においては、上でも示談後遺障害が生じる可能性があることについて触れたように、示談の際には予見することのできなかった損害が示談成立後に発生することがないわけではありません。

そのため、清算条項を設ける際には、これとあわせて、示談後に交通事故を原因とする後遺障害が新たに見つかった場合には別途協議するという趣旨の条項、「留保条項」を定めることが一般的です。

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示談書を作成するときに注意すべき3つのポイント

交通事故の示談書

交通事故の当事者にとって示談は、面倒・煩雑と感じることの少なくない作業です。

そのため、「できるだけ簡単に済ませたい」、「早く終わりにしたい」と考えてしまったことなどが原因で、後にトラブルとなってしまうことも少なくありません。

そのようなトラブルを避けるためにも、示談書を作成する際には次のような点に特に注意しておく必要があるといえます。

示談書は、被害額(治療費、後遺障害)が確定してから作成する

すでに本文中でも何度か触れていることですが、交通事故の示談は、その交通事故によって発生した損害が確定してから行うことが原則です。

損害の内容がハッキリしないうちに示談をしてしまえば、その後に新たな損害が発生した場合にトラブルとなる可能性が高いからです。

また、発生が生じるごとにその都度示談を行うということは、いずれの当事者にとっても煩雑であるといえます。

こういった事情から、実際の交通事故示談の多くは、被害者の治療終了(症状固定)を待って行われることが一般的です。

医師が症状固定と診断した場合には、その後に治療費が生じることもなく、後遺障害の有無についても正しい見通し(後遺障害等級認定の要否や認定された等級)がたっているからです。

しかしながら、生活費に充てるために賠償金の早期の支払いが必要となる場合や、刑事事件への影響といった当事者双方の事情によっては、症状固定前に示談を行うこともないわけではありません。

その場合には、上でも触れたように、留保条項を正しく定めることで、事後のトラブルが起きないように配慮することが重要です。

交通事故示談の消滅時効

上とは逆のケースになりますが、「示談するタイミングが遅くなりすぎる」ことは、被害者にとっては相手方に損害賠償を請求できなくなる原因になりかねませんので、注意しておく必要があります。

なぜなら、交通事故を原因とする損害賠償には消滅時効があるからです

交通事故における損害賠償請求権は、次のタイミングで消滅時効となってしまいます。

  • 物損による損害賠償請求権は、事故日の翌日から3年
  • 傷害による損害賠償請求権は、事故日の翌日から5年
  • 後遺障害による損害賠償請求権は、症状固定の翌日から5年
  • 死亡事故の場合には、死亡日の翌日から5年

※交通事故などが0時ちょうどに発生した場合などはその日から5年となります

※消滅時効については、2020年4月から、物損以外の損害賠償請求権の時効期間が3年から5年に変更となりました(被害者にとっては有利変更)。

治療などが長引いてしまったために、消滅時効の完成が迫っているというケースでは、早めに弁護士などに相談し、時効中断のための対応等をとる必要があります。

作成した示談書を覆すことは難しい

「示談した後に思い返したら納得できなくなった」というケースは、交通事故示談では実は珍しいことではありません。

ありがちなのが、当初は相手方から提示された示談金の額で同意してしまったが、その後ネット等で相場を調べたら「相手方の提示額が安すぎる」と感じた、という例です。

そのような場合には、後に納得できなくなったからといって、一度成立した示談を覆すことは、簡単ではありません。

本人同士が確かに同意したということを、一方的な事情で覆すことは法律的にも認められることではないからです。

何かしらの事情があって示談の重要な内容について勘違いがあった・相手方に同意を強要された、というケースであれば、示談を覆すことも不可能ではありませんが、このような対応は相手方に対して民事訴訟を提起することを前提にする場合が少なくありません。

後になって「こんなはずではなかった」という思いをしないためにも、納得できない示談内容の場合には示談すべきではありませんし、わからないことや不安なことを解決しないままに示談に応じることもオススメできません。

示談書を公正証書にしておくべき場合

人身事故の場合には、損害賠償の支払いは保険会社が対応してくれるので、「支払ってもらえない」という心配をするケースはほとんどないといえます。

しかし、物損事故で高額な賠償金を請求する場合や、無保険や自転車との交通事故で多額の治療費・慰謝料を求める場合(相手方の履行に強い不安を感じる場合)には、示談書を公正証書にしておいた方がよいケースもあるでしょう。

示談書を公正証書(いわゆる執行証書)にしておけば、相手方が示談金を支払わなかった場合に、民事裁判・支払督促といった手続を経ることなく、すぐに強制執行をすることができるからです。

まとめ

示談書は、すべての交通事故示談で絶対に必要なものというわけではありません。

損害賠償の支払いが即時・確実に行われる可能性が高ければ、示談書を作成しなくても何の問題もないということも少なくないからです。

しかし、保険会社や弁護士を間に入れずに、当事者同士のみで示談を行う際には、一般的には示談書を作成した方がよい場合が多いといえます。示談書を作成することは、当事者間の認識の不一致を未然に防止することに直結するからです。

とはいえ、法律の専門知識のない人にとって、示談書を作成することは決して簡単なことではありません。

その意味では、当事者本人が示談書を作成した場合は、無料相談などを上手に活用して弁護士にチェックしてもらうことも重要といえます。

また、自転車事故やいわゆるもらい事故が起きた場合などに備えて、自動車保険に弁護士費用特約を付帯しておく、単独型の弁護士保険に加入しておく、といった未然の備えをしておくことも、示談で後悔しないための有効な方法といえるでしょう。

弁護士
黒田弁護士

弁護士 黒田悦男 

大阪弁護士会所属
弁護士法人 茨木太陽 代表
住所:大阪府茨木市双葉町10-1
電話:0120-932-981

事務所として、大阪府茨木市の他、京都市、堺市にて、交通事故被害者側に特化。後遺障害認定分野については、注力分野とし、医学的研鑽も重ねています。

また法人の顧問をはじめ事業上のトラブルにも対応をしています。

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